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第一章・迷宮大氾濫と赤の黄昏編
第17話・大氾濫と対策と、危険な賭けと妥協点
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トダダダダダダダダタダダダダダダダダ
早朝。
エリオンが店の外に出て【開店中】の看板をぶら下げた時。
冒険者ギルドの方角から、顔を真っ赤にしたブンザイモン・キノクニがエリオンめがけて走ってくる。
手紙をしたためた式神から、急務と記されたメッセージを受け取ったのはつい先ほど。
式神たちは『早朝、彼にこのメッセージを渡すように』と伝えられていたため、朝目を覚ましたばかりのキノクニの寝室を急襲、彼にしか聞こえない魔力のこもった超高音で泣き叫んだのである。
これには寝ぼけ眼も一瞬で覚め、受け取ったメッセージを見て取るも取らずにオールレントへと駆けつけたのである。
「エリオン殿、このメッセージは本当なのか!!」
【新ダンジョンで大氾濫の兆候あり】、それだけが書き込まれていたメッセージを受け取れば、この領地の領主であるキノクニもじっとしているわけにはいかない。
その真意を問いただすべくやって来たのはいいが、エリオンは目の前の道に水をまきながら一言だけ。
「まあ、近いうちに起こるとは思うよ。氾濫強度は恐らくA+ってところだと思うけど」
「待て、どうやってそれを確認した? エリオンはここから離れられないのだろう?」
「レムリアに素材採取を頼んでね。その彼女からの連絡があったんだ。それで、一応この領地の責任者であるあんたにも、話をしておいた方がいいと思ってね。まあ、詳しいことは中で説明するよ」
店内に戻るエリオン。
ブンザイモンもその後ろについて店内に入ると、カウンターの近くにある椅子を引っ張り出してそこに座る。
そのぶっきらぼうな態度も気にすることなく、エリオンは後ろに置いてあったコーヒーメーカーからいれたてのコーヒーをカップに注ぐと、それを一つキノクニに差し出した。
「ほう、香りもいいし色合いも住んでいるな。そこの魔導具で淹れたのか?」
「まあね。市販のものではどうしても濁りがでるしえぐみも強くなるから、俺が作った。魔導珈琲抽出機っていうんだ」
「売る予定は?」
「ないね。グランドタラテクトの糸袋の内膜を使った高級品だ。買うとなるとこの領地の年間予算の半分は取るが、それでもいるのか?」
実際はもう少し安いが、エリオンは冗談も交えてそう告げる。
それに頭を左右に振って返答すると、キノクニは真顔になって本題に入る。
「ダンジョンの大氾濫、今回の規模は以前よりも大きいのか 氾濫強度A+っていうのは本当なのか?」
以前、エリオンたちが止めた大氾濫がA。
それよりも強度が高いということは、それだけ多くの犠牲が出るということを示唆している。
前回の大氾濫の後、ようやくキノクニ領にも上位冒険者が戻りつつあるというのに、そんな事態を公布しようものなら以前よりもひどい混乱状態になるのは目に見えている。
「事実だ。レムリアが第八層手前で計測したから間違いはない」
そう告げつつ、手元にあるレムリアからの報告書の内容を説明する。
「第七層の時点で、第六層の倍の瘴気濃度を検出。フロストドレイクの群れと営巣地を確認したらしい。ダンジョン内部の瘴気から生まれるはずの魔物が、営巣地を作って自然繁殖しているという時点で、もう常識を疑うしかないだろうな」
「待て、魔物の内部繁殖については、学界では否定している常識だ、それが起こっているというのか?」
「ああ。常識をまた塗り替えてもらうしかない。まあ、俺やレムリアにしてみれば、この程度なら何度も見ていたから問題はない。それでだ、可能ならとっとと最下層のダンジョンコアを破壊した方がいい。第七層を越えられる冒険者はいるか?」
今、キノクニ領に滞在している冒険者の中でも、最強の一角といわれているのが『金剛石の牙』という上位クラン。
そのクランでさえ、第七層到達以後は攻略速度が停滞している。
報告ではフロストドレイクの群れが出たといい、耐冷装備の都合がつくまでは下に降りるのは無理だろうと説明を受けていた。
