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第二話・テストプレイは公園で?
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魔導騎士の量産を開始してから、今日で三日。
すでに製作パターンは魔導制御球に登録してあるので、魔法陣を複数展開しておけば、後は、自動で量産してくれる。
大体、俺の保有する魔力量ならば一日に二十四体の魔導騎士が完成するので、三日で七十二体は作れる。
でも、最初だから、まずは調整用も兼ねて十二体のタイプを作成。
外装甲もさまざまなデザインを用意して、しっかりと木箱にしまっておきましたよ。
「……はぁ、ユウさま、これをどうするのですか?」
「これは販売用じゃなく、個人でレンタルしたりテスト稼働するためのものだよ。とはいっても、企業相手に持ち込みなんてしても受け入れられるとは思わないからさ、まずは、噂程度にネットに流したり、動画を撮ってYouTubeにアップするぐらいかな」
「では、お手伝いします」
「う~ん。綾姫はさ、ゴーレムなので生体魔力がないんだよ。こいつは人間の生まれながらに持っている『生体魔力』を吸収して、それを受信して動くようなものだから」
制御用腕輪が、装着者の生体魔力を感知。それを魔導騎士に送信して動かすという仕組みである。
動力源は、綾姫もご存知の『エーテルドライバー』。全てのゴーレムの駆動力だからね。
魔導騎士本体に組み込まれているエーテルドライバーは、登録者の生体魔力以外では動くことはない。
そうじゃないと、魔導騎士同士のバトルなんてできないからさ。
「ははぁ。なるほど理解しました。わたしにも開発のお手伝いはできますが」
「なんで? ってそうか。俺の知識を知識継承しているからだよな。そんじゃ、外装甲の調整をお願いするよ」
「かしこまりました‼︎」
家事一般以外に仕事が貰えたのが嬉しかったのか、綾姫は終始ニコニコと笑いながら作業を続けていた。
そして三日もすると、追加用外装甲と各種兵装が完成した。
………
……
…
「あの、ユウさま。これはどのようにして戦闘するのですか?」
ある日の夕食後。
俺は自分用に調整した魔導騎士・『タイプ・ハルバード』を稼働させている。
命名は『ブレイザー』、タイプの通り、主兵装はハルバードである。
俺の思考を読み取って動くし、俺の魔力量が大きいのでそこそこ重い荷物を運ばせることもできるし、離れた場所のリモコンも持って来てもらえる。
いや、横着するなっていわれるけど、これも実験なんだよ。
『やってはいけないリミッター』を設定するための動作確認で、全ての魔導騎士には、『生体魔力を持つ人間を攻撃できない』っていうリミッターが最初から設定されている。
これで、魔導騎士が悪用されることはない、きっと、たぶん。
「戦闘は、普通に魔導騎士同士でやり合うだけで。その前に、こっちの水晶板に操縦者の右手を乗せて貰ってバトルマスターを登録するだけ。
あとは、この水晶板にダメージが表示されるので、戦闘不能ダメージまでゲージが埋まるとゲームオーバー、対象の魔導騎士は行動不能になるっていうこと」
傍に置いてある水晶板を軽く叩きながら、綾姫に説明する。
「なるほど。わたしではテストバトルのお手伝いが出来ませんが、応援しています」
「そうだね。明日にはテストプレイを試してもらうことにするよ」
「え? どなたがですか?」
「近所のガキンチョ。みんな俺のことを昔から知っているからさ、公園にでも行ってみて、ブレイザーを弄っていたら、何かと思って近づいてくるよ」
「なるほど。では、陰ながら応援していますので」
「影じゃなくていいよ、荷物の運搬を手伝ってくれれば」
予め、貸出用に梱包した箱を台車に乗せてある。
あとは、明日の昼過ぎにでも公園まで押していくだけでオッケー。
「かしこまりました。明日が楽しみですね」
「全くさ。これでうまく噂が流れてくれればと思うけどなぁ」
──ピンポーン
おや、こんな時間に来客かな?
