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第三話・子供たちの体験会、一部大人?
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小町の艶姫VS俺のブレイザー。
この試合は俺の勝利で終わり、直後に通りすがりのワンコに負けた。
それでも試合を見ていた子供たちは興奮状態、ヘトヘトになった俺はブルーシートに大の字になって一休み。
「それじゃあ、私と綾姫さんで体験会をやってあげるね。良いでしょ?」
「ユウさまは、お休みしていてください。バスケットに冷たい飲み物もお昼も用意してありますので」
「おお、サンキュー。そんじゃ小町、すまないけど仕切りを頼むわ。綾姫は魔導騎士の管理をよろしく」
「了解‼︎」
「かしこまりました」
ということで、ここから先は二人に任せる。
俺は水筒からお茶を出して一息つくと、ブレイザーと艶姫を並べて、ダメージが残っているかどうか調べてみる。
「さて、魔法陣展開。解析……ふむ、ダメージはない。意外と丈夫だな」
もう少しフレームの歪みとか、ヒビが入るとかありそうなんだけど、予想よりも柔らかく動いたなぁと感心。
万が一のために魔導核を取り出して調べたけど、これまで問題はないのですぐに戻して融合しておく。
そうしている間にも、子供たちはリングの上で魔導騎士を戦わせている。
俺や小町みたいに技を掛け合うというよりも、殴る蹴るの連発。たまにプロレス技をやろうとして失敗しているけど、そこがまた面白いじゃないか。
──カーン‼︎
「はい、そこまでです。では、次の子、リングに魔導騎士をおいてください」
「試合の終わった子は、こっちに魔導騎士を戻してね。持ち帰ったらだめだよ」
綾姫も小町も慣れたもので、次々と子供達に体験会を楽しんでもらっている。
中には、親のもとに走っていって、買って欲しいとねだっている子供もいる。
これは、しめたものでる。
「あの~、そのロボットのおもちゃは、どこで売っているのですか?」
「これ、ロボットじゃないんですよ。魔法で動くゴーレムでして、名前は魔導騎士っていいます。まだ非売品で、動作テストを兼ねてここで子供達に遊んでもらっています」
「あら、そうなの。ありがとうございます….まだ売ってないんだって。発売されたら、また考えましょうね」
さすがに非売品を売って欲しいっていう親バカはいなかった、めでたしめでたし。
これがあっちの世界だったら、貴族のボンボンがやってきて爵位をちらつかせて傍若無人な振る舞いをしていたよ。
そんなこんなで一通りの子供たちが体験会を楽しんだら、一旦、休憩タイムに突入。
子供たちもお昼の時間らしく、一度家に帰る子供や近くでお弁当を広げている子供もいた。
そんな中で、俺は子供達に貸し出していた全ての魔導騎士のチェックを開始。
魔法陣を展開しては、次々と解析で故障箇所がないか調べている。
「……こうやって横で見ていると、ユウって本当に異世界から帰ってきたんだなあって思うよ」
「まあ、魔法なんて俺たちの世界の人間は使えないからな。こうして横で見ていると、なかなか楽しいだろう? ほい、綾姫、こいつの魔導核のチェック頼む」
「かしこまりました」
俺から魔導騎士を受け取って、綾姫は魔導核を取り出して魔法陣で検査する。
まあ、子供達が武器を使わずに闘っていたぐらいじゃ、傷もつかないし魔導核も消耗しない。
そして一つ一つをチェックすると、一旦箱に収めてから空間収納に放り込んでおく。
盗難防止にはこれが一番だと思ったんだけど、それなら台車なんて使わなかったほうがよかったか。
「……目立つねぇ。人前で魔法を使って、問題ないの?」
「構わん構わん。別に秘密にしておく理由もないわ。俺は他の人と違って魔法が使えます、それだけだよ。空手が得意な人もいれば、数学が得意な人もいる。だから、俺は魔法が得意ですっていうこと」
「うん、その理屈はおかしい。この世界にないものを得意としているって言いきっていいの?」
「隠したところでバレるなら、堂々と言い切る」
そういうこと。
俺の世界じゃ俺しか魔法が使えないけど、俺が使えるのはゴーレム魔法だけ。
だから、ゴーレムとか魔導具を作ることぐらいしかできないんだよ。
そんなこんなと一休みして、お腹も満腹になったことだし。
