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転生の章 決戦篇
第34話 仇と用兵
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人間め。本当に抜け目がない。
ボクがいないと思って、ゴブリン狙いで出てきやがったのだ。
ずる賢い奴ら。本当に腹が立つ!
ボクが騎兵に向かってゆくと、旋回して逃げていく。
ホントにいやったらしい!
だが、その中から将官らしい者がこちらに駒を進めて来た。
白銀の鎧に緑色のマントだ。
「ブラウン団長とお見受けする」
は? なんだこいつ。
「いかにも。そなたは?」
「私は将校のエドワード。キミの父親を討ち果たした一人。その功績でこのように部隊を預けられるようになった。あの時のように団長も討ち果たしたい。是非お手合わせを願いたい」
と一騎打ちを申し込んできた。
父の仇と聞いて頭に来たが、彼の配下の重騎兵はまた馬を返してゴブリン達をいじめ始めている。
父の仇だが、今の現状を何とかしなくてはならない。ボクは馬の手綱を引いて重騎兵の方に馬首を向けた。
「エドワード? 聞いたことも無い。無名の貴様を討ったところで名前は上がらぬからな」
と言い捨てて救援に向かおうとした。だがエドワードはなおも挑発する。
「私が恐ろしいようだな? まぁ親子二代殺されたくも無いのだろう」
ボクは救援に行きかけたがムカついて馬を止めた。
「た、大将はムダな戦はしないものだ」
すでに心理戦で負けてしまった。
おもうつぼだ。彼はなお続けた。
「ふん。ブラウンの名が泣くわ。弱虫め! 末代まで笑ってやる! はははははは!」
と宣うのでボクは完全に頭に血が上ってしまった。
すぐに片付けてやる。
先の砦のラインホルトのように馬ごと潰してやろうと大棍棒を上段に構えて馬を走らせた。
彼は馬から降りて剣の柄に手をかけ、腰を屈てこちらを見据えた。
危険を察知しボクは手綱を引いて馬を止めた。
あれは居合いの構えだ。
剣を鞘から引き抜いて遠心力をつけて斬りつけてくる一撃必殺の剣法。
片腕の叔父がよく使っていたから分かる。
何度叔父の木刀で痣やコブを作られたか。
あの時の痛みを思い出してボクは馬の上で頭をさすった。
おそらくこのまま斬り込めば馬の足を切り、落馬して体勢の整わないボクの首をかくのであろう。
その手には乗らぬ。
ボクは馬から降りて彼の射程距離外に立ってこん棒を構えた。
エドワードは「ほう」と感心の声を上げた。
「それは居合いの構えであろう。その手には乗らぬ」
お互いに間合いをとって、ピクリとも動かない。
仕掛けたら負ける。お互いにジットリと汗がわく。
正直ボクの方が分が悪い。
叔父との模擬戦で、この剣法だけは苦手だったのだ。
片腕の叔父に何度となく負けた。半月を描いて上から来るのか? 横から来るのか? それすらも分からない。
それに彼の部下の重騎兵が勝手に動き回ってる。
ポチやチビは上手く用兵してくれてるだろうか?
ボクがそう考えて「ふう」と息をついた時だった。
「いやーーー!!!」
ボクにスキが出来たと思ったのだろう。
彼は仕掛けてきた。踏み込みが尋常ではなかった。
あっという間に間合いを詰められた。
!!!!負ける……ッ!
ボクは体を引いてとっさに自分の前の地面に大こん棒を突き刺した。
エドワードは「しめた!」と思った。
このまま大こん棒を切ってしまい、一回転して遠心力をつけ、彼の首を切ってしまおう!
刹那の瞬間だった。
キーーーンと音を立ててエドワードの剣が折れた。
だが彼は思っていることを行動に移そうと空中で回転してボクの首元目がけて飛び上がったが、『????』となっていた。
軽い。腕が軽いのだ。
信じられなかったであろう。
剣が折れてしまったが頭では分かっても体は最悪の行動を起こしたままだった。
運命の神はボクに微笑んだのだ。
ボクの大棍棒は木製に見えるが鉄芯が埋められている。
それで剣が折れてしまったのだろう。
エドワードは見た目で判断したのだ。判断ミスだ。
その小さな隙間をくぐれた者が戦に勝つことが出来るのだ。
ボクは空中に浮いている彼の身をふんづかみ、両脚をとってハンマー投げのようにグルグルと回転して放り投げた!
彼の体はポーンと城壁目掛けて飛んで行き、壁にぶち当たってペチャッと音を立てて潰れた。
ボクは大きくため息をついた。精神的な疲れが襲った。
だが、それは僅かな時間だった。
生還できたことで喜びが疲れを忘れさせた。
慌てて生き残りのゴブリンを探し、戦況を確かめる。
だが、敵の重騎兵の目的はゴブリン兵ではなく、攻城兵器だった。分銅のついたロープを投げつけて、木で出来た攻城兵器を徹底的に破壊した上に油をかけ火を放ち、将校エドワードが敗れたことを知ると馬を急がせ撤退していった。
「ああ……」
余りの出来事にボクは兵を引いた。
またもゴブリン兵を失い、破壊された攻城兵器。
無事な攻城兵器は1基しかなかった。
ボクがいないと思って、ゴブリン狙いで出てきやがったのだ。
ずる賢い奴ら。本当に腹が立つ!
