俺が追放した役立たずスキルの無能女どもが一流冒険者になって次々と出戻りを希望してくるんだが……

立沢るうど

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第三十六話……一流冒険者パーティーの俺達は誰よりも前へ行くんだが……

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「早いもんだねぇ……。もう出発の日になるなんて」

 盛大なパーティーを終え、『トリプルAランクへの挑戦』を街中に触れ回り、身内への挨拶も済ませた俺達は、セントラルへの出発当日の未明に『マリレイヴズ』に集まっていた。
 ママは、いつものテンションを保とうとはしているものの、どこか哀愁が漂っているように感じる。

「確かに早く感じたかな。俺が物心付いてから、ママと長期間離れることはなかったからなぁ……。気持ちが少し浮足立っている気はする」
「いいかい、バクス。改めて言うよ。確認は大事だからね。
 絶対に無事に帰ってくること。
 パーティーメンバーの誰一人傷付けず、
 自分も傷付かず、
 制約を破ることなく、
 全ての目的を果たし、
 冒険を成功に導くこと。
 これは、トリプルAランクになるより、ずっと難しいことだ。そもそも、バクスはすでにトリプルAランクの資格がある。魔壁挑戦は余裕でクリア、ノウズ洞窟の謎を解き明かした上、制覇マップも作成済みだ。
 あとは、パーティーメンバーが二人ダブルAランクになるだけだが、それはみんなのスキルを以てすれば、魔壁一往復も楽勝だし、すぐにでも認定できる。
 だから……バクスが完璧な冒険をして戻ってきた暁には……トリプルAランクより上の、『レジェンドランク』を認定しようと思う……!」

「ありがとう、ママ。約束するよ。完璧で最高の冒険をして、ここに戻ってくる。そして、笑顔で抱き合いたい。今みたいに、寂しさの涙じゃなく、喜びの涙を流して……」

 ママは初め、淡々と話していたが、いつの間にか涙を浮かべていた。
 そして、俺の言葉で、それは決壊した。

「こんなに……こんなに寂しくなるなんて……心配になるなんて思ってなかった……! バクスなら大丈夫だと分かっているのに……! みんなのスキルがあれば、絶対に無事に帰ってこられると分かっているのに……!」

 感情を爆発させたママを見て、その場の全員が我慢できずに涙を流していた。
 これまでの日常ではない『日常』がやって来るからだ。
 いつも当たり前に側にいた人がいなくなる。これまでの楽しかった日常を経験し、その人が遠くで生きていると分かっていたとしても、その人がいない日常に不安を覚えるのだろう。

 俺は、泣きじゃくるママを目の当たりにして、彼女を抱き締めた上で、できるだけ冷静でいようとしたが、俺もその例に漏れず、涙が頬を伝っていた。

「俺も……俺も大好きな人達と離れることが、こんなに寂しいとは思わなかったさ……! パーティーメンバーと離れた時とは違う……! 理由は分かっているんだ……。でも、なんでこんなに……」
「やっぱり、家族だからじゃないかな……」

 ラウラが静かに言いながら、俺の脚にしがみついてきた。彼女も感情を抑えきれずに涙を流している。
 アクセラに抱かれたクウラを見ると、彼女も言葉にならないほど泣いている。

「ねぇ、パパ……。絶対に……絶対にみんなで帰ってきてね……!」
「もちろんだ。なんたって、俺はパパなんだからな。かわいいかわいい娘達に頼まれたら、それを叶えるのがパパの役目だ。
 それに、仕事を終えたら、家族の元に帰ってくるのが父親だ。そしたら、思う存分、遊んでやるからな!」

 俺はラウラとクウラ、順番に頭を撫でながら、その小さい体を優しく抱き締めた。

「バクス……私達も……家族……だよね……?」
「お腹の子も……」

 アクセラとリセラが、俺に涙ながらの不安そうな表情で確認してきた。

「もちろんだ。愛する二人の子どもをこの手に抱くまでは、死んでも死に切れないからな」
『ありがとう、バクス。愛してる!』

 セプト姉妹の心地良いハモリを聞けて俺も嬉しくなり、二人を同時に抱き締めた。

「時間だ……。それじゃあ、行ってきます……!」
『行ってらっしゃい!』

 俺は、コミュ、イシス、フォル、ディーズ、メム、フレウを『ゴッズドア』に入れ、ママ達に手を振りながら、ギルドの裏口に向かった。
 頬を伝う涙は、街の門を出るまで拭かなかった。その跡は、ここに戻ってきた時、真っ先に向かう場所への道標になるから。

「よし……。ここからは全身全霊、本気で行くぞ!」

 そして、門を通り抜けた俺は、『ゴッズドア』のみんなに改めて決意を表明し、ママに教えてもらったセントラルへの抜け道、『ノウズループホール』へ歩みを進めた。


 故郷を離れたら、どんな気持ちになるだろうと、昔から考えていた。
 門を出たら、一度も振り返らないで真っ直ぐ進もうと思っていた頃もあった。
 しかし、今の俺は何度も振り返ってしまう。
 寂しさもあるが、それ以上に嬉しいからだ。故郷を離れることが嬉しいからでは決してない。
 いつでも戻れる故郷が『そこにある』ことが嬉しいのだ。

 『誰よりも前へ』。
 進んだ先には何があるのだろうと考えたことがあった。
 その答えの一つが、今になって分かった気がした。

 ありがとう、『マリレイヴズ』。
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