それゆえ、ダンジョンアタックをしている冒険者たちも第六層のボス部屋までの攻略がせいぜいであり、そのあとは第七層の転移陣で地上に戻ってきている。
「カミラという剣士が率いるパーティーが、第七層攻略に成功している。だが、第八層には手を付けていない。あとは第六層攻略できそうなチームが二つ三つ程度、あとはまだ無理だな」
「そうなると、今回もレムリア任せになるか……同じ地域での二度のダンジョン氾濫、これを破壊したら確実にこの地のダンジョンは枯渇するが、それでも構わないか?」
――ゴクッ
息を呑むブンザイモン。
前回もレムリアがダンジョンコアを破壊することについては最後に反対をしていた。
だが、それは契約上仕方がないことであったため、ブンザイモンもしぶしぶあきらめていたのである。
だが、今回はまだ大氾濫を押さえる契約はしていないので、ブンザイモンも腕を組んで考え始めた。
「ダンジョンコアを破壊せずに大氾濫を止める方法は?」
「あるが、その手を使うのか?」
「あるのか!!」
ガタッと立ち上がるブンザイモンに、エリオンは一言だけ。
「ダンジョンの入り口を完全に塞ぎ、結界で固定する。あとは行き場を失った瘴気が内部で膨れ上がり、最後は爆発してダンジョンごと吹き飛ぶ。まあ、そこから先、ダンジョンが活性化したら元の洞窟に戻るとは思うが、それも一年程度だな」
「吹き飛ぶ……のか、どれぐらいの被害だ?」
「ダンジョンの深度と瘴気濃度にもよるが……多分この領都は地図から消滅するが、ダンジョンは再生する。民を取るかダンジョンを取るか、その二択だな……」
実際には、あと一つ二つの対策はあるのだが、それはリスクが高いためお勧めしたくはない。
――ガチャッ
そんな話し合いをしている最中、オールレントの扉が開きレムリアが入ってくる。
「あとひとつ、ダンジョンマスターの書き換えというのがありますが」
「はぁ……それは言っちゃダメでしょうが……レムリア、まずは着替えてシャワー、そのあとで素材の下処理を頼む」
「了解です。第九層の堕天使は、なかなか強敵でしたと伝えておきます」
そう告げて、レムリアは外に出ていく。
「……なあ、そのダンジョンコアの書き換えっていうのはなんだ?」
「チッ。しっかりと聞こえていたのかよ」
あまりにも下策であるため、エリオンはこれはブンザイモンにはお勧めしたくなかったのだが。
レムリアの失言で、それも提示するしかなくなっていた。
「ダンジョンの最下層にあるダンジョンコア、それは意思を持っていてね。破壊すればダンジョンのシステム全ては停止し、マナラインとの接続も切れダンジョンは死ぬ。だが、その意思だけを殺して自身がダンジョンコアとリンクすれば、そのダンジョンはリンクしたものの所有物になる……っていうのも、こっちの大陸では知られていないんだろうなぁ」
エリオンの説明を聞いて、ブンザイモンは顎をカクーーーンと開いて呆然としている。
ダンジョンは自然発生するもの、それを個人が所有できるというのである。
そんなことが出来るとなると、どれだけの財を手に入れられるのかとブンザイモンは考えたのだが。
「エリオンが言わなかったということは、デメリットもあるということか。それはなんだ?」
「ダンジョンコアとリンクしたものは、そのダンジョンの支配者、すなわちダンジョンマスターとなる。そしてダンジョンマスターはマナラインから膨大な魔力を手に入れることが出来るのだが、結果として不老となってしまう」
「それのどこがデメリットなんだ?」
「そして、ダンジョンコアが破壊されると死ぬ」
そう説明しても、ブンザイモンは今一つデメリットを感じない。
「ようは、破壊されなければいいのだろう?」
「人間がダンジョンマスターになったばかりの時は、ダンジョンの防衛機能は働かないんだよ。外部から多くの命を取り込んでダンジョンを成長させる必要がある。また、ダンジョンマスターはダンジョンから出られなくなる。【迷宮の爆鎖】という呪いに縛られてね……別の大陸で、俺はそんなダンジョンをいくつも見てきた。不老だが不死ではない、何もなく、ただ魔物を生み出し従わせるしか楽しみがない人生を過ごすことになるんだぞ?」
「……人ではなくなる、ということか」
