12 / 19
じゅうにっ
しおりを挟む
令の後ろ姿が離れていく。
駅の方へと。
さすがに早い。陸上部の脚力。
感心してられない。ホームにでも飛びこまれでもしたら。
心配が頭を支配する。
駅に向かう薄暗い公園。
見覚えのあるアウターとキャップ。
それを着たヤツがベンチに座っている。
完全に肩を落として泣いていた。
やめろよ。令──。
お前が哀しいと、オレまで。
オレまで──。
そうだよな。
好きだったよな。
あんなに嬉しそうなお前見たこと無いもの。
苦笑いしてゴメンな。
真剣なお前の思いをスルーしてゴメンな。
令のベンチの横に座り、二人とも無言。
たが互いに泣いていた。
互いに。
切なくて苦しい令の気持ちがオレの中にまで入って来てしまった。
そしてオレの気持ちまでも。
どうにもならない思いが溢れて、涙を流してしまったんだ。
令がどう思ったのか分からない。
ただオレの肩に頭を倒して来た。
オレもその頭に自分の頭を傾ける。
互いにもたれ合って泣いた。泣きつくした。
どちらも哀しくて言葉を発せられなかったが、ようやく大きく息をついたのは令。
「タケルが泣くのはお門違いじゃない? ふふ」
それでも涙が止まらない。
令の辛くても、強がらなくちゃならない気持ちが伝わる。
「あは。カッコいい顔が台無しだよ」
令が差し出すハンカチ。オレが令をなぐさめなくちゃいけないのに。
なんでこんなに令は優しくしてくれるんだ?
「ありがと。タケル。そばにいてくれて。ホントは最初に来た時、絶対無理って思ったのに、タケルも泣いてるんだもん。あ~おかしい」
「笑うなよ……。いっぱい泣いていいんだぞ。今日は泣いちまえ」
「……うん」
令はオレの胸に頭を倒して顔を押し付ける。
幾分落ち着いたオレは唇を震わせながら令の髪に触れていた。
オレたちは子どもだ。
令は大人にいいようにされて、オレは女に誘われるまま抱き続けた。
気付かなかったんだ。
オレは令に恋を教えてもらうまで。
それまでのオレはクソ野郎だった。
変われたのは令のおかげだ。
令はオレの天使。
このまま胸の中に溶かして入れてしまえればいいのに。
そうすればずっとずっと二人は一緒にいれるのに。
「ありがと」
「うん」
「落ち着いた」
「そうか」
「やっぱイケメン」
「あのな」
「ふふ」
「ははは」
令の恋は終った。
少し遅かったし、失ったものもある。
それは三年間の師弟関係。
思い出も実績も全てにケチがついた。
あの部活に打ち込んだ青春を思い出すたびに、クソ教師を思い出さなくちゃならないんだろう。
それは余りにもヒドい。
令の気持ちを考えたら、哀しくて仕方ない。
「レイ」
「ん?」
「心配すんな。オレがいつもそばにいるよ」
「ご近所さんだから?」
「ああそうだよ」
「ふふ」
「ずっとずっとそばにいる」
「それじゃタケルと結婚しなくちゃならないじゃん?」
「……そうだよ」
「えーやだ~」
「いやなの?」
「だってずっと男っていじられそうだもん」
「オレ一言でもそんなこと言ったか?」
「言った」
「言ったなぁ」
「プ」
「ふふ」
そっと令の手の上に、オレの手を乗せる。
彼女のぬくもりが伝わってくる。
同時に好きな気持ちも。
「本当だよ。令の一生を支えていたい。本当の気持ち」
「うそ」
「うそじゃない」
「やだぁ」
令は黙ってしまった。
そんな令をオレは見つめていた。
「ありがと」
「いや」
「なぐさめてくれて」
「なぐさめじゃねーけどな」
「はー。泣いた。じゃ帰ろ」
「そうだな」
立ち上がって駅へ向かう。
オレは令の手を握ったまま。
自然と令もそれを握り返す。
オレたちは心が通じ合ったのかもしれない。
こうして歩いていくんだ。
未来へ。
一歩、一歩と──。
駅の方へと。
さすがに早い。陸上部の脚力。
感心してられない。ホームにでも飛びこまれでもしたら。
心配が頭を支配する。
駅に向かう薄暗い公園。
見覚えのあるアウターとキャップ。
