タラシの俺が、ボーイッシュな幼なじみに恋をした

家紋武範

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しっ

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10時ギリギリにチェックアウト。
ホテルを出てお姉さんの車で、昨日見れなかった近所の海を見に行く。
無料駐車場に止めて砂浜に向かう途中で大きなあくび。
海はいい。この広さとか音が心を落ち着かせてくれる。

「タケルくん、お泊まり大丈夫だっの?」

何を今さら。

「親には友だちとゲームしに泊まりに行くっていってるっス」
「へー。信頼されてるね」

「良い子なんで」
「良い子か~」

二人でしばらく海を見つめていた。
なんだろ。令に会いたい気持ちがまた強くなる。
一緒にこの海を見ていたい気持ちが。

「高三だもんね。受験?」
「ですね。まぁ勉強は出来るんで」

「大学行くの」
「はい」

とりとめの無い会話と風の音。
砂浜にはまばらに人。釣り人とかカップルとか。
お姉さんがある一団に気付いて声をかけてくる。

「あの子たちって、タケルくんと同じくらいじゃない? 部活かな? 陸上部でしょ。私も昔陸上やってたんだよね。あれ? 先頭の子って男の子かな? じゃなーい。女の子だー。へー。カッコいい子」

その声に、時間が止まる。
たしかに陸上部の練習なのかも知れない。
砂浜で足腰を鍛えるための。
問題はそこじゃない。先頭にいる人物──。
紛れもない。令だった。

近づいてくるにつれ、アイツも気付いたらしく、小さく手を上げたが軽蔑したような顔をして視線をそらす。
オレの顔がみるみる青ざめていったに違いない。

「知り合い? 同級生だった?」

令に会いたい。一緒に海を見たいと思ったけど、最悪。
一番最悪なシチュエーション。
昨日と女が違う。
出来ることなら時間を戻したかった──。
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