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第7話 淳イコール
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家のリビングのソファに寝っ転がっていると、母親がにこやかに話しかけてきた。
「シーちゃん、彼女できたんだって?」
「いっ。誰からそれを?」
「バカねぇ。学校帰りに手をつないでたら誰でも分かるでしょ。近所の人に聞いたのよ。どんな人?」
「どんな人って……可愛い子だよ」
「まぁ!」
「なにがまぁだよ」
「でも、あまりあなたの能力を使っちゃダメよ?」
「分かってるよ……そんなこと」
母は知っている。オレの心を読む能力。
昔、親戚の声が聞こえたことを言ったからだ。
みんな恋人ができるだろう。でもオレのように相手の心を読むことなんてできない。
読めば相手の望むことができるけど──。
知りたくないことまで知らなくちゃならないときが来るかも知れない。
それは嫌だ。
淳の『ゴメン』だって何がなんだか分からない。
知りたいけど、彼女の心の中に入り込むことは本当はルール違反なんだよな。
「家に連れて来てよ。お母さんに紹介しなさい」
「そうだね。また今度」
彼女を親に紹介か……。
した方が良いよな~。
次の日、淳には悪いが家を通り越して、ウチのマンションに連れて来た。
親に紹介と言うと、彼女の心の中は大喜びと緊張が入り交じっていたのでまた笑ってしまったが。
淳は人見知りが激しい。エレベーターの中では心の中が真っ白。
顔を見ると、白目と黒目が言ったり来たり。
ホントに淳は面白いヤツだ。
「緊張しいだなぁ」
「だってぇ。椎太クンのお母さんと初めて会うし~」
マスクしたまま赤い顔をして恥ずかしそうに顔を伏せる淳。
「可愛い、可愛い」
「やだぁ。やだぁ」
たった一ヶ月で大きな違い。オレたちは心を許しあってるのだ。
多分、同学年の連中から見れば、同じレベルのカップルにしか見えないけど、淳は本当に可愛い。
オレなんかに似合わないほど。
引っ越したばかりの頃は、シャンプーもリンスも櫛もいいのがなかったせいか、髪がぐしゃぐしゃだったけど、今は学年で誰よりもキレイに整っている。
マスクを取ったあの顔だってかなり美人の部類だ。
分厚いメガネを取ったらどんな目のバランスになるんだろう。
そうだ。今日はそれを部屋で検証してみよう。
ウチについて、玄関のドアを開ける。
キッチンの電気が点いている。お母さんはいるらしい。
「お母さんただいまー」
「おかえりー」
「ぁ、ぁの……ぉじゃまします……」
声小せーー。
アリが入って来たの?
しかし、お母さんは敏感に察知して、猛スピードでこちらに近づいてきた。
「あらあらあらあら、彼女さん? どーぞあがって、あがって」
「ぉじゃましまぅ……」
「お母さん、オレの彼女の音倉 淳っていうんだ。淳、これがうちのお母さん」
「あの……初めまして……」
「あらやーだ、淳ちゃん。ホラ、みんなでお菓子食べよう」
お母さんの強引さ。
そして淳のガチガチがたまらない。
オレは一人噴き出しそうだが、淳の心の声は『椎太クン助けて~』だ。そうだよな。さすがに多く接触するのは辛かろう。
「お母さん、淳と部屋で音楽でも聴くからお菓子持ってきて」
「あらなによ~。お母さんを仲間はずれにするのね?」
「普通はそうだろ。紹介も終わったし」
「もーう。お母さんはアンタの家政婦じゃないのよ?」
母に手渡されたトレイの上にお菓子とペットボトルとコップが二つ。それを持って部屋に入った。
淳は緊張から解放されたのですぐにオレに抱き付いてきた。
『緊張した。怖かった。椎太クン、キスしたい』
もうしょうがないなぁ。淳は。
オレは彼女を抱き締める。
『やだ。お母さんが来たらどうするの?』
どっちだよ。オレは彼女を解放しておでこにキスをした。
「あ~~~」
「どうした?」
「ありがと。キスしてくれて。椎太クンのキス、落ち着く!」
「フフ」
淳は、初めて入るオレの部屋を見渡す。
おいおい。彼女チェックっすか?
