エスパーを隠して生きていたパシリなオレはネクラな転校生を彼女にされました

家紋武範

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第8話 本当は

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淳の話がわからない。
あの時の心の中の『ゴメン』は隠していてゴメンということか。
でも、まさか淳があの雛川陽だったなんて!

つか、オレの彼女。
そしてキスしたぞ。心の声でファーストキスって聞いたぞー!
うぇーい。嘘偽りない声がオレには聞こえるんだ。
あんな華やかな職場にいてキスがまだだなんて~。
淳ちゃん純情!
でも、なんだよなんだよ。だったら淳だってそう言ってくれれば良いのに。
淳は雛川だよってさぁ~。

でも淳が雛川陽だって知ったら、あの学校中パニックだったよな。
オレなんか近づくことなんてできない。
今の姿のままだったから久保田が連れて来たのかも知れない。

「やっぱり」
「え?」

「怒ってるよね。秘密にしてたこと」
「いやいやそんな!」

そんな──。
ただビックリしただけで怒ってるなんて。

「ホント?」
「ホントだよ」

「好き? 淳のこと──」
「もちろんだよ」

「ホント? 雛川だから好きだったりして」
「まさか。怒るぞ?」

「やん。ゴメンなさい」

つか。急によくしゃべる。
でも心の中の淳と同じだ。
秘密を教えて楽になったってことかな。

「でもオレは淳が好きなんだから、雛川じゃなくていいんだよ」

──何いってんの?
彼女は元々雛川であって、淳でもあるわけで。
我ながら意味が分からない。

「ありがと。椎太クン。今の姿が本当の淳なの。それを好きになってくれた椎太クンが好き。大好き」
「へへへ」

でもなんで?
淳のあの時の心の声。そして今の言葉。

『青春の恋人』
「椎太くんに会いたくて」

芸能事務所から逃げ出した雛川陽。
それがオレに会いたくて?
それってどういうこと?

「オレに会いたいってどういうこと? 今まで知らない土地にいたのに、急にオレに会うためにグラドル辞めて転校して来たって……。考えたら不思議だよ」

そっと彼女の手を握る。
それは心の声と、言葉を一致させるため。
淳の心の声と言葉とはいつも一致してる。嘘の付けない正直な子なんだ。

「今まで、どうしてグラドルだったの?」
「それは──、スカウトされたからだよ」

『本当は──』

うん。心の声が隠したがってる。
残念ながら、隠したいことは聞こえない。
でも、最近、少しだけ奥の心を読むことができるようになったのは検証済み。

教えてくれ。淳。
聞いちゃダメだって思うけど、自分の能力がある以上、知りたい気持ちが勝ってしまうんだ。
ゴメンな。

「それを辞めちゃうなんてもったいないよ。そんでなんでウチの高校なのさ」
「だって~。だから椎太クンにも会えたわけだし~」

そこでキス。
淳はうっとりとした雛川の顔でまどろむ。
だけど心の声。
少しだけの奥の声を聞きたい。

どうして。どうしてウチの高校に──。

『淳、少しだけ──未来が見えるんだ。夢が教えてくれるの──』

驚き!
なんてこった。それって予知夢ってやつだよな。
淳もエスパーだったなんて!
つか、この顔で、このボディでエスパーって、天は彼女にどんだけ才能を与えてんだよ~。
運命。ホントに運命なのかも。オレたちって。

『グラドルになることも夢が教えてくれた──。そして椎太クンと仲良く青春を送ることも──』

そっかそっか~。
淳は夢に導かれて生きて行くんだな。

『あと わ ず か な 時 間──』

?????

どういうことだ。

淳の心の声が途切れる。
通信が利かなくなったように無心。
キスにだけ意識を傾けるように。

わずかな時間。
あとわずかな時間。

それってどういうことなんだよ。
心に触れれば触れるほど謎が多くなって行く。

教えてくれよ。

淳──。
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