4 / 12
第4話 脱出計画
しおりを挟む
あの悪魔のようなクソ王太子から逃れて、ここより脱出──。でも容易なことじゃないわ。回りは森だし、どこにいるかさえも分からない。
もしマギーの目を盗んでこのお屋敷から出たとしてもどちらの方角に逃げたらいいか分からない。その間にマギーに悟られ、王太子さまに連絡が行き追っ手でも差し向けられたら簡単に捕まる自信があるわ。
そしたらますます監視の目が強くなるものね。
私は自室へと戻り辺りを見回すと、やはり背の高い木々ばかりで景色が見えない。潜伏するには丁度良い場所かもしれない。
そのうちに仕立屋が来たとマギーに呼ばれ、私は階下へ。
仕立屋は二人で店主と助手。その二人で私の身体の採寸を始めた。
「室内で軽く着れる物、それからドレスね。装飾は少なくていいわ。色は純白よ。お嫁さんですからね」
マギーの言葉に仕立屋の二人はうなずく。
「へぇ、わかってまさぁ」
「なるべく早く届けてちょうだい。お嫁さんの部屋着は古着が二着しかないのよ」
マギーが用意したこの服は二着だけか……。まぁ侍女の服を着れば三着あるし。てか速く逃げることを考えないと。ドレスはちょっと見てみたいけど。
て、ドレスを着たらそれこそクソ王太子に手籠めをされてしまうんじゃないかしら? それも考えられるわ。そういう趣味かもしれないもの。これは本当に早々に逃げ出さないと!
仕立屋が帰ったのでマギーに聞いてみた。
「マギー。お屋敷の中だけでは息が詰まるわ。外を散歩してもいいかしら?」
「でしたらお供します」
やはりそう簡単にはいかないわね。散歩のついでに逃げようと思ったけど、マギーもついてくる。当たり前か……。
マギーは私を連れて屋敷の周りと森の入り口まで連れて来た。すると、木々の隙間から、もっと大きなお屋敷が見えた。かなり遠い。ここはどこかの貴族の敷地内なのかも知れない。
遠目に旗が棚引いている。そこには翼が四つある鳥の紋章。あれはどちらの貴族の紋章だったかしら……。
私が軟禁されている屋敷の周りには流れの速い小川があった。
水路──。川の幅が狭い。下流には王宮があるのではないかしら。あちらの方が川幅が広いものね。では川を下れば王宮近くにいけるとか?
でも無理だわ。マギーの目を盗んで屋敷を抜け出し、川をつたって行くなんて。人の身体では目立ちすぎるし、本当にワニでもいたら大変だもの。
一時間ばかりの散歩が終わり、マギーにつれられまた屋敷に入る。なにもすることもなくヒマだわ。普段なら王宮で仕事をしているところだもの。
私はマギーに言って仕事をさせて貰うことにした。
「ああ! ダメですよ。アメリアさん」
「いーのよ。いーのよ。そのほうがヒマを潰せるわ」
私は箒をとって二階を清掃する。自室と物置、空き部屋、廊下と掃除して王太子さまの部屋の前。ドアノブを回すと鍵がかかっていた。
「ふーん。キッチリしてるのね」
私は階下へ降りてマギーの元へ。二階の掃除が終わったことを告げると、ジッとしてて欲しい旨のことを言われたが聞き入れるつもりはない。次にキッチンへと入った。
すると食材があるわあるわ。根菜も葉物野菜も、塩漬けの魚、吊した鴨にソーセージ。こりゃストレスをぶっ飛ばすのに作りまくりの食べまくりするしかないでしょ。
私はマギーを巻き込んで、料理を作りまくった。サラダや煮物、焼き物。揚げ物や蒸し物だって。
作り終わった頃には日も落ちて、マギーは燭台の蝋燭に火を灯した。
「スゴいです! アメリアさん!」
「まーねー。どう? 働いてるほうが性に合ってるでしょ?」
「誠にそのようで」
「じゃ、一緒に食べましょうか」
「いえまさか。使用人はご主人と同席しません」
「何言ってるの。私は自分を主人だと思ってないわ。それでもイヤなら主人の命令。同席なさい」
そう言うとマギーは微笑んで、キッチンから木箱を持ってきて私のそばにそれを置いて腰を下ろした。