昨日は夜中まで片付けしたんで大丈夫だろ?
「あれれ?」
彼女が本棚に近づく。
いや、別に嫌らしいものなんてないから別にいいけど?
つか、今日の目標は、淳のメガネを外して、マスクも外して生顔拝見ですよ。
それくらい、いいよな?
オレは彼女の背中に近づいたとき、彼女は本棚から一冊の本を取り出した。それはずいぶん前に買った週刊マンガだった。
彼女はページをめくる。
冒頭のカラーページ。
マンガじゃない。グラビアアイドルのページだ。
そこには雛川陽と言う元グラビアアイドル。
そこで手を止めた。
「椎太クン」
「どうした?」
「この人──」
「ああ、雛川陽?」
「ファンなの?」
「昔はね。でも今は淳のことしか考えてないよ。嫌なら捨てるけど?」
淳はしばらく動かなかった。
そしてそのまま本をたたむ。
「椎太クン」
「うん」
「あの──」
「どうしたの?」
淳は、制服のネクタイを取る。
次に上の制服を脱ぐと、その下には白いシャツ。
初めて見る胸の盛り上がり。
ダボダボの制服の下にそんなものが隠れていたなんて!
彼女はマスクを外した。
そう。今日の目標は彼女のマスクとメガネをとって、本当の素顔を見ること。
だけど、彼女はためらいもなく次にメガネを外した。
オレは驚いて後ろの壁に体を打ち付けてしまった。
だって。だって──。
「ひ、ひ、ひ、雛川陽……さん」
「椎太クン、今まで隠しててゴメンね。淳、前までグラビアアイドルやってたの。でも、椎太クンに会いたくて、会いたくて──」
え?
オレに?
どう言うことだ?
意味が分からないぞ?
「シーちゃん、彼女できたんだって?」
「いっ。誰からそれを?」
「バカねぇ。学校帰りに手をつないでたら誰でも分かるでしょ。近所の人に聞いたのよ。どんな人?」
「どんな人って……可愛い子だよ」
「まぁ!」
「なにがまぁだよ」
「でも、あまりあなたの能力を使っちゃダメよ?」
「分かってるよ……そんなこと」
母は知っている。オレの心を読む能力。
昔、親戚の声が聞こえたことを言ったからだ。
みんな恋人ができるだろう。でもオレのように相手の心を読むことなんてできない。
読めば相手の望むことができるけど──。
知りたくないことまで知らなくちゃならないときが来るかも知れない。
それは嫌だ。
淳の『ゴメン』だって何がなんだか分からない。
知りたいけど、彼女の心の中に入り込むことは本当はルール違反なんだよな。
「家に連れて来てよ。お母さんに紹介しなさい」
「そうだね。また今度」
彼女を親に紹介か……。
した方が良いよな~。
次の日、淳には悪いが家を通り越して、ウチのマンションに連れて来た。
親に紹介と言うと、彼女の心の中は大喜びと緊張が入り交じっていたのでまた笑ってしまったが。
淳は人見知りが激しい。エレベーターの中では心の中が真っ白。
顔を見ると、白目と黒目が言ったり来たり。
ホントに淳は面白いヤツだ。
「緊張しいだなぁ」
「だってぇ。椎太クンのお母さんと初めて会うし~」
マスクしたまま赤い顔をして恥ずかしそうに顔を伏せる淳。
「可愛い、可愛い」
「やだぁ。やだぁ」
たった一ヶ月で大きな違い。オレたちは心を許しあってるのだ。
多分、同学年の連中から見れば、同じレベルのカップルにしか見えないけど、淳は本当に可愛い。
オレなんかに似合わないほど。
引っ越したばかりの頃は、シャンプーもリンスも櫛もいいのがなかったせいか、髪がぐしゃぐしゃだったけど、今は学年で誰よりもキレイに整っている。
マスクを取ったあの顔だってかなり美人の部類だ。
分厚いメガネを取ったらどんな目のバランスになるんだろう。
そうだ。今日はそれを部屋で検証してみよう。
ウチについて、玄関のドアを開ける。
キッチンの電気が点いている。お母さんはいるらしい。
「お母さんただいまー」
「おかえりー」
「ぁ、ぁの……ぉじゃまします……」
声小せーー。
アリが入って来たの?