「綾姫、ちょいと出て来てくれるか?」
「はい、かしこまりました」
時間は夜の八時。
楽天オンラインでなにか買ったかな?
そう頭を捻っていたら、綾姫が困った顔で戻ってきた。
その後ろには、見たことのある隣の幼馴染の姿もありましたが。
「よっ。うちの親父からさ、釣ってきた魚をお裾分けしてこいっていわれたんだけど……この子は新しいメイドさん?」
俺よりも背が高い幼馴染。
ボーイッシュな外見のショートカット、出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいる女性である。
ちなみに名前は『秋田小町』。
元々の名前は上里小町だったけど、諸般の事情で再婚した相手が秋田さんだったので、秋田小町となりましたとさ。
「お、サンキュー。綾姫、魚はキッチンで処理しておいてくれ」
「かしこまりました、ユウさま」
甲斐甲斐しく受け取った袋を持っていく綾姫。
それを見届けてから、小町が俺の近くにズイズイって近寄ってくる。
「ユウ、あの子はメイドなの? それとも彼女?」
「そんなわけあるか。ええっと、簡単に説明するとだな……」
小町とは旧知の仲だし、小さい頃から兄妹みたいに育ってきたからなぁ。
嘘ついて誤魔化して、後から気まずくなるよりも、今のうちに全部説明しておいた方がいいか。
「今からいうことは、全て本当のことで、それで極秘だからよろしく」
「う、うん。わかったよ、ユウがそんな顔するってことは、本気の真面目な話だからね」
「よし、それじゃあ説明するぞ、俺は異世界に行ってきて、つい最近になって帰ってきたんだ」
「……はぁ?」
そこから先は、淡々と。
身振り手振りを交えての説明を続ける。
途中からは、空間収納からアイテムを出し入れして見せたり、完成したばかりの魔導騎士を取り出して使って見せたり。
最後には、綾姫の人工皮膚を外してメンテナンスハッチを開いて中を確認させたんだけど、服を脱がせている最中に小町から平手打ちを受けましたが、解せぬ。
「……なるほどねぇ。昔からユウはなんでいうか、頭のネジが一つ分ずれているというか、そういうところがあったからねぇ。うん、理解したよ」
「よしよし。さすがは竹馬の友だな。ご褒美に魔導騎士を一つあげよう」
「え? まじ?」
さっき説明していた時、まるで子供がおもちゃを買って貰った時のように瞳をキラキラさせていたからさ。
俺のことを信じてくれたお礼だよ。
テストプレイヤー、一人ゲット。
「お、おおう。意外と軽いんだね」
「乾重量は一キロぐらいだからな。装備をつけても二キロぐらい。それで、好きなのを選んで構わないぞ」
「どうしょうかなぁ……これって、使う人の能力も反映されるの?」
「あ~。小町は空手を習っているからなぁ。ある程度は反映されると思うけど、機体の能力によっては半減したりすると思うが」
そう説明すると、一つ一つじっくりと吟味している。まあ、テスト稼働して貰っても構わないんだが、それはずるいということで最後は直感で選んでいたよ。
「これにするよ。なんだか女忍者って感じだからさ。名前は……艶姫にしよう。それで、どうやって動かすの?」
「へぇ、近接格闘型の『タイプ・クノイチ』を選んだのか。それじゃあまずは、この腕輪を装着してくれ。そして、この水晶球に指を添えて、『契約』って唱えてくれ」
「こう? 契約……」
すると、制御用腕輪の魔力結晶が青く輝く。
へぇ、小町は魔力素養ありか。
この契約を唱えた時、反応しなかったら生体魔力が足りなくて起動しない。
赤く輝くと、ギリギリ稼働するけど、機体性能が100%発揮しない。
黄色く輝けば、機体は通常稼働できるし、青く輝くと機体性能にボーナスが出せる。
まあ、俺たちの世界の人間だと、よくて赤色程度と予想している。
ちなみに俺は白、稼働上限まで性能を発揮できる。
これも神様のチートで、能力値は当時のまま、今の体にも受け継がれているらしい。
「これで動かせるの?」
「待て待て、小町のユーザー登録をするからな」
今度は水晶板の上に艶姫と小町の右手を乗せてもらう。
そしてユーザー登録を行うと、契約解除しない限りは艶姫は小町以外には使えない。
ちなみに市販品にする場合は、こんなことはしない。友達に貸したいとかあるだろうけどさ、自分にしか使えないオンリー機って浪漫あるよな?
