33 / 47
転生の章 決戦篇
第32話 第二の砦攻略戦
しおりを挟む
敵の拠点は大きな城と、この砦から対角線上に城の裏手にあるもう一つの砦。
こちら側の奪取した砦は我々魔王軍の侵入を防ぎ、向こう側の砦は、他の王国……つまり人間の侵入を防ぐ意味合いなのであろう。
まったく人間という者は浅ましい者だ。
そっちこっちに敵を作っている。
そう言えば、ボクも昔は……前世は人間だった。コボルドの方が年数が長くなってしまったのですっかり忘れてしまった。
まぁ、今になってはどうでもいい話だ。
ボクは騎乗しながら、大棍棒を一つだけ大きく振ると隣にいたポチは驚いて落馬しそうになった。
今からその砦から襲う。
人間の侵入を防ぐために作られているのでこちらの砦よりも簡素だ。簡単に落ちるだろうと義父シルバーは言った。
その間もゴブリンたちは城に向けて穴を掘る。
もともと山間部に穴を掘って暮らしていたゴブリン族にはお手の物だ。
義父シルバーは留守を預かり、ボクが出陣し砦を攻めることになった。ゴブリン兵300、ホブゴブリン兵200、コボルド兵100、オーク兵200を引き連れて。
コノハは何しているだろう?
ちゃんと食事を与えるようには言ってはきたが。
心配だから、さっさと砦を落としてしまおうと、ボクは力押しの戦を開始することにした。
その頃、ボクの幕舎の中でコノハは自分の舌で毛繕いをしていたらしい。
そこに義父シルバーが部下を5人ほど連れて入ってきた。
コノハはボクが戻ってきたと思い顔を上げて名前を呼んだ。
「チャブチ?」
しかしそこには恐ろしい狼顔の義父シルバー。
義父は大変呆れてコノハの顔を見ながら呟いた。
「やれやれ。これがチャブチの愛妾か。少し娘のピンクに似ているのが救いと言ったところか。どこで拾ってきたのやら。抜け目のないやつだ」
そう言いながら剣を抜いた。
コノハは驚いてボクの名前を大きく叫んだらしい。
しかし、他の戦士たちも剣を抜いて彼女にジリジリと近づく。
コノハは四つん這いになると、パッと駆け出してテントの外に飛び出し山を指して逃げていってしまった。
戦士の一人が義父に問うた。
「追いかけて殺しますか?」
義父はそれに答える。
「それには及ばん。団長閣下は山が恋しくなって逃げ出したと思うだろう。誰も何も言わなくてもよい。元よりここには女子はおらんかった。そなた達も何も知らない。ワシも何も見ておらん」
そう言ってボクの幕舎を後にしたらしい。
そんなことを知らないボクは、コノハに会いたい一心で父の形見の大棍棒を片手に砦攻めを開始した。
城から出てくる騎馬隊にはホブゴブリンを差し向けて進軍の妨げをさせた。
ゴブリンに壁を登らせようとしたが、壁の上には鉄の杭が斜め下を向いて刺してあり、そこにバラ線が巻かれていて上り切ることは甚だ困難だった。
しかしそれは急作りのものだった。堀も小さく、体の大きな我々の武器が簡単に届く。ボクとホブゴブリンの副団長は顔を見合わせてニコリと笑い合った。
「では、ボクから攻めさせてもらおう」
「もちろん。閣下どうぞお先に」
ホブゴブリンの副団長は手を出して促してくれた。
ボクは『アムスタラグ!』と武器の性能を上げる魔法を叫んだ。
それて馬を駆り、城壁に近づいて大棍棒をひと薙ぎすると簡単に壁は壊れてしまった。
そこにオーク兵を入れてあっという間に奪った。
