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第二部・異世界からの侵略編
第40話・悪夢と書いてナイトメアと読む
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異世界侵攻艦隊は、地球という存在を知るために偵察部隊を投入する。
幸いなことに、彼らの住む世界の住人と地球人の外見的特徴はほとんど差異はなく、違う点と言えば体内の魔力動脈とそれに繋がる魔導核、そして血液内に流れる成分に『マギアリキッド』と呼ばれる液状物質が含まれているということ。
それ以外にも遺伝子構造や体を構成するアミノ酸配列などにも違いはあるものの、所詮は神が作った『神を模倣した存在』。外見的な違いなど、その生活環境などに適合するための自己進化した部分しか違いはない。
そして不幸なことに、ファーミリアスの故郷であるミョルドガルドは地球人に適合してしまった。
それ故に異世界に転生した彼の曽祖父が子を成せたのは必然であり、ガルド人として生まれ育った地球人には世界は好奇心の塊のようなものであった。
偵察部隊を送り出すために、異世界侵攻艦隊は幾度となく小型艇で次元潜航を解除、部隊を送り出しては再び潜行を行うという危険を孕んだ作戦を開始。
この作戦により地球圏の大半の国に、選ばれた偵察兵たちが潜入に成功し、定期連絡のタイミングまで社会の中へと溶け込んでいった。
この小型艇による次元潜航からの浮上及び再潜航はアマノムラクモの管制室でも確認できたものの、あまりにも素早いタイミングで行われてしまったために追尾は不可能。
現地に到着した時は何も痕跡がなかったため、何らかの理由により浮上と潜航を行っていたのではという予測域を越えることはできなかった。
………
……
…
──偵察部隊投入から10日後
世界各地から届けられた様々なデータ。
そして人造|聖霊(エルフ)・ナナに残されたデータベースから、今の地球という存在がどのような文化を持ち、どれだけの国家が存在しているか解析が行われていた。
それらの中から弾き出されたいくつかの作戦。
それらをファーミリアスは逐次確認し、使えないものを破棄し続けている。
「マスター。現時点での最も有力な作戦は、この世界の国家と接触し力を与えること。私たちの世界の移民について、この星の大陸すべてを必要とはせず、むしろ管理統制がしやすい場所に固めておいた方が無難であると提唱します」
「その候補がアメリカ、中国、ロシアの三カ国か。だが、これらの国はお互いに歪み合い、監視しあっている。我々の技術を餌に傀儡化するには難しいな」
「是。それならば、これらの国家から目をつけられていない国もしくは組織を活用するべきであると進言。なお、第一敵対存在である機動国家アマノムラクモ、その元首であるミサキ・テンドウが日本人である可能性は69.52%、我らが国父と同じ故郷を持つ存在であると認識」
「零番艦か……」
ファーミリアスにとっての目の上の瘤であり、真っ先に排除しなくてはならない存在がアマノムラクモ、そしてミサキ・テンドウ。
「ですが、アマノムラクモが日本と条約を結んでいる様子はなく、日本を他国よりも贔屓しているというデータはありません。寧ろ日本の政府がアマノムラクモを自分たちの都合の良いように有効活用しているかと思われます。それと」
ナナがモニター上に映し出した映像。
それはインターネットにアップされていた『東京湾沖合海戦』の映像。
そこに至るまでの一連の映像を見て、ファーミリアスは何か違和感を感じていた。
「日本を戦場にしたくない……そういう節が見える。いや、どこの国も巻き込みたくないというのか? だから公海上に国家を設立したのか? アメリカに手を貸した理由は至極簡単で、手を貸したのではなく何かの条約もしくは会談の場に我々が姿を現しただけというのか……」
それならば、ファーミリアスはアマノムラクモを制することができる。
そう考えて、一つ一つの懸念事項をパズルでも解きほぐすかのように解体。
やがて完成した作戦をナナが精査すると、各艦の艦長をモニター上に招集。
「作戦は二つ。まずは欧州を牽制するために、ある組織に接触してもらう」
『ある組織?』
『この惑星に、国家に匹敵する組織があるというのですか?』
『それならば、星を掌握できるだけの国家を味方につけた方が良いのでは?』
艦長たちはそれぞれの意見をぶつけてくるが、ファーミリアスは微動だにしない。
