魔都★妖刀夜行 ~現代にて最強最悪の陰陽師がVRゲームを創っちゃった!~

神嘗 歪

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魔都★妖刀夜行

Ⅵ プレー

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ーー…陰の一条・宿屋。


 気づけは真白はベッドの上で横たわっていた。
 空月が助けに入ったものの(パーティを組んでいるプレイヤーなら、バトル中に途中参加可)間に合わず死んだようだ。

「…ツッ!」

  バンッ! バンッ! バンッ!

 片腕で目を覆い、もう片手で思いっきりベッドを叩く。
 悔しくて悔しくてたまらない。こんな初歩の初歩でつまずいている場合ではないのに…ッ。


 ーー…十数分後。


 八つ当たりで部屋で暴れまくった真白は、その部屋を出て一階に下りる。(宿屋の部屋は破壊不能になっているので、どんなに暴れても壊れることはない)
 ロビーには空月が待ち構えいた。
 が、真白は無言で空月の前と通り過ぎ、出口に向かってズンズンと進んでいく。

「待て!待て!待て!」

 空月は、思わず真白の尻尾をムスッと掴んだ。

「……尻尾、引っ張んな」

 あからさまに不機嫌な顔の真白が、空月を睨みつけた。

「どこ行くんだよ」

「あのロリ河童に、リトライしに決まってんだろッ」

「馬鹿っ、忘れたのか。一度死ぬと、デスペナルティでその日一日、クエスト受注出来なくなるんだろ」

 そう、このゲーム内でのデスペナルティは、経験値の減少、アイテムの消失、ステータスの一時的な低下などは無いが、即日リトライ&他のクエスト受注も出来なくなる。
 まあ、「頭を冷やして、対策を練ってから挑めよ」とい運営側の意図なのだろう。
 忌々しげに舌打ちをする真白。それを見た空月は、しょうがないとばかりに、小さく溜め息をつく。

「場所を変えよう。美味しい和菓子を買ってきたんだ。食べながら今後の方針を考えよう」

 ポンっと真白の肩を叩く空月。

「おい!まさか。買い物なんぞでクエストに遅刻しかのかよ!」

「遅刻なんてしてねぇーよ!真白が勝手におっ始めたんだろうがっ!」

「時間?!知らねぇーし!つか、ゲーム内ではプレイヤーネームの「ハク」で呼べ!」

「なーにが偉そうに「ハク」だ!お前みたいな犬コロ、「シロ」で十分だ!」

「ハクっつてんだろ!」

「うるさい、シロ!」

 …………

 …


 ギャーギャー言い合いながら宿屋を出ていく二人。
 その二人をフロントの可愛らしいNPCが「いってらっしゃいませ」とニコやかに送り出してくれた。


 ……………………………



ーー…場所が変わって、陰・一条の中央公園。


 二人は綺麗に整備された日本庭園で、大きな石の上に腰を下ろしていた。
 その横には、赤や白や金色の錦鯉が優雅に泳いでいる池があり、空に浮かぶ大きな月が映りこんでいる。
 ここは城跡を公園にしたという設定で、日本庭園の他、お堀や石垣があったりする。

「やべっ。これ、うまっ!」

 ねぼけ堂で買って来た水無月という和菓子を、一口食べた真白こと…白は、ケモノミミをピンと立て、尻尾をブンブン振った。
 このゲームを始めて数日経つが、日本の風景に人狼というミスマッチは、なかなか慣れない。そんなことを思いながら「だろっ」と答えると空月。そして、ショートケーキのような形の水無月を、手づかみでパクッと食べた。
 白いういろうは冷たくモッチリ。上に乗った小豆が上品な甘さで、初夏に向かう今にピッタリだ。

(この味の再現度、スゴいな!とはいえ本物はまだ食べたことないから、今度リアルでポチッてみよう)

 密かにそう思う空月。ふと横を見ると、白が食べかけの水無月を片手に、不思議そうに自分の体を見回している。

「なぁ、空月…」

「やっぱり、『効果』があったか」

 空月も水無月を持っていない手を見つめ、機動を確かめるようにグーパーグーパーした。
 
「昔から水無月は、食べると罪や穢れを払い、小豆は魔除けになると言われている。リアルの宣伝用の食べ物でもゲーム内であれば、その食べ物由来の『効果』があるんじゃないかと思ったんだ」

 確かに体が軽くなった。白は、自分のステータスを確認する。
 すると、緑の帯のH Pゲージに、一時的効果を意味する赤い帯が+10と記載して伸びていた。他に見ていくと、精神異常無効化と記載がある。そのせいか、食べた直後から、あのなにイライラしていた気持ちが落ち着いている。
 そうなると反対に魔除けの効果で、敵の怪異に食べさせることが出来れば、何かしらの悪影響を与えることができるんじゃないかと思う白。

「公式には無かったよな? 隠れアイテムってやつか?」

「だな。それも期間限定商品で、初心者だらけの陽の一条でしか売ってないから、知っているヤツはほとんどいないじゃないか」

 本当なら、今回のクエストで能力値向上アイテムとして使用するつもりだったが………ワンコロの機嫌直しおやつになってしまった。

「美味くて、強くなれるって、最高じゃんっ♪」

 喜ぶ白に「ま、いっか」と思う空月。それに…。

(…よし。今なら言っても大丈夫かな…)

「でだなぁ、お前に伝えなくちゃいけないことがあるんだが…」

「ん?」

 最後の一口を口に放り込んだ白が空月を見る。けれど空月は、目を合わすのを躊躇うように視線を泳がせた。

「海御前のこと……なんだが、さっきのクエストで勢いあまって、討伐………完了しちまった」


   「はぁ?!」


 歯切れの悪い口調で暴露する空月に、聞き返しながら白が詰め寄る。
 このゲームではパーティで挑んだ場合、全滅か全員で逃亡でクエスト失敗となる。言い返すと、パーティが一人でも残っていて、敵を倒し切ればクエスト達成となる。だがその場合、戦利品&レベルアップの恩恵を受けるのは生存者のみとなっていた。
 死亡した者は次の日にリトライできるが、クエスト達成した者とは一緒には挑めない。ソロか、別のプレイヤーとパーティを組むしかないのだが…。
 今日戦って、よくわかった。ソロで戦うには、白は力不足だ。海御前と戦うなら、もっとレベルアップを重ねないと無理だろう。チマチマとレベルを増やしていけば、いつかは倒せる相手だ。だが、それではのだ。
 かといって、こちら…陰での他のプレイヤーは、空月以外は白にとって。パーティを組むなど、あり得ない話だ。

「なんだよ、それッ!」

 バッと立ち上がった白。
 白は、行動は短絡的ではあるが、決してゲームセンスが悪い訳ではない。、こんな初歩でレベルアップが頭打ちになっていた。
 それを、空月を無理矢理参加させたことで、解消できるかと思ったのに、これでは元の木阿弥だ。いや、それどころか、ゲームを初めて数日のヤツにレベルで抜かされ、こっちが足手まといになっている。
 白は、空月の腰に差す刀に視線を落とす。一度、水無月でフラットになった神経が、怒りで激しくザワついた。

「そう、落ち込むなって。海御前は手伝えないが、明後日の土曜日にアップデートで実装されるであろう『風鈴女』なら一緒に戦える。『風鈴女』を倒せば、そのレベルアップで海御前もソロでも倒せるかもしれない」

「そういうが、実装も噂で公式に発表されたわけじゃねぇッ。実装されたとしても、俺が戦えるランクになるとは限らないだろッ?!」

「多分なるよ。怪異の決定条件とランクは、その知名度と被害規模で決まるって、初めのチュートリアルでも説明していただろ? 昔からいる妖怪とかとは違って、ネットで噂が急上昇しているが、発生して日が浅い。被害もまだ大したことないみたいだし。準備をしっかりすれば大丈夫」

 この時まだ大学生たちが『風鈴女』に呪い殺されたことを知らない空月は、そう結論付ける。

「準備って、何するんだ? レベリングか?」

「レベリングも大事だけど、それより情報収集かな」

「はあ? 実装もしてないのに、情報収集もクソもねぇだろ」

 空月は、白の言葉に呆れた顔をした。

「お前、ほんんんーーーっと、話を聞いてないな。片目ナビニャンも言ってただろ、怪異っていうのは、存在するためには人から人へと恐怖のネットワークを構築するための『語り』が必要だって。そしてその『語り』のなかに、倒すヒントや弱点が隠されいる場合が多いって」

「そういえば、そんなこと言っていたな……」

 腕組みをして考え込む白。数秒後…。

「わかった!情報収集だな!」

 白は、ウンウンと一人で大きく頷く。

(…………………本当に分かってんのかなーーぁ)

 メチャクチャ不安を覚える空月。


 ……………………………


 次の日。
 そして、その不安が的中する。
 白との連絡が、まったく取れなくなったのだ…。
 空月は自分の部屋で、スマホを持ったまま頭を抱えて「…マジかぁ」と呟いた。






           ☆★☆
 
 
 

 
 
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