「ああ。だから、この方法は人に進めてはいない、ブンザイモンも今の話は忘れろ、個人でダンジョンを手に入れるということは、最悪、国家がそれを欲することに繋がる」
その言葉で、エリオンがこれまでに何を見てきたのか想像がついた。
国家でダンジョンを自由に管理できるということは、うまく操れば大繁栄間違いなし。
だが、そのためにはダンジョンマスターの餞別が難しくなる。
「……そうなると、ダンジョンを取るのか民を取るのかの二つに一つか。さすがに俺の一存で決められることではないな……あとどれぐらいで大氾濫は発生するかわかるか?」
「さあ? 内部調査を継続して行わない限りは知ることなんてできない。だから、冒険者にでも依頼をだして、内部調査を続けるしかないだろうな……」
――ゴトッ
エリオンはカウンターの下から、計測器図他の魔導具を取り出す。
「ダンジョン内部の瘴気濃度を測定するデバイスだ。これで各階層の瘴気濃度を計測して、それを俺のところに届けてくれればいつ頃発生するのかの目安は出せる。ただ、目安としてはすこし幅がある。大氾濫の発生一週間前とか、そんな感じになると思うから」
それに、それを知ったところでどんな対処が出来るのか、エリオンには見当もつかない。
せいぜいが、ぎりぎりまでダンジョンでの調査と資源採取をして、そのあとは領民全てを率いての脱出劇となるのが目に見えているから。
「わかった。このことは王宮に報告して対応を決定する」
「それなら一つ付け加えてやるよ。一つでもダンジョンが氾濫すると、その周辺のダンジョンも連鎖的に大氾濫を起こす。それを止めたければダンジョンコアを破壊するしかないってな」
もうひとつだけ、ダンジョンコアを破壊せず、且つ領民を救う術はある。
【ダンジョンコアの置き換え】という方法を使えばいい。
ただ、その交換用ダンジョンコアを用意する方法が、じつに面倒なのである。
だからエリオンはそのことは伝えない。
「助かった。では、情報を感謝する」
懐から金貨を数枚取り出してカウンターに並べると、ブンザイモンはオールレントを後にした。
それと入れ替わりにレムリアが店内に戻ってくると、エリオンの後ろに回り込むと、そっと彼を抱きしめた。
早朝。
エリオンが店の外に出て【開店中】の看板をぶら下げた時。
冒険者ギルドの方角から、顔を真っ赤にしたブンザイモン・キノクニがエリオンめがけて走ってくる。
手紙をしたためた式神から、急務と記されたメッセージを受け取ったのはつい先ほど。
式神たちは『早朝、彼にこのメッセージを渡すように』と伝えられていたため、朝目を覚ましたばかりのキノクニの寝室を急襲、彼にしか聞こえない魔力のこもった超高音で泣き叫んだのである。
これには寝ぼけ眼も一瞬で覚め、受け取ったメッセージを見て取るも取らずにオールレントへと駆けつけたのである。
「エリオン殿、このメッセージは本当なのか!!」
【新ダンジョンで大氾濫の兆候あり】、それだけが書き込まれていたメッセージを受け取れば、この領地の領主であるキノクニもじっとしているわけにはいかない。
その真意を問いただすべくやって来たのはいいが、エリオンは目の前の道に水をまきながら一言だけ。
「まあ、近いうちに起こるとは思うよ。氾濫強度は恐らくA+ってところだと思うけど」
「待て、どうやってそれを確認した? エリオンはここから離れられないのだろう?」
「レムリアに素材採取を頼んでね。その彼女からの連絡があったんだ。それで、一応この領地の責任者であるあんたにも、話をしておいた方がいいと思ってね。まあ、詳しいことは中で説明するよ」
店内に戻るエリオン。
ブンザイモンもその後ろについて店内に入ると、カウンターの近くにある椅子を引っ張り出してそこに座る。
そのぶっきらぼうな態度も気にすることなく、エリオンは後ろに置いてあったコーヒーメーカーからいれたてのコーヒーをカップに注ぐと、それを一つキノクニに差し出した。
「ほう、香りもいいし色合いも住んでいるな。そこの魔導具で淹れたのか?」
「まあね。市販のものではどうしても濁りがでるしえぐみも強くなるから、俺が作った。魔導珈琲抽出機っていうんだ」
「売る予定は?」