「接触する組織は、かつてかの星で大戦があった時に覇権を争い滅んだ国家の亡霊。旧ドイツ第三帝国の残党に接触し、彼らに援助すると話を持ちかけよ。技術供与はグレード3まで、資源および資産についてはグレード4。彼らに武力を与えて蜂起させろ。そのタイミングで、本艦隊はここを制圧する!!」
──ダン
ファーミリアスが示した場所は、日本。
それも東京を示している。
「主艦隊は第三帝国蜂起のタイミングで東京を都市傾圧、そのまま国の中枢をこの手に取る。恐らくは平和維持とか理由をつけて地球の軍が動くが、それならばこちらは正面から堂々と応戦するまで」
『零番艦が動くのでは? あの軍事力なら一瞬で我らの作戦を制圧できるのでは』
「零番艦は、この私が押さえます。また、第三帝国蜂起に伴い世界が混乱に落ち込む可能性もあり。同時に、我が艦隊に降伏勧告を齎す国家もあるかもしれませんが、隷属ならば受け入れるとだけ告げるように……この地球をふたつの戦域に分断し、零番艦の機動力を削ぎます」
アジア及び欧州への二極同時侵攻。
アメリカやロシアなどの大国の動向については、作戦開始と同時に勧告を行う。
『この戦争に加担しなければ、我々は君たちの国に対して危害は与えない』
ただそれだけ。
自国の利を考えるなら、常任理事国は全てこの戦争からは背を向ける。
そしては何も見なかったことにして、その後の成り行きを見守るだろう。
「手に入れるのは、欧州の全て。そののち移民船団を受け入れてから逆らう国は殲滅するまで。それまでに零番艦は沈黙する、それがナナの弾き出した作戦だ……調査班に新たな命令を追加、第三帝国残党と接触し、彼らに対して利のある条件で交渉を行うように。各艦隊は戦闘待機、零番艦の動向も随時調べるように」
ファーミリアスが高らかに叫ぶ。
これまで幾度となく反抗してきた国を潰してきた。
神の加護を持つ聖王国であろうと、英雄の末裔が守る公国であろうと、策を練り数の暴力で押し切ってきた。
この戦争もその一つ。
懸念事項は、零番艦の機動力のみ。
あの転送システムに対抗するための手段も、ナナが測定し算出を開始している。
全ての準備が終わるまで、ファーミリアスは動かない。
焦りは失敗に繋がることを知っているから。
幸いなことに、彼らの住む世界の住人と地球人の外見的特徴はほとんど差異はなく、違う点と言えば体内の魔力動脈とそれに繋がる魔導核、そして血液内に流れる成分に『マギアリキッド』と呼ばれる液状物質が含まれているということ。
それ以外にも遺伝子構造や体を構成するアミノ酸配列などにも違いはあるものの、所詮は神が作った『神を模倣した存在』。外見的な違いなど、その生活環境などに適合するための自己進化した部分しか違いはない。
そして不幸なことに、ファーミリアスの故郷であるミョルドガルドは地球人に適合してしまった。
それ故に異世界に転生した彼の曽祖父が子を成せたのは必然であり、ガルド人として生まれ育った地球人には世界は好奇心の塊のようなものであった。
偵察部隊を送り出すために、異世界侵攻艦隊は幾度となく小型艇で次元潜航を解除、部隊を送り出しては再び潜行を行うという危険を孕んだ作戦を開始。
この作戦により地球圏の大半の国に、選ばれた偵察兵たちが潜入に成功し、定期連絡のタイミングまで社会の中へと溶け込んでいった。
この小型艇による次元潜航からの浮上及び再潜航はアマノムラクモの管制室でも確認できたものの、あまりにも素早いタイミングで行われてしまったために追尾は不可能。
現地に到着した時は何も痕跡がなかったため、何らかの理由により浮上と潜航を行っていたのではという予測域を越えることはできなかった。
………
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──偵察部隊投入から10日後
世界各地から届けられた様々なデータ。
そして人造|聖霊(エルフ)・ナナに残されたデータベースから、今の地球という存在がどのような文化を持ち、どれだけの国家が存在しているか解析が行われていた。
それらの中から弾き出されたいくつかの作戦。
それらをファーミリアスは逐次確認し、使えないものを破棄し続けている。
「マスター。現時点での最も有力な作戦は、この世界の国家と接触し力を与えること。私たちの世界の移民について、この星の大陸すべてを必要とはせず、むしろ管理統制がしやすい場所に固めておいた方が無難であると提唱します」
