5 / 28
第四話・取材? マスコミ?
しおりを挟む
北海道はでっかいどう。
五百万石は、ツクダサーガ札幌営業所に到着すると、早速情報収集を開始することにした。
幸いなことに彼の北海道滞在中は、例の動画についての調査以外の仕事は割り振られることはないと営業所長から報告を受けたのである。
それならばと、早速、動画を撮影したと思われる公園まで足を運ぶことにしたのだが、そうそううまく話が進むはずはなく……。
「……子供が一杯だよなぁ。たしか、動画では、この辺りに……おや?」
動画の映像を頼りに移動すると、ちょうどリングがあった場所には、大勢の子供たちが集まっていた。
しっかりと自分たちで敷物を用意してきたらしく、大きさや模様が色とりどりのシートに、お弁当を持参して座っている子供たちが大勢座っていた。
それなら話を聞いてみようと、五百万石は親子連れのところに向かって話しかけ始めた。
「ちょっといいですか? 私はツクダサーガの開発部所属の五百万石というものですが、ひょっとして、みなさんは魔導騎士《マーギア・ギア》の体験会が始まるのを待っているのですか?」
「そうだよ‼︎ ここにいるみんな、魔導騎士の体験会に参加するんだよ。今日は来るかわからないけどね」
「いつ来るかわからないのですよ。あくまでも体験会であって、開発とか調整の時間によっては来れないかもという話でしたので」
確実性に欠けるが、ここで体験会を行なっているというのはわかった。
五百万石も鞄から小さなシートを取り出すと、それを広げてそこに荷物を置いた。
あとは、ボイスレコーダー片手に、参加したことのある人たちにインタビューをおこなっていたのだが、やはり眉唾ものな話しか聞くことができない。
「魔法で動くんだよ?」
「市販はされていないって」
「いろんなタイプがあるんだよ?」
「俺はソードマスターっていうタイプを使ったことがあるんだぜ」
「防御力ならプロテクターがいいんだよ?打たれ強いからダメージゲージが減りづらいんだよ」
「機動力ならマッハワン一択だね?」
子供たちは、自分が使ったことのある機体の説明を始める。それだけを聞くと、確かに様々なバリエーションがあるので、販売する方としても手堅く扱えるからいい。
顧客に選択肢を与えて、好きなものを選んでもらうのは基本である。
──ザワッ
そんなことを考えていると、公園の入り口から男女のカップルがやってきた。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
さて。
今日も元気に体験会だ。
機体データの解析などで開かない日もあったけど、大体は子供たちが十人近く集まっているからな。
小町も綾姫も、何度も手伝ってもらっているので手慣れたものであるし、この前からは小町がパソコンで整理券を作ってきてくれたので、子供たちもスムーズに参加してくれるようになった。
「開発のおじさん‼︎」
「俺は、お兄さんだ‼︎ お前はラストな」
「嘘ですごめんなさい開発のお兄さん‼︎」
「わかったわかった。だから、ちょっと待っていろ。小町は子供達に参加券を配ってきてくれるか? 綾姫はリングの準備を頼む」
「了解‼︎」
「かしこまりました」
すぐに小町が子供達に整理券を配り始める。
一枚につき十分間、魔導騎士の体験会に参加できる。
参加者が少なくて時間が余っていたら、また配り直して参加可能だが、大体二時間でひと回りぐらいと予想している。
「ユウ、大人の参加はあり?」
「基本的になし。参加したいのですか?」
小町の前に立っている大人の男性が、なにやら申し訳なさそうに頭を下げている。
「東京から来ました。まあ、子供が優先なのはわかっていますが、もしも隙間がありましたら、お願いしたいのですが」
「昨日が大人の体験会だったんだけど……まあ、一人ぐらいなら構わないか」
「助かります」
飛び入りの大人の順番は、五戦目にしておこう。
それなら、対戦相手は小町に任せるとするか。
「小町、あとで構わないんだが、そちらの方の相手を頼む。クナイは持ってきているだろう?」
「鞄に入っているから大丈夫だよ。それじゃあ、最初の子供からいってみようか。整理番号一番と……五番、綾姫さんのところで魔導騎士を受け取ってください」
小町の指示で、子供たちはリングサイドに待機している綾姫の元に向かうと、お気に入りの魔導騎士を受け取って契約している。
うん、何度も参加している子は慣れたものだし、初めての子は、常連の子供にいろいろと教えてもらっている。
そしてリングに魔導騎士をセットすると、小町がゴングを鳴らした‼︎
──カーン。