「これでよし。艶姫は小町がしっかりと管理してくれよ、お前しか使えないように登録したんだからな」
「ありがとう‼︎ 大切に使うね」
「それじゃあ、練習としてしばらく動かしてみるといいさ。ちなみに完全防水なので、水の中でも動かせるけど、素体はアルミニウムとセラミックの複合材だから沈む」
「あっはっは。それはまだまだ先の話だね、今は普通に動かすところからやってみるよ」
そのまま小町は、しばらくの間、魔導騎士を動かすことに集中している。
俺は隣の部屋で水晶板の量産を始めていたのだが、気がつくと小町と綾姫が楽しそうに話をしていた。
うん、仲良きことは良きかな。
なにも捻りがないわ。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
翌日。
俺と小町、綾姫は、近所の公園にやってきた。
公園といっても、そこそこに大きな自然公園で、ちょうど春休み期間だったので子供達が集まって遊んでいる光景が、あちこちに見えていた。
「今年は暖冬だったから、もう雪もないんだな」
「最高気温が十八度だからね。それで、ここでやるの?」
「当然さ。そのための準備だからね」
俺は空間収納からブルーシートを取り出して広げる。
そして四角と途中をペグで固定すると、全てのペグをぐるりとロープで繋げた。
大きさは5m四方、10m四方のブルーシートを加工して、プロレスのリングのように作り替えてきたのである。
つまり、側から見ると公園の中に5m四方のプロレスリングを作ったのである。
あとは観客席のように細長くブルーシートを周りに広げると、俺と小町はリングの角に椅子を出して座った。
「準備オッケー?」
「わたしは構わないよ。それじゃぁ、お手柔らかにお願いします」
「こちらこそ、いくぞ小町‼︎」
「かかってきなさい‼︎」
──カーン‼︎
俺が今朝方作ったゴングを、綾姫が鳴らす。
すると、近くで遊んでいた子供たちが音に気が付いたらしく、なんだなんだと様子を見にやってきた。
………
……
…
今回はお互いに無手。
もしも武器を使ってすっぽ抜けたりしたら、子供にぶつかる可能性があるからな。
真っ直ぐに走ってくる艶姫を交わして、ブレイザーも反対側に走る。
そして一気に加速してドロップキックを叩き込もうとしたが、それをひょいとジャンプして躱されてしまった。
「はぁ?」
「うん、直線的だね。それじゃあだめだよ」
──ゴギィィィン
シートに倒れているブレイザーに向かって、艶姫はエルボーを落としてくる。
それはブレイザーの背中に直撃すると、ダメージゲージが上昇した。
「痛っ‼︎」
「痛いはずないじゃない」
「イメージの問題だよ‼︎」
ダメージゲージによって、魔導騎士の行動には制限がつく。
その辺りはリアルにシステムを組んであるので、今のブレイザーは弱っている。
そして右腕を掴んでブレイザーを引き起こすと、その状態のまま艶姫は左回し蹴りを浴びせてきた。
──ドゴォォォォォッ
再びダメージゲージが増える。
頭部ということは、疑似脳震盪のような状況になっている。
「くっそ、空手家なら空手を使えよ」
「空手家だからこそのハンデだよ? 空手なんて使ったら、ユウは勝てないじゃないか?」
急いで間合いを取ると、ブレイザーは頭を軽く左右に振る。
こうした雰囲気でも、ダメージゲージは少しだけ回復する。よくできているでしょ、このシステム。
魔導制御じゃないと、こんな複雑怪奇なことはできないぞ。
「よーし、ゲージ一つ回復‼︎ 今度はこっちの番だ」
走って間合いを詰めると、真っ直ぐに右肘を艶姫の左肩首筋に向かって打ち込む。
──ガギンッ‼︎
だが、予想よりもダメージが入っていない。
「ほほう、そうきますか‼︎」
──ガギン‼︎
今度は艶姫が右肘を打ち込んでくるが、それを躱して後ろに回り込む。
「そりゃぁぁぁ」
そのまま後ろから艶姫を羽交い締めにすると、力一杯後ろに向かって投げ落とす。