砦に入ったボクは、ホブゴブリンの副団長を呼んだ。
「キミにここを任せる。魔法の使えるコボルド30とオーク兵200、ゴブリン兵200を置いてゆくので砦を修繕し守りたまえ。後ほど、糧秣を運ばせよう。私はあちらの砦に戻り、軍司令と城攻めについて話し合うことにする。こちらはよろしく頼む」
ホブゴブリンの副団長は大きく一礼した。
「わかりました。お任せ下さい」
今日の戦は終わった。
ボクは残った部隊をまとめて急いで最初の砦に戻った。
昼からはじまった戦は早々に決着し、夕方には拠点の砦に戻ることができた。
砦に戻ると、義父のシルバーがボクを迎えた。
「さすが、団長閣下。本日の電光石火、まさにブラウン将軍の再来!」
と褒め称えてくれた。
やはり、義父や叔父に褒められるというのは嬉しい。
いつも厳しいからなおさらだ。
「いえいえ、軍司令の作戦のおかげです」
そう言うと義父も笑った。そして小さく指を指す。
「さぁ、我々の作戦の要、洞穴を見に行きましょう」
義父はボクをゴブリンたちが掘る穴に案内した。
今日の砦攻めも敵の目をそらすためだ。
その間にどれだけコボルドが掘り進められたか、成果を見せると言うことだった。
そこはゴブリンの副団長が指揮しており、200名ほどのゴブリン部隊がいて、中に50名ほど入って穴を掘り50名ほどで土を運び、100名ほどで山に土を捨てるという作業をしていた。
義父にゴブリンの副団長が今日の結果を伝えた。
それを聞いて義父は満足げに微笑む。
「本日だけで50メートルほど掘り進んだようです」
「なんと!」
ここから城まで2kmほどだ。単純計算で40日ほどで城に入れる。
「糧秣はまだまだございますので、この調子なら作戦は成功しますな」
義父の言葉は重い。
ホントに展望が開けたのであろう。
あの大きな城をとればボクたちの功績はかなり大きい。
「軍司令。向こうの砦はホブゴブリンの副団長に守らせました。向こうにも糧秣を届けてやってください。しかし、向こうは守りにくい砦です。人間たちは向こう側を攻めるかも知れません」
「ふふ。まさに」
彼は笑って続けた。
「しかし、我々が毎日軍を率いてこちらから攻めるのです。そしたら砦を奪おうとか悪しき考えは致しますまい」
なるほど。まさにその通りだ。
少し心配していたが、大丈夫そうで安心した。
こちら側の奪取した砦は我々魔王軍の侵入を防ぎ、向こう側の砦は、他の王国……つまり人間の侵入を防ぐ意味合いなのであろう。
まったく人間という者は浅ましい者だ。
そっちこっちに敵を作っている。
そう言えば、ボクも昔は……前世は人間だった。コボルドの方が年数が長くなってしまったのですっかり忘れてしまった。
まぁ、今になってはどうでもいい話だ。
ボクは騎乗しながら、大棍棒を一つだけ大きく振ると隣にいたポチは驚いて落馬しそうになった。
今からその砦から襲う。
人間の侵入を防ぐために作られているのでこちらの砦よりも簡素だ。簡単に落ちるだろうと義父シルバーは言った。
その間もゴブリンたちは城に向けて穴を掘る。
もともと山間部に穴を掘って暮らしていたゴブリン族にはお手の物だ。
義父シルバーは留守を預かり、ボクが出陣し砦を攻めることになった。ゴブリン兵300、ホブゴブリン兵200、コボルド兵100、オーク兵200を引き連れて。
コノハは何しているだろう?
