発達障害の女、獣医師として生きる。

ひよく

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再就職

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その観光施設では、1年半ほど働いた。
だが、それは飼育員としての仕事であり、獣医師としての仕事ではなかった。

世の中にはいろいろな職があり、そのすべてが大切な仕事である。
それを理解して尚、今日子は獣医師として生きていきたかった。

今日子は動物好きだが、ただ動物が好きなだけではない。
大学時代は解剖もしたし、動物実験もした。
つまり、自分の手で動物を殺したことがある。
それは獣医師なら誰にでも言えることではあるが、自分が獣医師免許を取るために犠牲にした動物がいるのだ。
今日子は、自分が獣医師として生きていかなければ、その命が無駄になると感じていた。

今日子は発達障害があることを隠さずに、働かせてくれる動物病院はないか探した。
自宅から遠いが、ある動物病院で面談してもらえることになった。
アラ還の男性獣医師が院長を勤める病院である。
その病院にはその他に、AHT(動物看護士)さんが1人、トリマー(動物美容師)さんが1人いたが、それ以外に獣医師はおらず、院長は師匠、今日子は弟子だった。
昔の職人のような徒弟制度を全面に押し出した病院だった。

弟子に休みはない。
本当にない。
3ヶ月間で完全な休日は2日間だけであった。

それ以上に辛かったのは、「場の空気を読め」「察して動け」「技術は見て盗め」と言われる事であった。
そのすべてが、今日子のような障害を持つ者が最も苦手とする事柄であったからである。
一言言ってくれれば済むことを、敢えて言わない。
気を利かせて、先回りして動くことが求められた。

また、嫌煙権がないのも、辛かった。
今日子は嗅覚に対するこだわりも強く、タバコの臭いは大嫌いだった。

今日子にとって、職場は激しいストレスとなった。
それでも3ヶ月頑張った。
しかし、限界が来た。
何度もパニックを起こし、その病院は辞めざるを得なくなった。

しかし、それで良かったのだろう。
重度のうつ病に逆戻りしていたら、取り返しのつかない事態になっていたはずだからである。
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