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デスキング
第16話 自由なる獣
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グレイブとカエル姫デラエア王女は、風の精霊カヴェルーネの力で高い高い岩山の上に降り立った。
草木が少なく、赤い地肌が見える岩だらけの山だ。
「ふむぅ。ここに空飛ぶ獣がいるのか……。街を荒らすとかキャラバンを襲うって聞いたけど、どんな魔物かな?」
「へー……。正体がわからないの?」
「ええ。獅子の頭と体に蜘蛛のような模様があるらしいのですがね。翼もあるのかどうか見落としてしまいました。翼があれば、それが弱点ですからね」
グォォォオオ
その時、岩陰から獣の鳴き声が聞こえた。
カエル姫は「キャ……」と小さく声を上げたが口を手で押さえた。
少し雰囲気が違う。かなり上級の魔物だ。
空気で分かる。カエル姫でも感じるほどだ。ピリピリと張り詰める。
グォォォオオ
何かを警戒しているのか、細く唸り声をあげている。
グレイブはそっと覗いて見た。
「……自由なる獣だ……」
ブリストは自由なる獣という意味でつけられた。
大きなたてがみのついた獅子の頭。獅子と違うのは、その頭部には前を向いた二本の角がある。体も獅子の二倍ほどあり、黒い蜘蛛のような文様が全身を包んでいる。
その名を意味する通り、空も水の中も勝手気ままに移動することができる。
障害物もすり抜けることができるのだ。
障害物をすり抜けるということは、物理攻撃も通過してしまう恐れがある。
その昔、大魔導士の魔法によって全滅させられたと聞いたが、生き残りだ。
グレイブは戦ったことがない相手に身震いした。
「これは、どうしたものでしょう……。私に魔法の備えがない……」
「無理する必要はないわ。一度町に引き返しましょう」
「そうですよね」
その時……!
頭上に気配を感じた。太陽が覆われている。
グルグルグルグルという獣の怒りの声が聞こえた。
二人は空を見上げると、そこにブリストが浮かんで牙をむき出しにして二人を睨みつけていた。
ブリストにしてみれば、勝手になわばりに入って来た侵入者だ。
彼らの野生の掟に従えば死あるのみ!
どちらかが死ぬまで戦え! だ。
ブリストは空を大きく旋回して、グレイブ向けて駆けてきた。
「うわ! ホントに空を走れるんだ!」
グレイブは、バケツを地面に置いて大剣を抜いた。
両手持ち。
これがグレイブの本気だ。片手でも扱えるが、両手で持てば攻撃力は数倍となる。
ブリストがこちらにかけてくる。
グレイブの間合いに入った!
足を踏み込んでブリスト目掛けて大剣を半月を描いて大きく振り切った。
スッ
大剣はブリストの体を通過してしまった。
ブリストも、グレイブに攻撃せず、身をよじって岩陰に入ってしまった。
入ったのだ。
全く姿が見えなくなった。
グレイブはすぐさまカエル姫の入ったバケツを持ち、広い場所を探して駆けた。
さすが、自由な獣だ。障害物など関係ない。
しかも、それに入ることができるなんて……。
グレイブは精霊の入った筒を中央から順に触れて行った。
考えているのだ。どれか、助けになるものは……。
しかし、どれもこれも物理的なものや補助的なものばかり。
「ああ……クソッ!」
ようやく広い場所をみつけた。
周りには草木が一本もない。
あるのは右側に大きな岩壁。左側は崖だ。
ブリストは土の中に潜んで、襲い掛かれる瞬間を待っているはずだ。
向こうが圧倒的に有利じゃないか。
「これで40万ケラマンは安いぞ……」
グレイブは右側の岩壁に集中した。
いや、ひょっとしたら、左の崖からも現れるかも知れない。
向こうは自由だ。また空から現れるのかも……。
グレイブは五感を集中させた。
だが、風の音が邪魔をする。
グルルルルル
グレイブはハッとしたときには遅かった。
地面からだった。
ブリストの大きな爪が地面から現れる。
グレイブはブリストの鼻先に乗っている形で空中に押し上げられた。
バケツがグレイブの手から離れる。
そして、地面に落ちてカエル姫はバケツから投げ出された。
バケツは転がり、水は辺りに飛散した。
「しまった!」
カエル姫はすぐに起き上がってピョンと飛び上がった。
グレイブはホッとしたが、ブリストが大きな爪のついた腕でグレイブの足を捕らえた。
爪が深くグレイブに食い込む。
そしてグレイブの足に噛みついた。
一方的な空中での捕食だった。
だが、グレイブは悲鳴一つ上げない。
それもそのはずだ。グレイブは痛みを感じない。
その分冷静だった。
ブリストはなぜ攻撃できるのか?
あらゆるものが通過してしまうなら攻撃もできないはず。
おそらく、剣を通り抜け、岩に入り込む時には、そのような体になるのだろう。
じゃぁ、今はどうだ?
