機動戦艦から始まる、現代の錬金術師

呑兵衛和尚

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第二部・異世界からの侵略編

第36話・覚悟はいいな? こちらはできている

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 ホワイトハウスの中庭に、敵機動兵器が姿を現した直後。

 キリバス共和国上空にて待機していた敵機動艦隊は、ゆっくりと前進を開始。
 島から距離にして2500メートルの位置まで進むと、転針したのちに全砲門をキリバス共和国へと向けた。

『さて。キリバス共和国の諸君。君たちの命運は、この世界のリーダーであるアメリカ大統領が握っている。速やかに降伏するならば、この島は我が艦隊の補給基地として生かしてやることを約束する』

 外部スピーカーのようなもので、ファーミリアス・トワ・カンナヅキの声が響いてくる。
 その間も、キリバスの住民は島から逃げることはなく、じっとことの成り行きを見守ることにしていた。
 なぜ、自分たちが狙われたのか。
 どうして異世界の艦隊はここにやってきたのか。

 その理由は、たった一つのくだらないもの。

 すべての世界の国々の中で、キリバス共和国が最も早く新しい日を迎えるから。
 キリバス時刻0時、それがファーミリアスの侵攻のスタートタイム。
 そして0時になった時点で、空間越境による短距離転移を用いることで、遠隔操作型機動兵器をホワイトハウスに送り込んだ。
 そこでパワードの決断を聞いていた時、ファーミリアスの予想を越えてアマノムラクモがホワイトハウスに出現。

 彼の虎の子である機動兵器が、一撃で真っ二つにされてしまったのである。

『ククク……わかったよパワード。君は、この世界を見捨てたんだね。では、我々ミョルドガルド艦隊は、これより地球上のすべての国家を蹂躙する。その手始めは、このキリバスだ!! 全砲門開け、一斉斉射!!』

──ドゴォォォッ!!
 ミョルドガルド艦隊の全主砲が火を吹く。
 火薬を用いない魔力砲が、炎の術式を纏った火球を一斉に噴き出す。
 
──シュンッ
 だが、その砲撃は島に直撃することはなく。
 島全体を覆うような透明なドームにより、艦隊の砲撃はすべて遮られたのである。
 そのドームの中、海岸に配置されていた盾騎士シールド・リッターによる防御フィールドは、奴らの攻撃を完全に無力化していた。

『はは……ははは……なるほどね。機動戦艦の主人よ、君たちは我々に対して喧嘩を売るというのだね? よかろう、我々は全力で地球を破壊させてもらう。どこまで守り切ることができるか、勝負だ』

 一方的に叫ぶものの、艦隊は進路を変えると、全速で空間の向こうへと消えていった。
 
 
 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


──アマノムラクモ・艦橋
「やれやれ……ヒルデガルド、こちらの状況を説明して欲しい」

 弾道軌道による高速帰還を果たした俺たちは、すぐさま環境に戻ってから現在の状況について確認している。

「ミサキさまの予想通り、敵艦隊はキリバス共和国目掛けて砲撃を開始。なお、配置されている盾騎士シールド・リッターによりすべての攻撃は無力化に成功。そのままどこかの空間めがけた?移動て行きました」
「なるほど。オクタ・ワン、敵攻撃による観測データ、および装備のスペックをある程度推測しておいてくれるか?」
『ぴっ、了承です』

 解析関係はオクタ・ワンの専門分野。
 だからそこは任せておくとして、俺はサテライト隊が衛星軌道上から撮影していた戦闘シーンをモニターに再生。
 敵艦隊の火力についての計測を始めていた。

「魔術型砲撃、それも圧縮された火球を高速射出。着弾点で炸裂し周辺に炎を撒き散らします」
「対策は?」
「そんな攻撃すら受け付けない防御力です。重さや動きなどの計測値は算出していますが、現行の地球の兵器の中でもかなりの火力を有しているかと思われます」

──ピッ
 正面モニターに映し出されなものは弾速とか破壊力とか、とにかく解析が完了した敵砲撃に酷似したものまで武器データベースからピックアップされている。
 そこでわかったのは、おおよそ戦艦大和の主砲クラスの威力の魔力弾が飛んできて、ナパームをばら撒くようなものらしい。
 
 それでさえも、盾騎士シールド・リッターの防御フィールドは貫くことができていないのが気になる。

「ふむ。次に奴らがくる場所の予測は?」
「フランス、ロシア、イギリス、中国のどこかでしょう。安保理事国は潰すべきと判断していると思われますし、これら先進国を潰すことで、リーダーシップを取ろうとする国同士の軋轢を生じさせるかと」
『ピッ……アメリカで屠った機動兵器の残骸は、回収していないのですか?』
「あれはマズイ。だから、アメリカに託した……」

 そう、あの機動兵器は、存在したはいけないものだよ。


………
……


 巷のSNSでは、アメリカが鹵獲した全高12メートルの機動兵器のことで話が盛り上がっている。
 だが、それらはすべてアメリカ政府により厳重に管理され、解析作業が続けられている。

──ホワイトハウス敷地内
 巨大な人型兵器の周りには白いテントが張り巡らされ、外部からも 見えないようにしっかりと遮断されている。
 その中には動物学者、医者を始めとした研究員が集まっているのだが、目の前の二つに分断された機動兵器には嫌悪感を感じている。

「外装甲はタングステンのようなものと推論されます。それらを均質圧延鋼装甲化させたものを鎧状に加工したものでしょう。その中にあるのは、モノコックフレームに搭載された人体のようなモノ。人工筋肉、制御用と思われる様々な機械のような物質。それらをつなぐ糸状の素材……」
「もしもこれが生命を改造したものだとしたら、まさに神へ対する暴力意外の何物でもない。心臓のようなものもあり、血液も流れているではないか?」
「とにかく、全てバラして解析しないことには何も始まりません」

 次々と届けられる報告書を手に、パワード大統領は頭を悩ませる。
 それでなくとも、敵の機動兵器を鹵獲したことはすでにインターネットを通じて全世界が知っている。

 あのアマノムラクモでさえ、これを回収できていない。
 アメリカに対して資料公開を求める声も各国から届けられたので、パワードは一言だけ、各国に向けて告げたという。

「解析はできていない。故に、各国の研究員の協力を求める」

 と。
 人間の八倍の体躯を持つ機動兵器、そのようなものをどうやって解析するべきか、そして、それを作り出すことができるか。
 逆に考えるなら、これを作り出すことができる存在が敵であるという事実。
 これを超えるものが作れるのかどうか、それはこれからの世界中の協力に掛かっている。

 それも、自国を守りながらの解析作業。
 そのようなことができるのかどうか。
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