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第一部・食戦鬼? あ、食洗機ですか。
第18話・闇ギルドとの再戦
しおりを挟む闇ギルドの深夜の襲撃。
残念なことに、あってはならない結果が出てしまいました。
早朝、私たちが出発するとき、町はずれの古い屋敷の中で、ブロンクスさんとバースディさんの死体が発見されました。
全身のいたるところがグズグズに溶けていて、かろうじて残っていた装備品が二人の持ち物であったことから、二人が暗殺者に殺されたという結論に達したそうです。
それで早朝、二人の遺体は町の墓地に埋葬され、持ち物は家族の元へと届けられるとかで。
ジャーバスさんたちも意気消沈、悲しみに包まれています。
「ランカスター伯爵、お願いがあります」
「何かね?」
そして出発の準備が終わってから。
ジャーバスさんがお父様に頭を下げました。
「仲間の仇を討つために、ランカスター領に戻ってからも私たちをシルヴィアさんの護衛に着けてくれませんか? いや、屋敷の警備でも構いません。未だ闇ギルドがシルヴィアさんを狙っていることは事実、それならばまたいずれは奴らの魔の手が伸びて来ると思います……」
「私たちからもお願いします」
「二人の仇を取らせてください!!」
「このままでは、私たちはここで立ち止まってしまいます」
フレデリカさんとミランダさん、そしてステファンさんも頭を下げています。
するとお父様もその言葉にうなずいて。
「わかりました。領都に戻ってからも、引き続き皆さんを屋敷の護衛として雇うことにしましょう。一刻も早く、闇ギルドの連中を捕らえられるとよいですね」
「はい、ありがとうございます!!」
これで話し合いは無事に終了。
私たちは再び領都へと戻るべく、馬車を走らせます。
そして2日後には無事に領都に戻り、20日ぶりに我が家に戻ってきました。
屋敷の玄関の前で、ジャービスさんはお父様から『依頼完了』の際を受け取っています。
「それでは、私たちはギルドに依頼完了の報告を行ってきます。それと、屋敷の警備について、指名依頼を頂きありがとうございます」
「今日はゆっくりと休んでください。明日の朝には指名依頼を出しておきますので、それを受けたらまた私たちを訪れてください。それでは」
「はい、ありがとうございます……では、失礼します」
丁寧に頭を下げ、ウル・スクルタス《幸運の導き手》の皆さんが屋敷を後にしました。
「さて、久しぶりの自宅です……ゆっくりとさせてもらいましょうかねぇ」
「ヒッ!」
玄関を開けてそう呟いたら、待っていた侍女の皆さんが顔を真っ青にして引き攣っていますよ。
はぁ、今だ暴君の称号はしっかりと根付いているようで。
私の後ろで無表情になっている専属侍女なんて、もう慣れたものでしょうから。
「あ~、そういう意味じゃないからね、本当に私が休むだけだからね……とりあえずね
根部屋にティーセットとお菓子を持ってきてもらえるかしら?」
「お菓子……は、今から焼きますのでお待ちください」
「いや、街で買ってきていいから、なんでそう、焼き立てを持ってこようとするかなぁ」
「……焼き立ての菓子でなければだめだと……以前はそうおっしゃっていました。旅から戻ってきて、なんで冷たい出来合いの菓子なんて食べると思っているのよって……」
「紅茶も摘みたての出来立てでなくてはと」
はあ。
一か月も私がこの世界に来てからの一か月間、元シルヴィア嬢の悪評を正すために侍女をはじめ領都内で彼女のことを知っている人に対して思いやりとやさしさを持って接していたのに、まだまだ私への恐怖は根強く残っているのですか。
いえ、今回の件で少しずつ取り戻した評判が覆されたといっても過言ではありませんね。
「ま、まあ、とりあえず着替えて部屋で休んでいますので、よろしくお願いします。それと、誰かドヴェルグの鍛冶工房までお使いを頼まれてくれませんか? 手紙を用意しますのでそれを持って行ってくれればよいのですけれど」
「はいっ!! 急ぎ支度して工房に行ってまいります!」
「……はぁ、そんなに急がなくていいから、私が手紙を書き終わるころに来てください」
手紙程度、自分で持っていけばいいと思うのですけれど。
どこの世界に、伯爵令嬢が手紙をもって鍛冶屋まで自分でいくというのですかって、シルヴィアの記憶に怒鳴られそうです。
貴族令嬢らしく生きる、それも私の魂をより磨く秘訣だと思いますよ。
はあ、どうせなら村娘とかそういう感じに転生したかったよ。
あまりにも責任というか、シルヴィアという存在が枷になってのんびりと生きるのは大変なのですよ。
………
……
…
夕方。
鍛冶屋に使いを出していた侍女が戻ってきました。
