千年の夢

瀬名

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ガタッと慌てて立ち上がり時間を確認すれば、もう結構いい時間になって熱かった珈琲も良い具合にぬるくなり驚きを隠せない。

読もうとした小説を鞄に仕舞い口すら付けていない珈琲を手にコンビニを後にし、早足で駅に向かう。


駅前の信号の歩行者マークがチカチカと点滅しているのが目に入り慌てて渡ろうと横断歩道に足を踏み出せば、少し離れた所から聞いたことも無い異様な音が聞こえるのと同時に後ろから劈く悲鳴と何かを叫ぶ声が聞こえ振り返ろうとした瞬間、俺の身体が宙を舞った。




…………は?




空なんて飛べるはずもなく、宙を舞った身体は重力に逆らうこと無く地面に叩き付けられた。


痛い、痛い痛い痛い痛い痛い

痛いし酷く熱い。
吐く呼吸は浅く、視界がぼやける。


ピクリとも動けない俺に何人かの人達が声を掛けてくれるけど、口が上手く動かない。


だんだん寒くなってきた。


聞こえてくる声も遠くなってきた気がする。
ぼやけた世界も、もう見えなくなってきた。


俺、もしかして死ぬ…?
ああ…やだな、小説まだ読み終わってないんだ…


あの二人の行く末を俺はまだ見てないんだよ…


待って、俺はまだ死にたくない…
なんで俺なんだよ、死にたくない…生きたい。





これなら、寄り道せず会社に行ったら良かった。
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