蜜色の瞳のシェヘラ

よしき

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シュッツ

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  シェヘラが話している間。アレックスは、ただ静かに聞いていた。そして、
「そうか・・・俺はシェヘラや父上によって守られ、導かれてきたのか?」
  そう言うと、深くため息を吐いた。
「父上が亡くなった後。母上も相次いで亡くなられて。ファービヒト陛下・・・兄上を助けられればと、兄上に尽くしてきた。しかし、兄上から向けられる『憎しみ』は、増すばかりで・・・」
  月が耿々と輝く下で、アレックスは、低いが、静かに。ハッキリと言葉を紡ぐ。
「俺は兄上のために、命を捨てる覚悟で、お前シェヘラに会いに来た。しかし、俺が命を落とす事は、父上は望まず。そしてお前シェヘラに助けられた。」
  アレックスは瞼を閉じ、しばらくの間何かを考えている様子であったが、大きく息を吸うと目を見開いた。
「俺は、  アージニオ先帝息子として、黒い魔女シュバルツヘクゼに守られる者として。今上帝ファービヒトを撃つ!」
  凛とした声が、月光に照らし出されたヒールの丘で、静かに響き渡った。
  丁度その時。シェヘラは、手を止めた。その手には、キラキラと輝く銀の髪ジルバーハを編み込んだ組紐の守護シュッツがあった。
  シェヘラは、ゆっくりとアレックスの前えとやってくると、まるで神に使える神官シンプトの様に両の手に守護シュッツを乗せて、頭よりも高く掲げる。美しく、愛おしいシェヘラが神々しくすらアレックスには見えた。
  そしてゆっくりと、シェヘラは、両手を下ろし呟く。
「汝、月神の娘モーント トホターの夫にして、アージニオの息子よ。祝福の守護シュッツを与えん・・・」
そう言うなり、おもむろにシェヘラは、アレックスの左手に組紐の守護シュッツを巻き、取れない様にキツく縛った。
「コレでいい。」
  シェヘラは、そう言うと、アレックスに祝福のキスをした。
  アレックスは、それと同時にシェヘラを抱きしめた。そしてそのまま2人は、月光に照らし出されながらお互いの体を貪りあった。
 
  
  
  



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