機動戦艦から始まる、現代の錬金術師

呑兵衛和尚

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第二部・異世界からの侵略編

第39話・沈黙した侵略者と、アマノムラクモと

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 異世界侵攻艦隊。
 それが、国連が正式に名付けた侵略者たちの呼称。

 彼らが太平洋上に姿を現してから早くも一週間。
 その間、各国の諜報部隊が行方を調べていても未だ確認する事はできず。
 一部の国家からは、『アマノムラクモの存在に恐れをなした』などという噂も流れ始めている。
 
「……サーチデータ254569、ポイントアジア北東部。ここも問題なしと」

 アマノムラクモ艦橋右舷に設置されたモニターには、地球上のすべての地域の地図が表示されている。
 現在、世界各地に散ったアマノムラクモの諜報員たちからの報告を受けて、調査価格に何もなかった場合は青くマーキングを施しているのだが、未だ痕跡を確認することができず。
 
「……あと十二箇所、ここを調べ尽くしても存在が確認できないとなると……やっぱり潜るしかないのか」
「ピッ……まあ、敵がアマノムラクモに恐れをなして、我々の住む世界から撤退したと考えると?」
「んなわけあるか。それでオクタ・ワンの考えでは?」
「次元潜航でしょうなぁ。そうなりますと、アマノムラクモもプラットフォームから離脱して潜行調査を行う必要がありますが……どの空間軸にとびこんだのかわないですから」
「んんんん? 次元潜航って、そんなにこと細かいのか?」

 このあたりは俺の認識不足で。
 多次元というのは本当に少しずつちがう世界であり、俺たちの住む世界と同じような世界から始まって、全く進化形態から異なる世界まで存在するそうで。
 でも、その全てが【地球】であることに変わりはなく。
 オクタ・ワン曰く、原初の創造神が世界を構築したのち、自身の代わりに世界を管理する『神』を生み出したそうで。

 その神様は原初の創造神より『世界を切り分けて与えられた』らしく、その与えられた世界ジェネシスを自由に創造する権利を与えられたとか。
 その中の一つが、地球が存在する世界。
 そこを管理する神によって作られた世界であり、次元が異なる場所にもいくつかの管理神は存在するし、その管理神によって見守られているとか。

「そのいくつかの世界のどこかに逃げた可能性がある、そういうこと?」
『ピッ……その世界に侵入する事はできません。それぞれが神の作り出した壁によって隔絶されていまして、外世界からの侵入は防がれます。ですが、壁と壁の隙間にある回廊、次元潮流という場所ならば次元潜行で移動可能かと推論』
「ふむ、それなら、そこに向かって探した方が早くないか?」
『ピッ……どの世界の隙間の次元潮流に逃げられたのか、そこが特定できない限りは次元潜航した対象を捉えるのは困難です。また、そこに侵入するといくつかの誓約を失います』
「誓約?」

 オクタ・ワン曰く、これが一番面倒臭いらしい。
 例えば、異世界から召喚された勇者がいたとしよう。
 その勇者が身につけている装備や能力はどの世界のどこに行っても通用するらしいんだけど、{神の加護】だけは別らしく。
 次元潮流の流れている空間から別の神の世界に到達した時点で、それまで得ていた【神の加護】は使えなくなる。
 まあ、その神様がいない場所に行って、届きもしない神の加護が使えるかっていうと無理。

 噛み砕くならば、神の加護とは【限度額のないクレジットカード】であり、それが使える場所でなければただのプラスチックの板。
 
「うわ、わかりやすい説明をありがとう。ということは、異世界侵攻艦隊は今現在、次元潜航して潮流の中に逃げているということか」
『ピッ……故に索敵不可能。まあ、世界各地に派遣する偵察用サーバントからの連絡を受けた場合、すぐに対応できますが。一つだけ問題が』
「問題?」

 その問題とは、敵が一箇所ではなく多方面にわたるターゲットに向かって電撃作戦を行った場合。
 今回は一つの島とホワイトハウス、そして国連本部の三箇所に絞り込んだのが功をなしたんだが、今後はもっと多くの、それこそ侵攻艦隊の船の数だけ場所が狙われる可能性がある。
 そうなると、いくらアマノムラクモでもすぐに派遣して対応できる場所は限られるし、転移カタパルトも実は連続で使えるものじゃない。
 一度に使える転移カタパルトは三つ、それ以上は魔力のリチャージに時間が掛かるんだよ。

