俺が追放した役立たずスキルの無能女どもが一流冒険者になって次々と出戻りを希望してくるんだが……

立沢るうど

文字の大きさ
24 / 36

第二十四話……無能モンスター(自称)から事情を聞いたんだが……

しおりを挟む
 俺とメムのキスが一分ほど続き、落ち着いた頃、ママが話を再開した。

「メム、記憶を消したっていうのは、実は便宜上そう言ってるだけなんじゃないかい? 本当に消していたら、メムの記憶を植え付けるように復活させても、その人の考えや感情は戻らない。でも、バクスも私もそれらの記憶が戻っている」
「バクスとママに関してはそう。その時の私のスキルは未熟だったから。今は完全に消せるし、その時みたいにもできるよ。でも、私に関することだけね。それ以外は自由に記憶を操作できるわけじゃないんだよね。例えば、相手の記憶を完全に破壊して、赤子同然のようにしたりはできない」

「なるほどね。じゃあ、相手に対して自分の実力以上に大きく見せることは? トラウマを植え付けたりとか」
「できるよ。でも、さっき二人が震えていたのは私の本当の実力だよ。バクスとママのオーラを感じたから急いで来て、私の今の実力を見てほしかったから、本気で殺気を放ったんだけど、感じ取ってくれて良かったぁ」
「俺は震えてないからな」

「いや、バクスも脚が震えてた。一晩中、私に絞り尽くされた時みたいに」
「あれ? 私が夜、『マリレイヴズ』に忍び込んで寝室を覗いた時も、セプト姉妹に絞り尽くされてたような……」
「捏造だろ! いや、そもそもなんで忍び込んでるんだよ! ずっとここにいたんじゃないのかよ! だから、『会いたかった』って言ったんじゃないのかよ!」
「だって、我慢できなかったし……。あれからどうしてるかなって思ったら居ても立っても居られなくなって……。ラウラちゃんとクウラちゃんみたいなバクスの子ども、早く欲しいな」
「いや、最高の娘とは言ったけど、俺の子どもじゃないから。そもそも異なる種族同士で妊娠できるか分からないし、生まれたら生まれたで差別とかあるかもしれないし……」

「人間の姿ならできるんじゃない? やってみれば分かることだよ。いいでしょ、バクス。もう冒険者や勇者として長旅することはないんだし、パパが守ってやればいいじゃない」
「どういうこと? 妊婦に負担は掛けたくないってことかな? でも、他の女の子とは……」

 俺が『まぁ、そういうことだよ』と返答する前に、ママが『ああ、それはね……』と言って、俺に聞こえないようにゴニョゴニョとメムに耳打ちした。耳打ちする必要あるか?

「そういうことかぁ! すごいよ! 素敵な考えだよ、ママ!」
「なんでママに言うんだよ」
「そりゃあ、私の教えだからでしょ」
「じゃあ、バクス。遊びでいいから、ね! 私、猫娘役! 楽しみだなぁ」

