俺が追放した役立たずスキルの無能女どもが一流冒険者になって次々と出戻りを希望してくるんだが……

立沢るうど

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第二十話……有能女どもと話し合いをしたんだが……

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 それから間もなく、ママが俺から離れ、ここからはラウラとクウラを会話に加えたいということで、彼女達を連れてきた。
 天才達に十分な情報を与えることで、解決方法を模索したいのだ。俺もその方が良いと思っていた。
 ところが、ラウラとクウラは俺達が取り巻く状況を読み、二人で共有していたようで、俺達からそれほど情報を与える必要はなかった。なんて頼もしいんだ……。

「それじゃあ、パパの意志を聞かせてくれる?」

 ラウラが俺に話の続きを促した。

「……俺の意志は、俺達の国に大義があるなら、戦争に参加してもかまわないと思ってはいる。だが、今回は俺が言った通り、そうじゃないんだよな? 俺が思うに、政府の連中が信用できないから、ギルドに関する法律や規程をこちらから提案して合意させ、ガチガチに縛ってるんじゃないのか?」
「もちろん、ママはそういう考えだね。このままセントラルを侵略した後に起こるのは、現地民の虐殺だよ。政府中枢と軍幹部達には、ノウズの地名の由来やノウズ換算を筆頭に、選民思想があるんだよね。本当は、『マリレイヴズ』創始者であるママの祖先と、今のママ達が努力した結果に過ぎないのに」

「せめて、『時代遅れの旧体制からの現地民の解放』ぐらい言えばいいのにな……。復讐は何も生まない、と言うつもりもない。でも、この場合は敵国の脅威に対する先制攻撃や反撃の建前さえないからな。
 まぁ、それはともかく、徴兵を拒否すれば、間違いなく死刑だ。仮に、俺がトリプルAの実力を以てして、政府や軍に逆らっても、『マリレイヴズ』が批判の目に晒される。たとえ、無関係を装って、俺の冒険者登録を事前に抹消したとしても、ママが死刑になる。どうすればいいんだ? 俺が要人を暗殺でもするのか?」
「バクス、その前にちょっといいかなぁ……」

 コミュが不満そうに話に割って入ってきた。

「何だよ」
「『俺俺』って……私も入ってるんだから、『俺達』って言ってよ!」
「いや、それを言うなら私だって入ってるから!」
「僕もだよ!」

「お前達……。でも、死ぬかもしれないんだぞ! 家族だって危ないんだ。俺が全てを守り切れるわけじゃないんだぞ! 人間には数の限界があるんだからな!」
「パパ、そこでディーズの分身スキルだよ」

 俺は割って入ってきたラウラの言葉に耳を疑った。

「なっ……! いや、そもそもディーズはまだ戻ってきてないじゃないか!」
「何言ってるの。まだ二週間あるでしょ? パパが全力を出して、戻ってきてもらうんでしょ?」

「それはそうなんだが……。なんでそれを知ってるんだよ」
「ギルドの真ん中で、覚悟がどうの言いつつ、フォルと抱き合ってたら、誰でも分かるでしょ」

 誰でも分かるか……? 抱き合っていたのは関係ないような……。

「そんなことはどうでもいいの! その分身は、別に軍事力に対抗するためのものじゃないからね。マップ作成時に偽『誰よりも前へ』として洞窟Aに入って、時間稼ぎに使うんだよ。そして、本物のパパ達はセントラルに向かう。
 例のパーティーと協力してセントラルの体制を潰すんだけど、完全に潰さないようにするか、それよりも少し前に、セントラルからノウズ中央政府に、過去の清算として、無条件領地割譲案を提案させる。それは、パパが世界の英雄になることと等しい。
 今の問題は、セントラルはノウズが眼中になく、そのままノウズに利益がなく潰れること、
 パパが戦争に参加して、少なくともパパ達に犠牲者が出ること、
 あるいは、パパが徴兵を拒否して、関係者や血縁者が罰せられること。
 だから、戦争を回避した上で、ノウズ中央政府の名目を果たせばいい。その上で、懲罰を含めた虐殺を行うのは世界が許さない。英雄になったパパが反対するなら、世界が味方になる。
 割譲された土地、または旧セントラル地帯に私達が疎開すれば、ノウズ中央政府も人質は取りづらい。
 とは言え、そこまでにはならないと思う。なぜなら、コミュのスキルがあるから。いくらでも、交渉という名の命令ができる。
 なぜそれをノウズ中央政府に対してすぐに使わないかと言うと、問題として挙げたように、誰も得しない可能性があるから。いずれにしても、セントラルに行かなきゃいけないし」
「ラウラ、本当にすごかったんだな……。いや、俺も頭の片隅には思い浮かんでいたんだが、それを完璧に組み立てて言語化した……」

「ホントに思い浮かんでたのかなぁ?」
「見栄じゃない、本当だ。それにもう一つ、俺が成し遂げたいことがある。
 例のパーティーには恩がある。まだ会ってもいないが、本当に良いヤツらだよ。こんなバカなヤツらに親身になってくれたんだからな。
 このままだと、ソイツらの余計なお世話、おせっかいになっちまう。それに、ソイツらに限っては万が一にもあり得ないと思うが、虐殺を止めるための虐殺が始まる可能性だってある。
 俺達が裏で動いて、ソイツらには是非気持ち良くなってもらおうじゃないか! それが真の勇者だ!」

「流石、パパ! みんなにとっては、もう最高の勇者だけどね!」
「あ、バカにして……ない! ありがとう、ラウラ。お前も最高の娘だよ」

「ようやくパパが、私のパパだって認めたかぁ」
「え……?」
「流石、お姉ちゃん! 良かったね、ママ!」

 子どもを認知したような俺のセリフに、ラウラとクウラが喜んでいた。
 いや、冗談なんだけど……。ほら、売り言葉に買い言葉みたいな、国語の対照というか、そういうのあるだろ?