なるほど。対面の豪華な椅子は王太子さまのものってワケね。畏れ多くて座れないってことか。まぁこのほうが話しやすいからいいか。
二人で話ながら食事をしていると、外に荷馬車が止まった音。すると、入り口の扉を開けて入ってきたのは王太子さまと、お供のハリソン様だった。
王太子さまはハリソン様に簡易なイスを用意させて自分の横に座るように命じて自分は上席にどっかりと座り込む。
そして私が作った料理をまじまじと観察し始めた。
「ほう。うまそうだ。余とハリソンの分も用意せよ」
命じられるとマギーは立ち上がって私がたくさん作った料理を皿に盛ってやってきた。
「殿下。これはアメリアさんがお作りになったんですよ」
「ほう。素晴らしい。これはなんというものだ?」
クソ王太子が料理を指差して聞いてきた。誰もあなたに作ったわけじゃないですけど? マジ腹立つので適当に答えよう。
「食べもん」
「む。なかなか面白いヤツ。大抵のものは畏れ入って口も聞けなくなるというのに。ハリソン。紹介しよう。これが余の嫁だ」
それを聞くとハリソン様は即座に跪いて臣下の礼をとった。
「これはこれはお妃様。私はハリソン・マベージと申します。マベージ伯爵が長子。将来の国母にご長命を。身命を賭してお妃様をお守り致します」
おうおうおう──!
つい先日、鹿狩りと称して私を囲んだことをお忘れか──!?
なんだこの変わり様は。いつもの不躾な愚連隊の態度じゃないわ?
れっきとした忠義の臣みたいな……。
ん? ハリソン様の腰袋。革製のよい造りのそれにはナイフや工具なんかが収められているけど、問題は埋め込まれているレリーフ。
翼が四つある鳥の紋章だわ。つまりここはマベージ伯爵家の領内。王城から北側にあるお屋敷だったんだわ!
もしマギーの目を盗んでこのお屋敷から出たとしてもどちらの方角に逃げたらいいか分からない。その間にマギーに悟られ、王太子さまに連絡が行き追っ手でも差し向けられたら簡単に捕まる自信があるわ。
そしたらますます監視の目が強くなるものね。
私は自室へと戻り辺りを見回すと、やはり背の高い木々ばかりで景色が見えない。潜伏するには丁度良い場所かもしれない。
そのうちに仕立屋が来たとマギーに呼ばれ、私は階下へ。
仕立屋は二人で店主と助手。その二人で私の身体の採寸を始めた。
「室内で軽く着れる物、それからドレスね。装飾は少なくていいわ。色は純白よ。お嫁さんですからね」
マギーの言葉に仕立屋の二人はうなずく。
「へぇ、わかってまさぁ」
「なるべく早く届けてちょうだい。お嫁さんの部屋着は古着が二着しかないのよ」
マギーが用意したこの服は二着だけか……。まぁ侍女の服を着れば三着あるし。てか速く逃げることを考えないと。ドレスはちょっと見てみたいけど。
て、ドレスを着たらそれこそクソ王太子に手籠めをされてしまうんじゃないかしら? それも考えられるわ。そういう趣味かもしれないもの。これは本当に早々に逃げ出さないと!
仕立屋が帰ったのでマギーに聞いてみた。
「マギー。お屋敷の中だけでは息が詰まるわ。外を散歩してもいいかしら?」
「でしたらお供します」
やはりそう簡単にはいかないわね。散歩のついでに逃げようと思ったけど、マギーもついてくる。当たり前か……。
マギーは私を連れて屋敷の周りと森の入り口まで連れて来た。すると、木々の隙間から、もっと大きなお屋敷が見えた。かなり遠い。ここはどこかの貴族の敷地内なのかも知れない。
遠目に旗が棚引いている。そこには翼が四つある鳥の紋章。あれはどちらの貴族の紋章だったかしら……。
私が軟禁されている屋敷の周りには流れの速い小川があった。
水路──。川の幅が狭い。下流には王宮があるのではないかしら。あちらの方が川幅が広いものね。では川を下れば王宮近くにいけるとか?
