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転生の章 ハーレム篇
第22話 可愛くないやつ
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彼女を家に送り、自分は家路についた。
屋敷に帰ると子供たちが元気に絡みついてくる。
ボクは父が昔、自分にしたように子供たちをひょいひょいとつまんで自分の肩に乗せてやった。
「すごーい! たかーい!」
はしゃぐ子供たち。ふふ。最高だ。家族っていい。
そして、食卓について、ピンクが用意した料理をつまみに酒を飲む。
子供たちも料理をぱくついて、ピンクはうれしそうにボクの前に座った。
いつも一歩下がって主人を応援する貞淑な妻だ。
幼なじみで気持ちも通じ合っている。
彼女はボクの言うことなら何でも聞く。
座れと言えばずっと座るし、寝ろと言えばどこでも寝る。舐めろと言えばどこでも舐めるのだ。
それが団長の妻だと教育されている。
側室の件もなんなくクリア出来るだろう。
そう思っていると、彼女はボクの前にもう一皿追加した。
「お! ウサギの焼き肉!」
「ふふ。珍しいでしょ? 一年に一度くらいは……ね」
文化的な生活を始めた我々には野ウサギを捕る方が難しくなっていた。彼女はわざわざ遠い集落に行って買ってきたのであろう。
ボクはその意味を忘れており、構わず野ウサギ肉に骨ごとかぶりつき話を始めた。
「あのなぁ。チープの妹のジュン。知ってるか?」
「そりゃ知ってるよ。昔遊んだよね」
彼女はボクのグラスに酒を注ぎながら続けた。
「いつもあたしたちの後ろにくっついて来てたよね。4つくらい違うのかな? そろそろ、彼女も私たちみたいにいい相手見つけないとねぇ。ふふ」
「うん、それなんだけど」
「ん?」
「ジュンを側室として迎えたい。彼女に部屋を与えるぞ」
その瞬間に彼女は酒瓶をテーブルの上に落としてしまった。
カチャンと音を立てて割れ、テーブルの上に酒が飛散した。
音に気付いて子供たちが「あ! お母さんドジふんだ!」と叫んで大笑いした。
彼女は「あ! ゴメンゴメン」と言いながら布巾をとりテーブルを拭き始めたがその手も声も震えていた。
「そ、そうなんだ。団長閣下は……ブラウン将軍の血統を残す必要があるもん……ね。ジュンなら……。あたしも……賛成だよ。うん……。さんせ……」
言葉が続かない。その前にテーブルの上を拭き終わり、流し台に布巾を持って行くと、トンと音を立てて布巾を流し台に投げつけた。
「ごめんなさい!」
そう一声叫んで、部屋に引っ込むとママっ子の一番下の娘モモは驚いてイスの上でわぁわぁと泣き出した。
ボクは家事を放棄して、食事中の夫を置き去りにするとはコボルド族の風上にも置けぬヤツと憤慨した。
長いコボルドの慣習が身に染み込み、ピンクの行動が許せなかった。
「おい! ピンク! モモが泣いてるじゃないか! なんとかしろ!」
と怒号を上げると他の子どもたちも目を大きく開いて遊んでいる手を止めてしまった。
ピンクはすぐに目に涙をたたえたまま現れ、鼻を大きくすすり上げあがらモモを抱いてあやし始めた。
「おおよしよし。ゴメンね。ゴメンね」
なんとかモモは落ち着いて、彼女の腕の中で眠そうにしていた。
他の子ども達は普段怒らないボクが怒ったので、どうしていいか分からず、オドオドしている。
ボクはピンクの前に立ち見下げながら言った。
「東の部屋をジュンの部屋とする。すぐに掃除をして迎える準備をせよ」
「は、はい。明日ばあやと家政婦にやらせますから」
と顔も見ずに言った。ボクはフンと鼻をならした。
……辛気臭いヤツだ。
今までカワイイと思っていたが、嫉妬か何かで感情をコントロール出来ないなど愚かだ。
ボクは一族の長。鬼族の英雄。
それが側室をとるくらいなんだって言うんだと腹が立てた。
ボクはそのまま、酒を飲み干して部屋に入って寝台にゴロリとなって寝た。
それから数日たって、政務室にいると義父のシルバーと叔父のゴールドが入って来た。
二人は軍事や政務で忙しいのだが、その傍らにこうして来てくれるのは嬉しいことだ。
「団長閣下」
「おや、どうしました。義父上、叔父上」
二人とも、教育係ではあったがボクも父親となり大人になることで説教と言うものをやめていた。
叔父ゴールドがためらいがちに切り出した。
「なんでも団長閣下は今度、側室を迎えるとか……」
「ああはい。近日中に屋敷に入れます」
どこから聞いてきたのか不思議に思った。
ボクの回答を聞くと二人は顔を見合わせた。
今度は義父シルバーが言いにくそうに
「あの……ピンクになにか落ち度がございましたでしょうか?」
と聞くので
「いえ。我がコボルド族の人口は増えたと言えどもまだまだ少ないです。やはり団長自ら人口を増やし、父ブラウン将軍の血統を増やしたく思います」
と側室の正当性を答えると、二人ともウン……とうなってしまった。
「うん……。義兄はコボルドは一夫一婦制にし、一族の文化レベルを上げると言っていたものです」
そうなのだ。他の鬼族は一夫多妻制だが、父ブラウンが決めた秩序ではコボルド族に限って人間の真似をして一夫一婦制としていたのだ。義父シルバーも
「そうです。他の種族が卑しいとは言いませんが、我々の文化水準は高いです。それをわざわざ下げなくとも」
といった。
いったい叔父たちが何を言いたいか分からなかった。
ハーレムはボクの夢だ。ブラウン家を隆盛させると言うのは二人の悲願でもあったはずだ。
たかだか、ジュン一人に部屋を与えるくらいでこんな大騒ぎするなと思った。
ましてや、これからだってもっと側室を持とうと思ってるのに。
屋敷に帰ると子供たちが元気に絡みついてくる。
ボクは父が昔、自分にしたように子供たちをひょいひょいとつまんで自分の肩に乗せてやった。
「すごーい! たかーい!」
はしゃぐ子供たち。ふふ。最高だ。家族っていい。
そして、食卓について、ピンクが用意した料理をつまみに酒を飲む。
子供たちも料理をぱくついて、ピンクはうれしそうにボクの前に座った。
いつも一歩下がって主人を応援する貞淑な妻だ。
幼なじみで気持ちも通じ合っている。
彼女はボクの言うことなら何でも聞く。
座れと言えばずっと座るし、寝ろと言えばどこでも寝る。舐めろと言えばどこでも舐めるのだ。
それが団長の妻だと教育されている。
側室の件もなんなくクリア出来るだろう。
そう思っていると、彼女はボクの前にもう一皿追加した。
「お! ウサギの焼き肉!」
「ふふ。珍しいでしょ? 一年に一度くらいは……ね」
文化的な生活を始めた我々には野ウサギを捕る方が難しくなっていた。彼女はわざわざ遠い集落に行って買ってきたのであろう。
ボクはその意味を忘れており、構わず野ウサギ肉に骨ごとかぶりつき話を始めた。
「あのなぁ。チープの妹のジュン。知ってるか?」
「そりゃ知ってるよ。昔遊んだよね」
彼女はボクのグラスに酒を注ぎながら続けた。
「いつもあたしたちの後ろにくっついて来てたよね。4つくらい違うのかな? そろそろ、彼女も私たちみたいにいい相手見つけないとねぇ。ふふ」
「うん、それなんだけど」
「ん?」
「ジュンを側室として迎えたい。彼女に部屋を与えるぞ」
その瞬間に彼女は酒瓶をテーブルの上に落としてしまった。
カチャンと音を立てて割れ、テーブルの上に酒が飛散した。
音に気付いて子供たちが「あ! お母さんドジふんだ!」と叫んで大笑いした。