子供たちが戦闘をしている最中、さっきの大人は三脚にカメラをセットして撮影を行なっている。
見た感じだと、かなり高価な機材を使っているようなので、ひょっとしたら報道関係者かYouTuberなのかなと勘繰ってしまう。
まあ、取材申し込みは大体断っているけど、勝手に映す分には構わないと思っている。
そんなこんなでどんどんと試合が進み、いよいよ大人の順番になった。
初めての経験だろうから、まともに動かすのも難しいかと思うが、基本動作は小町が教えてくれたおかげで、大体何とかなっている。
契約時の水晶球の色は赤、ギリギリ稼働するラインか。
誰でも動かせるように増幅器のようなものを考えても、いいのかもしれないなぁ。
………
……
…
「大体の動作については、説明通りです。初心者としては、まあ、うまく動いている方ですよ」
私が相手をしているのは、大人の男性。
大学のゼミでも三馬鹿トリオの相手もしたから、教え方の要領も把握している。
そして案の定、最初は立ち上がるのもギリギリだったけれど、5分もしたら歩行とかの基本動作はマスターしたようです。
「はぁ……これは、なかなか難しいですね。もっとこう、簡単に動作させる方法とか、音声認識プログラムとかは組み込まないのですか?」
「無理ですよ。そもそも、この魔導騎士は機械仕掛けのロボットじゃありませんから。これはゴーレム、魔法によって作られた魔導生命体といった方がわかりますか?」
「はっはっはっ。まあ、開発部としては、そうそう中身を教えてもらえないぐらいは理解しています。けれど、それを魔法だなんて、子供騙しにしか聞こえませんよ」
うん、やっぱり大人は疑うよね。
私だって、ユウから話を聞いて、実際に魔法を使うところを見せてもらったからこそ、こうやって全てを信じているのだからさ。
「それじゃあ、簡単なスパーリングでもやりますか?」
「待ってください。俺は、子供のようにコマンド入力をする方法を知らないのですけど」
「思考ですよ。魔導騎士を動かすのは、コマンド入力ではなく思考コントロールです。さっきの基本動作と同じですよ」
「え? こういったロボットアクションものはコマンドを入力しないと動かないと思いますが」
はぁ。
なんでこの人は、頭の回路が固いんだろう。
基本動作と同じ、イメージだって説明しているのに。
「それじゃあ、今回は好きに動いていいですよ。でも、動作は全てイメージであることは理解してくださいね。さっきから、何度も同じ説明をしていますけれど」
「その思考コントロールも意味がわからないんですよ。こういったものは、プログラムで制御していますよね? 人の思考をプログラム化して、あ、脳波によるコントロール?」
「もう、それでいいです。でも、あなたの考えているようなプログラムシステムはありませんからね」
「……それこそ意味がわからないんだよ。それじゃあ、こいつはなんで動くんだ?」
──カーン‼︎
はい、時間切れ。
「それじゃあ時間が来ましたので、魔導騎士は綾姫さんに渡してください。では、次の子は、準備してくださいね」
「え? もう時間なの? 早くない?」
「一人十分。初心者も慣れた人も同じです。大人なのですから、速やかに戻ってください」
少しキツめに説明すると、ようやく魔導騎士を持ってリングから離れていく。
でも、綾姫さんの元には持っていかないで、ブルーシートの上で撮影をはじめた。
「ユウ‼︎」
「了解。リンクの強制カット……では、回収しますので、腕輪もください」
すぐにユウが席に向かって、魔導騎士を回収している。
ユウが作った魔導騎士は、全て彼の持っている『遠隔制御水晶球』でコントロールをカットすることができるんだって。
なんだかぶつぶつと文句を言っているようにも聞こえるけど、そっちはユウに任せるからね。
私は子供たちの相手をするから。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
謎のロボットの体験会は二時間で終わった。
五百万石は体験会が終わったのち、すぐに十六夜悠にインタビューを頼んでみたのだが。
この後は用事があるので、インタビューには答えられないと返答を返されていた。
まあ、そこでどうにか時間を作ってもらうのも悪いと思い、五百万石は名刺を渡してその場から立ち去ることにした。
「しかし、駆動モーターの音もないし、USBケーブルの接続端子もない。タイプCコネクターとは思えないから、何か特殊な入力システムを使っているんだろうなぁ」
ツクダサーガ札幌営業所に戻った五百万石は、カメラの映像をパソコンに映して細かい部分の確認を始める。
そもそも、あのロボットの制御はどうやって伝達しているのか?
