30 / 34
エンドロール
ⅲ・水族館
しおりを挟む
世界に打ち捨てられた、残骸に出会った。
残骸は、静かに、だけど確かに、叫んでいた。
泣いているようでも、怒りをぶちまけているようでもあった。
だけれど、一体、だれに対して? 涙は、怒りは、どこへいくのだろう。
……ぼくは、その建てもののなかへ入っていった。
*
屋根はほとんど欠け落ちていたけれど、比較的おおきな一室があって、そこは屋根も、壁も、ほとんど無傷のまま残されていた。そこへ、入った。
部屋のなかは、異様に暗かった。ほとんど、足もとも、数歩先も、見えないくらいに、暗かった。
壁づたいに進むと、突如、曲がった先の壁の表面が、ぼんやりと灯かりがともったように、しかくく浮かびあがり、驚いた。
そこに見えたのは、青。色だった、青い色……
これが、世界で、ぼくがはじめて見た色、ということか……
だけどぼくが(いつか? かつて?)探していた青とは違う、この青は、深くて、重たくて、……かなしい青。
ガラスのなかで、その青だけが静かに、ゆっくりと、ゆれていた。
なかには、しろい砂粒がしかれているけど、なにも、ほかに、いない。
それからも、壁を折れるたびに、ちいさなしかく、おおきなしかくの、青いガラスが浮かび上がった。
どのガラスにも、やはりなにもいない。ただ、青く、ガラスの向こうで、きらきらゆれている……透明な……それは……
……
……ココへ ノコッテユクヨ……
だけど、ここは……
……サガシテイタモノハ ココニアッタミタイダ……
だけど、ここは、ほんとうの……ではないよ……
……モウキット ココニシカノコッテイナイノダロウ……
ほんとうに、いいのかい……
……イイヨ サア キミハ サキヘユクトイイ……
……だけど、ここは……
……タブン モウ アマリナガク ハ イラレナイト オモウンダ キミ モ……
うん、……だけど。ここは、すこしさみしいね。
……ココハ トジラレテイルケレド ココハ 海 ダ イッショニココへ トジラレテ タダ ネムリタインダ コノママ……
さよなら……
……サヨナラ
…………ラ
残骸は、静かに、だけど確かに、叫んでいた。
泣いているようでも、怒りをぶちまけているようでもあった。
だけれど、一体、だれに対して? 涙は、怒りは、どこへいくのだろう。
……ぼくは、その建てもののなかへ入っていった。
*
屋根はほとんど欠け落ちていたけれど、比較的おおきな一室があって、そこは屋根も、壁も、ほとんど無傷のまま残されていた。そこへ、入った。
部屋のなかは、異様に暗かった。ほとんど、足もとも、数歩先も、見えないくらいに、暗かった。
壁づたいに進むと、突如、曲がった先の壁の表面が、ぼんやりと灯かりがともったように、しかくく浮かびあがり、驚いた。
そこに見えたのは、青。色だった、青い色……
これが、世界で、ぼくがはじめて見た色、ということか……
だけどぼくが(いつか? かつて?)探していた青とは違う、この青は、深くて、重たくて、……かなしい青。
ガラスのなかで、その青だけが静かに、ゆっくりと、ゆれていた。
なかには、しろい砂粒がしかれているけど、なにも、ほかに、いない。
それからも、壁を折れるたびに、ちいさなしかく、おおきなしかくの、青いガラスが浮かび上がった。
どのガラスにも、やはりなにもいない。ただ、青く、ガラスの向こうで、きらきらゆれている……透明な……それは……
……
……ココへ ノコッテユクヨ……
だけど、ここは……
……サガシテイタモノハ ココニアッタミタイダ……
だけど、ここは、ほんとうの……ではないよ……
……モウキット ココニシカノコッテイナイノダロウ……
ほんとうに、いいのかい……
……イイヨ サア キミハ サキヘユクトイイ……
……だけど、ここは……
……タブン モウ アマリナガク ハ イラレナイト オモウンダ キミ モ……
うん、……だけど。ここは、すこしさみしいね。
……ココハ トジラレテイルケレド ココハ 海 ダ イッショニココへ トジラレテ タダ ネムリタインダ コノママ……
さよなら……
……サヨナラ
…………ラ
0
あなたにおすすめの小説
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
その怪談、お姉ちゃんにまかせて
藤香いつき
児童書・童話
小学5年生の月森イチカは、怖がりな妹・ニコのために、学校でウワサされる怪談を解いてきた。
「その怪談、お姉ちゃんにまかせて」
そのせいで、いつのまにか『霊感少女』なんて呼ばれている。
そんな彼女の前に現れたのは、学校一の人気者——会長・氷室冬也。
「霊感少女イチカくん。学校の七不思議を、きみの力で解いてほしい」
怪談を信じないイチカは断るけれど……?
イチカと冬也の小学生コンビが挑む、謎とホラーに満ちた七不思議ミステリー!
あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)
tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!!
作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など
・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。
小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね!
・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。
頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください!
特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します!
トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気!
人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる