機動戦艦から始まる、現代の錬金術師

呑兵衛和尚

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第二部・異世界からの侵略編

第37話・平和の前にはプライドなど

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 ファーミリアスの初手を防ぎ切ったのは良い。

 キリバス共和国は、ただ全世界で最も早く日付が変わるというだけで滅びそうになったが、いつまでも盾騎士シールド・リッターを配備してあるわけにはいかない。
 幸いなことに流れ弾が付近の海にに着水したとかそういう二次災害はなかったため、このあとの処理はキリバス共和国の仕事、つまりアマノムラクモは撤退を開始する。
 その様子は全世界に中継され、敵艦隊の攻撃を弾き飛ばしたというアマノムラクモの機動兵器が注目される結果となったのだが。

………
……


──アマノムラクモ・艦橋
 正面モニターを眺めつつ、俺は腕を組んで考えてしまう。
 先の敵艦隊の砲撃、その火力などのデータを計測していたんだけど、気になる攻撃がいくつかあった。

「……右3番の録画、3分巻き戻して再生。魔力の計測はできる?」
「リアルタイム計測ではありませんので、推測データならどうにか算出しますが」
「そっか、ちょいとここ、このあたりを……」

 映像を指先の動きで停止すると、そこからスロー再生してみる。
 そこに映ってあるのは、例の砲撃艦からの射撃映像。
 他の艦船からの砲撃よりも先に直撃していたんだけど、その瞬間、盾騎士シールド・リッターの展開したリリアシステムに干渉していることに気がついたんだわ。
 本当に数秒程度だけど、明らかに威力がうわまっている。
 もしもあのエネルギー砲撃があと5秒続いていたとしたら、バリアは破壊されてキリバスは焼土と化していたであろう。

「なるほと、確かにこの瞬間だけバリアが押し込まれていますね。魔力波干渉による中和のようにも確認できます」
「バリアを抜かれないようにするには、どうしだのかなぁ」
『ピッ……純粋にバリアユニットの出力を高めるだけで構わないかと思います。なお、現時点で86カ国からの打診があり、盾騎士シールド・リッターの派遣要請を行なって来ていますが』

 まあ、気が気じゃないよなぁ。
 今回の砲撃を見た人は、今の地球のテクノロジーではあの攻撃を防ぐ手段はないと思ったんだろうなぁ。

「ミサキさま、国連本部からの要請が届いていますが」
「ほほう、要件は?」
「今回の異世界侵略者の攻撃について、それがどのようなものなのか解析できたのなら情報提供してほしいそうですが」
「ん、それぐらいなら構わないよ。まあ、俺に来て欲しいんだろうけれど、ここで指揮を取らないとならないから……」

 チラッと艦橋で作業をしているワルキューレたちを見ると。
 一瞬だけ視線が重なると、すぐに忙しそうに作業を再開している。

「……ヘルムヴィーケ、行ってくれるか?」
「かしこまりました。外交担当官である以上、外部との折衝などは私の仕事ですから」

 俺の近くまで来て頭を下げるヘルムヴィーケ。
 まあ外交担当官であるし、対外政策関係でも彼女がアマノムラクモ代表として出席して会議などには参加してもらいたいからさ。
 
「公開していいデータその他はオクタ・ワンと協議。俺はバリアシステムの改良を始めるからさ」
『ピッ……了解です』
「では、いつ頃から向かいましょうか?」

 スケジュール的なことを考えても、向こうはすぐにでも国連総会を開催して、今回の侵略者に対しての対策などを考えるんだろうなぁ。
 そして各国も自国の防衛力を強化したり、索敵網を広げたりと緊張した時間だけが進むだろうし。
 
「すぐに飛んでくれ。マーギア・リッターでの移動許可及び、盾騎士シールド・リッター三騎を連れて行ってくれ。会議中に襲われないように守りは完璧に」
「かしこまりました。それでは戦闘用サーバントの関勝、林冲、秦明を連れていきます」
「よろしく」