ちゃんと食事を与えるようには言ってはきたが。
心配だから、さっさと砦を落としてしまおうと、ボクは力押しの戦を開始することにした。
その頃、ボクの幕舎の中でコノハは自分の舌で毛繕いをしていたらしい。
そこに義父シルバーが部下を5人ほど連れて入ってきた。
コノハはボクが戻ってきたと思い顔を上げて名前を呼んだ。
「チャブチ?」
しかしそこには恐ろしい狼顔の義父シルバー。
義父は大変呆れてコノハの顔を見ながら呟いた。
「やれやれ。これがチャブチの愛妾か。少し娘のピンクに似ているのが救いと言ったところか。どこで拾ってきたのやら。抜け目のないやつだ」
そう言いながら剣を抜いた。
コノハは驚いてボクの名前を大きく叫んだらしい。
しかし、他の戦士たちも剣を抜いて彼女にジリジリと近づく。
コノハは四つん這いになると、パッと駆け出してテントの外に飛び出し山を指して逃げていってしまった。
戦士の一人が義父に問うた。
「追いかけて殺しますか?」
義父はそれに答える。
「それには及ばん。団長閣下は山が恋しくなって逃げ出したと思うだろう。誰も何も言わなくてもよい。元よりここには女子はおらんかった。そなた達も何も知らない。ワシも何も見ておらん」
そう言ってボクの幕舎を後にしたらしい。
そんなことを知らないボクは、コノハに会いたい一心で父の形見の大棍棒を片手に砦攻めを開始した。
城から出てくる騎馬隊にはホブゴブリンを差し向けて進軍の妨げをさせた。
ゴブリンに壁を登らせようとしたが、壁の上には鉄の杭が斜め下を向いて刺してあり、そこにバラ線が巻かれていて上り切ることは甚だ困難だった。
しかしそれは急作りのものだった。堀も小さく、体の大きな我々の武器が簡単に届く。ボクとホブゴブリンの副団長は顔を見合わせてニコリと笑い合った。
「では、ボクから攻めさせてもらおう」
「もちろん。閣下どうぞお先に」
ホブゴブリンの副団長は手を出して促してくれた。
ボクは『アムスタラグ!』と武器の性能を上げる魔法を叫んだ。
それて馬を駆り、城壁に近づいて大棍棒をひと薙ぎすると簡単に壁は壊れてしまった。
そこにオーク兵を入れてあっという間に奪った。
砦に入ったボクは、ホブゴブリンの副団長を呼んだ。
「キミにここを任せる。魔法の使えるコボルド30とオーク兵200、ゴブリン兵200を置いてゆくので砦を修繕し守りたまえ。後ほど、糧秣を運ばせよう。私はあちらの砦に戻り、軍司令と城攻めについて話し合うことにする。こちらはよろしく頼む」
ホブゴブリンの副団長は大きく一礼した。
「わかりました。お任せ下さい」
今日の戦は終わった。
ボクは残った部隊をまとめて急いで最初の砦に戻った。
昼からはじまった戦は早々に決着し、夕方には拠点の砦に戻ることができた。
砦に戻ると、義父のシルバーがボクを迎えた。
「さすが、団長閣下。本日の電光石火、まさにブラウン将軍の再来!」
と褒め称えてくれた。
やはり、義父や叔父に褒められるというのは嬉しい。
いつも厳しいからなおさらだ。
「いえいえ、軍司令の作戦のおかげです」
そう言うと義父も笑った。そして小さく指を指す。
「さぁ、我々の作戦の要、洞穴を見に行きましょう」
義父はボクをゴブリンたちが掘る穴に案内した。
今日の砦攻めも敵の目をそらすためだ。
その間にどれだけコボルドが掘り進められたか、成果を見せると言うことだった。
そこはゴブリンの副団長が指揮しており、200名ほどのゴブリン部隊がいて、中に50名ほど入って穴を掘り50名ほどで土を運び、100名ほどで山に土を捨てるという作業をしていた。
義父にゴブリンの副団長が今日の結果を伝えた。
それを聞いて義父は満足げに微笑む。
「本日だけで50メートルほど掘り進んだようです」
「なんと!」
ここから城まで2kmほどだ。単純計算で40日ほどで城に入れる。
「糧秣はまだまだございますので、この調子なら作戦は成功しますな」
義父の言葉は重い。
ホントに展望が開けたのであろう。
あの大きな城をとればボクたちの功績はかなり大きい。
「軍司令。向こうの砦はホブゴブリンの副団長に守らせました。向こうにも糧秣を届けてやってください。しかし、向こうは守りにくい砦です。人間たちは向こう側を攻めるかも知れません」
「ふふ。まさに」
彼は笑って続けた。
「しかし、我々が毎日軍を率いてこちらから攻めるのです。そしたら砦を奪おうとか悪しき考えは致しますまい」
なるほど。まさにその通りだ。
少し心配していたが、大丈夫そうで安心した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる