聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます

小豆缶

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33 それぞれの視点、それぞれの朝

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「ごめん、あなたたちに進展があると思った私がバカだったわ」

翌朝、魔石から出てきたウンディーネは、頭を抱えて深く溜息をついた。

「せっかく気を利かせて、お城の水回りで遊んだり、エアリアと遊んできたのに帰ったら何も変わってないじゃないのよ」
「何を言って? 僕は彼女にプロポーズまでしたんだよ。進展してないわけがない。まったく君といい、オーガやネズミイといい……」
魔王はぶちぶち文句を言いながら、私に「ねえ」って同意を求める。




今朝、こっそり二人の様子を見に行ったウンディーネは、ひと目見て悟った。

――進展、ゼロ。

なぜなら、そこには何もなかった顔で、仲良く並んで、おにぎりを食べている二人の姿があったからだ。

なんでそんなに、いつも通りなのよ……!!!
あんたたち一夜を過ごしたんでしょうよ!

あれだけのことがあった翌朝だというのに、恥じらうでもなく、顔を赤らめるでもない。

なんで、ただただ真剣におにぎりを頬張るリンと、淡々と「おにぎり握って」と台所のオーガにおにぎりを注文した魔王。

揶揄う隙も、ときめく隙も、微笑ましくなる隙もなかった!







その少し前に遡るーー厨房でも同じ空気が流れていた。

前日は、魔王がリンを嫁にするって宣言したんだよな
うーん、あの服を脱がそうとした段階で恋心があったのか?

あの要素のどこに??

わかんないもんだが、あんなに魔王城はやばかったのに、あんなに穏やかな顔でくつろいでる魔王様をみるのも初めてだったな

ネズミイは回想する。
二人のラブラブ姿か?
想像できるような、出来ないような。

「おはようございます」
「へっ!!」

ネズミイは思わず、声の方を振り返る。
お前たち、何朝からやってきてるんだよ!

オーガも飛び出てくる。
「まだ早朝だぞ!二人でいるなら、いろいろ、ほらいろいろあるだろ」
一人で突っ込みながら、赤くなるオーガ。
だが、二人には伝わってない。

「おにぎり握って」と仲良く並んだその姿を見てオーガとネズミイは顔を見合わせる。

進展、あったか?

だが――その空気感は、前と何も変わっていなかった。
いや、むしろ“元に戻っただけ”という感じすらする。

察した瞬間。
ガシャンッ。
二人同時に、無言で、情緒も一緒に鍋ごと落とした。

ネズミイは震える声で、うわごとのように呟く。

「……進展ゼロかよぉぉおぉぉ……!!」

そのまま、両手で顔を覆って、二人そろって床に崩れ落ちた。





「あ、あの……すいません! 急いで食べますね!!」

リンは、ウンディーネの視線に気づき、「なにだらだら食べてるのよ」という圧に焦っておにぎりを頬張る。

「いいの。ゆっくり食べてて……スネクですら、気を遣って今日のレッスンは休みにしたっていうのに。明日から間違いなく、鞭が飛ぶに決まってるんだからね!」

そして、ため息をつきながらふと振り返ったウンディーネの視線が、ゴミ山で止まる。

えっ??えっ!!

「……ああ、そうなんだよ。ごめんね。なんか一気に浄化されちゃって……。ゴミ山の下に隠したかったんだけど、もう隠すほどモノが残ってないのさ」

魔王が謝る。
どう見ても、どの角度から見ても、いや目を閉じても、あれは見える。

――あれは、かつてマクライアからもらった婚約指輪。

しかも、魔王城の空気が良いせいか、ピカピカに輝きを取り戻している。

見る勇気がなかった。
触れるのも怖かった。
心の整理に数日かけて、ようやく踏ん切りをつけようとしていた、その矢先。

ウンディーネは、わなわなと震えた。

「わたしの……わたしの……貴重な心のざわめきを返せー」

その叫びとともに、怒りの感情を込めた鉄拳級の水流魔法が、魔王の頭上に容赦なく降り注いだ。

「ああ!すぐ床を拭きますね!!」

リンがそれを見てモップを持って慌てて走り出す。
魔王はずぶ濡れになりながらも苦笑いし、 

「リン、まず僕を拭くのが先だよ」

と軽くツッコんだ。
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