「失礼します。ドウェルグさんから荷物をお預かりしてきましたが。これはどこに置いたら良いですか?」
大きな箱を二人がかりで持ってくる侍女たち。
手紙に書いたのは、ミスリル飴の追加注文だったのですけれど、こんなに早く届くとは思っていませんでしたが。
「そこにおいてくれて構いませんよ。あとは私が処理しますので、下がって構いませんので」
「はい、それでは失礼します」
「そうそう、それと、私が呼ぶまでは誰もこの部屋に入らないようにね。これは、暗殺者対策に用意した秘密兵器だから」
「畏まりました」
丁寧に頭を下げて、部屋から出ていく侍女たち。
ちなみに箱の中には『ミスリル飴』が20個と、鋳つぶして廃棄される様々な武器の山。
冒険者たちが装備を変える際、古い装備は安く買い取っているらしく。
そういう装備を鋳つぶしては、様々な農具や包丁などの調理器具に作り替えているそうで。
今回のミスリルの代金のお釣りは、すべてこの武器で貰ったんだよね。
「さてと、それじゃう少しでも技術を身に着けるとしますか……暴飲暴食《レッツチャージ》」
それでは実食タイム。
「折れた剣程度じゃスキルは覚えられないけれど、オーラのチャージには使えると。ふむ、折れた弓はまた、なんというかサクサクとしたクリスピータイプの『うんまい坊』っていうかんじかな。これ以外は全部オーラになるだけかぁ。やっぱり上位スキルを保有していると、それより下のスキルは修得不可能みたいだねぇ」
さっきから頭の中に響いてくる声。
『剣術の理・中級剣術2を修得……上位スキルが存在するため修得失敗、オーラに変換します』
『守護の理・基礎防御力1を修得……上位の理である《防護の理》があるため修得失敗、オーラに変換します』
『弓術の理・中級弓術3を修得』
『魔術の理・黒魔術1を修得……上位スキルが存在するため修得失敗、オーラに変換します』
次々とオーラに切り替わっていく。
さて、どれぐらいオーラが蓄積されたのでしょうか……っよく考えたら、蓄積量は数値化されていないんだよなぁ。だいたいの感覚で覚えるしかないかぁ。
「オーラの感覚……うん、体内を循環しているのはわかる。血流のようにどこかをめぐって、細胞の隅々までしみとおっていく……パンプアップ見たいなかんじ?」
椅子から立ち上がって、自然体で立つ。
そして循環するオーラを身に纏うように念じてみると、金色の光が体の外にもあふれ出してきた。
「まるで漫画のスーパー・ヴェジタブルマンみたいだねぇ」
そう考えつつ、こんどはオーラを体内に留めるイメージ。
すると光は静かに立ち消え、普段の私の姿に戻る。
「うん、今のスーパーモードでもオーラはそこそこに消耗するのか。あとは、今のうちにコマンドアーツを開放した方がいいよね」
コマンドアーツは、一度開放したらオーラの消費なしに自由に使えるようになる。
また、オーラを乗せることも出来るらしいけれど、今はそっちに比重を置くよりも、開放するほうに集中。
『剣術の理・コマンドアーツ《スマッシュ、ウェポンブレイク》を修得』
『拳術の理・コマンドアーツ《ストライク、グラップリング、ホールド》を修得』
『防護の理・コマンドアーツ《ゲイン、プロテクション、アブソリュート》を修得』
スマッシュは全力攻撃、ウェポンブレイクは武器破壊ですか。
ストライクも無手の全力攻撃で、グラップリングは掴み・投げ技、ホールドは関節技。
ゲイン……これはまだ理解不能、プロテクションはオーラを消費して魔力の盾を生み出す。
そしてアブソリュートは、敵の魔法を受け止めオーラに転換……だけれど、私が修得している魔法しか吸収できないので、今は使い勝手が悪いどころか使えないという。
まだ箱の中にはガラクタの武器が入っているけれど、今はこれ以上はオーラに変換できないようで。
「空間収納にも入らない大きさかぁ」
すでにいろいろなものが入っているので、この木箱は空間収納には収めることが出来ない。
ちょっと横幅が長いため、今の容量では無理のようですね。
ということで、これは部屋の片隅にでも持っていって厳重に蓋をしておきます。
おそらく、私が鍛冶屋から色々なものを買い求めていたという情報は、闇ギルドの連中にも流れていると思いますから。
そして、もしも次に私を狙ってくるとすれば、王都から戻ってきて疲れ切っている今日。
久しぶりの我が家で羽を伸ばし、心も体も休まるのは今夜ぐらいでしょう。
このタイミングを失いますと、また私が警戒を強める可能性を考慮してているとは思いますし、だからといってこの好機を逃すとも思えません。
鍛冶屋から買い求めていたのはクズ武器や壊れた防具、それを何に使うのか頭を捻ってくださいね。
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