23 / 47
転生の章 ハーレム篇
第22話 可愛くないやつ
しおりを挟む
彼女を家に送り、自分は家路についた。
屋敷に帰ると子供たちが元気に絡みついてくる。
ボクは父が昔、自分にしたように子供たちをひょいひょいとつまんで自分の肩に乗せてやった。
「すごーい! たかーい!」
はしゃぐ子供たち。ふふ。最高だ。家族っていい。
そして、食卓について、ピンクが用意した料理をつまみに酒を飲む。
子供たちも料理をぱくついて、ピンクはうれしそうにボクの前に座った。
いつも一歩下がって主人を応援する貞淑な妻だ。
幼なじみで気持ちも通じ合っている。
彼女はボクの言うことなら何でも聞く。
座れと言えばずっと座るし、寝ろと言えばどこでも寝る。舐めろと言えばどこでも舐めるのだ。
それが団長の妻だと教育されている。
側室の件もなんなくクリア出来るだろう。
そう思っていると、彼女はボクの前にもう一皿追加した。
「お! ウサギの焼き肉!」
「ふふ。珍しいでしょ? 一年に一度くらいは……ね」
文化的な生活を始めた我々には野ウサギを捕る方が難しくなっていた。彼女はわざわざ遠い集落に行って買ってきたのであろう。
ボクはその意味を忘れており、構わず野ウサギ肉に骨ごとかぶりつき話を始めた。
「あのなぁ。チープの妹のジュン。知ってるか?」
「そりゃ知ってるよ。昔遊んだよね」
彼女はボクのグラスに酒を注ぎながら続けた。
「いつもあたしたちの後ろにくっついて来てたよね。4つくらい違うのかな? そろそろ、彼女も私たちみたいにいい相手見つけないとねぇ。ふふ」
「うん、それなんだけど」
「ん?」
「ジュンを側室として迎えたい。彼女に部屋を与えるぞ」
その瞬間に彼女は酒瓶をテーブルの上に落としてしまった。
カチャンと音を立てて割れ、テーブルの上に酒が飛散した。
音に気付いて子供たちが「あ! お母さんドジふんだ!」と叫んで大笑いした。
彼女は「あ! ゴメンゴメン」と言いながら布巾をとりテーブルを拭き始めたがその手も声も震えていた。
「そ、そうなんだ。団長閣下は……ブラウン将軍の血統を残す必要があるもん……ね。ジュンなら……。あたしも……賛成だよ。うん……。さんせ……」
言葉が続かない。その前にテーブルの上を拭き終わり、流し台に布巾を持って行くと、トンと音を立てて布巾を流し台に投げつけた。
「ごめんなさい!」
そう一声叫んで、部屋に引っ込むとママっ子の一番下の娘モモは驚いてイスの上でわぁわぁと泣き出した。
ボクは家事を放棄して、食事中の夫を置き去りにするとはコボルド族の風上にも置けぬヤツと憤慨した。
長いコボルドの慣習が身に染み込み、ピンクの行動が許せなかった。
「おい! ピンク! モモが泣いてるじゃないか! なんとかしろ!」
と怒号を上げると他の子どもたちも目を大きく開いて遊んでいる手を止めてしまった。
ピンクはすぐに目に涙をたたえたまま現れ、鼻を大きくすすり上げあがらモモを抱いてあやし始めた。
「おおよしよし。ゴメンね。ゴメンね」
なんとかモモは落ち着いて、彼女の腕の中で眠そうにしていた。
他の子ども達は普段怒らないボクが怒ったので、どうしていいか分からず、オドオドしている。
ボクはピンクの前に立ち見下げながら言った。
「東の部屋をジュンの部屋とする。すぐに掃除をして迎える準備をせよ」
「は、はい。明日ばあやと家政婦にやらせますから」
と顔も見ずに言った。ボクはフンと鼻をならした。
……辛気臭いヤツだ。
今までカワイイと思っていたが、嫉妬か何かで感情をコントロール出来ないなど愚かだ。
ボクは一族の長。鬼族の英雄。
それが側室をとるくらいなんだって言うんだと腹が立てた。