リモコンやラジコンとも違う、それでいて、腕輪をつけて考えるだけで稼働していたのも事実。
基本動作の立ち上がり、しゃがみ、掴み、握りといった動きも、全て思考だと説明されていたし、事実、それだけで動いていたのも理解できる。
だが、そんな技術がいつのまに理論的に完成していたのか、五百万石には理解できない。
「どこかの企業の開発部……違うなぁ。もしもそうなら、あんなに堂々と人目のつくところで、体験会なんてやるはずがない。となると、宣伝効果も兼ねて?」
カチカチと画面をじっくりと眺めつつ、五百万石は頭をひねっている。
「あ、これが噂のロボットですか……あれ?」
通りすがりの事務員が、五百万石の机の上のモニターを見て、画面を指差している。
「あの、これってどういう仕組みですか?」
「え? どの部分?」
事務員が指さした先は、魔導騎士の胴体部分。
バトル中に相手の攻撃を避けて体を捻りつつ、前のめりに一回転してローリング踵落としを決めているシーンである。
「ここ、これってロボットですよね? 胴部装甲、胸部フレーム、股関節とか背中とか、一体どうなっているんですか? フレームが干渉していないじゃないですか」
「え?」
慌てて画面を見直す。
現在市販されているロボットのオモチャなどは、体の表面素材が稼働部分を狭めている。
人間の皮膚のような素材でなくては、人間のような動きをすることなど不可能である。
にもかかわらず、画面の中の魔導騎士は、ほとんど人間と同じように動いていた。
しかも極め付けは、五百万石と対戦した小町の『クナイ』の動き。
両足を前後に広げ、腕を組んだまま腰を左右に回している。
よくみるストレッチの動きなのだが、それをロボットが、装甲材の干渉もなく自由に動いているのである。
「……なんだ、このロボットは……体表面の装甲が、まるで紙や布のようにしなやかに動いているぞ?」
「五百万石さんは、気づいていなかったのですか?」
「あ、ああ。駆動系とかコントロール系の仕組みを考えていて、そこまで頭が回らなかったんだわ」
そう考えていると、ふと、小町の説明を思い出した。
『そもそも、この魔導騎士は機械仕掛けのロボットじゃありませんから。これはゴーレム、魔法によって作られた魔導生命体といった方がわかりますか?』
まさか、本当にロボットじゃなく魔法で動いている?
そう思考してみたものの、それをどうやって証明するのかわからない。
「魔法で動くロボット……いや、ゴーレムか。エネルギーは魔法? いや、まさか……」
どうしても、五百万石は魔法の存在を信じられない。そんなものがあったなら、もっと噂は大きくなっているはずだし、あの開発者が魔法使いだとするのなら、もっとニュースになっていてもおかしくはない。
「はぁ。また明日にでも、みてきますか」
集まった情報はそこそこにあるのだが、五百万石は、どうにも魔法という部分で引っかかっている模様である。
五百万石は、ツクダサーガ札幌営業所に到着すると、早速情報収集を開始することにした。
幸いなことに彼の北海道滞在中は、例の動画についての調査以外の仕事は割り振られることはないと営業所長から報告を受けたのである。
それならばと、早速、動画を撮影したと思われる公園まで足を運ぶことにしたのだが、そうそううまく話が進むはずはなく……。
「……子供が一杯だよなぁ。たしか、動画では、この辺りに……おや?」
動画の映像を頼りに移動すると、ちょうどリングがあった場所には、大勢の子供たちが集まっていた。
しっかりと自分たちで敷物を用意してきたらしく、大きさや模様が色とりどりのシートに、お弁当を持参して座っている子供たちが大勢座っていた。
それなら話を聞いてみようと、五百万石は親子連れのところに向かって話しかけ始めた。
「ちょっといいですか? 私はツクダサーガの開発部所属の五百万石というものですが、ひょっとして、みなさんは魔導騎士《マーギア・ギア》の体験会が始まるのを待っているのですか?」
「そうだよ‼︎ ここにいるみんな、魔導騎士の体験会に参加するんだよ。今日は来るかわからないけどね」
「いつ来るかわからないのですよ。あくまでも体験会であって、開発とか調整の時間によっては来れないかもという話でしたので」
確実性に欠けるが、ここで体験会を行なっているというのはわかった。
五百万石も鞄から小さなシートを取り出すと、それを広げてそこに荷物を置いた。
あとは、ボイスレコーダー片手に、参加したことのある人たちにインタビューをおこなっていたのだが、やはり眉唾ものな話しか聞くことができない。
「魔法で動くんだよ?」
「市販はされていないって」
「いろんなタイプがあるんだよ?」
「俺はソードマスターっていうタイプを使ったことがあるんだぜ」
「防御力ならプロテクターがいいんだよ?打たれ強いからダメージゲージが減りづらいんだよ」
「機動力ならマッハワン一択だね?」
子供たちは、自分が使ったことのある機体の説明を始める。それだけを聞くと、確かに様々なバリエーションがあるので、販売する方としても手堅く扱えるからいい。
顧客に選択肢を与えて、好きなものを選んでもらうのは基本である。
──ザワッ
そんなことを考えていると、公園の入り口から男女のカップルがやってきた。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
さて。
今日も元気に体験会だ。
機体データの解析などで開かない日もあったけど、大体は子供たちが十人近く集まっているからな。
小町も綾姫も、何度も手伝ってもらっているので手慣れたものであるし、この前からは小町がパソコンで整理券を作ってきてくれたので、子供たちもスムーズに参加してくれるようになった。
「開発のおじさん‼︎」
「俺は、お兄さんだ‼︎ お前はラストな」
「嘘ですごめんなさい開発のお兄さん‼︎」
「わかったわかった。だから、ちょっと待っていろ。小町は子供達に参加券を配ってきてくれるか? 綾姫はリングの準備を頼む」
「了解‼︎」
「かしこまりました」
すぐに小町が子供達に整理券を配り始める。
一枚につき十分間、魔導騎士の体験会に参加できる。
参加者が少なくて時間が余っていたら、また配り直して参加可能だが、大体二時間でひと回りぐらいと予想している。
「ユウ、大人の参加はあり?」
「基本的になし。参加したいのですか?」
小町の前に立っている大人の男性が、なにやら申し訳なさそうに頭を下げている。
「東京から来ました。まあ、子供が優先なのはわかっていますが、もしも隙間がありましたら、お願いしたいのですが」
「昨日が大人の体験会だったんだけど……まあ、一人ぐらいなら構わないか」
「助かります」
飛び入りの大人の順番は、五戦目にしておこう。
それなら、対戦相手は小町に任せるとするか。
「小町、あとで構わないんだが、そちらの方の相手を頼む。クナイは持ってきているだろう?」
「鞄に入っているから大丈夫だよ。それじゃあ、最初の子供からいってみようか。整理番号一番と……五番、綾姫さんのところで魔導騎士を受け取ってください」
小町の指示で、子供たちはリングサイドに待機している綾姫の元に向かうと、お気に入りの魔導騎士を受け取って契約している。