「ないね。グランドタラテクトの糸袋の内膜を使った高級品だ。買うとなるとこの領地の年間予算の半分は取るが、それでもいるのか?」
実際はもう少し安いが、エリオンは冗談も交えてそう告げる。
それに頭を左右に振って返答すると、キノクニは真顔になって本題に入る。
「ダンジョンの大氾濫、今回の規模は以前よりも大きいのか 氾濫強度A+っていうのは本当なのか?」
以前、エリオンたちが止めた大氾濫がA。
それよりも強度が高いということは、それだけ多くの犠牲が出るということを示唆している。
前回の大氾濫の後、ようやくキノクニ領にも上位冒険者が戻りつつあるというのに、そんな事態を公布しようものなら以前よりもひどい混乱状態になるのは目に見えている。
「事実だ。レムリアが第八層手前で計測したから間違いはない」
そう告げつつ、手元にあるレムリアからの報告書の内容を説明する。
「第七層の時点で、第六層の倍の瘴気濃度を検出。フロストドレイクの群れと営巣地を確認したらしい。ダンジョン内部の瘴気から生まれるはずの魔物が、営巣地を作って自然繁殖しているという時点で、もう常識を疑うしかないだろうな」
「待て、魔物の内部繁殖については、学界では否定している常識だ、それが起こっているというのか?」
「ああ。常識をまた塗り替えてもらうしかない。まあ、俺やレムリアにしてみれば、この程度なら何度も見ていたから問題はない。それでだ、可能ならとっとと最下層のダンジョンコアを破壊した方がいい。第七層を越えられる冒険者はいるか?」
今、キノクニ領に滞在している冒険者の中でも、最強の一角といわれているのが『金剛石の牙』という上位クラン。
そのクランでさえ、第七層到達以後は攻略速度が停滞している。
報告ではフロストドレイクの群れが出たといい、耐冷装備の都合がつくまでは下に降りるのは無理だろうと説明を受けていた。
それゆえ、ダンジョンアタックをしている冒険者たちも第六層のボス部屋までの攻略がせいぜいであり、そのあとは第七層の転移陣で地上に戻ってきている。
「カミラという剣士が率いるパーティーが、第七層攻略に成功している。だが、第八層には手を付けていない。あとは第六層攻略できそうなチームが二つ三つ程度、あとはまだ無理だな」
「そうなると、今回もレムリア任せになるか……同じ地域での二度のダンジョン氾濫、これを破壊したら確実にこの地のダンジョンは枯渇するが、それでも構わないか?」
――ゴクッ
息を呑むブンザイモン。
前回もレムリアがダンジョンコアを破壊することについては最後に反対をしていた。
だが、それは契約上仕方がないことであったため、ブンザイモンもしぶしぶあきらめていたのである。
だが、今回はまだ大氾濫を押さえる契約はしていないので、ブンザイモンも腕を組んで考え始めた。
「ダンジョンコアを破壊せずに大氾濫を止める方法は?」
「あるが、その手を使うのか?」
「あるのか!!」
ガタッと立ち上がるブンザイモンに、エリオンは一言だけ。
「ダンジョンの入り口を完全に塞ぎ、結界で固定する。あとは行き場を失った瘴気が内部で膨れ上がり、最後は爆発してダンジョンごと吹き飛ぶ。まあ、そこから先、ダンジョンが活性化したら元の洞窟に戻るとは思うが、それも一年程度だな」
「吹き飛ぶ……のか、どれぐらいの被害だ?」
「ダンジョンの深度と瘴気濃度にもよるが……多分この領都は地図から消滅するが、ダンジョンは再生する。民を取るかダンジョンを取るか、その二択だな……」
実際には、あと一つ二つの対策はあるのだが、それはリスクが高いためお勧めしたくはない。
――ガチャッ
そんな話し合いをしている最中、オールレントの扉が開きレムリアが入ってくる。
「あとひとつ、ダンジョンマスターの書き換えというのがありますが」
「はぁ……それは言っちゃダメでしょうが……レムリア、まずは着替えてシャワー、そのあとで素材の下処理を頼む」
「了解です。第九層の堕天使は、なかなか強敵でしたと伝えておきます」
そう告げて、レムリアは外に出ていく。
「……なあ、そのダンジョンコアの書き換えっていうのはなんだ?」
「チッ。しっかりと聞こえていたのかよ」
あまりにも下策であるため、エリオンはこれはブンザイモンにはお勧めしたくなかったのだが。