でも無理だわ。マギーの目を盗んで屋敷を抜け出し、川をつたって行くなんて。人の身体では目立ちすぎるし、本当にワニでもいたら大変だもの。
一時間ばかりの散歩が終わり、マギーにつれられまた屋敷に入る。なにもすることもなくヒマだわ。普段なら王宮で仕事をしているところだもの。
私はマギーに言って仕事をさせて貰うことにした。
「ああ! ダメですよ。アメリアさん」
「いーのよ。いーのよ。そのほうがヒマを潰せるわ」
私は箒をとって二階を清掃する。自室と物置、空き部屋、廊下と掃除して王太子さまの部屋の前。ドアノブを回すと鍵がかかっていた。
「ふーん。キッチリしてるのね」
私は階下へ降りてマギーの元へ。二階の掃除が終わったことを告げると、ジッとしてて欲しい旨のことを言われたが聞き入れるつもりはない。次にキッチンへと入った。
すると食材があるわあるわ。根菜も葉物野菜も、塩漬けの魚、吊した鴨にソーセージ。こりゃストレスをぶっ飛ばすのに作りまくりの食べまくりするしかないでしょ。
私はマギーを巻き込んで、料理を作りまくった。サラダや煮物、焼き物。揚げ物や蒸し物だって。
作り終わった頃には日も落ちて、マギーは燭台の蝋燭に火を灯した。
「スゴいです! アメリアさん!」
「まーねー。どう? 働いてるほうが性に合ってるでしょ?」
「誠にそのようで」
「じゃ、一緒に食べましょうか」
「いえまさか。使用人はご主人と同席しません」
「何言ってるの。私は自分を主人だと思ってないわ。それでもイヤなら主人の命令。同席なさい」
そう言うとマギーは微笑んで、キッチンから木箱を持ってきて私のそばにそれを置いて腰を下ろした。
なるほど。対面の豪華な椅子は王太子さまのものってワケね。畏れ多くて座れないってことか。まぁこのほうが話しやすいからいいか。
二人で話ながら食事をしていると、外に荷馬車が止まった音。すると、入り口の扉を開けて入ってきたのは王太子さまと、お供のハリソン様だった。
王太子さまはハリソン様に簡易なイスを用意させて自分の横に座るように命じて自分は上席にどっかりと座り込む。
そして私が作った料理をまじまじと観察し始めた。
「ほう。うまそうだ。余とハリソンの分も用意せよ」
命じられるとマギーは立ち上がって私がたくさん作った料理を皿に盛ってやってきた。
「殿下。これはアメリアさんがお作りになったんですよ」
「ほう。素晴らしい。これはなんというものだ?」
クソ王太子が料理を指差して聞いてきた。誰もあなたに作ったわけじゃないですけど? マジ腹立つので適当に答えよう。
「食べもん」
「む。なかなか面白いヤツ。大抵のものは畏れ入って口も聞けなくなるというのに。ハリソン。紹介しよう。これが余の嫁だ」
それを聞くとハリソン様は即座に跪いて臣下の礼をとった。
「これはこれはお妃様。私はハリソン・マベージと申します。マベージ伯爵が長子。将来の国母にご長命を。身命を賭してお妃様をお守り致します」
おうおうおう──!
つい先日、鹿狩りと称して私を囲んだことをお忘れか──!?
なんだこの変わり様は。いつもの不躾な愚連隊の態度じゃないわ?
れっきとした忠義の臣みたいな……。
ん? ハリソン様の腰袋。革製のよい造りのそれにはナイフや工具なんかが収められているけど、問題は埋め込まれているレリーフ。
翼が四つある鳥の紋章だわ。つまりここはマベージ伯爵家の領内。王城から北側にあるお屋敷だったんだわ!
