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第16話 甘い蜜なる夜
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なぜ、なぜ。私はラースを罰しなくてはならないのだろう。
まったく納得がいかない。
大好きなラースが、私を好きにならないという。
そんなはずない。
ラースは私のことが好きで、一目見たくて塔まで来たはずなのよ。
頬を打たれてからラースは話さなくなってしまった。
話さないまま、ソリを滑らし、その日の行程は10km程だった。
食事の用意をしても、私のためのイスを作ってもラースはなにも言わない。ただ寂しそうな顔をしていた。
食事を終え、私のために体を拭くお湯を用意したとき、私は上半身を全て脱ぎ、目を丸くしているラースへと背中を向けた。
「ラース」
「は、はい……」
「背中をお拭き」
「え!」
すっとんきょうな高い声。普段はこんなことはしなかった。
しかし何日も背中を満足に拭いていないし、城では召使いに拭かせているのに、今じゃ自分で体を拭かなくてはならない。
それは仕方がないが、黙ったままのラースをどうにかしたかった。
だからこその諸肌。
ラースも男だ。それも好きな私の肌に触れるのをどう思うだろう。ひょっとしたら、思い余る行動に出るかもしれない。
それならそれでいい。ラースになら。
ラースは真っ赤な顔で、嬉しいんだか、慌ててるのか、パニックの様相で、両手を振って辞退した。
「そ、そんな姫、畏れ多いですゥ。ダメです。ダメダメェ。高貴な肌に私が触れるなど、ああ~、ダメぇ。無理ィ」
普段冷静なラースの慌てっぷりが面白くなった。
なにも胸を見せているわけじゃない。背中だけなのに。
ラースは私の方は見ずに、跪いて左の方を見ていた。
面白い。なぜか胸がスッとする。
「ダメよラース。これはお仕置き。ラースは自分で言ったじゃない。自分を罰して欲しいと。だから今日はあなたは私の召使いよ。さあお拭き」
ラースはまたも黙っていたが、聞こえる。荒い荒い鼻息の音。相当の興奮。まるで闘牛のようだわ。
ラースはお湯の中にザブッと布を握った手を突っ込み、甘く搾ってこちらに近づく雪を踏む音。
「そ、それでは無礼があったら申し訳ございません。姫」
軽く背中に押し当てられるラースの両手のひら。
強すぎず、優しすぎず。
上へ、下へと私の肌を拭く。
そっと後ろに首を向けると恥ずかしそうにまた左を向いている。
私は面白くなってしまった。
左腕を上げ、脇を晒す。
ラースの目にはその間から丸みが見えたのであろう。
完全に動きが停止していた。
「今度は脇をお拭き」
「は……あの! は、はい!」
ラースの左腕が私の左手を掴む。そして拭かれる左脇。
脇から上腕にかけて素早く拭いたと思ったら、今度は脇から少しばかり乳房へとオーバーする。
しかし私は何も言わずにそのままにした。
次は右脇。ラースは鼻息荒く、同じように拭いた。そして小声ながらたしかに聞こえた。ラースの独り言。
「はぁスベスベだ……!」
私は思わず吹き出した。やはりラースは私への憧れがあるのだろう。召使いのフリをしながら肌を味わっていたのだ。
もう。それならそれで。
ラースはしばらく背中に手のひらを当てていた。やがてそれを離したが鼻息はまだ荒いままだった。
「ラース」
「は、はい! なんでしょう姫! なんなりと。なんなりと」
「肌着をとってちょうだい」
「肌着を。は、はい。では体を拭くのはもう終わりで。まだお湯には余裕がございますが。あの。その。決して邪な気持ちではなく。はい」
邪だ。すでに自首しているようなものだ。まだ私の肌に触れていたいのであろう。
しかし、そう。これで終わりじゃない。
私はラースから体を拭く布を手に取った。
「ラース、服をお脱ぎ。私が背中を拭いてあげるわ」
「え。姫。そんなまさか。いえ、ダメです。高貴な身分の姫が下賎な私の肌に触れましたら手がかぶれます。ええ、ダメです。自分で拭きますから。はい。大丈夫で」
「いちいちうるさいわね。さっさと脱ぎなさい!」
「は、はい! 直ちに!」
ホントに一秒もかからないくらいだった。ラースはあっという間にマントと鎧と上着を脱いで諸肌をさらし、こちらに体を向けた。
やはり凄い筋肉だ。鎧のような形。思わずその胸に触れる。
「んっ」
「あ、くすぐったかった?」
「いえ、大丈夫で……」
「凄い胸板だわ。これが魔物を倒すのね」
「さ、さようにございます」
背中と言っていたのに、なぜかラースの胸板を拭いていた。
ラースの息が荒い。私の手のひらにラースの息が当たる。
荒い荒い息が。それがとても温かい。それを味わいながらラースの厚い胸を何度も丸く拭いていた。
ラースの息の荒さが再頂点に達した。
ラースは突然私の肩を両手で掴む。