レムリアの失言で、それも提示するしかなくなっていた。
「ダンジョンの最下層にあるダンジョンコア、それは意思を持っていてね。破壊すればダンジョンのシステム全ては停止し、マナラインとの接続も切れダンジョンは死ぬ。だが、その意思だけを殺して自身がダンジョンコアとリンクすれば、そのダンジョンはリンクしたものの所有物になる……っていうのも、こっちの大陸では知られていないんだろうなぁ」
エリオンの説明を聞いて、ブンザイモンは顎をカクーーーンと開いて呆然としている。
ダンジョンは自然発生するもの、それを個人が所有できるというのである。
そんなことが出来るとなると、どれだけの財を手に入れられるのかとブンザイモンは考えたのだが。
「エリオンが言わなかったということは、デメリットもあるということか。それはなんだ?」
「ダンジョンコアとリンクしたものは、そのダンジョンの支配者、すなわちダンジョンマスターとなる。そしてダンジョンマスターはマナラインから膨大な魔力を手に入れることが出来るのだが、結果として不老となってしまう」
「それのどこがデメリットなんだ?」
「そして、ダンジョンコアが破壊されると死ぬ」
そう説明しても、ブンザイモンは今一つデメリットを感じない。
「ようは、破壊されなければいいのだろう?」
「人間がダンジョンマスターになったばかりの時は、ダンジョンの防衛機能は働かないんだよ。外部から多くの命を取り込んでダンジョンを成長させる必要がある。また、ダンジョンマスターはダンジョンから出られなくなる。【迷宮の爆鎖】という呪いに縛られてね……別の大陸で、俺はそんなダンジョンをいくつも見てきた。不老だが不死ではない、何もなく、ただ魔物を生み出し従わせるしか楽しみがない人生を過ごすことになるんだぞ?」
「……人ではなくなる、ということか」
「ああ。だから、この方法は人に進めてはいない、ブンザイモンも今の話は忘れろ、個人でダンジョンを手に入れるということは、最悪、国家がそれを欲することに繋がる」
その言葉で、エリオンがこれまでに何を見てきたのか想像がついた。
国家でダンジョンを自由に管理できるということは、うまく操れば大繁栄間違いなし。
だが、そのためにはダンジョンマスターの餞別が難しくなる。
「……そうなると、ダンジョンを取るのか民を取るのかの二つに一つか。さすがに俺の一存で決められることではないな……あとどれぐらいで大氾濫は発生するかわかるか?」
「さあ? 内部調査を継続して行わない限りは知ることなんてできない。だから、冒険者にでも依頼をだして、内部調査を続けるしかないだろうな……」
――ゴトッ
エリオンはカウンターの下から、計測器図他の魔導具を取り出す。
「ダンジョン内部の瘴気濃度を測定するデバイスだ。これで各階層の瘴気濃度を計測して、それを俺のところに届けてくれればいつ頃発生するのかの目安は出せる。ただ、目安としてはすこし幅がある。大氾濫の発生一週間前とか、そんな感じになると思うから」
それに、それを知ったところでどんな対処が出来るのか、エリオンには見当もつかない。
せいぜいが、ぎりぎりまでダンジョンでの調査と資源採取をして、そのあとは領民全てを率いての脱出劇となるのが目に見えているから。
「わかった。このことは王宮に報告して対応を決定する」
「それなら一つ付け加えてやるよ。一つでもダンジョンが氾濫すると、その周辺のダンジョンも連鎖的に大氾濫を起こす。それを止めたければダンジョンコアを破壊するしかないってな」
もうひとつだけ、ダンジョンコアを破壊せず、且つ領民を救う術はある。
【ダンジョンコアの置き換え】という方法を使えばいい。
ただ、その交換用ダンジョンコアを用意する方法が、じつに面倒なのである。
だからエリオンはそのことは伝えない。
「助かった。では、情報を感謝する」
懐から金貨を数枚取り出してカウンターに並べると、ブンザイモンはオールレントを後にした。
それと入れ替わりにレムリアが店内に戻ってくると、エリオンの後ろに回り込むと、そっと彼を抱きしめた。
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