うん、何度も参加している子は慣れたものだし、初めての子は、常連の子供にいろいろと教えてもらっている。
そしてリングに魔導騎士をセットすると、小町がゴングを鳴らした‼︎
──カーン。
子供たちが戦闘をしている最中、さっきの大人は三脚にカメラをセットして撮影を行なっている。
見た感じだと、かなり高価な機材を使っているようなので、ひょっとしたら報道関係者かYouTuberなのかなと勘繰ってしまう。
まあ、取材申し込みは大体断っているけど、勝手に映す分には構わないと思っている。
そんなこんなでどんどんと試合が進み、いよいよ大人の順番になった。
初めての経験だろうから、まともに動かすのも難しいかと思うが、基本動作は小町が教えてくれたおかげで、大体何とかなっている。
契約時の水晶球の色は赤、ギリギリ稼働するラインか。
誰でも動かせるように増幅器のようなものを考えても、いいのかもしれないなぁ。
………
……
…
「大体の動作については、説明通りです。初心者としては、まあ、うまく動いている方ですよ」
私が相手をしているのは、大人の男性。
大学のゼミでも三馬鹿トリオの相手もしたから、教え方の要領も把握している。
そして案の定、最初は立ち上がるのもギリギリだったけれど、5分もしたら歩行とかの基本動作はマスターしたようです。
「はぁ……これは、なかなか難しいですね。もっとこう、簡単に動作させる方法とか、音声認識プログラムとかは組み込まないのですか?」
「無理ですよ。そもそも、この魔導騎士は機械仕掛けのロボットじゃありませんから。これはゴーレム、魔法によって作られた魔導生命体といった方がわかりますか?」
「はっはっはっ。まあ、開発部としては、そうそう中身を教えてもらえないぐらいは理解しています。けれど、それを魔法だなんて、子供騙しにしか聞こえませんよ」
うん、やっぱり大人は疑うよね。
私だって、ユウから話を聞いて、実際に魔法を使うところを見せてもらったからこそ、こうやって全てを信じているのだからさ。
「それじゃあ、簡単なスパーリングでもやりますか?」
「待ってください。俺は、子供のようにコマンド入力をする方法を知らないのですけど」
「思考ですよ。魔導騎士を動かすのは、コマンド入力ではなく思考コントロールです。さっきの基本動作と同じですよ」
「え? こういったロボットアクションものはコマンドを入力しないと動かないと思いますが」
はぁ。
なんでこの人は、頭の回路が固いんだろう。
基本動作と同じ、イメージだって説明しているのに。
「それじゃあ、今回は好きに動いていいですよ。でも、動作は全てイメージであることは理解してくださいね。さっきから、何度も同じ説明をしていますけれど」
「その思考コントロールも意味がわからないんですよ。こういったものは、プログラムで制御していますよね? 人の思考をプログラム化して、あ、脳波によるコントロール?」
「もう、それでいいです。でも、あなたの考えているようなプログラムシステムはありませんからね」
「……それこそ意味がわからないんだよ。それじゃあ、こいつはなんで動くんだ?」
──カーン‼︎
はい、時間切れ。
「それじゃあ時間が来ましたので、魔導騎士は綾姫さんに渡してください。では、次の子は、準備してくださいね」
「え? もう時間なの? 早くない?」
「一人十分。初心者も慣れた人も同じです。大人なのですから、速やかに戻ってください」
少しキツめに説明すると、ようやく魔導騎士を持ってリングから離れていく。
でも、綾姫さんの元には持っていかないで、ブルーシートの上で撮影をはじめた。
「ユウ‼︎」
「了解。リンクの強制カット……では、回収しますので、腕輪もください」
すぐにユウが席に向かって、魔導騎士を回収している。
ユウが作った魔導騎士は、全て彼の持っている『遠隔制御水晶球』でコントロールをカットすることができるんだって。
なんだかぶつぶつと文句を言っているようにも聞こえるけど、そっちはユウに任せるからね。
私は子供たちの相手をするから。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
謎のロボットの体験会は二時間で終わった。
五百万石は体験会が終わったのち、すぐに十六夜悠にインタビューを頼んでみたのだが。
この後は用事があるので、インタビューには答えられないと返答を返されていた。
まあ、そこでどうにか時間を作ってもらうのも悪いと思い、五百万石は名刺を渡してその場から立ち去ることにした。
「しかし、駆動モーターの音もないし、USBケーブルの接続端子もない。タイプCコネクターとは思えないから、何か特殊な入力システムを使っているんだろうなぁ」
ツクダサーガ札幌営業所に戻った五百万石は、カメラの映像をパソコンに映して細かい部分の確認を始める。
そもそも、あのロボットの制御はどうやって伝達しているのか?