それを着たヤツがベンチに座っている。
完全に肩を落として泣いていた。
やめろよ。令──。
お前が哀しいと、オレまで。
オレまで──。
そうだよな。
好きだったよな。
あんなに嬉しそうなお前見たこと無いもの。
苦笑いしてゴメンな。
真剣なお前の思いをスルーしてゴメンな。
令のベンチの横に座り、二人とも無言。
たが互いに泣いていた。
互いに。
切なくて苦しい令の気持ちがオレの中にまで入って来てしまった。
そしてオレの気持ちまでも。
どうにもならない思いが溢れて、涙を流してしまったんだ。
令がどう思ったのか分からない。
ただオレの肩に頭を倒して来た。
オレもその頭に自分の頭を傾ける。
互いにもたれ合って泣いた。泣きつくした。
どちらも哀しくて言葉を発せられなかったが、ようやく大きく息をついたのは令。
「タケルが泣くのはお門違いじゃない? ふふ」
それでも涙が止まらない。
令の辛くても、強がらなくちゃならない気持ちが伝わる。
「あは。カッコいい顔が台無しだよ」
令が差し出すハンカチ。オレが令をなぐさめなくちゃいけないのに。
なんでこんなに令は優しくしてくれるんだ?
「ありがと。タケル。そばにいてくれて。ホントは最初に来た時、絶対無理って思ったのに、タケルも泣いてるんだもん。あ~おかしい」
「笑うなよ……。いっぱい泣いていいんだぞ。今日は泣いちまえ」
「……うん」
令はオレの胸に頭を倒して顔を押し付ける。
幾分落ち着いたオレは唇を震わせながら令の髪に触れていた。
オレたちは子どもだ。
令は大人にいいようにされて、オレは女に誘われるまま抱き続けた。
気付かなかったんだ。
オレは令に恋を教えてもらうまで。
それまでのオレはクソ野郎だった。
変われたのは令のおかげだ。
令はオレの天使。
このまま胸の中に溶かして入れてしまえればいいのに。
そうすればずっとずっと二人は一緒にいれるのに。
「ありがと」
「うん」
「落ち着いた」
「そうか」
「やっぱイケメン」
「あのな」
「ふふ」
「ははは」
令の恋は終った。
少し遅かったし、失ったものもある。
それは三年間の師弟関係。
思い出も実績も全てにケチがついた。
あの部活に打ち込んだ青春を思い出すたびに、クソ教師を思い出さなくちゃならないんだろう。
それは余りにもヒドい。
令の気持ちを考えたら、哀しくて仕方ない。
「レイ」
「ん?」
「心配すんな。オレがいつもそばにいるよ」
「ご近所さんだから?」
「ああそうだよ」
「ふふ」
「ずっとずっとそばにいる」
「それじゃタケルと結婚しなくちゃならないじゃん?」
「……そうだよ」
「えーやだ~」
「いやなの?」
「だってずっと男っていじられそうだもん」
「オレ一言でもそんなこと言ったか?」
「言った」
「言ったなぁ」
「プ」
「ふふ」
そっと令の手の上に、オレの手を乗せる。
彼女のぬくもりが伝わってくる。
同時に好きな気持ちも。
「本当だよ。令の一生を支えていたい。本当の気持ち」
「うそ」
「うそじゃない」
「やだぁ」
令は黙ってしまった。
そんな令をオレは見つめていた。
「ありがと」
「いや」
「なぐさめてくれて」
「なぐさめじゃねーけどな」
「はー。泣いた。じゃ帰ろ」
「そうだな」
立ち上がって駅へ向かう。
オレは令の手を握ったまま。
自然と令もそれを握り返す。
オレたちは心が通じ合ったのかもしれない。
こうして歩いていくんだ。
未来へ。
一歩、一歩と──。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
麗しき未亡人
石田空
現代文学
地方都市の市議の秘書の仕事は慌ただしい。市議の秘書を務めている康隆は、市民の冠婚葬祭をチェックしてはいつも市議代行として出かけている。
そんな中、葬式に参加していて光恵と毎回出会うことに気付く……。
他サイトにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる