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転生の章 決戦篇

第33話 攻城兵器投入

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義父シルバーに暇乞いをして自分の幕舎に向かった。
すぐにコノハを抱けるように道を歩きながらマントをはずし、鎧を脱いだ。
テントの入り口に差し掛かるときには、それらを脇に抱え軽い肌着だけになっていた。
テントの入り口をあけて彼女の名を呼ぶ。

「コノハ!」

たが返事はなかった。
ボクはピーンときてスケベそうに笑った。

「……そうか、かくれんぼだな? ふふ。むふふ」

ボクは彼女を探しながらその肌着も脱いでしまい裸になった。
見つけたら抑えつけてそのまま交わってしまおうと思ったのだ。
しかし、身を隠せる主なところを探しても彼女の姿はどこにもなかった。
トイレかも知れない。
ボクは肌着をもう一度着用して、幕舎の両脇にいる警護のゴブリンにたずねた。

「女は? どこに行った?」
「え? さて……? 我々も交代したばかりなので」

前任者を呼び付けて聞くというのも何となくバツが悪かったので、仕方なく幕舎の中で彼女を待ったが戻ってくる様子は全くなかった。

「……なんだよぉ。山に帰っちまったのかよぉ……。コノハぁ」

寝台の上で顔を伏せてつぶやいた。


次の日からフェイクの城攻めが開始された。
遠巻きに投石をしたり、矢を射かけたりして挑発した。
城からも飛び道具で応戦してきたが、お互いに一兵を失うこともなかった。
それを15日ほど続けた。

16日目の朝、義父シルバーに連れられ、オークの陣に向かった。
攻城兵器が出来たのだ。
大きな丸太にとがった先端には鉄がかぶせられ、運べるように車輪がついている。それを6両!
ボクと義父の顔に笑みがこぼれた。

「これにはさしもの、人間も打って出るほかございますまい」

「なるほど、そこを討ってしまえばいいのですね」
「その通り。ひょっとしたら穴が完成しなくとも落城させられるかもしれません!」

期待の城攻めが開始された。
人間たちは巨大な攻城兵器に驚いて、城壁よじ登ってそれを見ていた。
義父の号令によって、グォングォンと丸太はうなって、城壁や鉄で覆われた跳ね橋に攻撃を開始した。
ボクと義父は、丸太が城壁当たってグラグラと揺れるのを見て手を叩いて大爆笑した。
城からは火矢を打ったり、油を投げたりしてきたがそれほどこちらには効果がないのも面白く、我々は膝を叩いて笑いあった。

その日は戦果は上がらなかったがこれを続けていればきっと落城する。
我々はそれを信じて砦に戻り、オーク族を讃えて戦士たちに酒をふるまった。
ボクは自ら酒甕を持って、副団長や隊長たちに注いで回った。

次の日、義父シルバーは逆サイドの砦を慰問するということで早朝より出て行った。
ボクは義父がいない間に城を落として、コノハによって失っている義父からの信用を回復しようと思い、兵をまとめて出陣した。

そして、オークとゴブリンに攻城兵器を任せ、攻めている間に、帷幕いばくを設けて、ホブゴブリンの部隊を集めた。
そして彼らの武器に攻撃力を高める魔法を団長自らかけて回ったのだ。
野戦となったら騎馬のコボルド族と、怪力のホブゴブリンの出番だ。
備えあれば憂い無し。
オーク族に攻城させ、野戦になれば我らがでる。
我ながらいい作戦とほくそ笑んだ。

叔父に人間に魔法を使っているところ見られてはいかん。
人間は鬼族は魔法が使えないと思い込んでいるからその思い込みのままいさせるのだと言っていたので、帷幕の中での魔法の使用。
人間にはこちらの様子が見えない。
だが、こちらからも相手の様子が見えないのだ。

それを敵に利用されてしまった。
城の跳ね橋が落ちて500騎の重騎兵が出てきたのだ。
重騎兵とは馬にまで鎧を着せた騎馬隊だ。
機動力は悪いが、守備力が高すぎる。
ゴブリンたちが慌てて応戦したが、騎馬隊に弱い彼らだ。
ましてや重騎兵。勇猛に攻撃してもダメージがなく、こちらはバタバタと討ち死にした。

そんな状況をボクは気付かなかった。
わぁわぁと騒がしいなとは思っていたぐらいだった。
そこにポチが帷幕の中に駆け込んできた。

「大変です! 人間が打って出てきました!」
「ふふ。おいでなすったな。野戦は望むところだ」

「悠長なことを言っている場合じゃありません! 電光石火の攻撃ですでに多数死者がでております!」
「な、なに!? み、みんな救援に迎え!」

命令が遅かった。
ホブゴブリンたちが身をひるがえして騎兵に向かい、ボクも帷幕から飛び出して、馬に乗って救援に向かったが、すでに初戦と同じ様相。ゴブリン兵の遺体が累々と並んでいる。
オーク兵も攻城兵器より離れ隊列をなしていない。
戦場は大混乱だった。
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