「その候補がアメリカ、中国、ロシアの三カ国か。だが、これらの国はお互いに歪み合い、監視しあっている。我々の技術を餌に傀儡化するには難しいな」
「是。それならば、これらの国家から目をつけられていない国もしくは組織を活用するべきであると進言。なお、第一敵対存在である機動国家アマノムラクモ、その元首であるミサキ・テンドウが日本人である可能性は69.52%、我らが国父と同じ故郷を持つ存在であると認識」
「零番艦か……」
ファーミリアスにとっての目の上の瘤であり、真っ先に排除しなくてはならない存在がアマノムラクモ、そしてミサキ・テンドウ。
「ですが、アマノムラクモが日本と条約を結んでいる様子はなく、日本を他国よりも贔屓しているというデータはありません。寧ろ日本の政府がアマノムラクモを自分たちの都合の良いように有効活用しているかと思われます。それと」
ナナがモニター上に映し出した映像。
それはインターネットにアップされていた『東京湾沖合海戦』の映像。
そこに至るまでの一連の映像を見て、ファーミリアスは何か違和感を感じていた。
「日本を戦場にしたくない……そういう節が見える。いや、どこの国も巻き込みたくないというのか? だから公海上に国家を設立したのか? アメリカに手を貸した理由は至極簡単で、手を貸したのではなく何かの条約もしくは会談の場に我々が姿を現しただけというのか……」
それならば、ファーミリアスはアマノムラクモを制することができる。
そう考えて、一つ一つの懸念事項をパズルでも解きほぐすかのように解体。
やがて完成した作戦をナナが精査すると、各艦の艦長をモニター上に招集。
「作戦は二つ。まずは欧州を牽制するために、ある組織に接触してもらう」
『ある組織?』
『この惑星に、国家に匹敵する組織があるというのですか?』
『それならば、星を掌握できるだけの国家を味方につけた方が良いのでは?』
艦長たちはそれぞれの意見をぶつけてくるが、ファーミリアスは微動だにしない。
「接触する組織は、かつてかの星で大戦があった時に覇権を争い滅んだ国家の亡霊。旧ドイツ第三帝国の残党に接触し、彼らに援助すると話を持ちかけよ。技術供与はグレード3まで、資源および資産についてはグレード4。彼らに武力を与えて蜂起させろ。そのタイミングで、本艦隊はここを制圧する!!」
──ダン
ファーミリアスが示した場所は、日本。
それも東京を示している。
「主艦隊は第三帝国蜂起のタイミングで東京を都市傾圧、そのまま国の中枢をこの手に取る。恐らくは平和維持とか理由をつけて地球の軍が動くが、それならばこちらは正面から堂々と応戦するまで」
『零番艦が動くのでは? あの軍事力なら一瞬で我らの作戦を制圧できるのでは』
「零番艦は、この私が押さえます。また、第三帝国蜂起に伴い世界が混乱に落ち込む可能性もあり。同時に、我が艦隊に降伏勧告を齎す国家もあるかもしれませんが、隷属ならば受け入れるとだけ告げるように……この地球をふたつの戦域に分断し、零番艦の機動力を削ぎます」
アジア及び欧州への二極同時侵攻。
アメリカやロシアなどの大国の動向については、作戦開始と同時に勧告を行う。
『この戦争に加担しなければ、我々は君たちの国に対して危害は与えない』
ただそれだけ。
自国の利を考えるなら、常任理事国は全てこの戦争からは背を向ける。
そしては何も見なかったことにして、その後の成り行きを見守るだろう。
「手に入れるのは、欧州の全て。そののち移民船団を受け入れてから逆らう国は殲滅するまで。それまでに零番艦は沈黙する、それがナナの弾き出した作戦だ……調査班に新たな命令を追加、第三帝国残党と接触し、彼らに対して利のある条件で交渉を行うように。各艦隊は戦闘待機、零番艦の動向も随時調べるように」
ファーミリアスが高らかに叫ぶ。
これまで幾度となく反抗してきた国を潰してきた。
神の加護を持つ聖王国であろうと、英雄の末裔が守る公国であろうと、策を練り数の暴力で押し切ってきた。
この戦争もその一つ。
懸念事項は、零番艦の機動力のみ。
あの転送システムに対抗するための手段も、ナナが測定し算出を開始している。
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焦りは失敗に繋がることを知っているから。
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