爪を立て、足に食らいついている今は……。
グレイブは迷わず足に食らいつく獣に向けて大剣を振り下ろした。
大剣は、ブリストの眉間に当たり、そのまま振り下ろされる。
そのまま、真っ二つになった。
しかし宙に浮いたままだったグレイブは投げ出された形となり、ブリストの身に巻き込まれて崖下に落ちて行った。
草木が少なく、赤い地肌が見える岩だらけの山だ。
「ふむぅ。ここに空飛ぶ獣がいるのか……。街を荒らすとかキャラバンを襲うって聞いたけど、どんな魔物かな?」
「へー……。正体がわからないの?」
「ええ。獅子の頭と体に蜘蛛のような模様があるらしいのですがね。翼もあるのかどうか見落としてしまいました。翼があれば、それが弱点ですからね」
グォォォオオ
その時、岩陰から獣の鳴き声が聞こえた。
カエル姫は「キャ……」と小さく声を上げたが口を手で押さえた。
少し雰囲気が違う。かなり上級の魔物だ。
空気で分かる。カエル姫でも感じるほどだ。ピリピリと張り詰める。
グォォォオオ
何かを警戒しているのか、細く唸り声をあげている。
グレイブはそっと覗いて見た。
「……自由なる獣だ……」
ブリストは自由なる獣という意味でつけられた。
大きなたてがみのついた獅子の頭。獅子と違うのは、その頭部には前を向いた二本の角がある。体も獅子の二倍ほどあり、黒い蜘蛛のような文様が全身を包んでいる。
その名を意味する通り、空も水の中も勝手気ままに移動することができる。
障害物もすり抜けることができるのだ。
障害物をすり抜けるということは、物理攻撃も通過してしまう恐れがある。
その昔、大魔導士の魔法によって全滅させられたと聞いたが、生き残りだ。
グレイブは戦ったことがない相手に身震いした。
「これは、どうしたものでしょう……。私に魔法の備えがない……」
「無理する必要はないわ。一度町に引き返しましょう」
「そうですよね」
その時……!
頭上に気配を感じた。太陽が覆われている。
グルグルグルグルという獣の怒りの声が聞こえた。
二人は空を見上げると、そこにブリストが浮かんで牙をむき出しにして二人を睨みつけていた。
ブリストにしてみれば、勝手になわばりに入って来た侵入者だ。
彼らの野生の掟に従えば死あるのみ!
どちらかが死ぬまで戦え! だ。
ブリストは空を大きく旋回して、グレイブ向けて駆けてきた。
「うわ! ホントに空を走れるんだ!」
グレイブは、バケツを地面に置いて大剣を抜いた。
両手持ち。
これがグレイブの本気だ。片手でも扱えるが、両手で持てば攻撃力は数倍となる。
ブリストがこちらにかけてくる。
グレイブの間合いに入った!
足を踏み込んでブリスト目掛けて大剣を半月を描いて大きく振り切った。
スッ
大剣はブリストの体を通過してしまった。
ブリストも、グレイブに攻撃せず、身をよじって岩陰に入ってしまった。
入ったのだ。
全く姿が見えなくなった。
グレイブはすぐさまカエル姫の入ったバケツを持ち、広い場所を探して駆けた。
さすが、自由な獣だ。障害物など関係ない。
しかも、それに入ることができるなんて……。
グレイブは精霊の入った筒を中央から順に触れて行った。
考えているのだ。どれか、助けになるものは……。
しかし、どれもこれも物理的なものや補助的なものばかり。
「ああ……クソッ!」
ようやく広い場所をみつけた。
周りには草木が一本もない。
あるのは右側に大きな岩壁。左側は崖だ。
ブリストは土の中に潜んで、襲い掛かれる瞬間を待っているはずだ。
向こうが圧倒的に有利じゃないか。
「これで40万ケラマンは安いぞ……」
グレイブは右側の岩壁に集中した。
いや、ひょっとしたら、左の崖からも現れるかも知れない。
向こうは自由だ。また空から現れるのかも……。
グレイブは五感を集中させた。
だが、風の音が邪魔をする。
グルルルルル
グレイブはハッとしたときには遅かった。
地面からだった。
ブリストの大きな爪が地面から現れる。
グレイブはブリストの鼻先に乗っている形で空中に押し上げられた。
バケツがグレイブの手から離れる。
そして、地面に落ちてカエル姫はバケツから投げ出された。
バケツは転がり、水は辺りに飛散した。
「しまった!」
カエル姫はすぐに起き上がってピョンと飛び上がった。
グレイブはホッとしたが、ブリストが大きな爪のついた腕でグレイブの足を捕らえた。
爪が深くグレイブに食い込む。
そしてグレイブの足に噛みついた。
一方的な空中での捕食だった。
だが、グレイブは悲鳴一つ上げない。
それもそのはずだ。グレイブは痛みを感じない。
その分冷静だった。
ブリストはなぜ攻撃できるのか?
あらゆるものが通過してしまうなら攻撃もできないはず。
おそらく、剣を通り抜け、岩に入り込む時には、そのような体になるのだろう。
じゃぁ、今はどうだ?
爪を立て、足に食らいついている今は……。
グレイブは迷わず足に食らいつく獣に向けて大剣を振り下ろした。
大剣は、ブリストの眉間に当たり、そのまま振り下ろされる。
そのまま、真っ二つになった。
しかし宙に浮いたままだったグレイブは投げ出された形となり、ブリストの身に巻き込まれて崖下に落ちて行った。
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