彼女は「あ! ゴメンゴメン」と言いながら布巾をとりテーブルを拭き始めたがその手も声も震えていた。
「そ、そうなんだ。団長閣下は……ブラウン将軍の血統を残す必要があるもん……ね。ジュンなら……。あたしも……賛成だよ。うん……。さんせ……」
言葉が続かない。その前にテーブルの上を拭き終わり、流し台に布巾を持って行くと、トンと音を立てて布巾を流し台に投げつけた。
「ごめんなさい!」
そう一声叫んで、部屋に引っ込むとママっ子の一番下の娘モモは驚いてイスの上でわぁわぁと泣き出した。
ボクは家事を放棄して、食事中の夫を置き去りにするとはコボルド族の風上にも置けぬヤツと憤慨した。
長いコボルドの慣習が身に染み込み、ピンクの行動が許せなかった。
「おい! ピンク! モモが泣いてるじゃないか! なんとかしろ!」
と怒号を上げると他の子どもたちも目を大きく開いて遊んでいる手を止めてしまった。
ピンクはすぐに目に涙をたたえたまま現れ、鼻を大きくすすり上げあがらモモを抱いてあやし始めた。
「おおよしよし。ゴメンね。ゴメンね」
なんとかモモは落ち着いて、彼女の腕の中で眠そうにしていた。
他の子ども達は普段怒らないボクが怒ったので、どうしていいか分からず、オドオドしている。
ボクはピンクの前に立ち見下げながら言った。
「東の部屋をジュンの部屋とする。すぐに掃除をして迎える準備をせよ」
「は、はい。明日ばあやと家政婦にやらせますから」
と顔も見ずに言った。ボクはフンと鼻をならした。
……辛気臭いヤツだ。
今までカワイイと思っていたが、嫉妬か何かで感情をコントロール出来ないなど愚かだ。
ボクは一族の長。鬼族の英雄。
それが側室をとるくらいなんだって言うんだと腹が立てた。
ボクはそのまま、酒を飲み干して部屋に入って寝台にゴロリとなって寝た。
それから数日たって、政務室にいると義父のシルバーと叔父のゴールドが入って来た。
二人は軍事や政務で忙しいのだが、その傍らにこうして来てくれるのは嬉しいことだ。
「団長閣下」
「おや、どうしました。義父上、叔父上」
二人とも、教育係ではあったがボクも父親となり大人になることで説教と言うものをやめていた。
叔父ゴールドがためらいがちに切り出した。
「なんでも団長閣下は今度、側室を迎えるとか……」
「ああはい。近日中に屋敷に入れます」
どこから聞いてきたのか不思議に思った。
ボクの回答を聞くと二人は顔を見合わせた。
今度は義父シルバーが言いにくそうに
「あの……ピンクになにか落ち度がございましたでしょうか?」
と聞くので
「いえ。我がコボルド族の人口は増えたと言えどもまだまだ少ないです。やはり団長自ら人口を増やし、父ブラウン将軍の血統を増やしたく思います」
と側室の正当性を答えると、二人ともウン……とうなってしまった。
「うん……。義兄はコボルドは一夫一婦制にし、一族の文化レベルを上げると言っていたものです」
そうなのだ。他の鬼族は一夫多妻制だが、父ブラウンが決めた秩序ではコボルド族に限って人間の真似をして一夫一婦制としていたのだ。義父シルバーも
「そうです。他の種族が卑しいとは言いませんが、我々の文化水準は高いです。それをわざわざ下げなくとも」
といった。
いったい叔父たちが何を言いたいか分からなかった。
ハーレムはボクの夢だ。ブラウン家を隆盛させると言うのは二人の悲願でもあったはずだ。
たかだか、ジュン一人に部屋を与えるくらいでこんな大騒ぎするなと思った。
ましてや、これからだってもっと側室を持とうと思ってるのに。
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