「なんだって? まさかドラゴンスープレックス?」
──ドッゴォォォォォォン
その通りだよ、まさかの大技だ。
しかも今の一撃で、首に大ダメージが入った。
いきなりダメージゲージが四つ埋まると、艶姫は立ち上がろうと必死にも拘らず、身動きが取れない。
「動け、動いてよょぉぉ‼︎」
「これでとどめだよっ‼︎」
艶姫の腕を掴んで引き起こすと、ダメ押しとばかりにフロントヘッドロックの形で艶姫を掴む。
そして力一杯持ち上げると、艶姫の体がすいちょくにもちあがった‼︎
「まさか、掟破りの垂直落下式ブレーンバスター?」
観客の子供が拳を握って叫ぶ。
その通りだよ、っていうか、詳しいな君。
そこから一気に頭から叩きつけると、艶姫のダメージゲージは全て振り切った。
──カンカンカーン!
「試合終了! エキシビジョンマッチは、ユウさまのブレイザーの勝利です‼︎」
リングの中で勝鬨をあげるブレイザー。
まあ、右腕を高々と掲げて勝利のポーズをしただけなんだけどさ。
──タッタッタッ……カプッ!
そのブレイザーを、走ってきた犬が咥えて走っていった。
「ま、待て、待てぇぇぇぇ‼︎」
必死にもがくブレイザーだけど、本気を出したらワンコが怪我をする。
どうにか走り回って飼い主にブレイザーを返してもらったけど、久しぶりの全力疾走でヘトヘトである。
さて、これからが本番だ、待ってろ子供たち。
すでに製作パターンは魔導制御球に登録してあるので、魔法陣を複数展開しておけば、後は、自動で量産してくれる。
大体、俺の保有する魔力量ならば一日に二十四体の魔導騎士が完成するので、三日で七十二体は作れる。
でも、最初だから、まずは調整用も兼ねて十二体のタイプを作成。
外装甲もさまざまなデザインを用意して、しっかりと木箱にしまっておきましたよ。
「……はぁ、ユウさま、これをどうするのですか?」
「これは販売用じゃなく、個人でレンタルしたりテスト稼働するためのものだよ。とはいっても、企業相手に持ち込みなんてしても受け入れられるとは思わないからさ、まずは、噂程度にネットに流したり、動画を撮ってYouTubeにアップするぐらいかな」
「では、お手伝いします」
「う~ん。綾姫はさ、ゴーレムなので生体魔力がないんだよ。こいつは人間の生まれながらに持っている『生体魔力』を吸収して、それを受信して動くようなものだから」
制御用腕輪が、装着者の生体魔力を感知。それを魔導騎士に送信して動かすという仕組みである。
動力源は、綾姫もご存知の『エーテルドライバー』。全てのゴーレムの駆動力だからね。
魔導騎士本体に組み込まれているエーテルドライバーは、登録者の生体魔力以外では動くことはない。
そうじゃないと、魔導騎士同士のバトルなんてできないからさ。
「ははぁ。なるほど理解しました。わたしにも開発のお手伝いはできますが」
「なんで? ってそうか。俺の知識を知識継承しているからだよな。そんじゃ、外装甲の調整をお願いするよ」
「かしこまりました‼︎」
家事一般以外に仕事が貰えたのが嬉しかったのか、綾姫は終始ニコニコと笑いながら作業を続けていた。
そして三日もすると、追加用外装甲と各種兵装が完成した。
………
……
…
「あの、ユウさま。これはどのようにして戦闘するのですか?」
ある日の夕食後。
俺は自分用に調整した魔導騎士・『タイプ・ハルバード』を稼働させている。
命名は『ブレイザー』、タイプの通り、主兵装はハルバードである。
俺の思考を読み取って動くし、俺の魔力量が大きいのでそこそこ重い荷物を運ばせることもできるし、離れた場所のリモコンも持って来てもらえる。
いや、横着するなっていわれるけど、これも実験なんだよ。
『やってはいけないリミッター』を設定するための動作確認で、全ての魔導騎士には、『生体魔力を持つ人間を攻撃できない』っていうリミッターが最初から設定されている。