 メムは両手を口に当て、笑いを堪えているようだが、堪えきれずにクスクスと笑みが溢れていた。

「猫娘役って、そのままじゃないか。まぁ、いいけど……。と言うか、ずっとそのままの姿でいられるのか? 他の姿にはなれるのか?」
「どっちも、ううん。疲れるから、あんまりなりたくないけど、バクスに抱き付きたい時は、なろうかな。幸せを感じられるし」
「成長や寿命に関してはどうなんだい? 少なくとも、この十年で猫の時の体長は変化してないみたいだけど。いや……それよりも、なぜそこまで強くなれたのかを聞きたいね。何となく、それらは関係しているような気もするけど。ここで言う『強い』とは、他者と対峙した上で、その実力を以て殺せるっていう意味ね」
「流石、ママ。根っからの分析家だね。私の感覚の話で言うと、モンスターの寿命と強さは比例するんじゃないかと思うんだよね。しかも、後天的に交互作用する。で、基本的にモンスターの成長って言うか、強さは変わらないんだけど、例外が一つ。それは、人間を知ろうとする、近づこうとする気持ちが強くなればなるほど、なぜか強さが増すんだよ。私がバクス達と離れてから強くなったように、時間差は多少あるけどね。実際に知らなくても近づかなくてもいい。
 でも、洞窟Aや洞窟Bのモンスターも人間に興味はあって、それは討伐されたくないからなんだけど、ずっと討伐されずに洞窟に籠もっている個体ほど実は強いんだよね。もちろん、賢さも経験の蓄積で上昇してるんだろうけど、それだけでは説明できない強さを得てるんだよ。時に、我慢できずに冒険者の前に現れちゃうと、討伐されて、生き返るけど強さと賢さはリセットされるみたい」

「なるほどなぁ。コミュには自重させておいてなんだが、思いも寄らない所でモンスターの謎が解明されてしまった……。例の青い虎が強いのも頷ける。メムもママに影響されたのか、十分に理論家で分析家じゃないか」
「えへへ、ママはかっこいいからね。夜はギャップもあってかわいいし。バクスが大好きなのも分かるよ。ママが初めての相手だもんね」

「そういうことは言わなくていいんだよ!」
「でも、流行ってるし……」

「いや、流行ってないから! 悪の組織『マリレイヴズ』の幹部達によって、作られた流行だから!」
「じゃあ、流行ってるよね?」
「うん、流行ってる。間違いなく。私もバクスに初めてを捧げたし」

「こうやって、捏造されていくんだよ。ほとんど合ってる、半分合ってるとか言いながら」
「私も今日、初めてを捧げるからね。初めてを捧げる猫娘役として」

「いや、流石に洞窟内では無理だろ……。普通の討伐ならまだしも、魔壁挑戦の場合は、体力も時間も無駄にするようなものだし……」
「じゃあ、他のモンスターに移動手段になってもらおうか?」

「え? そんなことできるのかよ。モンスターがモンスターを使役するなんて、聞いたことないぞ。同レベルのモンスターしか洞窟内にいないってこともあると思うが」
「そうだね。使役って言うか、ほとんど脅しだよ。『死にたくなかったら言うことを聞いてね』って言うだけ。死を最も恐れている洞窟Aのモンスターなら当然従うよね。
 そこにプライドなんてないよ。プライドがあったら、引き籠もったりしないからね」
「コミュが少し触れてたんだけど、モンスターは命令されたら嬉しいものなのかい? それとも、波長を合わせないと、そういう感情にならないのかな?」
「これも私の感覚だけど、多分条件がありそう。波長を合わせなくても、圧倒的強者から自分の命を守ってもらえる前提の命令なら、嬉しいんじゃないかな。今回の場合は、当てはまると思う。
 でも、バクスも言ったように、洞窟内のモンスターレベルの構成上、普段はそれが成り立ち得ないんだよね。圧倒的強者がそこにはいないし、自分の命を脅かす存在はいないから。
 モンスター同士で戦ったりはしないんだよ。いくら戦っても成長しないし、無意味だから。それは私が経験した」

「うーん、マジで勉強になるなぁ……。とりあえず、どのモンスターを呼ぼうか……」
「バクス、私はここで帰るから、あとは自由に進んで。Aランクは確定だから。
 ありがと、メム。会えて本当に嬉しかった。監視官には、猫がリュックに忍び込んでたって報告しておくから、洞窟から出る時は、猫の姿で普通に出てきていいよ。記憶も消す必要はない。帰ってきたら、お祝いだからね。Aランク昇格と新たなパーティーメンバー候補との再会に」
「ありがとう、ママ! 私も嬉しかったよ! ギルドのみんなに会えるのを楽しみにしてるね!」

 俺とメムは繋いだ手はそのままに、ママに互いに手を振って、その場で別れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...