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デスキング
第26話 不死王の復活
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セイバーはその声の方に飛んだ。
グレイブが逃げる方向。その近くにはデスキングもいた。大きく迂回してこちらに来ていたのだ。己の千切れた腕を片手に抱えて、15歩先に立っていた。だが体がこちらに向いている。やはり、声で気付かれてしまったのだ。
「し、しまった」
「グググ、グレイブ。余のううう腕をちぎった、そそそ、その仇の女を寄越せ」
そう言いながらデスキングは千切れた腕を元の場所に接合すると、紫色の煙を上げてくっついてしまった。デスキングは不気味に笑ったが、グレイブも笑った。
「そうか。ではやろう」
そう言って王女をデスキングの方へ突き飛ばした。デスキングがデラエア王女をまた片腕に抱く。
その隙にグレイブはデスキングの横を走り抜けた。腕にもう一人の王女を抱きながら。
デスキングは何が何だかわからなかった。自分が抱いているものはなんだ? と思うと、王女の体がみるみる変貌する。大きな風呂敷のようにデスキングの体を包み込んでしまった。
そう。物真似フオティが化けたものだったのだ。
グレイブは後ろを振り返ってその様子を見て笑いながら駆けた。
フオティの物真似は長い時間は持たない。デスキングはもがいているがそのうちに町に入ってしまおう。そう思いながら王女を急がせた。
その後ろにはセイバーが迫っていた。大地を思い切り蹴って大空に舞いあがる。ものすごい脚力だ。大地はえぐれ、木の葉が舞い上がる。大きく回転をして戦闘機のようにグレイブに向かって急降下しようとしたがその前に着地し、跪いて首を垂れた。
「デスキング様」
その声にフオティの囲みを抜け、グレイブを追うデスキングは振り返る。
「だだだ、誰か。そそそ足下は何者だ」
「一族のセイバーと言うものです。女王ティスティ様の命により、グレイブを狙うものであります」
「テテテ、ティスティ。余の娘、余の美しき妃か。じょじょじょ、女王とは不遜な。王は余、一人のみ。グググ、グレイブとの闘いは余と彼の問題だ。けけけ、決闘の邪魔をするな。帰って伝えよ。おおお、思い上がった増上慢な命令だとな」
「し、しかし、すでに王命は発せられております。わたしも子供の使いではありません」
「げげげ、下郎!」
デスキングは、セイバーの大鎌を取り上げ大きな足で蹴りつけた。セイバーの体は後方に大きく飛んだ。
顔を上げると、大鎌を持ってグレイブの後を追っている。
セイバーは蹴られた部分を手で抑えながらデスキングの後ろ姿を睨んだ。
「ふん。なんて聞きにくい。あれが先王か。そうか、頭がないからまともな考えができないんだな」
セイバーは短刀を取り出した。短刀と言っても刃渡り70センチほど。それを固く握って大空に飛び上がる。デスキングの頭上を越えてグレイブに向かって旋回しながら舞い降りて行った。
グレイブは殺気に気付いた。振り返るとデスキングが遥か先にいる。これなら町に入れるとホッとした時だった。自分の体と首が分かれた。鎧の着ていない身だ。セイバーの放った剣撃に簡単に地に落ちてバウンドしてしまった。
「キャ! キャーーー!!」
デラエア王女の絹を裂くような高い叫び声が町まで響いた。セイバーはグレイブの髪を掴んでその首を拾い上げる。
「ふふ。お嬢さん。愛しい人の首は頂いたよ」
そう言ってデスキングの方に向かって行った。セイバーは気付かなかった。気絶した王女の体を抱きしめるグレイブの体の方を。
セイバーはグレイブの首を抱えたままデスキングの前に跪いた。
「デスキング様。グレイブめの首をお持ちしました」
「ななな、なんだと!? 勝手な真似をするでない」
言っても無駄だと思った。この先王の肉体はただ本能でグレイブと戦いたいだけだ。元の一族を率いる聡明な王ではない。であればやることは一つだ。
セイバーは立ち上がり、デスキングの頭部の兜を蹴り落とした。そこには古い傷の跡がある頭のない首。
そこに、グレイブの頭部を乗せた。
シュウッ! と熱した鉄に水をかけたような音。続いて首から紫色の煙が出ている。
デスキングは大きな手で、首の上をまさぐった。
「く、首がある。余の首が! ははは! やったぞ! 復活した!」
そう月に向かって大声で叫びあげた。
セイバーは先王の御前に跪いた。
「復活おめでとうございます」
「おお。足下は誰か?」
「わたしは、一族のセイバーという者でございます」
「左様か。そなたが余の首を探してくれたのか?」
「は。それは仇敵グレイブめの首でございます」
「……グレイブの?」
「御意にございます」
それを聞くとデスキングは黙ってしまった。
グレイブが逃げる方向。その近くにはデスキングもいた。大きく迂回してこちらに来ていたのだ。己の千切れた腕を片手に抱えて、15歩先に立っていた。だが体がこちらに向いている。やはり、声で気付かれてしまったのだ。
「し、しまった」
「グググ、グレイブ。余のううう腕をちぎった、そそそ、その仇の女を寄越せ」
そう言いながらデスキングは千切れた腕を元の場所に接合すると、紫色の煙を上げてくっついてしまった。デスキングは不気味に笑ったが、グレイブも笑った。
「そうか。ではやろう」
そう言って王女をデスキングの方へ突き飛ばした。デスキングがデラエア王女をまた片腕に抱く。
その隙にグレイブはデスキングの横を走り抜けた。腕にもう一人の王女を抱きながら。
デスキングは何が何だかわからなかった。自分が抱いているものはなんだ? と思うと、王女の体がみるみる変貌する。大きな風呂敷のようにデスキングの体を包み込んでしまった。
そう。物真似フオティが化けたものだったのだ。
グレイブは後ろを振り返ってその様子を見て笑いながら駆けた。
フオティの物真似は長い時間は持たない。デスキングはもがいているがそのうちに町に入ってしまおう。そう思いながら王女を急がせた。
その後ろにはセイバーが迫っていた。大地を思い切り蹴って大空に舞いあがる。ものすごい脚力だ。大地はえぐれ、木の葉が舞い上がる。大きく回転をして戦闘機のようにグレイブに向かって急降下しようとしたがその前に着地し、跪いて首を垂れた。
「デスキング様」
その声にフオティの囲みを抜け、グレイブを追うデスキングは振り返る。
「だだだ、誰か。そそそ足下は何者だ」
「一族のセイバーと言うものです。女王ティスティ様の命により、グレイブを狙うものであります」
「テテテ、ティスティ。余の娘、余の美しき妃か。じょじょじょ、女王とは不遜な。王は余、一人のみ。グググ、グレイブとの闘いは余と彼の問題だ。けけけ、決闘の邪魔をするな。帰って伝えよ。おおお、思い上がった増上慢な命令だとな」
「し、しかし、すでに王命は発せられております。わたしも子供の使いではありません」
「げげげ、下郎!」
デスキングは、セイバーの大鎌を取り上げ大きな足で蹴りつけた。セイバーの体は後方に大きく飛んだ。
顔を上げると、大鎌を持ってグレイブの後を追っている。
セイバーは蹴られた部分を手で抑えながらデスキングの後ろ姿を睨んだ。
「ふん。なんて聞きにくい。あれが先王か。そうか、頭がないからまともな考えができないんだな」
セイバーは短刀を取り出した。短刀と言っても刃渡り70センチほど。それを固く握って大空に飛び上がる。デスキングの頭上を越えてグレイブに向かって旋回しながら舞い降りて行った。
グレイブは殺気に気付いた。振り返るとデスキングが遥か先にいる。これなら町に入れるとホッとした時だった。自分の体と首が分かれた。鎧の着ていない身だ。セイバーの放った剣撃に簡単に地に落ちてバウンドしてしまった。
「キャ! キャーーー!!」
デラエア王女の絹を裂くような高い叫び声が町まで響いた。セイバーはグレイブの髪を掴んでその首を拾い上げる。
「ふふ。お嬢さん。愛しい人の首は頂いたよ」
そう言ってデスキングの方に向かって行った。セイバーは気付かなかった。気絶した王女の体を抱きしめるグレイブの体の方を。
セイバーはグレイブの首を抱えたままデスキングの前に跪いた。
「デスキング様。グレイブめの首をお持ちしました」
「ななな、なんだと!? 勝手な真似をするでない」
言っても無駄だと思った。この先王の肉体はただ本能でグレイブと戦いたいだけだ。元の一族を率いる聡明な王ではない。であればやることは一つだ。
セイバーは立ち上がり、デスキングの頭部の兜を蹴り落とした。そこには古い傷の跡がある頭のない首。
そこに、グレイブの頭部を乗せた。
シュウッ! と熱した鉄に水をかけたような音。続いて首から紫色の煙が出ている。
デスキングは大きな手で、首の上をまさぐった。
「く、首がある。余の首が! ははは! やったぞ! 復活した!」
そう月に向かって大声で叫びあげた。
セイバーは先王の御前に跪いた。
「復活おめでとうございます」
「おお。足下は誰か?」
「わたしは、一族のセイバーという者でございます」
「左様か。そなたが余の首を探してくれたのか?」
「は。それは仇敵グレイブめの首でございます」
「……グレイブの?」
「御意にございます」
それを聞くとデスキングは黙ってしまった。
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