 すぐさまヘルムヴィーケは艦橋から外に出る。
 
「ヴァルトラウデ、アメリカ国防総省と国連本部に通信、アマノムラクモの使節を送り出したので受け入れを頼むと。マーギア・リッターと盾騎士シールド・リッターの着陸許可も取ってくれ」
「了解です」

 一つずつやることをやる。
 それよりも、アメリカはあの機動兵器の解析化ができたのだろうか。
 敢えて、アメリカにあれを託したんだが、この短時間で何処まで解析できたであろうか。
 なんとなく、不安である。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


──アメリカ・ニューヨーク州・国連本部ビジターセンター
 それは一種異様な光景。
 四騎のマーギア・リッターが施設の東西南北に浮遊し、周辺の索敵を行なっている。
 そのうちの三騎はヘルムヴィーケの部下たちであり、彼女本人は国連総会本部で指定式にすわり、各国からの報告などを聞いている。
 もっとも、現時点では異世界侵攻軍の動向を高めている国は存在しないため、自国での活動などについての説明などを行なっていた。

「それでは、緊急時ゆえにオブザーバーとして参加してもらいましたアマノムラクモ外交官のヘルムヴィーケさん。今回の異世界侵攻軍の攻撃についてですが、私たちにわかりやすいように説明してくれますか?」
「わかりました。では、我がアマノムラクモの誇る賢人の解析データをまずはご覧ください」

──プゥン
 オクタ・ワンがあらかじめ用意してくれたデータやグラフなどを巨大なスクリーンに投影する。

「まあ、簡単に説明しましょう。地球の兵器を比較対象としましたら」

 次々とモニターに敵艦船が表示される。
 そこに記されている数値の意味を一つずつ説明するたびに、参加している国連大使たちの顔色が悪くなっていく。
 実体弾ではないエネルギー弾、しかも魔力により固形化されているエネルギーの塊であるなど説明されたところで、誰も認識することは出来なかった。

 そのあとの質疑応答では、どうにかして自国領土を守ってくれないのかという質問も殺到したものの、それについてはNOという回答をヘルムヴィーケは伝えていた。

「アマノムラクモは、我々を守ってくれないのか?」
「そもそも、国を守るってどうやってですか? 確かに今のアマノムラクモには、先日の攻撃を弾き返した盾騎士シールド・リッターが多数存在していますが、それを各国に配備しろと? 馬鹿も休み休み話してくださいね。まずは自国を守ります、その上で、同盟国を守ります……なお、このタイミングでいきなり同盟を結ぼうとしても無理ですので」

 この言葉には会議場がざわついた。

「さて、このまま皆さんを突っぱねて滅んでしまわれても困るので、一つだけ。先日、アメリカが鹵獲した敵機動兵器の装甲素材、おそらくはそれならば防ぎ切ることができるのではないかと、アマノムラクモは推測しています。そちらのデータもしくはサンプルの提供を渡していただければ、防衛に使えるかどうかなどは教えられますけれど?」

 これはアメリカに対する説明。
 そしてアメリカとしてもすぐに答えを出せないことは理解している。

 現在、アメリカのとある施設では、常任理事国の軍事顧問などが集められ、5カ国共同での解析が初められている。
 そこにアマノムラクモも参加させろと言っているのである。
 プライドが高く、アマノムラクモを自国の利益として考えてある国は容認できるはずもなく。
 敵対しているフランスなどは猛反対。
 この共同解析については国連は関係ないため、後日で構わないから話し合いがしたいというイギリス、アメリカの相談をヘルムヴィーケは聞き入れた。

「でも、早く手を打たないとやられますわよ? それに二カ国の許可だけでは解析データを渡してくれませんよね? いまはプライドは必要ありませんよ?」

 そのヘルムヴィーケの言葉だけが、議会上には響くことになってしまった。
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