リモコンやラジコンとも違う、それでいて、腕輪をつけて考えるだけで稼働していたのも事実。
基本動作の立ち上がり、しゃがみ、掴み、握りといった動きも、全て思考だと説明されていたし、事実、それだけで動いていたのも理解できる。
だが、そんな技術がいつのまに理論的に完成していたのか、五百万石には理解できない。
「どこかの企業の開発部……違うなぁ。もしもそうなら、あんなに堂々と人目のつくところで、体験会なんてやるはずがない。となると、宣伝効果も兼ねて?」
カチカチと画面をじっくりと眺めつつ、五百万石は頭をひねっている。
「あ、これが噂のロボットですか……あれ?」
通りすがりの事務員が、五百万石の机の上のモニターを見て、画面を指差している。
「あの、これってどういう仕組みですか?」
「え? どの部分?」
事務員が指さした先は、魔導騎士の胴体部分。
バトル中に相手の攻撃を避けて体を捻りつつ、前のめりに一回転してローリング踵落としを決めているシーンである。
「ここ、これってロボットですよね? 胴部装甲、胸部フレーム、股関節とか背中とか、一体どうなっているんですか? フレームが干渉していないじゃないですか」
「え?」
慌てて画面を見直す。
現在市販されているロボットのオモチャなどは、体の表面素材が稼働部分を狭めている。
人間の皮膚のような素材でなくては、人間のような動きをすることなど不可能である。
にもかかわらず、画面の中の魔導騎士は、ほとんど人間と同じように動いていた。
しかも極め付けは、五百万石と対戦した小町の『クナイ』の動き。
両足を前後に広げ、腕を組んだまま腰を左右に回している。
よくみるストレッチの動きなのだが、それをロボットが、装甲材の干渉もなく自由に動いているのである。
「……なんだ、このロボットは……体表面の装甲が、まるで紙や布のようにしなやかに動いているぞ?」
「五百万石さんは、気づいていなかったのですか?」
「あ、ああ。駆動系とかコントロール系の仕組みを考えていて、そこまで頭が回らなかったんだわ」
そう考えていると、ふと、小町の説明を思い出した。
『そもそも、この魔導騎士は機械仕掛けのロボットじゃありませんから。これはゴーレム、魔法によって作られた魔導生命体といった方がわかりますか?』
まさか、本当にロボットじゃなく魔法で動いている?
そう思考してみたものの、それをどうやって証明するのかわからない。
「魔法で動くロボット……いや、ゴーレムか。エネルギーは魔法? いや、まさか……」
どうしても、五百万石は魔法の存在を信じられない。そんなものがあったなら、もっと噂は大きくなっているはずだし、あの開発者が魔法使いだとするのなら、もっとニュースになっていてもおかしくはない。
「はぁ。また明日にでも、みてきますか」
集まった情報はそこそこにあるのだが、五百万石は、どうにも魔法という部分で引っかかっている模様である。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
好き勝手スローライフしていただけなのに伝説の英雄になってしまった件~異世界転移させられた先は世界最凶の魔境だった~
狐火いりす@商業作家
ファンタジー
事故でショボ死した主人公──星宮なぎさは神によって異世界に転移させられる。
そこは、Sランク以上の魔物が当たり前のように闊歩する世界最凶の魔境だった。
「せっかく手に入れた第二の人生、楽しみつくさねぇともったいねぇだろ!」
神様の力によって【創造】スキルと最強フィジカルを手に入れたなぎさは、自由気ままなスローライフを始める。
露天風呂付きの家を建てたり、倒した魔物でおいしい料理を作ったり、美人な悪霊を仲間にしたり、ペットを飼ってみたり。
やりたいことをやって好き勝手に生きていく。
なぜか人類未踏破ダンジョンを攻略しちゃったり、ペットが神獣と幻獣だったり、邪竜から目をつけられたりするけど、細かいことは気にしない。
人類最強の主人公がただひたすら好き放題生きていたら伝説になってしまった、そんなほのぼのギャグコメディ。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる