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第18話 死なせはしない

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数日経っても、淳に何かが起こるわけじゃない。平穏なまま。
淳の中では覚悟を決めているのかも知れない。
たしかにあの夢の映像は今の年齢のまま。
だったらもうすぐ起きる予知なんだ。もうすぐ起きてしまう決定事項。どうにかしなくちゃ。
どうにかしなくちゃならないのに。

この握っている淳の手がどこかに行ってしまう。
そんなのいやだ。
淳と将来を一緒に生きたい。
一緒に生きて行きたい。

学校の帰り道。これから淳の部屋に向かうオレたち。淳の手を握る力が強くなる。

『やだ。椎太クンの手。今日は強い。強過ぎるよ~。なにを思ってるんだろ。淳をもう自分のものにしたいってことかな? やだぁ~。椎太クンはそういう人じゃない。コラ淳。はしたないぞ』

可愛い。
なんて淳は可愛いんだ。
そんな淳がもうすぐ死んでしまう?

嫌だ。嫌だ。嫌だ。

「ねぇ淳?」
「え。なに椎太クン」

「あの~。あのサ」
「うん」

「えーと、ホラ」
「なに?」

「ん~、学祭楽しかったな」
「え~。淳、恥ずかしかったよ~」

何いってんだオレ。
正直に言うんだ。自分はエスパーだって。
心の中が読めるんですって。
だから分かる。淳のコレからの運命。

でも。

だから。

淳にどうしろっていうんだ。


「淳」
「なに?」

「オレ、淳と将来も一緒にいたい」
「え? もぉ~なにいいだすの?」

「ずっとずっと一緒にいたい。だから!」
「うん。私も同じ気持ちだよ」

「淳には長生きして欲しい……」
「え? ハイ。そのつもりです」

淳の目からこぼれる涙。うれし涙。いや違う。
その涙の意味が握られた手から伝わってくる。

『……でもゴメンネ。椎太クン。淳もうすぐ死んじゃうんだ──』

そうはさせない。
絶対にそうはさせない。
未来を。決められた未来を変えてやるんだ!


家に帰って考えた。
メモもとる。自分が心を読めるエスパーだという必要は無い。
しかし、うまく伝えられるか分からない。

まず、淳のことをここから遠くへ転校させる。
それが一番だ。実家はすでにないってはいってたから親戚とか、そういうところの人を頼ってもらって。
でも理由もなくてそんなことはさせられない。

だから、オレもコレからの未来を知ってることにするんだ。
淳と同じ予知が出来る力があることにすればいい。

淳が死ぬ未来が見えた。
だからそれを避けるために転校して欲しい。
そう言えばいい。

はぁ~。これなら完璧だ。
すぐに淳に電話をして伝えよう。
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