いつのまにか子供たちが集まってきて、今か今かと待っていますから、午後の部の体験会を始めるとしますか。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
インターネットのTwitterでは。
この日、不思議な映像がアップされていた。
公園の中で、男女のカップルが全高30cmほどの人形で遊んでいる。
こう書くと、なんだか危ないカップルにも聞こえるのだが、問題はその映像の中身である。
30cmの人形が、まるで意思を持っているかのようにリングの中を駆け抜け、飛び跳ね、そして戦っていた。
一昔前の漫画の世界、昭和生まれの方には『プ◯レス3四郎』、それほどでもない人々や令和生まれの型は『エンジェ◯ックレイヤー』、もしくは『ビル◯ファイターズ』といえば、理解してもらえるだろうか。
その漫画やアニメの世界が、画面の中では現実となり動いていたのである。
そのTwitterはわずか数十分でバズり、あちこちの報道関係者から『詳しいことをお聞きしたいのですが、よろしいですか?』攻撃を受けていた。
当然ながら動画のUP主は『ありがとうございます、だが、断る‼︎』とお約束で返し、この動画の真偽については全く不明のまま終わることとなった。
『あのロボット、ゴーレムだってよ。うちの弟が体験会に参加したって喜んでいたよ』
『魔導騎士って名前だってさ。非売品で、なんでも魔法で動くんだって』
『我が名はオンドゥル。我も参加したぞ。いや、あれは欲しいわ。製作者に聞いたんだけど、まだ開発中で動作テストなんだって。是非とも商品化して欲しいとは思わぬか?』
あ、真偽の程は不明ではなかった模様。
体験会に参加した子供やその親が、宣伝とばかりに書き込んでおりました。
………
……
…
「……五百万石。ちょっと北海道に行ってきてくれるか?」
ここは東京。
ホビーメーカーの『ツクダサーガ』の五百万石新之助は、突然の部長からの呼び出して、そう指示を受けていた。
開発部に所属していたものの、五百万石がアイデアを出した商品は全て没。
そろそろ肩身が狭くなって来たところで、いきなりの左遷である。
「え? 瑞穂部長、俺、左遷ですか?」
「違うから。このTwitterに出ている画像のロボットを探してこいってことだ。書き込みを見た感じだと、どこかの企業の開発部なのか個人で作成していたものなのか検討もつかないからな」
「……このロボットをうちで売り出したいと?」
「そういうことだ。そのためにも情報が必要なのでな。五百万石、明日から一週間、札幌営業所に出張を命ずる」
「喜んで‼︎」
仕事なので出張もやむなし。
「しかし、この動画って、そこまで凄いのか?」
まだ彼は、動画の全貌を確認していなかった。
そのため、出張を前に確認することにしたのだが、一度、二度、三度と回数を増やすたびに、映像の中の魔導騎士に心惹かれていくのを感じていた。
これを、俺がプロデュースしたい。
うちの開発部で、俺が担当になりたい。
そうと決まったら、仕事なんてしていられないと、五百万石は部長に早退届を提出し、半日早く北海道へと旅立っていった。
この動画の影響はかなり大きく、ツクダサーガ以外にもソニプレックスやバンライズといった玩具メーカーも次々と営業の人間を北海道に派遣し、情報収集を開始することにした。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
今日は大学である。
まあ、昨日の夜にTwitterを見たんだけど、あの体験会が動画に撮られていたんだよ。
それがアップされていたんだけど、予想よりもバズっていて驚きである。
俺がアップしたわけじゃないけど、十分な宣伝効果はあったよ。
UP主にたいして、放送局やらゲームメーカーが連絡を取りたがっているようだけど、UP主は全て却下。
『おれも見ていただけなので、詳しい話とかはできない』と返答していた。
つまりは、魔導騎士が日本中で噂されているということである。
うん、うまくいった。
動画に撮られてアップされていたのは驚きだけど、多少の情報開示のタイミングが早いから遅いかの違いだからな。
………
……
…
翌日の大学。
ゼミも終わったので、あとは帰るだけ。
小町は今日は空手道場に向かうらしいから、近所でのテストはない。
という事で、帰り支度をして教室から出ようとしてんだが、ムサイ男三人に捕まったわ。
「十六夜殿、あの動画はなんでござるか?」
「俺も見たぞ。こまっちゃんと人形遊びしているかと思ったら、マジのロボットバトルをやっているじゃねーか。俺もまぜろ」
