Lythrum

赤井 てる

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〜Machinery city〜

「対脅威養成支部」Part2

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 拡大された声が響き、一同はその方向を向いた。

「…?」

 ゲート前上部にある通路の露台に、一人の黒いダウンジャケットを羽織った女の子が立っている。

 子供…?

「おっとォッ!!今『子供』とか思った奴全員!こう見えてピッチピチの27歳だからそこんとこよろしくぅ!」

「―――」

 …周りの反応はない。

「…え、えっと。話を本題に移そう」 

「コホン」と調子を落ち着かせ、両手を腰に当てた。

「ようこそ!対脅威養成支部、略してA.T.T.B!更に略してA.Tへ!私はノーマル専門教諭、リース・オオデマリ!君達の入校を心より歓迎する!!」

 教諭は祝辞を述べ、息を整えると真剣な表情で生徒達を見た。

「…皆うざい程知ってると思うけど、ここ数年の歪みの発生率はこれまでの比じゃない」

 片手で横のパネルを打ち、最後にキーを弾く音が響く。

「―――届いたかな?」

 すると、その場にいる全員の端末にファイルが届いた。
 カズトはそれを開くと、あるデータが表示される。

「早々で悪いけど、皆にはそれを見て欲しい」

 データには歪みの発生数、それによる死者数、そしてT.O.D.L.Fにより壊滅した都市等の画像がある。カズトの故郷だった場所も…

「皆は今日―――」

「―――後はわしが引き継ごう」

 そこで突然、別の声が届いた。
 教諭の後ろから、白衣を着た女性に支えられた老人が姿を現す。

「割って入っての登場、申し訳ない。わしはガフュール・ルーツァー、ここの支部長を務めている」

 一瞬周りがざわついた。

「このような姿で皆の前に立つことをどうか許してほしい」

 支部長と名乗った老人には、多くの管が繋がれていた。
 片手を上げ、教諭に合図すると入れ替わりになる。

「オオデマリ教諭の話の続きだが―――皆は今日、命を賭す覚悟でここに来ていると思う」

 前に杖を付き、堅実な態度で生徒達を見る。

「そしてそれは、儂らも同じ。命を賭す覚悟で戦う術を教えよう」

 周りから駆動音が聞こえ始める。

「…役割は違えど、もノーマルも関係ない…」

 正面ゲートが徐々に開放され、中から冷たい風が流れてくる。

「皆には己が信じる意義を全うし、護るべきものを護って欲しい」

 …支部長は、どこか含みのある言い方でそう言った。

「………」

 僅かな間が空く。

「…今から二年前、儂らの故郷は『大歪み』により壊滅的な打撃を受けた」

 …支部長は重い口を開き、言葉を続ける。

「…大切な家族、友人、恋人を理不尽に奪われた」

 表情にこそ出さないが、杖を強く握りしめるのが見える。

「復讐に駆られている者もいるだろう。あの化け者共を―――」

「―――話しなげーなぁ、あの爺さん」

 すると、隣から声が聞こえた。

「大事な話してるんだから静かに聞いて」

 …聞き覚えのある声。

「そういや、部隊員の編成はどうなってんだ?」

「い、今それ聞くの…!?」

 体格が大きい青年に聞かれ、少女は呆れた声でそう話す。

「―――一週間後の適正試験で構成されるらしいよ」

「―――あ?」

 カズトの言葉に、二人はこっちを向く。

「って、お前は…」

 自分に気付いた二人に「さっきはありがとう。そして急にごめん」と言ってカズトは言葉を続ける。

「最初は同じタイプ間で実力が近い者同士で構成されて、試験の後にタイプ混合で改めて再構成って感じらしいね」

「…なるほどな。―――ついでに機体の割り当てについても聞きいていいか?」

「に、兄さん遠慮ってものを…!!」

 カズトは少女の静止の声に、「全然気にしないで」と言った。

「それもさっきと似てて、最初は訓練用の機体が割り当てられて、適正試験の後にそれぞれの能力値に合わせて武装とか、パーツとか増設されるらしいよ」

「…だったら試験次第って事か」

「…まぁ、大きいだろうね」

 するとそこで、鈍い重低の金属音が響き、地上へと繋がる通路が目の前に広がった。

「―――さて、君達はこれから兵器乗りとして演習を積んでいく訳だが…まずは腹拵えじゃな」

 支部長の声に、カズト達は前を向く。

「既に済んでる者もいると思うが、その者は時間まで各自に割り当てられている部屋で休むと良い」

