タラシの俺が、ボーイッシュな幼なじみに恋をした

家紋武範

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じゅうはちっ

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それから令はすぐに退院した。学校にも復帰した。
オレは大学を受験するために勉強。
令は別な大学に行く。勉強はオレが教えてやることになった。
互いの家で、誰かがいる前での勉強だ。
令は少しばかり人が怖くなってしまったのだ。
そんな令のそばに許された人間というだけで幸せだ。

もちろんオレたちは付き合っていない。
幼なじみのままだ。
オレは“好き”が禁止だし、令はまだ男に対する恐怖が抜けきってはない。

それでいい。ゆっくりゆっくり進んで行けたらと思ってる。

令の入院で落ちてしまった筋肉を取り戻すために、勉強に飽きると二人でランニングする。
それがとても好きだ。おっと。好きは禁止だった。
信号待ちの間もとりとめのない話。令の顔が昔に戻っていっている。それも好……楽しい。



春になって。オレも令も大学に合格した。
もともと志望していた大学が近かったのだが、互いに別々の部屋を借りるということはしなかった。
ルームシェアすることにしたのだ。
これは細井のご両親から出た案だった。令のことが心配で、いつも一緒のオレならば安心だということで。
もしも二人に間違いがあってもオレさえよければ結婚してもらってもいいという密約付きで。
オレは丁重にお受けした。だが少しばかりニヤケ顔だったかもしれない。

オレたちは恋人同士じゃない。
それは令が男に対する不信感もあるだろう。
一緒にルームシェアすると言った時に少しばかり表情が変わった。
良い方ではない。嫌な方に感じられたのだ。

まだだ。令はオレを軽蔑しているんだ。

ともかく新生活が始まった。日中は互いに学校に行き、夜は互いの部屋。
リビングとキッチン、風呂、トイレは共有スペース。寝室だけは別。当たり前だ。
オレは令のそばにいれることが幸せで、理由をつけてはそばに寄り添っていていた。

だけど一緒に暮らして三ヶ月。令の態度が前よりもおかしくなってきた。
やたら小さいことで怒り出すし、イライラしているように感じる。
でもそれを言うとまた怒られそうなので触れないでいた。


その日の学校の帰り、突然の雨に振られてオレは急いで部屋へ帰った。

「ああクソ。そう言えばレイが今日は雨が降るっていってたっけ──」

そんなことを言って、部屋を濡らさないように玄関の近くで上半身裸になって体を拭いていた。
その時、玄関のドアが開く。そこには真っ赤な顔をした令が立っていた。

「オッス。おかえり」
「キャァ! 何してんの? 裸になって」

「ああ、雨に濡れて。拭いてたんだ」
「ま、紛らわしい! やめてよね。恥ずかしい。いやらしい!」

「いやらしい……?」

令はオレの体に触れないよう、急いで部屋に入り込んでしまった。
なんで体拭いててそんなこと言われなきゃならんの?
それとも裸の男に恐怖心があるのかも。

ああ、軽はずみだった。
令の気持ちを考えるべきだった。


しばらくすると令が部屋から出て来たので、オレは頭を下げて謝った。

「ゴメンなレイ。お前の気持ちを考えてなかった」
「私の気持ち……分かってくれたの?」

「ああ、まだ男に対する不信感が拭えてないんだろ? 軽はずみに目の前で服なんて脱いじまって──」
「全然分かってないじゃん。バカァ!」

そういうと勢い良くドアを閉めてその日は出てこなかった。
違っていたのか。
なんかもうよくわからなくなって来たぞ?
オレは令の理解者じゃないのかよぉ~。
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