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カエルの騎士
第13話 物真似フオティ
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「マダム……。おられるのでしょう……?」
「ボーイさん。夫に毛布をかけてやって下さいな」
声が聞こえた。いるのだ。ボーイはグレイブに毛布をかけながらニヤリと笑った。
「マダム。かけましたよ。どこにおられます?」
「キャビネットの上にチップを置いておいたわ。それを持って退室なさい」
見ると、キャビネットの上に1ケラマン銅貨がおいてある。これでは貰い過ぎだ。通常のチップであればその下のカラムという通貨だ。
「いえいえ。頂き過ぎです。マダム。少しお話しませんか?」
カエル姫は月夜の晩、彼が自分に向ける視線が恋の視線だと気付いていた。
だから今はベッドの下に隠れている。
ボーイはキョロキョロと辺りを見回していた。
カーテンの後ろ。はたまたベランダか?
隠れる場所なんてそうはない。
ボーイはカエル姫の姿を探して物陰に目をやっていた。
「ボーイさん。退室しないのならば私にも覚悟があるわよ?」
そうカエル姫は言ったが、非力な細腕のマダムだ。
簡単にベッドに押し倒せる。
この強そうな旦那の隣りで犯してしまうのは優越感があって興奮する……。
姫の余りの美しさを思い出してボーイは理性で抑えられなくなっていたのだ。
そう思った途端、グレイブのベッドの横にスラリとしたデラエア王女の姿が現れた。
「おおマダム……」
そう言って彼は王女の手を抑えようとした。
だが、その姿は徐々に大きくなって、人間のそれではない。
顔は数十倍に広がって、目は大ダライほどだ。その目からボタボタと目がこぼれ落ちる!見たことも無い怪物はグニャグニャと変化しながらボーイに手を伸ばした。
ボーイは「ヒャ! ヒャーーー!!」と叫ぶとグレイブの横のベッドに倒れ込んでしまった。
ベッドの下からカエル姫が
「フオティ。もういいわ」
そう言うと、化け物は徐々に小さくなって行く。そして、グレイブの脱ぎ捨てたベルトに8つある筒の一つに入り込んだ。それはスチール製で装飾のある蓋が付いていた。カエル姫はその蓋をパチリと締めた。
“フオティ”とは、グレイブは昔戦った精霊の一つだ。何にでも化けれる能力があるがそれだけ。非力なもので、このスチールの筒の中に封じてある。
困った時に蓋を開けて戦闘の手伝いをさせる。
ただ驚かすだけしか出来ないが、彼もまた不死のためにグレイブたちに協力してくれているのだ。
グレイブはこのスチールの筒をボトルと言っている。
そのボトルが8つ……。
他の7つにも何かしらの精霊が封じられているのだ。
カエル姫は、グレイブのベッドによじのぼりグレイブを起こそうとしたが、非力なためにグレイブは目を覚まさない。
一計を案じたカエル姫。グレイブの顔によじ登って口の上にお腹を乗せた。そして手を伸ばして鼻の穴を塞ぐと……。グレイブはじたばたともがきだして、大きく咳き込んだ。
「エハッ! エハッ! エハッ!」
「可愛らしい顔が台無しね」
「あ、あれ? 姫……。お風呂は……」
「何言ってるの。寝てたのよ? グレイブ……」
「え? じゃぁ、あれは夢だったのか……」
一体どんな夢を見ていたのか?
グレイブが寝惚けまなこで頬を搔きながら辺りを見回すと、デラエア王女のためのベッドにボーイが眠っていた。グレイブは怒って立ち上がり、
「おい! キミ! なぜ我々の部屋で眠っている! さっさと出て行きたまえ!」
ボーイは揺さぶられて目を覚まし飛び上がった。
「し、失礼しました!」
そう言って部屋から飛び出そうとすると、後ろからカエル姫の声だ。
「待て~! どこへ行く~!」
ボーイは恐れおののいてそこら中に体を打ちつけながら部屋から出て行った。
それを見ながらカエル姫は白いお腹を抱えて大笑いした。
「……姫……。悪趣味ですよ? 話せるとなるとすぐにイタズラしだして」
「いいじゃない。何百年も話したくても話せなかったの。ホントはおしゃべりな女の子なんだから」
「そりゃ知ってますけど……ね」
その晩もそのホテルに逗留した。カエル姫の寝物語は続いた。それをグレイブはずっと聞いていた。
やがて二人は疲れて寝てしまった。
次の日。グレイブは身支度をして水の町を出た。
「さぁ。姫。夜市がある町はここから一つ先の町ですが、満月の夜に行きたいのでしょ? 満月の日はまだまだ先ですから、その前に周りの賞金首を倒してお金を稼ぎましょう」
「ええ。そうね」
グレイブは遥か先にある天に伸びるような岩山を指さした。
「あの山には空飛ぶ獣がいるようです。賞金は40万ケラマン。いい稼ぎでしょ?」
「でもあそこまでどうやって?」
グレイブは中央から三番目のボトルの蓋に手をかけた。カエル姫はバケツのふちまで登ってそれを見た。
「ああ、“カヴェルーネ”を出すのね! アレ好き!」
「そうですか。私もですよ」
グレイブがボトルの蓋を開けると、ポンという高い音とともに、勢いよく風が吹き出してきた。
カヴェルーネはつむじ風の精霊だ。イタズラ好きで一つの町で気分的に風を起こして町の人々を困らせていたのでグレイブに捕らえられた。
だが定期的に戦闘に召喚されるので、頼られることの好きなカヴェルーネはグレイブのことが好きだった。
「カヴェルーネ。目的はあの岩山の天辺だ。よろしく頼む」
そう言うと、つむじ風は竜巻となってグレイブを乗せて遥か高く舞い上がり岩山に向かって行った。
「ボーイさん。夫に毛布をかけてやって下さいな」
声が聞こえた。いるのだ。ボーイはグレイブに毛布をかけながらニヤリと笑った。
「マダム。かけましたよ。どこにおられます?」
「キャビネットの上にチップを置いておいたわ。それを持って退室なさい」
見ると、キャビネットの上に1ケラマン銅貨がおいてある。これでは貰い過ぎだ。通常のチップであればその下のカラムという通貨だ。
「いえいえ。頂き過ぎです。マダム。少しお話しませんか?」
カエル姫は月夜の晩、彼が自分に向ける視線が恋の視線だと気付いていた。
だから今はベッドの下に隠れている。
ボーイはキョロキョロと辺りを見回していた。
カーテンの後ろ。はたまたベランダか?