 …いつの間にか、話しは終盤に差し掛かっている。
 最後に支部長が言った。

「改めてようこそ我が支部へ。儂らは君達を心より歓迎する」

 照明がより明るくなり、支部長は白衣を着た女性に支えられると奥へと移動していった。それと同時に前の生徒が進み始める。

「…んじゃあさっさと部屋行って朝練すっか。詳しい説明さんきゅーな。見てくれの良い

 青年は首だけこっちを向け、嫌みのように吐き捨てる。

「―――!!………」

 するとその声を聞いた少女は、驚いたようにカズトを見た。…表情がなくなり、「…ごめんなさい」と頭を下げると青年の後ろを付いて行く…

「…またか…」

 カズトは小さく呟くと、ズボンのポケットに手を入れ歩き出した。
 …理由は分かっている。混在種異人通常種ノーマルは、長年対立関係にある。『優劣』『劣等』今もその思想が根強く浸透し、嫌悪しかされない。
 …目立たなくしていたのに、異人を表す紋章に気付いたようだ。

「……」

 小さく息を吸い、頭を切り替える。そしてカズトは皆が進む方向とは別の道に歩いていった。
 向かう先は演習場。…部屋でゆっくりなんてしていられない。
 心の底で復讐心が沸き立つ。
 今の自分にはまだ力が足りない。奴はまだ殺せない。
 この手で息の根を止めるために、一分でも、一秒でも多く力を付ける。…そう考えていると、カズトよりも先に赤髪の女子生徒が歩いているのが見えた。

 …彼女も演習場に向かっているのだろうか…



「さっき何言おうとしてたんですか」

 休憩室に入り、レデリカはガフュールを車椅子に降ろすと車輪を固定する。
 支部長は「すまないな」と言いつつ、「さっきか?」とわざと曖昧な言い方をする。

「説得力を増すために間を空けた訳じゃないでしょう?」

「あぁ確かに、違和感マシマシのグリアリティだったね」

 ガラス張りの壁に身体を預けたリースが、菓子を食べながら言う。

「まあ確かに話そうとはしたがな」

 支部長は顔を少し上に向けると、微笑みながら言葉を続ける。

「儂がとやかく言う権利はないよ。ー--それに、『大歪み』発生から二年、まだ未復旧という状況下での志願。改めて言わんでも、彼らが一番分かっておろう」

「それはそうだと思うけどさぁ、皆の士気って話もあるからねぇ」

 リースは最後の一口を頬張り、包み紙をゴミ箱に捨てる。

「それはそうと例の機体、ついさっきBAに格納したってさ」

「分かった。後でクレイ氏に礼を言っといてくれ」

「ク~~ッ!!データに載ってない機体、この目で拝むのが楽しみだな~!!」

 リースは拳を握り、目を輝かせる。

「でもその機体、原型が分からないぐらい損傷してるんでしょ?」

 レデリカの問いに、「まぁね」と答える。

「手足、頭、背中全部欠損してて残ってるのは胴部だけ。システムが生きてたら御の字だね」

「じゃが歪みから出現してるからの。その可能性は限りなく低いじゃろ」

「まあそしたらそしたでデータは残ってると思うし何とかして動かすよ」

「…手間をかけるの」

「今度何か奢ってよ?」

「分かった」という支部長の声を聞くと、「じゃあ私は早速」と言い、ウキウキと扉へ向かっていく。だが開けようとした瞬間立ち止まった。

「ー--あ、そうそう例の機体で思い出したけど、昨日保護した青年あの場にいなかったね」

「彼ならまだ寝てるわよ。昨日渡した薬の中に睡眠薬入れといたから…」

「…ちょっとやってること怖くない?」

「仕方ないでしょ。怪我は重傷だし、あんな事言われて心がズタボロだったはず。彼には休息が必要よ…」

「結局あの青年は『白』ってことで良いの?」

「ああ、それで間違いないじゃろ。昨日の歪みの出現に彼が関与していたのは間違いないが、だからの」

「そしてそん時に本当の記憶を封じられてしまったと…とりま、さっき言ってた方向で進めるよ?」

「ああ、頼む」

「オッケー、後で青年に会うのが楽しみだ…!ー--じゃっ!」

 最後にそう言って手を上げ、ドアを開けるとリースはその場を後にした。

「さて…儂らもそろそろ戻るかの。レデりん、ナサイ君が目を覚ましたら儂の所に連れてきてくれないか?」

「それは彼の状態によりますけど、何を企んでるんです?」

 レデリカの問いに、支部長は車椅子を動かし、ガラス張りの壁まで移動すると下を見下ろした。

「ちょいと利用させてもらうかの」
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