俺が追放した役立たずスキルの無能女どもが一流冒険者になって次々と出戻りを希望してくるんだが……

立沢るうど

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第二十五話……無能だったモンスターが新たなモンスターを呼び出したんだが……

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「この場合もギルド内規程に書かれてるのかなぁ?」
「お前、本当に最近まで『マリレイヴズ』に忍び込んでたんだな……。付いて行ける話題が新しすぎるだろ……。
 それはともかく、規程には当然書かれている。『魔壁挑戦時において、道中に想定外の挑戦者または侵入者が生存し、当該パーティーから当該人物へ、あるいは当該人物から当該パーティーに対して、合流を申し出て、合意に至った場合、そのいずれも、当該パーティーの評価に一切影響しないものとする』。
 つまり、途中でメンバーが増えてもズルにはならないってことだ。逆に言えば、それで失敗しても、人が増えたのに失敗した、あるいは人が増えたから失敗した、という評価にはならないってことだな。これは、人間国宝を定める法律でもそうなっている。ちなみに、魔壁挑戦は同じ洞窟で一組しかできないから、二組以上のパーティー同士が合流することはない。
 そして、人間以外がパーティーに加入することも考慮されている。『パーティーメンバー申請書(別紙)または変更届において、当該パーティーリーダーは、加入予定者である人間を含め、モンスター討伐に影響を与える生物が存在する場合は全て挙げ、当該パーティーリーダーまたはメンバーが当該人物または当該生物について、十分な支配下に置いていることを、当ギルド責任者および当該パーティーリーダーは確認および合意しなければならない。ただし、当該人物を完全な支配下に置いていると当該責任者が判断した場合、または事前事後にかかわらず、周囲の申し出を受け、総合的な評価により同じく認められる場合は、これを無効とする』とある。
 つまり、『誰だろうと何だろうと、そのパーティーにとっては仲間だろうから、ちゃんと申請してね。当然、パーティー内での指示はちゃんと聞くよね。でも、嫌がる人間を無理やり加入させるのはダメよ』ってことだ。
 これで質問には答えられたかな?」

「バクス、かっこいいー! 流石、バカにしてる!」
「定番のやり取りを省略するんじゃない!」

 俺達は笑い合って、身を寄せ合った後、先を進むことにした。

「『フェイタルヴェノムフリーレインパイソンディフェンスウォーター』の背中に乗ることは可能か? アイツなら洞窟内を効率良く、素早く進めるはずだが、体中から分泌する様々な致死毒をどうするかが問題なんだよなぁ……。
 俺達の身体と蛇の背中が接することになるから、水魔法での防御壁が展開しづらいし、分泌時の動作を見抜いても、毒を空中にばら撒いて操るから逃げ場がない」
「あー、あの巨大な蛇ね。ちょっと待ってて。呼び出して、どうすればいいか直接聞くから」

 メムはそう言ったものの、白猫に戻ってからは、その場からしばらく動かなかった。もしかして、記憶操作のスキルは遠隔使用もできるのか?

 それから五分後、その巨躯とは裏腹に、全く音もなく、洞窟の奥から巨大な黒い蛇が現れた。情報では知っていたが、洞窟の天井までの高さに匹敵する全長にもかかわらず、これだけ静かに現れると、多少はビビるなぁ……。流石、洞窟Aだ。

「みゃー、みゃみゃー」
「シュルシュル、シュルルル」

 会話のためか、猫の鳴き声と、蛇の舌舐めずり音だけが洞窟内に響き、人間の俺の目から見れば、とてもシュールな光景となっていた。
 そもそも、あの舌の動きが意思疎通のためにあるのかも疑問だ。周囲の状況を確認するためかもしれないじゃないか。
 そんな余計なことを俺が考えていると、話を終えたのか、メムが振り返って、猫娘の姿になった。
 それを見た蛇は、予想通り驚いていた。そりゃあ、誰だって驚く。

「乗せてくれるって。意識的に毒を出さないようにすることはできるけど、驚いた時や恐怖を感じた時には勝手に出ちゃうから、頭の上に乗るのがいいんじゃないかって。咄嗟の時に、そこから出たことはないらしいから」
「そうなのか……。もしかして、今も驚いてちょっと出たのかな……。頭に関しては新情報だ……。まぁ、それを活用できる気はしないんだが」

「一応、『嘘をついたり、毒を出したりして私達を殺そうとしたら、その瞬間に命はないからね』とは言ったけど、どうする?」
「オーケー。その言葉、信じようじゃないか。俺は自分から問題提起や解決策を提案してくれるヤツが好きなんだよ。もちろん、その賢明さから俺達を騙すことも考えられる。でも、俺達の願いを叶えてくれたら、『見返り』だってあるんだ。決して損はさせないぞ」

 俺の言葉と突き出した拳に応えるように、蛇がシュルシュルと舌を出し入れした。

「この子もバクスのこと気に入ったって。ごめんね、脅したりして。……え、そうなの? まぁ、やっぱりそう思うよね。それが分かんないんだよねぇ……。脱皮とかで何とかならないかなぁ?」
「…………。何を話してるんだ?」

「『私も人間になってバクスの子どもを産みたい。どうやったら人間になれる? 脱皮かぁ、なるほどね』だって」
「メスだったのか……。昆虫のサナギと違って、爬虫類の脱皮は、あくまで皮膚としてだから、そこまで変化できないんじゃないか? とは言え、脱皮と変化を結びつけて、強い思いとともに後天的なスキルに昇華させることは可能かもしれない。メムの話を聞いて、そう思った」

「『ありがとう、バクス! 考えてみる! 好き!』だって」
「うーん、姿とテンションのギャップもあって、かわいく思えてきたぞ。是非、頑張ってほしいな。
 ただ、念のために忠告しておくが、たとえ人間になれたとしても、洞窟の外にはそのまま出てくるなよ。虫一匹さえ見逃さない監視官に報告されて、討伐部隊が結成されるぞ。監視官を欺けるスキルがあってこそ、無事に俺に会いに来ることができるんだからな」

「『ありがとう、バクス! 大好き!』だって」
「ふふっ、俺もだよ。えーと……なんて呼ぶかは、その時が来てからにしようか。その方がモチベーションにもなるだろう」

 蛇はその巨躯をくねらせながら、かわいく喜んでいた。もう間違っても死なせられないな。あとで、偽『誰よりも前へ』が来ることも伝えておかないといけない。当然、みんなにも他の冒険者にも、このことを伝えて、俺の名前を出せば互いに協力できるようにしよう。

「……そうだ。確認しておきたいことがあった。お前はこれまで冒険者を殺したことがあるか?」
「『あ、そこ気になっちゃう?』って。ちなみに、私は傷つけたことさえないよ」

 コミュみたいな軽い反応をして、返事を渋る蛇。まさか……。

「…………」
「…………」

 しばらくの沈黙の後、蛇が舌をシュルシュルした。
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