右手に剣、左手にカエル姫

家紋武範

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デスキング

第15話 不死の刺客

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グレイブから遥か離れた場所に不死の城と呼ばれる場所があった。
と言っても、グレイブのような不老不死の人間たちの都市ではない。

アンデットと呼ばれる、魔物たちの都市だ。
人間のような姿をしているがそうではない。
人を食い物にしているのだ。血で喉を潤し、肉を食らい、骨のスープを飲む。

だが、行動時間は夜だ。もしくは体中を日の光に当てなければよい。
これだけが唯一の弱点。
日の光を浴びると灰になって戦闘不能となる。
復活にはかなりの時間がかかる。

人間とは敵対関係だ。
しかし、この国の王は現在は不在だ。

人間に首を落とされ、正常な判断ができなくなってしまった。
そしてその男を追い回している。

その男とはつまり、グレイブだ。
戦いに打ち勝って賞金首の不死の王を倒し、証拠に首を持ち帰ったのだ。

「デスキング様はもう駄目だ。新しい王様をたてねばならん」

不死の城の大臣たちは首を垂れて相談した。
デスキングは建国以来ずっと生きている。一族の祖先だ。それを廃王にするにはやはり抵抗があり、何年も不在というままにしてきたが、やはり統治者が必要となってきたのだ。

統治者がいないと、不死の一族にも亀裂が生じる。
強いものが勝手気ままに振舞い、秩序が乱れる。
不死だから互いに死ぬことがない。だが、監禁したり、釘で壁に打ちつけたりする。
こうされると永遠に苦しまなくてはならない。彼らにとってはこのような行為は非人道的行為なのだ。

だからまだ遅くはない。新王を即位させまた栄光と秩序を取り戻そうとなった。

新しい王には、王に一番近かった妃のティスティに決まった。
彼女は王の体の中から生まれた。二人目の不死の魔物。
デスキングは父であり夫であるのだ。二人でこの一族を増やし続けた。

次の王は彼女しかいない。女王の誕生だった。

ティスティは玉座に座って最初の政策が、彷徨っているデスキングを城に連れ戻し、安らかに過ごしていただこう。それには強引な手を使っても構わない。そして、夫の首を掻いたカエルの騎士“グレイブ”を暗殺するというものだった。この二つがなれば王は復活する。

女王はニコリと笑った。

選ばれた暗殺者は若き不死の戦士だ。若いと言っても何百年も生きている。
青白い顔をして軽装で動きやすい格好をしている。胸に胸当てがあるくらいだ。そして、背中には大きな黒マント。彼の名は“セイバー”と言った。

女王ティスティはセイバーに命令した。

「すみやかにグレイブを討ち取り首を切って持って参れ。その首をデスキング様に乗せれば、デスキング様は復活しよう」
「仰せのままに」

彼は女王の間からでると、兵士に預けていた自分の武器を手に取った。

それは大鎌だ。2メートルほどの柄がついている。そして鎌の部分は沿っていない。内側に刃はあるものの、まっすぐに三角形の形だ。打ちつければ刺すこともできるのだ。

城から出て彼はニヤリと笑った。

「ふん。王なぞどうでもいいが、グレイブ……なかなかの手練れと聞いたぞ。それを倒せるなんてなんて面白い! 興奮する……。はははははははは!」

彼はピョーイと飛び上がる。身軽だ。
空を飛んでいるようだ。地面を蹴り上げて空に舞い上がる。塔の壁を蹴り、大きな建物の屋根を蹴る。戦闘機のように回転する。
早い。早い。早い。

「ひょーーー!」と叫びながらあっという間に見えなくなってしまった。
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