ボクはそのまま、酒を飲み干して部屋に入って寝台にゴロリとなって寝た。
それから数日たって、政務室にいると義父のシルバーと叔父のゴールドが入って来た。
二人は軍事や政務で忙しいのだが、その傍らにこうして来てくれるのは嬉しいことだ。
「団長閣下」
「おや、どうしました。義父上、叔父上」
二人とも、教育係ではあったがボクも父親となり大人になることで説教と言うものをやめていた。
叔父ゴールドがためらいがちに切り出した。
「なんでも団長閣下は今度、側室を迎えるとか……」
「ああはい。近日中に屋敷に入れます」
どこから聞いてきたのか不思議に思った。
ボクの回答を聞くと二人は顔を見合わせた。
今度は義父シルバーが言いにくそうに
「あの……ピンクになにか落ち度がございましたでしょうか?」
と聞くので
「いえ。我がコボルド族の人口は増えたと言えどもまだまだ少ないです。やはり団長自ら人口を増やし、父ブラウン将軍の血統を増やしたく思います」
と側室の正当性を答えると、二人ともウン……とうなってしまった。
「うん……。義兄はコボルドは一夫一婦制にし、一族の文化レベルを上げると言っていたものです」
そうなのだ。他の鬼族は一夫多妻制だが、父ブラウンが決めた秩序ではコボルド族に限って人間の真似をして一夫一婦制としていたのだ。義父シルバーも
「そうです。他の種族が卑しいとは言いませんが、我々の文化水準は高いです。それをわざわざ下げなくとも」
といった。
いったい叔父たちが何を言いたいか分からなかった。
ハーレムはボクの夢だ。ブラウン家を隆盛させると言うのは二人の悲願でもあったはずだ。
たかだか、ジュン一人に部屋を与えるくらいでこんな大騒ぎするなと思った。
ましてや、これからだってもっと側室を持とうと思ってるのに。
屋敷に帰ると子供たちが元気に絡みついてくる。
ボクは父が昔、自分にしたように子供たちをひょいひょいとつまんで自分の肩に乗せてやった。
「すごーい! たかーい!」
はしゃぐ子供たち。ふふ。最高だ。家族っていい。
そして、食卓について、ピンクが用意した料理をつまみに酒を飲む。
子供たちも料理をぱくついて、ピンクはうれしそうにボクの前に座った。
いつも一歩下がって主人を応援する貞淑な妻だ。
幼なじみで気持ちも通じ合っている。
彼女はボクの言うことなら何でも聞く。
座れと言えばずっと座るし、寝ろと言えばどこでも寝る。舐めろと言えばどこでも舐めるのだ。
それが団長の妻だと教育されている。
側室の件もなんなくクリア出来るだろう。
そう思っていると、彼女はボクの前にもう一皿追加した。
「お! ウサギの焼き肉!」
「ふふ。珍しいでしょ? 一年に一度くらいは……ね」
文化的な生活を始めた我々には野ウサギを捕る方が難しくなっていた。彼女はわざわざ遠い集落に行って買ってきたのであろう。
ボクはその意味を忘れており、構わず野ウサギ肉に骨ごとかぶりつき話を始めた。
「あのなぁ。チープの妹のジュン。知ってるか?」
「そりゃ知ってるよ。昔遊んだよね」
彼女はボクのグラスに酒を注ぎながら続けた。
「いつもあたしたちの後ろにくっついて来てたよね。4つくらい違うのかな? そろそろ、彼女も私たちみたいにいい相手見つけないとねぇ。ふふ」
「うん、それなんだけど」
「ん?」
「ジュンを側室として迎えたい。彼女に部屋を与えるぞ」
その瞬間に彼女は酒瓶をテーブルの上に落としてしまった。
カチャンと音を立てて割れ、テーブルの上に酒が飛散した。
音に気付いて子供たちが「あ! お母さんドジふんだ!」と叫んで大笑いした。
彼女は「あ! ゴメンゴメン」と言いながら布巾をとりテーブルを拭き始めたがその手も声も震えていた。
「そ、そうなんだ。団長閣下は……ブラウン将軍の血統を残す必要があるもん……ね。ジュンなら……。あたしも……賛成だよ。うん……。さんせ……」
言葉が続かない。その前にテーブルの上を拭き終わり、流し台に布巾を持って行くと、トンと音を立てて布巾を流し台に投げつけた。
「ごめんなさい!」
そう一声叫んで、部屋に引っ込むとママっ子の一番下の娘モモは驚いてイスの上でわぁわぁと泣き出した。
ボクは家事を放棄して、食事中の夫を置き去りにするとはコボルド族の風上にも置けぬヤツと憤慨した。
長いコボルドの慣習が身に染み込み、ピンクの行動が許せなかった。
「おい! ピンク! モモが泣いてるじゃないか! なんとかしろ!」
と怒号を上げると他の子どもたちも目を大きく開いて遊んでいる手を止めてしまった。
ピンクはすぐに目に涙をたたえたまま現れ、鼻を大きくすすり上げあがらモモを抱いてあやし始めた。
「おおよしよし。ゴメンね。ゴメンね」
なんとかモモは落ち着いて、彼女の腕の中で眠そうにしていた。
他の子ども達は普段怒らないボクが怒ったので、どうしていいか分からず、オドオドしている。
ボクはピンクの前に立ち見下げながら言った。
「東の部屋をジュンの部屋とする。すぐに掃除をして迎える準備をせよ」
「は、はい。明日ばあやと家政婦にやらせますから」
と顔も見ずに言った。ボクはフンと鼻をならした。
……辛気臭いヤツだ。
今までカワイイと思っていたが、嫉妬か何かで感情をコントロール出来ないなど愚かだ。
ボクは一族の長。鬼族の英雄。
それが側室をとるくらいなんだって言うんだと腹が立てた。
ボクはそのまま、酒を飲み干して部屋に入って寝台にゴロリとなって寝た。
それから数日たって、政務室にいると義父のシルバーと叔父のゴールドが入って来た。
二人は軍事や政務で忙しいのだが、その傍らにこうして来てくれるのは嬉しいことだ。
「団長閣下」
「おや、どうしました。義父上、叔父上」
二人とも、教育係ではあったがボクも父親となり大人になることで説教と言うものをやめていた。
叔父ゴールドがためらいがちに切り出した。
「なんでも団長閣下は今度、側室を迎えるとか……」
「ああはい。近日中に屋敷に入れます」
どこから聞いてきたのか不思議に思った。
ボクの回答を聞くと二人は顔を見合わせた。
今度は義父シルバーが言いにくそうに
「あの……ピンクになにか落ち度がございましたでしょうか?」
と聞くので
「いえ。我がコボルド族の人口は増えたと言えどもまだまだ少ないです。やはり団長自ら人口を増やし、父ブラウン将軍の血統を増やしたく思います」
と側室の正当性を答えると、二人ともウン……とうなってしまった。
「うん……。義兄はコボルドは一夫一婦制にし、一族の文化レベルを上げると言っていたものです」
そうなのだ。他の鬼族は一夫多妻制だが、父ブラウンが決めた秩序ではコボルド族に限って人間の真似をして一夫一婦制としていたのだ。義父シルバーも
「そうです。他の種族が卑しいとは言いませんが、我々の文化水準は高いです。それをわざわざ下げなくとも」
といった。
いったい叔父たちが何を言いたいか分からなかった。
ハーレムはボクの夢だ。ブラウン家を隆盛させると言うのは二人の悲願でもあったはずだ。
たかだか、ジュン一人に部屋を与えるくらいでこんな大騒ぎするなと思った。
ましてや、これからだってもっと側室を持とうと思ってるのに。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる