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デスキング
第14話 チェイサー
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道に深くて細い溝が出来ている。
なにか、固いものを押し当てて進んでいったようだ。
子供が棒切れを拾って遊びでそうしたのか?
いや、そうではない。
その溝の先には、大きな樽でも上から被ったような黒鉄の鎧。
顔もフルフェイスの鉄兜で見えない。全身黒づくめだった。
フルフェイスの鉄兜の口元には縦に五本の呼吸口がある。そこからは紫色の煙を吐き出しているようだ。
体中に大きな鎖が何十にも巻き付けてあった。
そして、手に下げているのは大きなまがまがしい斧のような武器。
それが道に溝を作っていたのだ。
そのものは、武器をズリズリと引きずりながら酒場の中に入って行く。
重い体を引きずるようにカウンターの二席にドカリと座り込んだ。
「グォォォォォ……ビールを持ってこい」
「え? は、はい……」
気味の悪い男だ……。出来れば、カウンターでなく店の隅に座って欲しいと思ったがそれを言って厄介ごとが起きても困る。店主は黙って彼の前にビールを置くと、五本の呼吸口に向かって一気にそれを流し込んだ。
「グググ、グレイブ……憎い……殺す……コロス……」
と、ブツブツとつぶやいてお代わりを頼んだ。
店の中の客は、先日来たカエルの騎士の話題になっていた。
「どうやら伯爵にご褒美を頂いたらしいぞ? それにしても何もかもがカッコイイな。カエルちゃんに恋をしている以外は」
そう言いながら嘲笑する。
「そうだな。あれならカエルに似てるとは言え、うちのかぁちゃんの方がましだな」
「戦い続けで気が狂ってんだろ」
カエルの騎士は、戦いにメチャクチャ強い。そしておそらく大金持ちだろう。
自分たちは戦いに弱いかもしれない。貧乏をしているかもしれない。
だが、彼よりはマシだ。まともな感性を持っている。
そういって、カエルの騎士を蔑んだのだ。
黒い鎧の男は立ち上がった。
「カカカカ、カエルの騎士……どど、どこへ行った……?」
酒場の客たちは驚いた。このどこから見ても妖しい男はカエルの騎士を探している。
しかも攻撃も防御もメチャクチャに強そうだ。
それに、このまがまがしい武器はなんだ?
カエルの騎士の大剣よりもさらにデカい。3メートルほどあり、斧なのか? ハンマーなのか? どちらともとれる。
重量も100キログラム以上あるだろう。それを引きずって来たのか。と思った。
「カエルのききき、騎士、グレイブ……憎い……」
ボソボソと五本の呼吸口から紫色の煙を吐き出しながら話す男に、客たちは席から転がり落ちそうだった。
「も、もうこの宿場町に来たのはひと月以上前です。どこへ行ったかは知りませんがあの山を登って行ったと聞いたことがあります」
すでに暗くなった外にうっすらと山の影が見える。客の一人はそれを指さした。
黒い鎧の男は腰のベルトに手を伸ばした。幅の広い黒い革のベルトだ。そこには4つの筒が差してある。グレイブが腰に差しているものと似たようなものだ。
それの一つの蓋を開けると黄色い小人の男が出てきた。とんがり帽子を被っている。
「ボボボ、ボウルド。かかか、金を出せ」
「かしこまりました。ご主人様」
黒い鎧の男はその小人を手のひらに乗せて酒場の店主の目の前に出すころには小人はすでに2枚のケラマン銅貨を出していた。
「ちょ、ちょうどです。ありがとうございます」
店主は恐れながらだが、金を受け取った。
「ボウルド。ももも、戻れ!」
そう言われると、ボウルドという黄色い小人は筒の中に吸い込まれていった。
どうやら金を作り出す精霊らしい。
男は武器を重そうに引きずりながら店を出て行った。
男はそのまま、グレイブが向かったと言われる山にランプも持たずに向かって歩き出す。
ズリズリと武器を引きずりながら。
男の進行速度はかなり遅いものだった。
宿場町を抜けて、人気のない森に恐れもせずに入って行った。
「おい。オマエ。ちょっと待て」
黒い鎧の男は後ろから声をかけられた。少し足を止めたが、そのまま歩き出す。
「おい。オマエに言ってるんだ。止まれよ!」
黒い鎧の男が振り返って見ると、そこには先ほど酒場にいた5人。チャラい他の連中とは違い、眼光鋭く腕に覚えがありそうな者たちだった。
「たまたま立ち寄った酒場で見ちまった。オマエ不思議なものを持っているな。それをオレたちによこせ」
「命までは取ろうとは思わねぇ。その小人が入った筒だけでいい」
鎧の男は無言で腰から筒を取り出して5人の男に放り投げた。
男たちの視線が筒に集中する。
その時だった。
シュンッ!
という音が聞こえた。
鎧の男の奥からバタバタと森の大木が倒れてゆく。男たちはその音に驚いていると、ドミノ倒しのように木が倒れて行き、それに合わせて自分たちの体も上下に別れて道に崩れ落ちた。
鎧の男の武器が横に満月を描いてすべてをなぎ切ったのだ。
彼は道に落ちている小人の入った筒を拾おうとすると、コロンと頭にかぶった兜が道に転がった。
そこには……。男の体には首がなかった。
男は筒を拾い上げて腰に差す。
その後で兜を拾って首の部分に乗せた。
「ググググ……グレイブ……余の首をどこへやった……許せぬ……許せぬ……」
そう言いながら大きな武器を引きずって男は山を登って行った。
なにか、固いものを押し当てて進んでいったようだ。
子供が棒切れを拾って遊びでそうしたのか?
