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三章:一戦目【駅の中のアリス】
「無駄って何だよ!」
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「無駄って何だよ!」
グリンッと雪人から雪人が持つスマホ内の銀弧に顔を向けた刀夜が、カミつきそうな勢いで言う。本当、雪人が創ったAIだけあって、銀弧の口の悪さは雪人にそっくりだ。
だが、刀夜の声の音圧に銀弧はまったく動じる様子もなく(まあAIだから、そもそも「動じる」というプログラムが無いのかもしれないが)、顎を上げて小バカにしたような表情で見る。
すると今度は、刀夜が持っているスマホ内の銀弧が…。
ーー…
「無駄だから、無駄って言っているだけだけど。」
…と喋り出し、ここで人間さながらに一呼吸置くと…。
ーー…
「「だって、母親はもうとっくに死んでいるんだから。」」
…と刀夜・雪人、両方の銀弧が同時にそう告げた。
「ッ!?」× 2
これには刀夜だけでなく、雪人も目を見開いて驚く。互いに自分のスマホ内の銀弧をガン見した。
「……死んだッ?」
刀夜の聞き返しに銀弧は論より証拠とばかりに正面に拳をかざし、それを花が咲くがごとく静かに指を開いた。
現れたのは小さな光のスクリーン。それを今度はピンッと指で弾くと、スマホ画面いっぱいに拡がる。
「…ッ!」
……たぶん新聞記事だ。
それも新聞の一面……ではなく、隅に載せていたモノをこれまた拡大したようだった。だが何故、新聞社からのウェブニュースじゃないのか?
インターネットが普及するよりも、古いモノかとも思ったが違う。そこから察するに、ウェブニュースに載せるほどの大ネタではないのだろう。
そう。それ自体は年毎にに少なくなってきたとはいえ、まだ年間二万件近く起こるよくありがちな事件。
この記事だって、読者の目を引きそうな『珍しい毛色』だったから載ったようなものだ。
その記事の見出しはこうだった。
【元アイドルが、自らの子供を死体遺棄した駅のホームで自殺】
「…自殺ッ?!……駅ってッ。」
「もしかしなくても、ここだろうな。」
口を手で覆いながら呟く刀夜に、続けて雪人が言う。
そして二人とも、【駅の中のアリス】の起こした所業だと言われている一つを思い出す。
「アリスは赤の女王のように残酷に人間をホームから突き落とす」……と。
「……阿莉里ちゃんが、自分の母親をホームから突き落として……殺したッ?!」
リアルで幽霊が人を殺すなんて、ありえないことだとは解っているのに、思ったことが刀夜の口をつく。ゲームとリアルの境界線が揺らいで消えかかる。
横で雪人は、その記事を顔に近づけて読み込んでいる。
かいつまんで内容を説明するとこうだ。
約十年前(これを読んでいる今の時点から)。その当時、デビューしたてのまだ無名のアイドル・遠野 阿莉里こと本名・遠野 文代が、周囲に内緒で出産し、その生まれてまもない女児を駅のロッカーに放置した。
すぐには捕まらなかったもののその後、適切な処置もなく産んだため仕事中に倒れて入院。
その入院先で、身体に記録に無い出産した痕跡があったため、不信に思った病院関係者が警察に通報。
ロッカーから発見された女児とこの遠野 文代のDNAを調べた結果、親子だと判明。すぐに遠野 文代は遺体遺棄の罪で捕まった。
そして裁判となったが、実刑は免れる。
けれどもアイドルとしては致命的となり、当たり前だが引退においこまれる。
それから約八年経ち(今から二年前)、今になって遠野 文代は自分が女児を遺体遺棄した駅のホームから、入ってきた電車めがけて飛び込み自殺をした…。
(………赤ん坊がくるまれていたタオルに「阿莉里」と書いてあったのは、子供の名前じゃなく自分の芸名だったのかよ…。)
