白と黒の記憶 消えない過去

ルルル

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5話 本性

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「ほんと面白いよな! 死ぬ寸前に見せるあの顔たまんねえよな! な! お前もそう思うだろ?」

「ちょっと静かにしろ」

「あいつらがいないと馬鹿を止めんのは大変だね」

「ほんと大変だ、とりあえず目的地まで走るぞ」

---

 教室に戻ると担任がプリントを手にし先頭に置いていく。

「今からプリントを渡すちゃんと親に見せるんだぞ」

 そのプリントの内容よりも机に入っている紙が気になった。

(なんだ?)

 そう思いながら折られている紙を開ける。

〈K〉

 その一文字だけが書かれていた。

(なるほど)

 確認するとズボンのポケットに紙を入れた。
 次々と回って来るプリント計八枚、目を通す限りあまり大事な内容ではない。
 プリントを配り終えると担任はその場を立ち教室を出た。
 その間教室は話し声に包まれたがすぐに帰ってきて静かになる。

「プリント八枚あることを確認できたら今日はもう帰ってよし」

 そういうと再び担任は教室を出た。
 その後次々に生徒たちは帰る支度をし教室を出ていた。

---

 教室に残ってるのは俺含めて四人、当然その中に彼女もいる。
 帰る生徒に視線を何度も送り暇そうに誰もいなくなるのを待っている。
 そして残り二人が出ていくのを確認してから彼女に近づく。

「よし少し付いてきてくれ」

 彼女は何も文句も言わず付いてきた。

---

 校舎を出て歩いて十分のところに今は使われていない公園がある、そこは人通りが少ないことから内緒話する時にはもってこいの場所だ。
 公園に着くとすぐに話を切り出した。

「お前何してんだ?」

 そういうと明らか動揺したが、彼女は何事も無かったかのように話す。

「えっと、なんのこと?」
(聞いてた話と違う!)

 俺は一度ため息をつき彼女を見下すように見る。

「お前もしかしてまだ分かってないのか?」

 彼女はとても汗をかいている、その汗を拭い首をかしげる。

「えっと、分かるも分からないもなんの話かな?」
(もしかして)

 キスできるくらいに顔を近づけ問いかけた。

「俺には分かるんだよ? 演技はいいからさ」

 ここまで言えば彼女も分かる、聞いてた話と違うことを。
 さっきまで動揺していた彼女だがさっきの一言で普通に戻る。

「聞いてた話と違うよレン、あの人から聞いた話ではレンはあの時頭を強打し記憶を失ったって聞いたけど」

 そんな噂があったのか、実際俺はあの時頭を強打したが記憶は失っていない。

「ああ記憶は失ってないが強打したのは本当だ」
(人の気配がするな)

 彼女は何かを悟ったかのように話を切り出そうとする、が俺は気配のあった方に手を向ける、それと同時に悲鳴が聞こえた。

「ぐお!」

 彼女は声が聞こえた方に近づく、公園を出てすぐに足から血が出ている男子がいた。

「ああどうするの?」

 首を傾げながら俺に聞いてきたがやることは決まっている。

「お前は俺のことをよく知っているだろう?」


 そのことに何も言わず男子をじっと見つめる。
 当然男子は命だけはと口にしている。
 彼女はしゃがみこみ男子に向けて一言言う。
「かわいそうに盗み聞はよくないよ」

 俺は男子をこっちに連れて来るように言う。
 彼女は嫌そうな顔をしたが口には出さず引きずりながら連れてきた。

「血汚い!」

 そう言いながら服や手についた血を見つめる。
 俺は男子を見つめながら言う。

「何か言いたいことあるか?」

 恐怖に怯えて声も出せなくなっている、俺はため息をつき彼女に言う。

「はあ、まあいいやとりあえず携帯で送るからそこに来い」

 そういうと彼女は携帯を見て指定場所に向かう。
 俺はそう伝えた後再び彼に視線を向ける。

「ああ、もう遅いなじゃあ俺も行くわ」

 そういい俺はその場を去ろうとすると震えながら助けを求める声が聞こえた。

「助けて、くれ、たす、助けて」

(その声を待ってたんだよ)

---

「遅いね来ないね!」

 俺は公園を出てゆっくりと指定場所に向かった。
 そこに着くと彼女が暇そうに待っていた。

「遅いよ!」

 俺は何も言わず話の続きを話す。

「さっき言ってた記憶を失ったって話はアイツから聞いたんだろ?」

 アイツというと明らかに違う様子だった。

「やっぱり」

 そういうと次は彼女から話を始めた。
 その内容は今日の事件いついてだ。

「ちょっと確認がてら聞くけど、今日の事件についてどう思った?」

「お前なら分かるだろ? つまりそういうことだ」

 それだけいうと彼女は納得し話の続きを始める。

「もしかしてあれが本当ならあの作戦をやる気なの?」

 俺は一瞬自分自身が固まった気がしたが冷静に答える。

「さあな、そんなことより奴にはこのことは絶対バレないようにしろよ」

 彼女は何も言わずに頷いた後小声で話し出した。

「ここにきた理由もそういうことだよね?」

 彼女はおそらく気づいているだろうが少し心配らしい。
 俺は頷き彼女に言う。

「ああ、そのためにはお前が必要なんだ、だからアイツから離れることをここで誓え」

 アイツと関わってたこともお見通しで少し驚いた様子だったがすぐに冷静になる。
 覚悟を決めたのか一度ため息をつき誓いを始める。
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