右手に剣、左手にカエル姫

家紋武範

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クインスロメン王国

第49話 弩級のS

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夜も深まり、侍女たちが灯りを片手に寝所へ案内する。
グレイブは女王に腕を絡ませさせ、赤い絨毯の上を歩き寝室に入った。

「さて二人っきりですな陛下」
「まさに……。実は余はこのようなことは初めてなのです」

「なるほど。男子がおられませんでしたからな。なんとも可哀想な話です」
「ですがこうして夫を得ることができました。グレイブ。余を愛して下さいますか?」

「もちろんでございます」

そういうと、グレイブは自分の召し物を全て脱ぎ捨ててしまった。

「キャ……」
「何も恥ずかしがることはございませぬ。夫婦とは全てを見せる事でございます」

「そ、そうですか」

グレイブは自分の右手を上げた。
そこは先の戦いで失ってしまった部分。
足と左手は修復していたが、こちらはまだ治っていなかったのだ。

「戦いでこちらを失ってしまい、陛下のお召し物を脱がせて差し上げることができません。どうかご自分で脱いではいただけませんか?」
「……む……も、もちろん」

女王が自分で召し物を外すことなど滅多にない。
いつもは侍女がやってくれるのだ。
女王が自分のドレスを脱ぐのは大変な手こずりようだった。

ようやく脱ぎ終わるころには女王は疲れきっていた。

「はぁはぁ。これで」
「ええ。契りを結べますな。しかし、私の方が本調子ではございませぬ」

見るとグレイブの男性自身は垂れ下がったままだ。

「ど、どうしたものでしょう」
「私の好きに振る舞ってよろしいですか? 陛下はそれに合わせて頂ければ結構です」

女王は男女のねやには色々あることを知っていた。
いわゆる耳年増。王宮の図書館にそのような書物もあり、男性をその気にさせる方法も知っていたので思い出して赤い顔をした。

「え、ええ。どうするの?」
「では目を閉じて、グレイブの方に顔をお上げ下さい」

女王アンディスはこれが噂に聞くキスというものであろうと思った。
頬を赤らめ、目を閉じて、グレイブの方に唇を突き上げた。

ピシャリ

突然のグレイブから右頬を平手で叩かれた。
続いて返す刀で左頬も。
女王は驚いて目を開けてしまった。

「い、痛!」

頬を押さえてグレイブの顔を見ると、嫌らしく笑っていた。

「な、何をする」
「陛下。私はこうしないといけません。女子めのこの叫び声が好きなのです。そうしないと本調子になりませぬ。しばし我慢を」

そう言ってグレイブは女王の頬を張り付ける。その度に女王は悲痛な声を漏らした。
これはグレイブの計略であった。
女王はこうすると、その内に人を呼ぶだろう。
そしたら捕縛される。そうなるための作戦であった。

それに、それほど強くは叩いていない。
いくら計略とは言え、あまりいい気分ではないのだ。
女王も女王で生まれて初めて人から折檻を受けたものだからショックで痛さが倍増しているのだ。

女王は裸のまま床にしゃがみこみ、這って逃げようとしたがグレイブにすぐに捕まってしまい馬乗りにされてしまった。

「はっはっは。いいぞ。逃げろ逃げろ。その方が興奮する」
「ぶ、無礼であろう!」

「そうだ。その高貴な声でもっと叫べ。いいぞぉ~」

馬乗りになってしまわれてはなかなか逃げ出すこともままならない。その内にグレイブは剥き出しの女王の尻を叩いた。

「あっ!」
「そうだ。もっとだ。もっと声を出せ。このグレイブを興奮させろ!」

左右の尻を叩かれ、そのうちに真っ赤になってしまった。
女王に戦慄が走った。男女の営みがこんなに苦痛を伴うものなのだろうか?
この男は長い間、戦いに身をやつしていたものだ。
普通の行為が出来ないのかも知れない。
一生こんな屈辱と苦痛を与えられるなんてまっぴらだった。

「だ、誰かある!」

たちまち入ってくる侍女たち。
裸で女王に襲いかかっているグレイブを見て、男女なのだからこれは当たり前なのではないのかと暫しの躊躇。

「こ、これ。はよう押さえよ」

という女王の頼みとも言えるような命令に『はっ』となってグレイブを指叉さすまたで押さえ込んだ。
グレイブは抵抗もせずに捕まった。
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