「つまり、今後の敵の攻撃によっては、守れる国と守らない国が発生する。そうなった場合、どこを守るのか……ということか」
「はい。その件につきましては、各国からも問い合わせが来ています。数の暴力に対して勝てるのは数の暴力。もしくは、その数すべてを同時に殲滅できる無限の力……イ」
「そこでストップ。つまり、俺が予想していることぐらいは各国の軍事組織も考えている、その上で、アマノムラクモは『どの国を優先的に守るのか』ということだよな?」
『ピッ……各国に盾騎士シールド・リッターが五騎ほど配備できれば、あるいは可能。なお、守れる範囲についてはより多くの騎数が必要になります』

 最低でも5。
 アメリカ大陸全土となるとそんなんじゃ無理だし、バチカン市国なら一騎で間に合う。
 そのバランスを取って、おおよそその数、196カ国、合計一万騎の盾騎士シールド・リッターを量産しないと不可能。
 しかも、それを制御できるのは戦闘用サーバントのみ。

 はい、無理、素材ない、詰んだ。

「国連に通達。アマノムラクモは独自行動をとるので、各国は各自で自国を防衛するように伝えて。なお、このタイミングで相互間防衛条約とかは締結しない、一切の亡命もアマノムラクモへの避難も認めないと」
「了解です」

 亡命は認めると後に続くものが現れる。
 避難なんて認めたら、それこそ溢れる。
 それならば、最初から何も求めないし認めない。
 まあ、アマノムラクモ領海内、特にプラットフォームに接岸している艦船はフィールドバリアに守られるから安全なんだけどさ。
 だからと言って、そこに勝手に入られても困るから侵入者に対しては警告を行うし、アマノムラクモは何もしない。
 
「オクタ・ワン、次の敵の出方は予測がつく?」
『ピッ……異世界侵攻艦隊が姿を消した理由。恐らくは想定外のことが起きたことによる、対策を練るための時間稼ぎかと』
「想定外って、アマノムラクモか?」
『ピッ……異世界侵攻した先に……自分たちを脅かす存在があった場合は、一度撤退し対策を練る。これが基本ですが、アマノムラクモが想定外であったことが、ここでは重要です』
「……奴らが知っている侵攻先には、本来ならアマノムラクモはいない……ってことか。ホワイトハウスに姿を現して宣戦布告した時に、俺の姿を見た時はまだそれほど動揺していなかったが?」

 まあ、俺や外に停めてあったマーギア・リッターは想定の範囲内ってことか?
 それならばアマノムラクモのような存在があってもおかしくないと思うはずだから、これは違うか……。
 
『ピッ……敵の観測力にもバラツキがあるのかと。それ故に、今、彼らが行うのは何らかの方法で地球に偵察要員を派遣し、私たちやこの世界のデータを収集し、作戦の練り直しを行うことでしょう。次元潜航可能な艦隊であるというのが敵のアドバンテージ。アマノムラクモでさえも、追跡することは不可能ですから』
「……厄介だなぁ。早いところこっちの諜報機関も作っちまった方がいいか。それを使って、カウンターで敵を探し出して捕まえる。何故、この世界にやってきたのか、それが知りたいからなぁ」
『ピッ……敵艦隊も資材に使えます』
「その場合は、乗っている奴らのことも考えような。俺は聖人君子じゃないから、地球さえ無事ならあとはどうだっていい。その艦隊が他の異世界に舵を切り直して進軍しようが、そこで敗れて滅びようが勝手にすればいいさ。でも、それが地球で起こって虐殺とかになるのはごめんだ」

 自分の手を血に染めないため?
 いや、グロいの嫌いなんでね。
 そもそもアマノムラクモがあるから、俺がオクタ・ワンに命ずるだけで地球も焦土に巻き込んじゃうからなぁ。

 ここは慎重に、可能な限りは地球にダメージが行かないようにしないとなぁ。

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