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建築作品のパクリ
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「おい、パクんじゃねえよ」
ぼくは隣で図面を描いていたトモユキに言った。うしろではホノカさんがぼくらのやりとりを見て笑っている。
そのときぼくらは半日で設計作品を完成させるという、即日設計課題というものに取り組んでいた。
お題はとある公園内にある公衆トイレ。ぼくは有機的な植物が生い茂る公園のなかで、ピラミッド型のトイレを設計していた。
「べつにさ、描く人の手が違えば同じかたちでも似てなくみえるよ」
ホノカさんが言った。トモユキがへらへらしながらぼくを見る。ほら、ホノカさんもそうおっしゃってますし、みたいな表情で。
まあ、ホノカさんの言葉にぼくもどこか納得してしまう部分はあった。どんなに有名な作品をパクったとしても、その人が引いた線でその作品に個性というものがあらわれてくるはずだ。実際に現在第一線で活躍している建築家も、見方によれば古典として有名な巨匠建築家の作品をパクっているような気もする。オマージュといえばゆるされるのだろうか。
ホノカさんはさらに言った。
「そういえば、ある建築家がこんなことを言っていたわよ。知ってて似せるのはOK。知らないで似てしまっているのは最悪」
う~ん、そうなのか。それでもぼくはできるだけパクりたくない。
トモユキが追い打ちをかける
「おまえさあ、じゃあさあ、自分のがオリジナルってどう証明すんだよ。三角の建物なんてよお、どこにでもあんじゃねえか。しかもお前の作品だってピラミッドのパクリじゃねえか。けっきょく最初はなんでも真似から入るんだよ。おれが尊敬する藤子不二雄先生が言ってたぜ。けっきょく人が創造するもとは記憶の蓄積でつくられるってさあ。そうじゃねえの?」
ホノカさんがくすくす笑う。ホノカさんとトモユキが同じ方向を向いているのが気に入らない。
「ホノカさんにかぶせて論破しようとすんじゃねえよ。おまえの言ってることはわかる。でも隣にいる、しかも友人のアイデアをそのままパクるのはちがうだろう」
トモユキはぼくに尊敬の念をこめて真似ているわけではない。ただ、さっさと課題を終わらせたくて身近にパクれるものがないか探していた。そういうことにすぎない。このあいだの学校の設計課題だってそうだ。どっかのプランをそのままもってきて、そこでプランをくみ換えていた。教室が多目的ホールになっていて、多目的ホールが教室になっている。まあ、今の時代ならそういう考え方もありなような気もしたが、トモユキは先生にばれて怒られていた。
「たしかにねえ」
ホノカさんが口をおさえて笑いながらぼくを見た。小さな口をおさえている様子がかわいい。
とはいいながらホノカさんもよく人の作品をパクる。でもなんだろう、パクるのがうまいのだ。今回も有名建築家の作品のいいとこどりを組み合わせながら提出課題を仕上げていた。トモユキとは全然違う。上手に組み合わせて、かつ自分もそれを理解しているからだろう、だからぱっと見、パクっているような気にさせないのだ。この差はなんだろう。センス?
「んだよ。真面目ちゃん。でもさあ、もうつくりはじめちゃってるからさあ。ああそうだ、じゃあこうするわ」
トモユキはトライアングル型の建物のとなりに、ライオンのかたちをした建物を描きはじめた。
「なんだよ。それ」
「え?ああ、ピラミッドといえば、スフィンクスじゃね?」
あきれたぼくはホノカさんを見た。彼女は口でなくお腹をおさえて笑っていた。
ぼくは隣で図面を描いていたトモユキに言った。うしろではホノカさんがぼくらのやりとりを見て笑っている。
そのときぼくらは半日で設計作品を完成させるという、即日設計課題というものに取り組んでいた。
お題はとある公園内にある公衆トイレ。ぼくは有機的な植物が生い茂る公園のなかで、ピラミッド型のトイレを設計していた。
「べつにさ、描く人の手が違えば同じかたちでも似てなくみえるよ」
ホノカさんが言った。トモユキがへらへらしながらぼくを見る。ほら、ホノカさんもそうおっしゃってますし、みたいな表情で。
まあ、ホノカさんの言葉にぼくもどこか納得してしまう部分はあった。どんなに有名な作品をパクったとしても、その人が引いた線でその作品に個性というものがあらわれてくるはずだ。実際に現在第一線で活躍している建築家も、見方によれば古典として有名な巨匠建築家の作品をパクっているような気もする。オマージュといえばゆるされるのだろうか。
ホノカさんはさらに言った。
「そういえば、ある建築家がこんなことを言っていたわよ。知ってて似せるのはOK。知らないで似てしまっているのは最悪」
う~ん、そうなのか。それでもぼくはできるだけパクりたくない。
トモユキが追い打ちをかける
「おまえさあ、じゃあさあ、自分のがオリジナルってどう証明すんだよ。三角の建物なんてよお、どこにでもあんじゃねえか。しかもお前の作品だってピラミッドのパクリじゃねえか。けっきょく最初はなんでも真似から入るんだよ。おれが尊敬する藤子不二雄先生が言ってたぜ。けっきょく人が創造するもとは記憶の蓄積でつくられるってさあ。そうじゃねえの?」
ホノカさんがくすくす笑う。ホノカさんとトモユキが同じ方向を向いているのが気に入らない。
「ホノカさんにかぶせて論破しようとすんじゃねえよ。おまえの言ってることはわかる。でも隣にいる、しかも友人のアイデアをそのままパクるのはちがうだろう」
トモユキはぼくに尊敬の念をこめて真似ているわけではない。ただ、さっさと課題を終わらせたくて身近にパクれるものがないか探していた。そういうことにすぎない。このあいだの学校の設計課題だってそうだ。どっかのプランをそのままもってきて、そこでプランをくみ換えていた。教室が多目的ホールになっていて、多目的ホールが教室になっている。まあ、今の時代ならそういう考え方もありなような気もしたが、トモユキは先生にばれて怒られていた。
「たしかにねえ」
ホノカさんが口をおさえて笑いながらぼくを見た。小さな口をおさえている様子がかわいい。
とはいいながらホノカさんもよく人の作品をパクる。でもなんだろう、パクるのがうまいのだ。今回も有名建築家の作品のいいとこどりを組み合わせながら提出課題を仕上げていた。トモユキとは全然違う。上手に組み合わせて、かつ自分もそれを理解しているからだろう、だからぱっと見、パクっているような気にさせないのだ。この差はなんだろう。センス?
「んだよ。真面目ちゃん。でもさあ、もうつくりはじめちゃってるからさあ。ああそうだ、じゃあこうするわ」
トモユキはトライアングル型の建物のとなりに、ライオンのかたちをした建物を描きはじめた。
「なんだよ。それ」
「え?ああ、ピラミッドといえば、スフィンクスじゃね?」
あきれたぼくはホノカさんを見た。彼女は口でなくお腹をおさえて笑っていた。
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