これで、魔導騎士が悪用されることはない、きっと、たぶん。
「戦闘は、普通に魔導騎士同士でやり合うだけで。その前に、こっちの水晶板に操縦者の右手を乗せて貰ってバトルマスターを登録するだけ。
あとは、この水晶板にダメージが表示されるので、戦闘不能ダメージまでゲージが埋まるとゲームオーバー、対象の魔導騎士は行動不能になるっていうこと」
傍に置いてある水晶板を軽く叩きながら、綾姫に説明する。
「なるほど。わたしではテストバトルのお手伝いが出来ませんが、応援しています」
「そうだね。明日にはテストプレイを試してもらうことにするよ」
「え? どなたがですか?」
「近所のガキンチョ。みんな俺のことを昔から知っているからさ、公園にでも行ってみて、ブレイザーを弄っていたら、何かと思って近づいてくるよ」
「なるほど。では、陰ながら応援していますので」
「影じゃなくていいよ、荷物の運搬を手伝ってくれれば」
予め、貸出用に梱包した箱を台車に乗せてある。
あとは、明日の昼過ぎにでも公園まで押していくだけでオッケー。
「かしこまりました。明日が楽しみですね」
「全くさ。これでうまく噂が流れてくれればと思うけどなぁ」
──ピンポーン
おや、こんな時間に来客かな?
「綾姫、ちょいと出て来てくれるか?」
「はい、かしこまりました」
時間は夜の八時。
楽天オンラインでなにか買ったかな?
そう頭を捻っていたら、綾姫が困った顔で戻ってきた。
その後ろには、見たことのある隣の幼馴染の姿もありましたが。
「よっ。うちの親父からさ、釣ってきた魚をお裾分けしてこいっていわれたんだけど……この子は新しいメイドさん?」
俺よりも背が高い幼馴染。
ボーイッシュな外見のショートカット、出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいる女性である。
ちなみに名前は『秋田小町』。
元々の名前は上里小町だったけど、諸般の事情で再婚した相手が秋田さんだったので、秋田小町となりましたとさ。
「お、サンキュー。綾姫、魚はキッチンで処理しておいてくれ」
「かしこまりました、ユウさま」
甲斐甲斐しく受け取った袋を持っていく綾姫。
それを見届けてから、小町が俺の近くにズイズイって近寄ってくる。
「ユウ、あの子はメイドなの? それとも彼女?」
「そんなわけあるか。ええっと、簡単に説明するとだな……」
小町とは旧知の仲だし、小さい頃から兄妹みたいに育ってきたからなぁ。
嘘ついて誤魔化して、後から気まずくなるよりも、今のうちに全部説明しておいた方がいいか。
「今からいうことは、全て本当のことで、それで極秘だからよろしく」
「う、うん。わかったよ、ユウがそんな顔するってことは、本気の真面目な話だからね」
「よし、それじゃあ説明するぞ、俺は異世界に行ってきて、つい最近になって帰ってきたんだ」
「……はぁ?」
そこから先は、淡々と。
身振り手振りを交えての説明を続ける。
途中からは、空間収納からアイテムを出し入れして見せたり、完成したばかりの魔導騎士を取り出して使って見せたり。
最後には、綾姫の人工皮膚を外してメンテナンスハッチを開いて中を確認させたんだけど、服を脱がせている最中に小町から平手打ちを受けましたが、解せぬ。
「……なるほどねぇ。昔からユウはなんでいうか、頭のネジが一つ分ずれているというか、そういうところがあったからねぇ。うん、理解したよ」
「よしよし。さすがは竹馬の友だな。ご褒美に魔導騎士を一つあげよう」
「え? まじ?」
さっき説明していた時、まるで子供がおもちゃを買って貰った時のように瞳をキラキラさせていたからさ。
俺のことを信じてくれたお礼だよ。
テストプレイヤー、一人ゲット。
「お、おおう。意外と軽いんだね」
「乾重量は一キロぐらいだからな。装備をつけても二キロぐらい。それで、好きなのを選んで構わないぞ」