ボクが騎兵に向かってゆくと、旋回して逃げていく。
ホントにいやったらしい!
だが、その中から将官らしい者がこちらに駒を進めて来た。
白銀の鎧に緑色のマントだ。
「ブラウン団長とお見受けする」
は? なんだこいつ。
「いかにも。そなたは?」
「私は将校のエドワード。キミの父親を討ち果たした一人。その功績でこのように部隊を預けられるようになった。あの時のように団長も討ち果たしたい。是非お手合わせを願いたい」
と一騎打ちを申し込んできた。
父の仇と聞いて頭に来たが、彼の配下の重騎兵はまた馬を返してゴブリン達をいじめ始めている。
父の仇だが、今の現状を何とかしなくてはならない。ボクは馬の手綱を引いて重騎兵の方に馬首を向けた。
「エドワード? 聞いたことも無い。無名の貴様を討ったところで名前は上がらぬからな」
と言い捨てて救援に向かおうとした。だがエドワードはなおも挑発する。
「私が恐ろしいようだな? まぁ親子二代殺されたくも無いのだろう」
ボクは救援に行きかけたがムカついて馬を止めた。
「た、大将はムダな戦はしないものだ」
すでに心理戦で負けてしまった。
おもうつぼだ。彼はなお続けた。
「ふん。ブラウンの名が泣くわ。弱虫め! 末代まで笑ってやる! はははははは!」
と宣うのでボクは完全に頭に血が上ってしまった。
すぐに片付けてやる。
先の砦のラインホルトのように馬ごと潰してやろうと大棍棒を上段に構えて馬を走らせた。
彼は馬から降りて剣の柄に手をかけ、腰を屈てこちらを見据えた。
危険を察知しボクは手綱を引いて馬を止めた。
あれは居合いの構えだ。
剣を鞘から引き抜いて遠心力をつけて斬りつけてくる一撃必殺の剣法。
片腕の叔父がよく使っていたから分かる。
何度叔父の木刀で痣やコブを作られたか。
あの時の痛みを思い出してボクは馬の上で頭をさすった。
おそらくこのまま斬り込めば馬の足を切り、落馬して体勢の整わないボクの首をかくのであろう。
その手には乗らぬ。
ボクは馬から降りて彼の射程距離外に立ってこん棒を構えた。
エドワードは「ほう」と感心の声を上げた。
「それは居合いの構えであろう。その手には乗らぬ」
お互いに間合いをとって、ピクリとも動かない。
仕掛けたら負ける。お互いにジットリと汗がわく。
正直ボクの方が分が悪い。
叔父との模擬戦で、この剣法だけは苦手だったのだ。
片腕の叔父に何度となく負けた。半月を描いて上から来るのか? 横から来るのか? それすらも分からない。
それに彼の部下の重騎兵が勝手に動き回ってる。
ポチやチビは上手く用兵してくれてるだろうか?
ボクがそう考えて「ふう」と息をついた時だった。
「いやーーー!!!」
ボクにスキが出来たと思ったのだろう。
彼は仕掛けてきた。踏み込みが尋常ではなかった。
あっという間に間合いを詰められた。
!!!!負ける……ッ!
ボクは体を引いてとっさに自分の前の地面に大こん棒を突き刺した。
エドワードは「しめた!」と思った。
このまま大こん棒を切ってしまい、一回転して遠心力をつけ、彼の首を切ってしまおう!
刹那の瞬間だった。
キーーーンと音を立ててエドワードの剣が折れた。
だが彼は思っていることを行動に移そうと空中で回転してボクの首元目がけて飛び上がったが、『????』となっていた。
軽い。腕が軽いのだ。
信じられなかったであろう。
剣が折れてしまったが頭では分かっても体は最悪の行動を起こしたままだった。
運命の神はボクに微笑んだのだ。
ボクの大棍棒は木製に見えるが鉄芯が埋められている。
それで剣が折れてしまったのだろう。
エドワードは見た目で判断したのだ。判断ミスだ。
その小さな隙間をくぐれた者が戦に勝つことが出来るのだ。
ボクは空中に浮いている彼の身をふんづかみ、両脚をとってハンマー投げのようにグルグルと回転して放り投げた!
彼の体はポーンと城壁目掛けて飛んで行き、壁にぶち当たってペチャッと音を立てて潰れた。
ボクは大きくため息をついた。精神的な疲れが襲った。
だが、それは僅かな時間だった。
生還できたことで喜びが疲れを忘れさせた。
慌てて生き残りのゴブリンを探し、戦況を確かめる。
だが、敵の重騎兵の目的はゴブリン兵ではなく、攻城兵器だった。分銅のついたロープを投げつけて、木で出来た攻城兵器を徹底的に破壊した上に油をかけ火を放ち、将校エドワードが敗れたことを知ると馬を急がせ撤退していった。
「ああ……」
余りの出来事にボクは兵を引いた。
またもゴブリン兵を失い、破壊された攻城兵器。
無事な攻城兵器は1基しかなかった。
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