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手紙に綴る想い
しおりを挟むマルスへ。
お久しぶりです、と書くには堅苦しいし、距離を感じてしまうので、やあと短く君に声を掛けることにする。
君が亡くなって暫く経つ。俺はいつだって君の面影を追っていた。あの子に、会うまでは。
虚弱児、と俺はあの子を呼んでいた。それ程最初に会った時は、弱弱しい子だった。だが、彼の心は最初から逞しかったのだと思う。それこそ、長年、冒険を続けていた俺なんかより、ずっと。
彼の頑張りを認めて、彼に武器を与えた。その責任は全うするつもりだった。ただ、彼は俺が思うより、冒険者としての性質を資格を兼ね備えていたようだ。
頭角を現すことは無かった。俺に危機が訪れるまでは。
きっと、君のせいだろう?
俺を助ける為か、はたまた彼に救わせる為か知らないが、君にしか使えなかったあの技を与えた。どんな方法かは知らない。それでも、助かって今、ユーフェの隣に居られることには感謝してる。ありがとう、マルス。全部君のおかげだ。
マルス、君は「生まれ変わり」という言葉をどう思う? 俺は――正直鼻で笑ってしまう。人は自分の人生を生きたら、それで終わりだと思っているから。でも、彼を見ていると、時折不思議な錯覚を覚える。あまりに似ているので。昔を思い出す会話に、好物、些細な仕草、端々から、君を思い出す。以前はそれが辛かった。だが、今はそうではない。生まれ変わり、なんて書いたが、彼は――ユーフェは実は君の一部で作られた人間なのではないか、と思ってる。ありのままの君じゃない。でも、君を忘れられない俺から見たら、ユーフェはマルスにそっくりだ。
君の一部が生きている、そう思うと俺は切ないまでに感じてしまう。ああ、君にも次があるのかと。あの残酷な終結で、全てが消えて無くなったわけではないのだと。
エンドロールの後に続く物語のように、それは蛇足的なものかもしれない。それでも俺は……喜ばしい。
あの日の悲しみも苦しみも消えてない。でも、少しづつ癒されていくのを感じる。
ユーフェは俺の最愛だ。
あの子は、とてもまっすぐだから、俺も腐ってしまわずに、かつて程実直でなくとも、前をみつめようと思う。
取り残されていた愛が、置き去りのままの心がようやっと昇華されます。ただ、俺はきっといつまでも君を想うでしょう。それだけは、許して欲しい。
俺も男だから、あの子を、幸せにしてみようと思う。今まで俺を救ってくれた分、恩返しが出来るよう、俺は――今日からを生きていくよ。
ありがとう、マルス。どうか、安らかに眠ってくれ。
追伸。
愛していた、ただ、……君を。
この言葉が天地の境界を越えて届きますように。
レオン・マクファーレンより。
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