コボルド将軍の息子 ──チャブチ

家紋武範

文字の大きさ
34 / 47
転生の章 決戦篇

第33話 攻城兵器投入

しおりを挟む
義父シルバーに暇乞いをして自分の幕舎に向かった。
すぐにコノハを抱けるように道を歩きながらマントをはずし、鎧を脱いだ。
テントの入り口に差し掛かるときには、それらを脇に抱え軽い肌着だけになっていた。
テントの入り口をあけて彼女の名を呼ぶ。

「コノハ!」

たが返事はなかった。
ボクはピーンときてスケベそうに笑った。

「……そうか、かくれんぼだな? ふふ。むふふ」

ボクは彼女を探しながらその肌着も脱いでしまい裸になった。
見つけたら抑えつけてそのまま交わってしまおうと思ったのだ。
しかし、身を隠せる主なところを探しても彼女の姿はどこにもなかった。
トイレかも知れない。
ボクは肌着をもう一度着用して、幕舎の両脇にいる警護のゴブリンにたずねた。

「女は? どこに行った?」
「え? さて……? 我々も交代したばかりなので」

前任者を呼び付けて聞くというのも何となくバツが悪かったので、仕方なく幕舎の中で彼女を待ったが戻ってくる様子は全くなかった。

「……なんだよぉ。山に帰っちまったのかよぉ……。コノハぁ」

寝台の上で顔を伏せてつぶやいた。


次の日からフェイクの城攻めが開始された。
遠巻きに投石をしたり、矢を射かけたりして挑発した。
城からも飛び道具で応戦してきたが、お互いに一兵を失うこともなかった。
それを15日ほど続けた。

16日目の朝、義父シルバーに連れられ、オークの陣に向かった。
攻城兵器が出来たのだ。
大きな丸太にとがった先端には鉄がかぶせられ、運べるように車輪がついている。それを6両!
ボクと義父の顔に笑みがこぼれた。

「これにはさしもの、人間も打って出るほかございますまい」

「なるほど、そこを討ってしまえばいいのですね」
「その通り。ひょっとしたら穴が完成しなくとも落城させられるかもしれません!」

期待の城攻めが開始された。
人間たちは巨大な攻城兵器に驚いて、城壁よじ登ってそれを見ていた。
義父の号令によって、グォングォンと丸太はうなって、城壁や鉄で覆われた跳ね橋に攻撃を開始した。
ボクと義父は、丸太が城壁当たってグラグラと揺れるのを見て手を叩いて大爆笑した。
城からは火矢を打ったり、油を投げたりしてきたがそれほどこちらには効果がないのも面白く、我々は膝を叩いて笑いあった。

その日は戦果は上がらなかったがこれを続けていればきっと落城する。
我々はそれを信じて砦に戻り、オーク族を讃えて戦士たちに酒をふるまった。
ボクは自ら酒甕を持って、副団長や隊長たちに注いで回った。

次の日、義父シルバーは逆サイドの砦を慰問するということで早朝より出て行った。
ボクは義父がいない間に城を落として、コノハによって失っている義父からの信用を回復しようと思い、兵をまとめて出陣した。

そして、オークとゴブリンに攻城兵器を任せ、攻めている間に、帷幕いばくを設けて、ホブゴブリンの部隊を集めた。
そして彼らの武器に攻撃力を高める魔法を団長自らかけて回ったのだ。
野戦となったら騎馬のコボルド族と、怪力のホブゴブリンの出番だ。
備えあれば憂い無し。
オーク族に攻城させ、野戦になれば我らがでる。
我ながらいい作戦とほくそ笑んだ。

叔父に人間に魔法を使っているところ見られてはいかん。
人間は鬼族は魔法が使えないと思い込んでいるからその思い込みのままいさせるのだと言っていたので、帷幕の中での魔法の使用。
人間にはこちらの様子が見えない。
だが、こちらからも相手の様子が見えないのだ。

それを敵に利用されてしまった。
城の跳ね橋が落ちて500騎の重騎兵が出てきたのだ。
重騎兵とは馬にまで鎧を着せた騎馬隊だ。
機動力は悪いが、守備力が高すぎる。
ゴブリンたちが慌てて応戦したが、騎馬隊に弱い彼らだ。
ましてや重騎兵。勇猛に攻撃してもダメージがなく、こちらはバタバタと討ち死にした。

そんな状況をボクは気付かなかった。
わぁわぁと騒がしいなとは思っていたぐらいだった。
そこにポチが帷幕の中に駆け込んできた。

「大変です! 人間が打って出てきました!」
「ふふ。おいでなすったな。野戦は望むところだ」

「悠長なことを言っている場合じゃありません! 電光石火の攻撃ですでに多数死者がでております!」
「な、なに!? み、みんな救援に迎え!」

命令が遅かった。
ホブゴブリンたちが身をひるがえして騎兵に向かい、ボクも帷幕から飛び出して、馬に乗って救援に向かったが、すでに初戦と同じ様相。ゴブリン兵の遺体が累々と並んでいる。
オーク兵も攻城兵器より離れ隊列をなしていない。
戦場は大混乱だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

処理中です...