1
あなたにおすすめの小説
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
犬猿の仲だったはずの婚約者が何故だか溺愛してきます【完結済み】
皇 翼
恋愛
『アイツは女としてあり得ない選択肢だからーー』
貴方は私がその言葉にどれだけ傷つき、涙を流したのかということは、きっと一生知ることがないのでしょう。
でも私も彼に対して最悪な言葉を残してしまった。
「貴方なんて大嫌い!!」
これがかつての私達に亀裂を生む決定的な言葉となってしまったのだ。
ここから私達は会う度に喧嘩をし、連れ立った夜会でも厭味の応酬となってしまう最悪な仲となってしまった。
本当は大嫌いなんかじゃなかった。私はただ、貴方に『あり得ない』なんて思われていることが悲しくて、悲しくて、思わず口にしてしまっただけなのだ。それを同じ言葉で返されて――。
最後に残った感情は後悔、その一つだけだった。
******
5、6話で終わります。パパッと描き終わる予定。
私の願いは貴方の幸せです
mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」
滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。
私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。
【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。
毒姫ライラは今日も生きている
木崎優
恋愛
エイシュケル王国第二王女ライラ。
だけど私をそう呼ぶ人はいない。毒姫ライラ、それは私を示す名だ。
ひっそりと森で暮らす私はこの国において毒にも等しく、王女として扱われることはなかった。
そんな私に、十六歳にして初めて、王女としての役割が与えられた。
それは、王様が愛するお姫様の代わりに、暴君と呼ばれる皇帝に嫁ぐこと。
「これは王命だ。王女としての責務を果たせ」
暴君のもとに愛しいお姫様を嫁がせたくない王様。
「どうしてもいやだったら、代わってあげるわ」
暴君のもとに嫁ぎたいお姫様。
「お前を妃に迎える気はない」
そして私を認めない暴君。
三者三様の彼らのもとで私がするべきことは一つだけ。
「頑張って死んでまいります!」
――そのはずが、何故だか死ぬ気配がありません。
【完結】身代わりに病弱だった令嬢が隣国の冷酷王子と政略結婚したら、薬師の知識が役に立ちました。
朝日みらい
恋愛
リリスは内気な性格の貴族令嬢。幼い頃に患った大病の影響で、薬師顔負けの知識を持ち、自ら薬を調合する日々を送っている。家族の愛情を一身に受ける妹セシリアとは対照的に、彼女は控えめで存在感が薄い。
ある日、リリスは両親から突然「妹の代わりに隣国の王子と政略結婚をするように」と命じられる。結婚相手であるエドアルド王子は、かつて幼馴染でありながら、今では冷たく距離を置かれる存在。リリスは幼い頃から密かにエドアルドに憧れていたが、病弱だった過去もあって自分に自信が持てず、彼の真意がわからないまま結婚の日を迎えてしまい――
元平民だった侯爵令嬢の、たった一つの願い
雲乃琳雨
恋愛
バートン侯爵家の跡取りだった父を持つニナリアは、潜伏先の家から祖父に連れ去られ、侯爵家でメイドとして働いていた。18歳になったニナリアは、祖父の命令で従姉の代わりに元平民の騎士、アレン・ラディー子爵に嫁ぐことになる。
ニナリアは母のもとに戻りたいので、アレンと離婚したくて仕方がなかったが、結婚は国王の命令でもあったので、アレンが離婚に応じるはずもなかった。アレンが初めから溺愛してきたので、ニナリアは戸惑う。ニナリアは、自分の目的を果たすことができるのか?
元平民の侯爵令嬢が、自分の人生を取り戻す、溺愛から始まる物語。
婚約破棄され泣きながら帰宅している途中で落命してしまったのですが、待ち受けていた運命は思いもよらぬもので……?
四季
恋愛
理不尽に婚約破棄された"私"は、泣きながら家へ帰ろうとしていたところ、通りすがりの謎のおじさんに刃物で刺され、死亡した。
そうして訪れた死後の世界で対面したのは女神。
女神から思いもよらぬことを告げられた"私"は、そこから、終わりの見えないの旅に出ることとなる。
長い旅の先に待つものは……??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる