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23話 心の奥に潜むもの
しおりを挟む[悠里]
「ほな行くで、小僧!」自分の筋肉を見つけてるかのように上半身裸の真っ黒なマッスルが僕に向かって捕まえるように迫ってきた。
(やば、足の筋肉も凄いからか、スピードが速い!” 戦車みたいだ!)
硬く頑丈なものが僕に向かって突進してくるみたいで、これに掴まれてギュッと抱きしめられたら背骨をボッキボキに折られちゃう。
と想像しただけでゾッとし、全力で避けることに集中した。
ギリギリ右にステップで避け、出来るだけ離れた。
(これ、無駄に攻撃して足を掴まれたら簡単に投げられちゃうよ。)
ぼくはどうしようかと頭を巡らした。
それからもタックルしてくる度に避け続けた。
「もう、避けてるだけじゃ、おれが楽しめないじゃん」とマッスルポーズで。
「そんなの知らない、てか、そんなに筋肉見せつけるなら、ボディビルダーになれば良かったじゃん。」
突然、男は今まで笑顔が多かった表情から、急に眉間に皺を寄せ、怒った表情になった。 そしてとてつもない威圧感を放ちながら僕に向かってきた。
(あれ、なんかまずい事言った?)
いつも通り横に避け安心していた直後に、背後からハンマーで殴られたかのような衝撃が来た。
「グハッ......」と口が自然と開き、メキッ.......と背中の骨が軋む音と共に、衝撃で前に5メートルほど飛ばされた。
(やばい!)
「そいつに、ボディビルダーの事を言うのはやめた方がいいで」と近くでみさきと戦っている長身の男が言った。 「え、なんで?」
男が話そうとした瞬間、「こっちに集中しろよ!」とみさきが容赦ないナイフ捌きで男の頬を一発斬った。
「そうや、悠里くん俺との特訓を思い出してみいや、役に立つで。 あともう人を殺してるから手遅れやで」切られても平然と言った。
「黙れ! 耳を貸しちゃダメだよ! ゆうりくん!」
みさきが男を遠ざけようと、片方のナイフをしまい、男の胸ぐらを掴み、奥の方に投げようとしていた。
(そうだよね、もう手遅れだよね。 でも人を殺さないと道哉君と決めたんだ。)と心臓がドキッとし、強敵を前に心がグラグラで、罪悪感のせいで昔に戻りそうになった。
「坊や! おれを侮辱しやがって! 許さないぞ!」とまた突進してくる。
(なんか怒り方が子供みたい。)
また僕に向かって突進してくる。
(やばい! 来た!)自然と鼓動が早くなる。
(避けてばっかじゃだめだ!)と決心し、手をギュッと力強く握り、勇気を振り絞って185センチほどの身長の男に向かって大きくジャンプした。
バサッと馬飛びで自分の股間が頭スレスレに空中を舞い、なんとか避ける事ができた。
着地の瞬間に振り返り、男の背中を追う。 男が止まる前に背中に向けて、踏み出す足を力いっぱいに地面を蹴り上げ、飛び蹴りをした。
食らった男は、すごいスピードを急に止まろうとしても止まれず、前方に体重を乗せているためか、バランスを崩し顔から前に倒れた。
「スピードの出しすぎで、止まれなかったんだね。 足を鍛えても駄目だったね」
と倒れ身動きしない男に近づきながら言った。
(よし、今の内だ! ナイフで刺そう?その方が早く終わるよ)
長身の男の誘惑に負け、人を殺していた時に戻りそうになっていた。
近づくと男は振り返り、バッとマッスルとは思えない動きの速さで立ち上がった。
「勝ったと思ったかい? まだだよ!」と僕の目の前に立ち、ガシッと首が折れそうな力で絞めてきた。
持ち上げられ、「かはっかはっ」と何とか息をするように喘いだ。
(苦しい! 死んじゃう!)
どんどんと目の前が暗くなっていき、意識が遠のいてきた。
そしてついに、目を閉じ意識が無くなった。
【友樹】
少し前
周りがガヤガヤと俺らと殺し屋が入り乱れるように争っていた。
周囲を見回し、目の前で殺し屋に薙刀で殺されそうになっている仲間を見つけ、全速力で向かった。
「おりゃあああ!」
と奴の横っ面を思いっきりぶん殴る。 当たった瞬間、拳にしっかりと手ごたえを感じ、いつもの痛みが来た。
殴られた男は、勢いで盛大に倒れた。 それから腹に鉄パイプで何度も殴った。
「大丈夫か! 仁!」
「ありがとう、助かった!」
「気を抜くなよ! いつもの喧嘩よりもこれはあぶねえ!」と仁に伝え、殺し屋をぶっ飛ばしに回った。
すると丸い円の様な空間があった。 そこには上半身裸のマッチョが悠里の首を片手で掴んでいた。
(悠里さん! しかも気を失ってる!)
何が起こっているのか分からない状態で、勇気を振り絞りマッチョに向かって飛び出す。
「おりゃああああ! 手ぇ離せ!」
手汗いっぱいの握った鉄パイプをマッチョの頭に思いっきり上から振り下ろした。
ごん!と響いたのに、平然と立っていた。
悠里を掴みながら、「君はなんだね? 死にたいのかな?」と笑顔でおれを見下ろしていた。
とんでもない威圧感で、恐怖で足が震えだし、勝手に「ジョボジョボ」とお漏らしをしていた。
(こんな奴と戦っていたのかよ!)と戦意喪失しそうになった。
「お漏らしは恥ずかしい事じゃないよ。 俺だって子供の頃したんだから」
お構いなしにマッスルは悠里さんを手から落とし、俺に向かい合いググッと右の大振りをしようとした。
「やめてくれ、やめてくれ」
(あー、ダメかもおれ。)と恐怖で動かなった。
すると恐怖で動かなくなった状態で、何者かが目の前でマッチョの横腹にナイフを刺した。
「うわあああああ! いってえ!」
とマッチョは腕を下ろし叫んだ。
(助かったのか? てか悠里さん?)
目の前でナイフを握り関わってはダメな雰囲気を醸し出す悠里さんがいた。
(悠里さん? でもいつもと明らかに雰囲気が違う!)
(続く)
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