雪人は銀弧に、遠野 文代が自分の子を死体遺棄した当時の情報も検索するように言う。
グリンッと雪人から雪人が持つスマホ内の銀弧に顔を向けた刀夜が、カミつきそうな勢いで言う。本当、雪人が創ったAIだけあって、銀弧の口の悪さは雪人にそっくりだ。
だが、刀夜の声の音圧に銀弧はまったく動じる様子もなく(まあAIだから、そもそも「動じる」というプログラムが無いのかもしれないが)、顎を上げて小バカにしたような表情で見る。
すると今度は、刀夜が持っているスマホ内の銀弧が…。
ーー…
「無駄だから、無駄って言っているだけだけど。」
…と喋り出し、ここで人間さながらに一呼吸置くと…。
ーー…
「「だって、母親はもうとっくに死んでいるんだから。」」
…と刀夜・雪人、両方の銀弧が同時にそう告げた。
「ッ!?」× 2
これには刀夜だけでなく、雪人も目を見開いて驚く。互いに自分のスマホ内の銀弧をガン見した。
「……死んだッ?」
刀夜の聞き返しに銀弧は論より証拠とばかりに正面に拳をかざし、それを花が咲くがごとく静かに指を開いた。
現れたのは小さな光のスクリーン。それを今度はピンッと指で弾くと、スマホ画面いっぱいに拡がる。
「…ッ!」
……たぶん新聞記事だ。
それも新聞の一面……ではなく、隅に載せていたモノをこれまた拡大したようだった。だが何故、新聞社からのウェブニュースじゃないのか?
インターネットが普及するよりも、古いモノかとも思ったが違う。そこから察するに、ウェブニュースに載せるほどの大ネタではないのだろう。
そう。それ自体は年毎にに少なくなってきたとはいえ、まだ年間二万件近く起こるよくありがちな事件。
この記事だって、読者の目を引きそうな『珍しい毛色』だったから載ったようなものだ。
その記事の見出しはこうだった。
【元アイドルが、自らの子供を死体遺棄した駅のホームで自殺】
「…自殺ッ?!……駅ってッ。」
「もしかしなくても、ここだろうな。」
口を手で覆いながら呟く刀夜に、続けて雪人が言う。
そして二人とも、【駅の中のアリス】の起こした所業だと言われている一つを思い出す。
「アリスは赤の女王のように残酷に人間をホームから突き落とす」……と。
「……阿莉里ちゃんが、自分の母親をホームから突き落として……殺したッ?!」
リアルで幽霊が人を殺すなんて、ありえないことだとは解っているのに、思ったことが刀夜の口をつく。ゲームとリアルの境界線が揺らいで消えかかる。
横で雪人は、その記事を顔に近づけて読み込んでいる。
かいつまんで内容を説明するとこうだ。
約十年前(これを読んでいる今の時点から)。その当時、デビューしたてのまだ無名のアイドル・遠野 阿莉里こと本名・遠野 文代が、周囲に内緒で出産し、その生まれてまもない女児を駅のロッカーに放置した。
すぐには捕まらなかったもののその後、適切な処置もなく産んだため仕事中に倒れて入院。
その入院先で、身体に記録に無い出産した痕跡があったため、不信に思った病院関係者が警察に通報。
ロッカーから発見された女児とこの遠野 文代のDNAを調べた結果、親子だと判明。すぐに遠野 文代は遺体遺棄の罪で捕まった。
そして裁判となったが、実刑は免れる。
けれどもアイドルとしては致命的となり、当たり前だが引退においこまれる。
それから約八年経ち(今から二年前)、今になって遠野 文代は自分が女児を遺体遺棄した駅のホームから、入ってきた電車めがけて飛び込み自殺をした…。
(………赤ん坊がくるまれていたタオルに「阿莉里」と書いてあったのは、子供の名前じゃなく自分の芸名だったのかよ…。)
雪人は銀弧に、遠野 文代が自分の子を死体遺棄した当時の情報も検索するように言う。
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