隠れる場所なんてそうはない。
ボーイはカエル姫の姿を探して物陰に目をやっていた。
「ボーイさん。退室しないのならば私にも覚悟があるわよ?」
そうカエル姫は言ったが、非力な細腕のマダムだ。
簡単にベッドに押し倒せる。
この強そうな旦那の隣りで犯してしまうのは優越感があって興奮する……。
姫の余りの美しさを思い出してボーイは理性で抑えられなくなっていたのだ。
そう思った途端、グレイブのベッドの横にスラリとしたデラエア王女の姿が現れた。
「おおマダム……」
そう言って彼は王女の手を抑えようとした。
だが、その姿は徐々に大きくなって、人間のそれではない。
顔は数十倍に広がって、目は大ダライほどだ。その目からボタボタと目がこぼれ落ちる!見たことも無い怪物はグニャグニャと変化しながらボーイに手を伸ばした。
ボーイは「ヒャ! ヒャーーー!!」と叫ぶとグレイブの横のベッドに倒れ込んでしまった。
ベッドの下からカエル姫が
「フオティ。もういいわ」
そう言うと、化け物は徐々に小さくなって行く。そして、グレイブの脱ぎ捨てたベルトに8つある筒の一つに入り込んだ。それはスチール製で装飾のある蓋が付いていた。カエル姫はその蓋をパチリと締めた。
“フオティ”とは、グレイブは昔戦った精霊の一つだ。何にでも化けれる能力があるがそれだけ。非力なもので、このスチールの筒の中に封じてある。
困った時に蓋を開けて戦闘の手伝いをさせる。
ただ驚かすだけしか出来ないが、彼もまた不死のためにグレイブたちに協力してくれているのだ。
グレイブはこのスチールの筒をボトルと言っている。
そのボトルが8つ……。
他の7つにも何かしらの精霊が封じられているのだ。
カエル姫は、グレイブのベッドによじのぼりグレイブを起こそうとしたが、非力なためにグレイブは目を覚まさない。
一計を案じたカエル姫。グレイブの顔によじ登って口の上にお腹を乗せた。そして手を伸ばして鼻の穴を塞ぐと……。グレイブはじたばたともがきだして、大きく咳き込んだ。
「エハッ! エハッ! エハッ!」
「可愛らしい顔が台無しね」
「あ、あれ? 姫……。お風呂は……」
「何言ってるの。寝てたのよ? グレイブ……」
「え? じゃぁ、あれは夢だったのか……」
一体どんな夢を見ていたのか?
グレイブが寝惚けまなこで頬を搔きながら辺りを見回すと、デラエア王女のためのベッドにボーイが眠っていた。グレイブは怒って立ち上がり、
「おい! キミ! なぜ我々の部屋で眠っている! さっさと出て行きたまえ!」
ボーイは揺さぶられて目を覚まし飛び上がった。
「し、失礼しました!」
そう言って部屋から飛び出そうとすると、後ろからカエル姫の声だ。
「待て~! どこへ行く~!」
ボーイは恐れおののいてそこら中に体を打ちつけながら部屋から出て行った。
それを見ながらカエル姫は白いお腹を抱えて大笑いした。
「……姫……。悪趣味ですよ? 話せるとなるとすぐにイタズラしだして」
「いいじゃない。何百年も話したくても話せなかったの。ホントはおしゃべりな女の子なんだから」
「そりゃ知ってますけど……ね」
その晩もそのホテルに逗留した。カエル姫の寝物語は続いた。それをグレイブはずっと聞いていた。
やがて二人は疲れて寝てしまった。
次の日。グレイブは身支度をして水の町を出た。
「さぁ。姫。夜市がある町はここから一つ先の町ですが、満月の夜に行きたいのでしょ? 満月の日はまだまだ先ですから、その前に周りの賞金首を倒してお金を稼ぎましょう」
「ええ。そうね」
グレイブは遥か先にある天に伸びるような岩山を指さした。
「あの山には空飛ぶ獣がいるようです。賞金は40万ケラマン。いい稼ぎでしょ?」
「でもあそこまでどうやって?」
グレイブは中央から三番目のボトルの蓋に手をかけた。カエル姫はバケツのふちまで登ってそれを見た。
「ああ、“カヴェルーネ”を出すのね! アレ好き!」
「そうですか。私もですよ」
グレイブがボトルの蓋を開けると、ポンという高い音とともに、勢いよく風が吹き出してきた。
カヴェルーネはつむじ風の精霊だ。イタズラ好きで一つの町で気分的に風を起こして町の人々を困らせていたのでグレイブに捕らえられた。
だが定期的に戦闘に召喚されるので、頼られることの好きなカヴェルーネはグレイブのことが好きだった。
「カヴェルーネ。目的はあの岩山の天辺だ。よろしく頼む」
そう言うと、つむじ風は竜巻となってグレイブを乗せて遥か高く舞い上がり岩山に向かって行った。
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