「どうしょうかなぁ……これって、使う人の能力も反映されるの?」
「あ~。小町は空手を習っているからなぁ。ある程度は反映されると思うけど、機体の能力によっては半減したりすると思うが」
そう説明すると、一つ一つじっくりと吟味している。まあ、テスト稼働して貰っても構わないんだが、それはずるいということで最後は直感で選んでいたよ。
「これにするよ。なんだか女忍者って感じだからさ。名前は……艶姫にしよう。それで、どうやって動かすの?」
「へぇ、近接格闘型の『タイプ・クノイチ』を選んだのか。それじゃあまずは、この腕輪を装着してくれ。そして、この水晶球に指を添えて、『契約』って唱えてくれ」
「こう? 契約……」
すると、制御用腕輪の魔力結晶が青く輝く。
へぇ、小町は魔力素養ありか。
この契約を唱えた時、反応しなかったら生体魔力が足りなくて起動しない。
赤く輝くと、ギリギリ稼働するけど、機体性能が100%発揮しない。
黄色く輝けば、機体は通常稼働できるし、青く輝くと機体性能にボーナスが出せる。
まあ、俺たちの世界の人間だと、よくて赤色程度と予想している。
ちなみに俺は白、稼働上限まで性能を発揮できる。
これも神様のチートで、能力値は当時のまま、今の体にも受け継がれているらしい。
「これで動かせるの?」
「待て待て、小町のユーザー登録をするからな」
今度は水晶板の上に艶姫と小町の右手を乗せてもらう。
そしてユーザー登録を行うと、契約解除しない限りは艶姫は小町以外には使えない。
ちなみに市販品にする場合は、こんなことはしない。友達に貸したいとかあるだろうけどさ、自分にしか使えないオンリー機って浪漫あるよな?
「これでよし。艶姫は小町がしっかりと管理してくれよ、お前しか使えないように登録したんだからな」
「ありがとう‼︎ 大切に使うね」
「それじゃあ、練習としてしばらく動かしてみるといいさ。ちなみに完全防水なので、水の中でも動かせるけど、素体はアルミニウムとセラミックの複合材だから沈む」
「あっはっは。それはまだまだ先の話だね、今は普通に動かすところからやってみるよ」
そのまま小町は、しばらくの間、魔導騎士を動かすことに集中している。
俺は隣の部屋で水晶板の量産を始めていたのだが、気がつくと小町と綾姫が楽しそうに話をしていた。
うん、仲良きことは良きかな。
なにも捻りがないわ。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
翌日。
俺と小町、綾姫は、近所の公園にやってきた。
公園といっても、そこそこに大きな自然公園で、ちょうど春休み期間だったので子供達が集まって遊んでいる光景が、あちこちに見えていた。
「今年は暖冬だったから、もう雪もないんだな」
「最高気温が十八度だからね。それで、ここでやるの?」
「当然さ。そのための準備だからね」
俺は空間収納からブルーシートを取り出して広げる。
そして四角と途中をペグで固定すると、全てのペグをぐるりとロープで繋げた。
大きさは5m四方、10m四方のブルーシートを加工して、プロレスのリングのように作り替えてきたのである。
つまり、側から見ると公園の中に5m四方のプロレスリングを作ったのである。
あとは観客席のように細長くブルーシートを周りに広げると、俺と小町はリングの角に椅子を出して座った。
「準備オッケー?」
「わたしは構わないよ。それじゃぁ、お手柔らかにお願いします」
「こちらこそ、いくぞ小町‼︎」
「かかってきなさい‼︎」
──カーン‼︎
俺が今朝方作ったゴングを、綾姫が鳴らす。
すると、近くで遊んでいた子供たちが音に気が付いたらしく、なんだなんだと様子を見にやってきた。
………
……
…
今回はお互いに無手。
もしも武器を使ってすっぽ抜けたりしたら、子供にぶつかる可能性があるからな。
真っ直ぐに走ってくる艶姫を交わして、ブレイザーも反対側に走る。