「動くロボ……あのデザインを俺が考えてやろうではないか。マージンは売上高の15%で構わん」
このうっさい友達は、俺のゼミ仲間。
上から順番に侍口調の笹錦康太伊達正明、上から目線の津軽三太郎の、モテない男三人衆である。
ちなみに趣味は、上から順番に力仕事、深夜の散歩、ゲテモノ料理の名コックというところである。
「あ~。津軽、ロボじゃねーよゴーレムだよ」
「そ、そのゴーレム、どこで手に入れた? 等身大の女性型って作ってもらえるか?」
「作ったのは俺だよ。そして作らねーよ、なんでお前のために作らないとならねーんだよ」
「「「 俺が作った? 」」」
三人同時に驚きの表情。
まあ、そうなるよな。
つい数日前までは、俺は平凡な一大学生だったからな。表向きは。
「そうだよ。ちょっとある力に目覚めてな、俺はゴーレムマスターになった」
「ふむふむ。十六夜殿、そのゴーレムって、今は持っていないのでござるか?」
「なんだ笹錦、興味があるのかよ……ほれ」
──ゴトッ
空間収納から一体の魔導騎士を取り出して机の上に置く。
これは汎用型で、機体コードは『タイプ・量産型』っていう、本当に汎用な、本当に平均的な機体である。
「こ、これが……すまぬが十六夜殿、動かし方を教えてくれるか?」
「俺も、俺も使ってみたいんだが」
「僕は、美少女型で構わないぞ」
「頼むと言われても、やらんぞ。まだ開発中で試作なんだからな」
──ゴトゴトッ
とりあえずは全員、『タイプ・量産機』で勘弁。
個別の機体なんて出したら、一つ一つの説明が説明が面倒くさいのと、やれ俺の方が性能がいいとか、そっちはダメだとか、色々とやらかしそうだからな。
「それで、これはどうやって扱うんだ?」
「待て待て、まずは魔導騎士と契約してからだ……順番に教えるから、いや、面倒だから一斉に教える。それじゃあ始めるぞ」
そのまま三人に機体の簡易登録をしてもらい、教室ではなく中庭に移動して扱い方を説明した。
面白三人組ということもあって、漫画やアニメを例えた説明をするとわかってくれる。
まあ、大学での体験会といってもいい感じになっていたし、昨日に引き続き今日もギャラリーが大勢集まってきたので、いい宣伝効果にはなっただろう。
最後の最後に、三人が返却したくないとゴネたのは、まあ理解できなくもないが、それは許さん‼︎
この試合は俺の勝利で終わり、直後に通りすがりのワンコに負けた。
それでも試合を見ていた子供たちは興奮状態、ヘトヘトになった俺はブルーシートに大の字になって一休み。
「それじゃあ、私と綾姫さんで体験会をやってあげるね。良いでしょ?」
「ユウさまは、お休みしていてください。バスケットに冷たい飲み物もお昼も用意してありますので」
「おお、サンキュー。そんじゃ小町、すまないけど仕切りを頼むわ。綾姫は魔導騎士の管理をよろしく」
「了解‼︎」
「かしこまりました」
ということで、ここから先は二人に任せる。
俺は水筒からお茶を出して一息つくと、ブレイザーと艶姫を並べて、ダメージが残っているかどうか調べてみる。
「さて、魔法陣展開。解析……ふむ、ダメージはない。意外と丈夫だな」
もう少しフレームの歪みとか、ヒビが入るとかありそうなんだけど、予想よりも柔らかく動いたなぁと感心。
万が一のために魔導核を取り出して調べたけど、これまで問題はないのですぐに戻して融合しておく。
そうしている間にも、子供たちはリングの上で魔導騎士を戦わせている。
俺や小町みたいに技を掛け合うというよりも、殴る蹴るの連発。たまにプロレス技をやろうとして失敗しているけど、そこがまた面白いじゃないか。
──カーン‼︎
「はい、そこまでです。では、次の子、リングに魔導騎士をおいてください」
「試合の終わった子は、こっちに魔導騎士を戻してね。持ち帰ったらだめだよ」
綾姫も小町も慣れたもので、次々と子供達に体験会を楽しんでもらっている。
中には、親のもとに走っていって、買って欲しいとねだっている子供もいる。
これは、しめたものでる。
「あの~、そのロボットのおもちゃは、どこで売っているのですか?」
「これ、ロボットじゃないんですよ。魔法で動くゴーレムでして、名前は魔導騎士っていいます。まだ非売品で、動作テストを兼ねてここで子供達に遊んでもらっています」
「あら、そうなの。ありがとうございます….まだ売ってないんだって。発売されたら、また考えましょうね」
