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魔都★妖刀夜行
Ⅴ プレー
しおりを挟む「妾こそが、この地域一帯の河童を統べる者。海御前じゃ………ちょっ!何じゃっ、その生温かい目はっ?!」
決め台詞の途中で、真白のイタイモノを見る表情に気づく海御前。だが、真白をそんな顔にさせる要因は海御前の方にあった。
海の中でうねる黒く身長よりも長い髪。寒色系を重ねた十二単の打掛。ここまではいいとして……問題は中身。なんと打掛の下は、スクール水着の幼女だった。それも、胸のところに手書きで「うみごぜん」と、ご丁寧に名前が書いてある。
海御前、その視線に耐えられないのか、両手で自分を抱きしめるように胸の名前を隠す。
「止めろ!そんな目で見るなっ!」
涙目で真っ赤になる海御前。
「いやーーぁ。海御前サマ、チョーイタ……カワイイからつい(棒読み)」
「だっ、だから違うっ!お前も分かっておろうっ。これはっ、妾の本当の姿では無いっ!」
「えーー、恥ずかしがんないでいいじゃないですかーぁ。スッゴーーーーーく似合ってますよ…プッ!あ、すみません(笑)」
ニヤける口元を手で隠す真白。
「もぉぉぉうっ!許さんっっ!!」
恥ずかしさと怒りで海御前が怒髪した。
「お前らっ!あやつを喰らいつくせっ!」
海御前の命令で、何処からともなく現れた河童たち。その数、数百匹。いくら真白でも、この数は一瞬怯んだ。
(…コレは時間経過で敵数が増えて、難易度が変化するクエスト…か? 多分コイツは、初心者用のボス。俺が空月をパーティに入れたことか、ゲームを始めて1ヶ月経ったことか、それとも両方でフラグが立った…ってところだろうな。……チッ!クエスト選択も誘導されたな)
河童たちを警戒しつつ、勘案する真白。その表情に海御前は「ほう」と一見見直す。
「ただの馬鹿では無いようじゃのう」
「言ってろッ!」
ここでの最適解は、河童たちを操っている海御前を最優で倒すこと。司令塔さえいなくなれば、これ以上河童が増えることはなくなるだろう。真白は巨大ハンマーを振りかぶろうとした……が。
「ッ!?」
さっきまで軽々と振っていたはずのハンマーが持ち上がらない。確かに水中ということもあるだろうが、それにしても…。
真白は重くなったハンマーに視線を落とす。するとそこには、無数の蟹がハンマーを覆っていた。
「河童たちに気を取られて、気づけかったとみえる」
着物の裾で口を抑え、海御前がクスクスと笑った。
「クソッ! 河童討伐に、蟹が出て来るのは反則だろッ!」
唸る真白。
真白は知らなかったが、海御前は平安時代の末期にあった壇ノ浦の戦いで敗れた平家の奥方が海に身を投じ、その亡骸が福岡に流れついたことで怪異に転じたものだ。河童たちは、奥方と共に身を投げた女官たちと言われている。
そして蟹たちは、同じくこの戦いで戦死した平家の武将たちの化身とされている。それが証拠に、大量の蟹の甲羅全部に、苦悶に満ちた人面が浮き出ていた。
「何事も不測の事態が発生するものじゃ。じゃから、事にあたる前に、コンティンジェンシープランを考えてだな…」
「妖怪が横文字、使ってんじゃねえッ!」
説教する海御前に、食い気味に怒髪しながらツッコむ真白。ここでやっと空月が言っていた意味が分かった気がした。
思えば組合所の掲示板で、初めて二人で「河童討伐」のクエストを見つけた時、真白は真っ先に報酬額に食いついた。報酬額が良いということは、レベルアップもしやすいからだ。真白は、どうしても早く強くなりたかった。
だが、空月は妙に引っ掛かっていた。
低レベルのクエストに似合わない高額報酬。河童と言えば川のイメージがあるが、討伐先が海岸と記載してあったからだ。
(…ハッ。確かに無策のソロは、馬鹿の極み……だったかもな)
自嘲気味に笑う真白。珍しく少し後悔しているようだ。
けれど諦めたわけでは無い。ハンマーを持つ手に最大に力を込める。
互いを互いの足やハサミで結束し合っていた蟹たちだったが、真白の馬鹿力にどんどん海底から引き剥がされていく。
真白のこのアバター、筋力値とHPだけは高い。
「うりゃあァァァッ!!」
ブーーーーンッッ!
何とか蟹たちを剥がしきることに成功する……も。
「遅い」
海御前がニタリと笑い、人差し指を振って一斉攻撃の命令を河童たちに下す。
命に従った河童たちが、真白を覆い噛みついた。
痛みは無い。だがアバターである人狼の体は、赤い光の粒子をバラまきながら少しずつ河童たちの体内へと取り込まれていく。
河童たちの数の力は強く、今度こそ引き剥がせない。真白の視野が、ガンガン減っていくH Pゲージ表示を残し、食い散らかす河童たちで埋めつくされようとしていた。
(クソッ!クソッ!クソッ!……ここまでかッ)
ギリギリと歯軋りするなか、カジられて凹凸が無くなった耳に声が聞こえた。
「真白ッ!」
空月だった。
腰の刀を抜刀しながら、水中を物凄いスピードで此方に向かってくる。
真白は、まだ食われていない喉を振り絞って叫んだ。
「う、海御前を狙えッ!」
その声が聞こえたのか、真白の狭い視野から空月が消えた。
次に真白の耳に届いたのは…。
「ぎゃあぁぁぁッ!!」
海御前の悲鳴。
それが最後に、真白の意識は闇にフェイドアウトしていった……。
★☆★
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