そして一気に加速してドロップキックを叩き込もうとしたが、それをひょいとジャンプして躱されてしまった。
「はぁ?」
「うん、直線的だね。それじゃあだめだよ」
──ゴギィィィン
シートに倒れているブレイザーに向かって、艶姫はエルボーを落としてくる。
それはブレイザーの背中に直撃すると、ダメージゲージが上昇した。
「痛っ‼︎」
「痛いはずないじゃない」
「イメージの問題だよ‼︎」
ダメージゲージによって、魔導騎士の行動には制限がつく。
その辺りはリアルにシステムを組んであるので、今のブレイザーは弱っている。
そして右腕を掴んでブレイザーを引き起こすと、その状態のまま艶姫は左回し蹴りを浴びせてきた。
──ドゴォォォォォッ
再びダメージゲージが増える。
頭部ということは、疑似脳震盪のような状況になっている。
「くっそ、空手家なら空手を使えよ」
「空手家だからこそのハンデだよ? 空手なんて使ったら、ユウは勝てないじゃないか?」
急いで間合いを取ると、ブレイザーは頭を軽く左右に振る。
こうした雰囲気でも、ダメージゲージは少しだけ回復する。よくできているでしょ、このシステム。
魔導制御じゃないと、こんな複雑怪奇なことはできないぞ。
「よーし、ゲージ一つ回復‼︎ 今度はこっちの番だ」
走って間合いを詰めると、真っ直ぐに右肘を艶姫の左肩首筋に向かって打ち込む。
──ガギンッ‼︎
だが、予想よりもダメージが入っていない。
「ほほう、そうきますか‼︎」
──ガギン‼︎
今度は艶姫が右肘を打ち込んでくるが、それを躱して後ろに回り込む。
「そりゃぁぁぁ」
そのまま後ろから艶姫を羽交い締めにすると、力一杯後ろに向かって投げ落とす。
「なんだって? まさかドラゴンスープレックス?」
──ドッゴォォォォォォン
その通りだよ、まさかの大技だ。
しかも今の一撃で、首に大ダメージが入った。
いきなりダメージゲージが四つ埋まると、艶姫は立ち上がろうと必死にも拘らず、身動きが取れない。
「動け、動いてよょぉぉ‼︎」
「これでとどめだよっ‼︎」
艶姫の腕を掴んで引き起こすと、ダメ押しとばかりにフロントヘッドロックの形で艶姫を掴む。
そして力一杯持ち上げると、艶姫の体がすいちょくにもちあがった‼︎
「まさか、掟破りの垂直落下式ブレーンバスター?」
観客の子供が拳を握って叫ぶ。
その通りだよ、っていうか、詳しいな君。
そこから一気に頭から叩きつけると、艶姫のダメージゲージは全て振り切った。
──カンカンカーン!
「試合終了! エキシビジョンマッチは、ユウさまのブレイザーの勝利です‼︎」
リングの中で勝鬨をあげるブレイザー。
まあ、右腕を高々と掲げて勝利のポーズをしただけなんだけどさ。
──タッタッタッ……カプッ!
そのブレイザーを、走ってきた犬が咥えて走っていった。
「ま、待て、待てぇぇぇぇ‼︎」
必死にもがくブレイザーだけど、本気を出したらワンコが怪我をする。
どうにか走り回って飼い主にブレイザーを返してもらったけど、久しぶりの全力疾走でヘトヘトである。
さて、これからが本番だ、待ってろ子供たち。
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ぽっちゃりおっさん
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ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
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地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
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