さすがに非売品を売って欲しいっていう親バカはいなかった、めでたしめでたし。
これがあっちの世界だったら、貴族のボンボンがやってきて爵位をちらつかせて傍若無人な振る舞いをしていたよ。
そんなこんなで一通りの子供たちが体験会を楽しんだら、一旦、休憩タイムに突入。
子供たちもお昼の時間らしく、一度家に帰る子供や近くでお弁当を広げている子供もいた。
そんな中で、俺は子供達に貸し出していた全ての魔導騎士のチェックを開始。
魔法陣を展開しては、次々と解析で故障箇所がないか調べている。
「……こうやって横で見ていると、ユウって本当に異世界から帰ってきたんだなあって思うよ」
「まあ、魔法なんて俺たちの世界の人間は使えないからな。こうして横で見ていると、なかなか楽しいだろう? ほい、綾姫、こいつの魔導核のチェック頼む」
「かしこまりました」
俺から魔導騎士を受け取って、綾姫は魔導核を取り出して魔法陣で検査する。
まあ、子供達が武器を使わずに闘っていたぐらいじゃ、傷もつかないし魔導核も消耗しない。
そして一つ一つをチェックすると、一旦箱に収めてから空間収納に放り込んでおく。
盗難防止にはこれが一番だと思ったんだけど、それなら台車なんて使わなかったほうがよかったか。
「……目立つねぇ。人前で魔法を使って、問題ないの?」
「構わん構わん。別に秘密にしておく理由もないわ。俺は他の人と違って魔法が使えます、それだけだよ。空手が得意な人もいれば、数学が得意な人もいる。だから、俺は魔法が得意ですっていうこと」
「うん、その理屈はおかしい。この世界にないものを得意としているって言いきっていいの?」
「隠したところでバレるなら、堂々と言い切る」
そういうこと。
俺の世界じゃ俺しか魔法が使えないけど、俺が使えるのはゴーレム魔法だけ。
だから、ゴーレムとか魔導具を作ることぐらいしかできないんだよ。
そんなこんなと一休みして、お腹も満腹になったことだし。
いつのまにか子供たちが集まってきて、今か今かと待っていますから、午後の部の体験会を始めるとしますか。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
インターネットのTwitterでは。
この日、不思議な映像がアップされていた。
公園の中で、男女のカップルが全高30cmほどの人形で遊んでいる。
こう書くと、なんだか危ないカップルにも聞こえるのだが、問題はその映像の中身である。
30cmの人形が、まるで意思を持っているかのようにリングの中を駆け抜け、飛び跳ね、そして戦っていた。
一昔前の漫画の世界、昭和生まれの方には『プ◯レス3四郎』、それほどでもない人々や令和生まれの型は『エンジェ◯ックレイヤー』、もしくは『ビル◯ファイターズ』といえば、理解してもらえるだろうか。
その漫画やアニメの世界が、画面の中では現実となり動いていたのである。
そのTwitterはわずか数十分でバズり、あちこちの報道関係者から『詳しいことをお聞きしたいのですが、よろしいですか?』攻撃を受けていた。
当然ながら動画のUP主は『ありがとうございます、だが、断る‼︎』とお約束で返し、この動画の真偽については全く不明のまま終わることとなった。
『あのロボット、ゴーレムだってよ。うちの弟が体験会に参加したって喜んでいたよ』
『魔導騎士って名前だってさ。非売品で、なんでも魔法で動くんだって』
『我が名はオンドゥル。我も参加したぞ。いや、あれは欲しいわ。製作者に聞いたんだけど、まだ開発中で動作テストなんだって。是非とも商品化して欲しいとは思わぬか?』
あ、真偽の程は不明ではなかった模様。
体験会に参加した子供やその親が、宣伝とばかりに書き込んでおりました。
………
……
…
「……五百万石。ちょっと北海道に行ってきてくれるか?」
ここは東京。
ホビーメーカーの『ツクダサーガ』の五百万石新之助は、突然の部長からの呼び出して、そう指示を受けていた。
開発部に所属していたものの、五百万石がアイデアを出した商品は全て没。
そろそろ肩身が狭くなって来たところで、いきなりの左遷である。
「え? 瑞穂部長、俺、左遷ですか?」
「違うから。このTwitterに出ている画像のロボットを探してこいってことだ。書き込みを見た感じだと、どこかの企業の開発部なのか個人で作成していたものなのか検討もつかないからな」
「……このロボットをうちで売り出したいと?」