 すると、ママが突然、右手をこめかみに当てて、戸惑いの表情を浮かべた。

「ちょ、ちょっと待って……! みんな喋らないで!」

 これはもしかして……『神託』か? 俺の意志が固まるや否や、思ったよりもずっと早かったな。

「は、はい……。ほ、本当ですか⁉️」

 神託に対して、驚きながらも返事をしているようで、それが神様に届いているかは分からないが、しばらくして、ママが腕を下ろし、俺達に向き直った。『神託』スキルについては、もう隠す気はないらしい。

「神様がバクスに制約を与えるって……。例のパーティーと一切会わないこと」
「はぁ⁉️ なんでだよ!」
「なるほどねぇ」
「まぁ、そうなるよね」

 ラウラとクウラが何か納得しているが、俺には全く分からなかった。

「どういうことだよ、ラウラ」
「簡単だよ。パパと会ったら、そのパーティーの女の子全員、パパのことが好きになって、パーティーが崩壊しちゃうから。パーティークラッシャーだよ、パパは。略すとしたら、『パクパクパパ』『パパパパ』だよ」

「『パク』が余計に一回入って意味深になってるし、なんで略した? いや、そんなわけないだろ……。元男もいるし……」
「まぁ、その人は例外かもね。スキルがあるし。でも、その人以外は絶対にそうなるよ。神様が接触を禁止したのは、そうなると神様の都合が悪くなるから。
 おそらく、そのパーティーはかなり大事にされてるよ。もしかすると、パパよりね。となると……神様が『他の神様』に依頼されたかな? そのパーティーの中心人物、特にその元男の人を、よろしく頼むってね。だから、絶大な力を与えたと考えられる。
 そこから、神様同士の関係性も分かるかな。その『他の神様』には逆らえないか、あるいは……」

「ラウラ、その辺にしてって、神様が」
「あ、申し訳ありません。つい……」

 神様って、結構フレンドリーで俺達をよく見てるんだな……。それに、ラウラの言ったことが当たっている証左でもある。
 それに、『制約』ということだから、『セントラルに行ってはいけない』わけでもない。

「あー、いいかな? 神様のおっしゃることには、まだ続きがあるんだよ。その制約の代わりと言っては何だと思うけど、今から三ヶ月間、その制約を守り続けた暁には、関係者それぞれが老衰するまで、生命を保証するって。でも、自殺は別だって」
「マジか……。すごいな、それは……。無謀な行動が自殺に含まれるかは謎だが、考え抜いて結論を出せばいいだけだ」

「本当にすごいことだよ……。運命を変えられるんだから……。バクス、絶対に守ってよ! 私達のためじゃない、自分自身のために!」
「あ、ああ……」

 何か引っかかる言い方だが、ママは本当に嬉しそうに、俺の両肩を強く掴んで応援してくれた。
 運命って何だ? 何か俺に定められていたのか?
 ママがこの状況においてもそれを言わないということは、俺が知らなくてもいい、知らない方が良いことなんだろう。
 いずれにしても、守り切ればいいだけだ。それから聞けばいい。

 これはとてつもなく重大なことだから、イシスの力を借りたいが……。
 そう思って、俺がイシスの方を見ると、彼女は笑顔で親指を立てた。
 シーズの二番煎じみたいな反応で一瞬不安に感じたが、少なくとも協力はしてくれるようで、安心した。

「じゃあ、三ヶ月後にまた何かあるってことだよね? そのパーティーがパパの影響から逃れられる何かが起きる。メンバーのスキルアップでシャットアウトするか、一生出会わない何か……。流石にまだ分からないや。今のところ、前者の可能性が高いかな」
「なぁ、もしかしてその『影響』って俺のスキルに関係するのか? ラウラは分かってるってことか?」

「今のやり取りで、パパも薄々勘付いてると思うけど、何だとはハッキリ言わないよ。
 でも、この際これだけは言えるかな。もうオンパレードになっちゃってるから。パパのスキルは生まれつきの『指定最重要機密スキル』だよ。そして、今ハッキリしたけど、もっと言えば、『それ以上』。一応言っておくけど、ママからは何も聞いてないからね」
「やっぱりそうなのか……。意識は……しない方が良いか……」
「パパって、本当に物分りが良いよね。だから、大好きなんだよ」
「ゼロ歳児に物分りが良いと言われる俺。最高だね」
「あ、私をバカにした! お前の方が先にバカにしたんだろって思ってる!」
「リアルタイムに俺の心を読むな!」

 クウラと俺の漫才を見て、みんなが笑顔になった。
 そこで俺は、本当に良いヤツらに恵まれているんだなと改めて思った。

 コミュに元気をもらって、
 イシスにこの先の道を照らしてもらって、
 フォルに迷いをなくしてもらって、
 その三人を成長させてもらったパーティーも遠くにはいて、
 ママに不安を解消してもらって、
 ラウラに進むべき道を強固にしてもらって、
 クウラには俺達の日常はいつでもここにあると再認識させてもらった。
 きっと、リセラとアクセラにも、このあとすぐに世話になるだろう。

 このようなことが今後何回あっても、みんなが俺を助けてくれるだろう。
 もちろん、俺も全力で助けたい。それだけの最高のヤツらだから。そこに限度はないんだから……。

 この最高の場所に、アイツを……ディーズを絶対に連れてくる。俺は再度決意した。
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