「はぁ、はぁ、ひ、姫!」
ラースが少し背伸びをして私へと唇を近づける。
私はそれを受けようと目を閉じる。
まったく納得がいかない。
大好きなラースが、私を好きにならないという。
そんなはずない。
ラースは私のことが好きで、一目見たくて塔まで来たはずなのよ。
頬を打たれてからラースは話さなくなってしまった。
話さないまま、ソリを滑らし、その日の行程は10km程だった。
食事の用意をしても、私のためのイスを作ってもラースはなにも言わない。ただ寂しそうな顔をしていた。
食事を終え、私のために体を拭くお湯を用意したとき、私は上半身を全て脱ぎ、目を丸くしているラースへと背中を向けた。
「ラース」
「は、はい……」
「背中をお拭き」
「え!」
すっとんきょうな高い声。普段はこんなことはしなかった。
しかし何日も背中を満足に拭いていないし、城では召使いに拭かせているのに、今じゃ自分で体を拭かなくてはならない。
それは仕方がないが、黙ったままのラースをどうにかしたかった。
だからこその諸肌。
ラースも男だ。それも好きな私の肌に触れるのをどう思うだろう。ひょっとしたら、思い余る行動に出るかもしれない。
それならそれでいい。ラースになら。
ラースは真っ赤な顔で、嬉しいんだか、慌ててるのか、パニックの様相で、両手を振って辞退した。
「そ、そんな姫、畏れ多いですゥ。ダメです。ダメダメェ。高貴な肌に私が触れるなど、ああ~、ダメぇ。無理ィ」
普段冷静なラースの慌てっぷりが面白くなった。
なにも胸を見せているわけじゃない。背中だけなのに。
ラースは私の方は見ずに、跪いて左の方を見ていた。
面白い。なぜか胸がスッとする。
「ダメよラース。これはお仕置き。ラースは自分で言ったじゃない。自分を罰して欲しいと。だから今日はあなたは私の召使いよ。さあお拭き」
ラースはまたも黙っていたが、聞こえる。荒い荒い鼻息の音。相当の興奮。まるで闘牛のようだわ。
ラースはお湯の中にザブッと布を握った手を突っ込み、甘く搾ってこちらに近づく雪を踏む音。
「そ、それでは無礼があったら申し訳ございません。姫」
軽く背中に押し当てられるラースの両手のひら。
強すぎず、優しすぎず。
上へ、下へと私の肌を拭く。
そっと後ろに首を向けると恥ずかしそうにまた左を向いている。
私は面白くなってしまった。
左腕を上げ、脇を晒す。
ラースの目にはその間から丸みが見えたのであろう。
完全に動きが停止していた。
「今度は脇をお拭き」
「は……あの! は、はい!」
ラースの左腕が私の左手を掴む。そして拭かれる左脇。
脇から上腕にかけて素早く拭いたと思ったら、今度は脇から少しばかり乳房へとオーバーする。
しかし私は何も言わずにそのままにした。
次は右脇。ラースは鼻息荒く、同じように拭いた。そして小声ながらたしかに聞こえた。ラースの独り言。
「はぁスベスベだ……!」
私は思わず吹き出した。やはりラースは私への憧れがあるのだろう。召使いのフリをしながら肌を味わっていたのだ。
もう。それならそれで。
ラースはしばらく背中に手のひらを当てていた。やがてそれを離したが鼻息はまだ荒いままだった。
「ラース」
「は、はい! なんでしょう姫! なんなりと。なんなりと」
「肌着をとってちょうだい」
「肌着を。は、はい。では体を拭くのはもう終わりで。まだお湯には余裕がございますが。あの。その。決して邪な気持ちではなく。はい」
邪だ。すでに自首しているようなものだ。まだ私の肌に触れていたいのであろう。
しかし、そう。これで終わりじゃない。
私はラースから体を拭く布を手に取った。
「ラース、服をお脱ぎ。私が背中を拭いてあげるわ」
「え。姫。そんなまさか。いえ、ダメです。高貴な身分の姫が下賎な私の肌に触れましたら手がかぶれます。ええ、ダメです。自分で拭きますから。はい。大丈夫で」
「いちいちうるさいわね。さっさと脱ぎなさい!」
「は、はい! 直ちに!」
ホントに一秒もかからないくらいだった。ラースはあっという間にマントと鎧と上着を脱いで諸肌をさらし、こちらに体を向けた。
やはり凄い筋肉だ。鎧のような形。思わずその胸に触れる。
「んっ」
「あ、くすぐったかった?」
「いえ、大丈夫で……」
「凄い胸板だわ。これが魔物を倒すのね」
「さ、さようにございます」
背中と言っていたのに、なぜかラースの胸板を拭いていた。
ラースの息が荒い。私の手のひらにラースの息が当たる。
荒い荒い息が。それがとても温かい。それを味わいながらラースの厚い胸を何度も丸く拭いていた。
ラースの息の荒さが再頂点に達した。
ラースは突然私の肩を両手で掴む。
「はぁ、はぁ、ひ、姫!」
ラースが少し背伸びをして私へと唇を近づける。
私はそれを受けようと目を閉じる。
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