「そういうことだ。そのためにも情報が必要なのでな。五百万石、明日から一週間、札幌営業所に出張を命ずる」
「喜んで‼︎」
仕事なので出張もやむなし。
「しかし、この動画って、そこまで凄いのか?」
まだ彼は、動画の全貌を確認していなかった。
そのため、出張を前に確認することにしたのだが、一度、二度、三度と回数を増やすたびに、映像の中の魔導騎士に心惹かれていくのを感じていた。
これを、俺がプロデュースしたい。
うちの開発部で、俺が担当になりたい。
そうと決まったら、仕事なんてしていられないと、五百万石は部長に早退届を提出し、半日早く北海道へと旅立っていった。
この動画の影響はかなり大きく、ツクダサーガ以外にもソニプレックスやバンライズといった玩具メーカーも次々と営業の人間を北海道に派遣し、情報収集を開始することにした。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
今日は大学である。
まあ、昨日の夜にTwitterを見たんだけど、あの体験会が動画に撮られていたんだよ。
それがアップされていたんだけど、予想よりもバズっていて驚きである。
俺がアップしたわけじゃないけど、十分な宣伝効果はあったよ。
UP主にたいして、放送局やらゲームメーカーが連絡を取りたがっているようだけど、UP主は全て却下。
『おれも見ていただけなので、詳しい話とかはできない』と返答していた。
つまりは、魔導騎士が日本中で噂されているということである。
うん、うまくいった。
動画に撮られてアップされていたのは驚きだけど、多少の情報開示のタイミングが早いから遅いかの違いだからな。
………
……
…
翌日の大学。
ゼミも終わったので、あとは帰るだけ。
小町は今日は空手道場に向かうらしいから、近所でのテストはない。
という事で、帰り支度をして教室から出ようとしてんだが、ムサイ男三人に捕まったわ。
「十六夜殿、あの動画はなんでござるか?」
「俺も見たぞ。こまっちゃんと人形遊びしているかと思ったら、マジのロボットバトルをやっているじゃねーか。俺もまぜろ」
「動くロボ……あのデザインを俺が考えてやろうではないか。マージンは売上高の15%で構わん」
このうっさい友達は、俺のゼミ仲間。
上から順番に侍口調の笹錦康太伊達正明、上から目線の津軽三太郎の、モテない男三人衆である。
ちなみに趣味は、上から順番に力仕事、深夜の散歩、ゲテモノ料理の名コックというところである。
「あ~。津軽、ロボじゃねーよゴーレムだよ」
「そ、そのゴーレム、どこで手に入れた? 等身大の女性型って作ってもらえるか?」
「作ったのは俺だよ。そして作らねーよ、なんでお前のために作らないとならねーんだよ」
「「「 俺が作った? 」」」
三人同時に驚きの表情。
まあ、そうなるよな。
つい数日前までは、俺は平凡な一大学生だったからな。表向きは。
「そうだよ。ちょっとある力に目覚めてな、俺はゴーレムマスターになった」
「ふむふむ。十六夜殿、そのゴーレムって、今は持っていないのでござるか?」
「なんだ笹錦、興味があるのかよ……ほれ」
──ゴトッ
空間収納から一体の魔導騎士を取り出して机の上に置く。
これは汎用型で、機体コードは『タイプ・量産型』っていう、本当に汎用な、本当に平均的な機体である。
「こ、これが……すまぬが十六夜殿、動かし方を教えてくれるか?」
「俺も、俺も使ってみたいんだが」
「僕は、美少女型で構わないぞ」
「頼むと言われても、やらんぞ。まだ開発中で試作なんだからな」
──ゴトゴトッ
とりあえずは全員、『タイプ・量産機』で勘弁。
個別の機体なんて出したら、一つ一つの説明が説明が面倒くさいのと、やれ俺の方が性能がいいとか、そっちはダメだとか、色々とやらかしそうだからな。
「それで、これはどうやって扱うんだ?」
「待て待て、まずは魔導騎士と契約してからだ……順番に教えるから、いや、面倒だから一斉に教える。それじゃあ始めるぞ」
そのまま三人に機体の簡易登録をしてもらい、教室ではなく中庭に移動して扱い方を説明した。
面白三人組ということもあって、漫画やアニメを例えた説明をするとわかってくれる。
まあ、大学での体験会といってもいい感じになっていたし、昨日に引き続き今日もギャラリーが大勢集まってきたので、いい宣伝効果にはなっただろう。
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