いや、そうではない。
その溝の先には、大きな樽でも上から被ったような黒鉄の鎧。
顔もフルフェイスの鉄兜で見えない。全身黒づくめだった。
フルフェイスの鉄兜の口元には縦に五本の呼吸口がある。そこからは紫色の煙を吐き出しているようだ。
体中に大きな鎖が何十にも巻き付けてあった。
そして、手に下げているのは大きなまがまがしい斧のような武器。
それが道に溝を作っていたのだ。
そのものは、武器をズリズリと引きずりながら酒場の中に入って行く。
重い体を引きずるようにカウンターの二席にドカリと座り込んだ。
「グォォォォォ……ビールを持ってこい」
「え? は、はい……」
気味の悪い男だ……。出来れば、カウンターでなく店の隅に座って欲しいと思ったがそれを言って厄介ごとが起きても困る。店主は黙って彼の前にビールを置くと、五本の呼吸口に向かって一気にそれを流し込んだ。
「グググ、グレイブ……憎い……殺す……コロス……」
と、ブツブツとつぶやいてお代わりを頼んだ。
店の中の客は、先日来たカエルの騎士の話題になっていた。
「どうやら伯爵にご褒美を頂いたらしいぞ? それにしても何もかもがカッコイイな。カエルちゃんに恋をしている以外は」
そう言いながら嘲笑する。
「そうだな。あれならカエルに似てるとは言え、うちのかぁちゃんの方がましだな」
「戦い続けで気が狂ってんだろ」
カエルの騎士は、戦いにメチャクチャ強い。そしておそらく大金持ちだろう。
自分たちは戦いに弱いかもしれない。貧乏をしているかもしれない。
だが、彼よりはマシだ。まともな感性を持っている。
そういって、カエルの騎士を蔑んだのだ。
黒い鎧の男は立ち上がった。
「カカカカ、カエルの騎士……どど、どこへ行った……?」
酒場の客たちは驚いた。このどこから見ても妖しい男はカエルの騎士を探している。
しかも攻撃も防御もメチャクチャに強そうだ。
それに、このまがまがしい武器はなんだ?
カエルの騎士の大剣よりもさらにデカい。3メートルほどあり、斧なのか? ハンマーなのか? どちらともとれる。
重量も100キログラム以上あるだろう。それを引きずって来たのか。と思った。
「カエルのききき、騎士、グレイブ……憎い……」
ボソボソと五本の呼吸口から紫色の煙を吐き出しながら話す男に、客たちは席から転がり落ちそうだった。
「も、もうこの宿場町に来たのはひと月以上前です。どこへ行ったかは知りませんがあの山を登って行ったと聞いたことがあります」
すでに暗くなった外にうっすらと山の影が見える。客の一人はそれを指さした。
黒い鎧の男は腰のベルトに手を伸ばした。幅の広い黒い革のベルトだ。そこには4つの筒が差してある。グレイブが腰に差しているものと似たようなものだ。
それの一つの蓋を開けると黄色い小人の男が出てきた。とんがり帽子を被っている。
「ボボボ、ボウルド。かかか、金を出せ」
「かしこまりました。ご主人様」
黒い鎧の男はその小人を手のひらに乗せて酒場の店主の目の前に出すころには小人はすでに2枚のケラマン銅貨を出していた。
「ちょ、ちょうどです。ありがとうございます」
店主は恐れながらだが、金を受け取った。
「ボウルド。ももも、戻れ!」
そう言われると、ボウルドという黄色い小人は筒の中に吸い込まれていった。
どうやら金を作り出す精霊らしい。
男は武器を重そうに引きずりながら店を出て行った。
男はそのまま、グレイブが向かったと言われる山にランプも持たずに向かって歩き出す。
ズリズリと武器を引きずりながら。
男の進行速度はかなり遅いものだった。
宿場町を抜けて、人気のない森に恐れもせずに入って行った。
「おい。オマエ。ちょっと待て」
黒い鎧の男は後ろから声をかけられた。少し足を止めたが、そのまま歩き出す。
「おい。オマエに言ってるんだ。止まれよ!」
黒い鎧の男が振り返って見ると、そこには先ほど酒場にいた5人。チャラい他の連中とは違い、眼光鋭く腕に覚えがありそうな者たちだった。
「たまたま立ち寄った酒場で見ちまった。オマエ不思議なものを持っているな。それをオレたちによこせ」
「命までは取ろうとは思わねぇ。その小人が入った筒だけでいい」
鎧の男は無言で腰から筒を取り出して5人の男に放り投げた。
男たちの視線が筒に集中する。
その時だった。
シュンッ!
という音が聞こえた。
鎧の男の奥からバタバタと森の大木が倒れてゆく。男たちはその音に驚いていると、ドミノ倒しのように木が倒れて行き、それに合わせて自分たちの体も上下に別れて道に崩れ落ちた。
鎧の男の武器が横に満月を描いてすべてをなぎ切ったのだ。
彼は道に落ちている小人の入った筒を拾おうとすると、コロンと頭にかぶった兜が道に転がった。
そこには……。男の体には首がなかった。
男は筒を拾い上げて腰に差す。
その後で兜を拾って首の部分に乗せた。
「ググググ……グレイブ……余の首をどこへやった……許せぬ……許せぬ……」
そう言いながら大きな武器を引きずって男は山を登って行った。
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