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クインスロメン王国
第31話 偽りの青石
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やがて夜になり、バザルの三人はテントの中に体を投げ出して眠ってしまった。デラエア姫も水の中で気持ちよさそうに眠っている。
グレイブは大層落ち込んだ顔をしながら馬車の寝台に突っ伏していた。
右手に握っているのは9本目のボトル。
中には鉱物を産み出す能力を持ったボウルドが入っている。
デラエア姫が目を覚まさないようにそれを静かに開けた。
「やぁ、旦那。どんな御用です?」
「ボウルド。これだ。これが“月の青石”だ」
グレイブの手には、普段デラエア姫が首から下げている小さな月の青石のネックレスがあった。
ボウルドはそれを手に取り、しげしげと眺めた。
「ははぁ。これですか。旦那が昔から探していたのは」
「どうだ? できるか?」
「ふむふむ。構造はだいたいわかりますね」
「前に言っていたろう。オマエはモノさえあれば作れるんだろ? これより純度の高い大きいのを頼む」
「お望みが叶うかどうか」
ボウルドが手に力を込めると、そこには大粒の月の青石。
それが膨らんでグレイブの拳の半分ほどの大きさになった。
「をぉーっ! でかした! でかしたぞ!」
グレイブは嬉しそうな顔でそれを手に取り、バケツの中で眠っているデラエア姫を寝台の上に置き、そっと押し当てた。
石から月の光があふれて、カエルのデラエア姫はたちまち薄絹をまとった人の姿となった。
グレイブは素早く自分の服を脱ぎ捨て、デラエア姫の下の下着をはぎ取ってキスをしながらのしかかった。
「姫! ああ! 姫!」
押し付けられた唇の感触にデラエア姫が目を覚ますと、すでにグレイブは激しい行為の真っ最中。自分にも悦楽がつき上がってくる。
しかも自分は人の姿になっていてわけが分からない。
「え? え? え? どういうこと?」
「姫ぇ! そりゃ私は何も出来ないかもしれません! しかし今まで共に旅をし、姫を守り、こうして月に一度は身を合わせて来たではありませんか! 私は夫ですよ! それがちょっとばかし雑用ができるものが現れたら、私の功績を忘れてお捨てになるのですか? 狡兎死して走狗烹られる、飛鳥尽きて良弓蔵るとはまさにこのことでしょう!」
グレイブは久しぶりにデラエア姫に身を合わせ、不満を叫びながらその腹の上で小さな呻き声を上げて果てた。悦楽が全身に走り力尽くと姫の体に覆い被さった。
そしてそのまま、姫の体を強く抱きしめ涙をこぼしてしまった。
「姫ぇ。お慕い申し上げております……」
グレイブは悔しかったのだ。今まで50年の長旅をしてきた姫が別の男と話していることに嫉妬してしまった。だから夫しか許されない行為を無断でし、彼女の身体に自分を刻むことで悔しさを吐き出したのだ。
そんなグレイブの体をデラエア姫は抱き返した。
「分かってるわよ……。ただグレイブ、三人が来てからツンツンしてるわよ? 自分は偉いんだって思い過ぎよ。三人はちゃんと忠義の心で従ってる。それに私が奪われるわけないでしょ? 私はあなたの妻なんだから」
そう言われてグレイブは笑顔になり、その場に立ち上がって裸のまま小躍りをした。
「もう……。なんで私の魔法が解けているわけ?」
しかし、それが言い終わるか終わらないかのうちに、デラエア姫の姿は元のカエルに戻ってしまった。二人とも驚いて、二人の行為を見まいと床の上で後ろを向いているボウルドに尋ねた。
「え? な、なぜだ? ボウルド」
グレイブは姫を片手に抱いてボウルドを問いつめた。ボウルドも振り返って見ると姫がカエルの姿になっているので、これまた驚いた。
「ふむぅ。元々不完全な石を見て作り上げたからかもしれません。元が悪ければ、それより悪くすることは可能でも、良くすることは不可能ですよ。でも良かったじゃないですか。一度でも逢瀬が叶って」
「ふーん。ボウルドが月の青石を作ったのね。グレイブ考えたわね」
「あ、ありがたき幸せ……」
「でも、いくら妻でも同意もなしにしていいことと悪いことがあります。今後こんなことをしたら、罰を与えます」
罰……。それはそれで。グレイブの口が嬉しそうに歪む。
外に梓の木があった。その葉付きの枝でむき出しになった腿や尻を打ち据えて頂くのも悪くないぞとほくそ笑んだ。
グレイブはまだ裸。想像すると両足の中央にあるものが、頭を上げてしまう。
「そ、そうですか。無礼なグレイブをご存分にお仕置き願います。ムフ。ムフフ。ムフフフフフ」
それに気付いたデラエアはまたもや呆れた。
それは罰ではなく、ただれた遊びだ。
「この好色もの! いい加減に、その悪しきものをお仕舞いなさい。それにこの体ではグレイブのお好みのお仕置きなど出来ようはずもありません。明日の朝食の時にみなの前で発表します」
「は、は、は、発表? 何ですかそれは」