しかし、お母さんは敏感に察知して、猛スピードでこちらに近づいてきた。
「あらあらあらあら、彼女さん? どーぞあがって、あがって」
「ぉじゃましまぅ……」
「お母さん、オレの彼女の音倉 淳っていうんだ。淳、これがうちのお母さん」
「あの……初めまして……」
「あらやーだ、淳ちゃん。ホラ、みんなでお菓子食べよう」
お母さんの強引さ。
そして淳のガチガチがたまらない。
オレは一人噴き出しそうだが、淳の心の声は『椎太クン助けて~』だ。そうだよな。さすがに多く接触するのは辛かろう。
「お母さん、淳と部屋で音楽でも聴くからお菓子持ってきて」
「あらなによ~。お母さんを仲間はずれにするのね?」
「普通はそうだろ。紹介も終わったし」
「もーう。お母さんはアンタの家政婦じゃないのよ?」
母に手渡されたトレイの上にお菓子とペットボトルとコップが二つ。それを持って部屋に入った。
淳は緊張から解放されたのですぐにオレに抱き付いてきた。
『緊張した。怖かった。椎太クン、キスしたい』
もうしょうがないなぁ。淳は。
オレは彼女を抱き締める。
『やだ。お母さんが来たらどうするの?』
どっちだよ。オレは彼女を解放しておでこにキスをした。
「あ~~~」
「どうした?」
「ありがと。キスしてくれて。椎太クンのキス、落ち着く!」
「フフ」
淳は、初めて入るオレの部屋を見渡す。
おいおい。彼女チェックっすか?
昨日は夜中まで片付けしたんで大丈夫だろ?
「あれれ?」
彼女が本棚に近づく。
いや、別に嫌らしいものなんてないから別にいいけど?
つか、今日の目標は、淳のメガネを外して、マスクも外して生顔拝見ですよ。
それくらい、いいよな?
オレは彼女の背中に近づいたとき、彼女は本棚から一冊の本を取り出した。それはずいぶん前に買った週刊マンガだった。
彼女はページをめくる。
冒頭のカラーページ。
マンガじゃない。グラビアアイドルのページだ。
そこには雛川陽と言う元グラビアアイドル。
そこで手を止めた。
「椎太クン」
「どうした?」
「この人──」
「ああ、雛川陽?」
「ファンなの?」
「昔はね。でも今は淳のことしか考えてないよ。嫌なら捨てるけど?」
淳はしばらく動かなかった。
そしてそのまま本をたたむ。
「椎太クン」
「うん」
「あの──」
「どうしたの?」
淳は、制服のネクタイを取る。
次に上の制服を脱ぐと、その下には白いシャツ。
初めて見る胸の盛り上がり。
ダボダボの制服の下にそんなものが隠れていたなんて!
彼女はマスクを外した。
そう。今日の目標は彼女のマスクとメガネをとって、本当の素顔を見ること。
だけど、彼女はためらいもなく次にメガネを外した。
オレは驚いて後ろの壁に体を打ち付けてしまった。
だって。だって──。
「ひ、ひ、ひ、雛川陽……さん」
「椎太クン、今まで隠しててゴメンね。淳、前までグラビアアイドルやってたの。でも、椎太クンに会いたくて、会いたくて──」
え?
オレに?
どう言うことだ?
意味が分からないぞ?
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