「今は申しません。私は寝ます」
「ねぇ。姫。何ですか? ねぇ~」
グレイブの問いかけをデラエアは無視し続け、グレイブも嫌われてはたまらんと、デラエアの美貌を褒め称えたまま隣の寝台で眠りについた。
グレイブは大層落ち込んだ顔をしながら馬車の寝台に突っ伏していた。
右手に握っているのは9本目のボトル。
中には鉱物を産み出す能力を持ったボウルドが入っている。
デラエア姫が目を覚まさないようにそれを静かに開けた。
「やぁ、旦那。どんな御用です?」
「ボウルド。これだ。これが“月の青石”だ」
グレイブの手には、普段デラエア姫が首から下げている小さな月の青石のネックレスがあった。
ボウルドはそれを手に取り、しげしげと眺めた。
「ははぁ。これですか。旦那が昔から探していたのは」
「どうだ? できるか?」
「ふむふむ。構造はだいたいわかりますね」
「前に言っていたろう。オマエはモノさえあれば作れるんだろ? これより純度の高い大きいのを頼む」
「お望みが叶うかどうか」
ボウルドが手に力を込めると、そこには大粒の月の青石。
それが膨らんでグレイブの拳の半分ほどの大きさになった。
「をぉーっ! でかした! でかしたぞ!」
グレイブは嬉しそうな顔でそれを手に取り、バケツの中で眠っているデラエア姫を寝台の上に置き、そっと押し当てた。
石から月の光があふれて、カエルのデラエア姫はたちまち薄絹をまとった人の姿となった。
グレイブは素早く自分の服を脱ぎ捨て、デラエア姫の下の下着をはぎ取ってキスをしながらのしかかった。
「姫! ああ! 姫!」
押し付けられた唇の感触にデラエア姫が目を覚ますと、すでにグレイブは激しい行為の真っ最中。自分にも悦楽がつき上がってくる。
しかも自分は人の姿になっていてわけが分からない。
「え? え? え? どういうこと?」
「姫ぇ! そりゃ私は何も出来ないかもしれません! しかし今まで共に旅をし、姫を守り、こうして月に一度は身を合わせて来たではありませんか! 私は夫ですよ! それがちょっとばかし雑用ができるものが現れたら、私の功績を忘れてお捨てになるのですか? 狡兎死して走狗烹られる、飛鳥尽きて良弓蔵るとはまさにこのことでしょう!」
グレイブは久しぶりにデラエア姫に身を合わせ、不満を叫びながらその腹の上で小さな呻き声を上げて果てた。悦楽が全身に走り力尽くと姫の体に覆い被さった。
そしてそのまま、姫の体を強く抱きしめ涙をこぼしてしまった。
「姫ぇ。お慕い申し上げております……」
グレイブは悔しかったのだ。今まで50年の長旅をしてきた姫が別の男と話していることに嫉妬してしまった。だから夫しか許されない行為を無断でし、彼女の身体に自分を刻むことで悔しさを吐き出したのだ。
そんなグレイブの体をデラエア姫は抱き返した。
「分かってるわよ……。ただグレイブ、三人が来てからツンツンしてるわよ? 自分は偉いんだって思い過ぎよ。三人はちゃんと忠義の心で従ってる。それに私が奪われるわけないでしょ? 私はあなたの妻なんだから」
そう言われてグレイブは笑顔になり、その場に立ち上がって裸のまま小躍りをした。
「もう……。なんで私の魔法が解けているわけ?」
しかし、それが言い終わるか終わらないかのうちに、デラエア姫の姿は元のカエルに戻ってしまった。二人とも驚いて、二人の行為を見まいと床の上で後ろを向いているボウルドに尋ねた。
「え? な、なぜだ? ボウルド」
グレイブは姫を片手に抱いてボウルドを問いつめた。ボウルドも振り返って見ると姫がカエルの姿になっているので、これまた驚いた。
「ふむぅ。元々不完全な石を見て作り上げたからかもしれません。元が悪ければ、それより悪くすることは可能でも、良くすることは不可能ですよ。でも良かったじゃないですか。一度でも逢瀬が叶って」
「ふーん。ボウルドが月の青石を作ったのね。グレイブ考えたわね」
「あ、ありがたき幸せ……」
「でも、いくら妻でも同意もなしにしていいことと悪いことがあります。今後こんなことをしたら、罰を与えます」
罰……。それはそれで。グレイブの口が嬉しそうに歪む。
外に梓の木があった。その葉付きの枝でむき出しになった腿や尻を打ち据えて頂くのも悪くないぞとほくそ笑んだ。
グレイブはまだ裸。想像すると両足の中央にあるものが、頭を上げてしまう。
「そ、そうですか。無礼なグレイブをご存分にお仕置き願います。ムフ。ムフフ。ムフフフフフ」
それに気付いたデラエアはまたもや呆れた。
それは罰ではなく、ただれた遊びだ。
「この好色もの! いい加減に、その悪しきものをお仕舞いなさい。それにこの体ではグレイブのお好みのお仕置きなど出来ようはずもありません。明日の朝食の時にみなの前で発表します」
「は、は、は、発表? 何ですかそれは」
「今は申しません。私は寝ます」
「ねぇ。姫。何ですか? ねぇ~」
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