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セイバー
第51話 残虐な遊び
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セイバーはグレイブを討ち漏らした後、しばらくバザルの森林で遊んだ。
グレイブに追いつくことなどいつでもできる。
それよりも、自分が脅してやった言葉。
いついかなる時でも怯えて暮らすがいい。
グレイブは不老不死だ。
死ぬことがない。だから言葉で恐怖を与える。
それは伸し掛かるストレスであろう。
グレイブが苦しむのが楽しい。
のんびり追いかけても、あいつは賞金稼ぎ。
きっと各所で道草を食うに違いない。
だからこそゆっくり。
早く追いついてしまって殺してしまっては長い人生の楽しみが早々になくなってしまう。
それはつまらない。
追いつめて、体の部品を削いで土で埋めてしまおう。
セイバーは森の中で不気味に笑っていた。
食事は、飛んでいる鳥を跳び上がって捕まえてむしゃぶりついたり、猪が走るのと並走して驚いているところを首を斬ってしまうなんてことをした。
修行ではない。遊びだ。
セイバーにとっては、食事すら自分の身体能力を活かした遊びだった。
時折森に迷い込んでくる人間はご馳走だ。
気絶させて足からゆっくり食う。目が覚めた時の絶叫がたまらない。
ジタバタもがくところを急所を殴って気絶させ、またゆっくり食った。
おそらく、デスキングの一族でもこれほど趣味の悪いものはいないだろう。
生き物を殺すことが愉悦なのだ。
それもゆっくりじっくり殺す。
今は国元を離れたった一人。
咎めるものが誰もいない。
そんな中だから、元々ある残虐性に拍車がかかっていた。
闇夜はセイバーのものだ。
普通の生き物の目には真っ暗な世界。
だがデスキングの一族にはモノクロ反転のように映る。
どこにいるか手に取るように分かる。
昼間動けないために、夜は彼の思うがままだ。
どんな生物も、彼の前ではただの食料なだけであった。
しかし、セイバーも森林の生活に飽きて来た。
元々が戦い好きの残虐者だ。
大暴れしたくてたまらない。
彼もこのランフラス王国を去ることにした。
戦の匂いのする場所。
そこは、ランフラスとクインスロメンに隣接する、グランドスミスという王国だった。
セイバーが高く回転しながら跳び上がる。
闇夜に蝙蝠の様に黒いマントを広げてグランドスミスに向けて飛んで行った。
一方、グランドスミス王国軍の国境を守備する一隊はクインスロメンへ向けて騎馬を近づけていた。
積年の恨みだ。兄や弟が捕虜になってしまった。
相手の兵士は女ばかり。
こちらの太刀筋はつい遠慮がちになってしまう。
戦とは言え、男女の別があるのだ。
心理的にクインスロメンの方が常々有利だ。
降伏すると、捕縛されクインスロメン側に連れて行かれてしまう。
そして誰も戻ってこない。
こんな戦は終わらせたいと、クインスロメン側に焼き討ちの夜襲をかけようと動いたのだ。
国境を越え、馬蹄が響かぬようにと徒歩にてグランドスミス側の一隊が、陣立てに近づく。
大きな幕舎が見える。憎らしい女将軍の陣なのであろう。
何度辛酸を舐めさせられたことか。
兵士達は火矢をつがえて将軍の幕舎目掛けて放った。
あっという間に燃え盛る幕舎。飛び火して次々と他のテントに燃え広がって行く。
奇襲は成功したかに思えたが、女兵士達の叫び声一つ聞こえなかった。
「しまった! 無人の陣だ!」
その時だった。右から左から女兵士達の喚声が上がった。
事前に察知されてしまったのであろう。
奇襲をかけたつもりがこちらが奇襲をかけられてしまったのだ。
左右から攻められ、後方にいたものはかろうじて走り国境にたどり着いたが、残された兵士達は女将軍の率いる部隊にグルリと囲まれてしまった。
ニヤつく女兵士達に対して両手を上げて降伏の姿勢をとることしかできない。
そこに兵士を割って女将軍が騎馬に股がってグランドスミスの兵士達の前に現れた。
「ようこそ。我が国へ。きっと気に入ってもらえるだろう」
と不適に笑った。
グレイブに追いつくことなどいつでもできる。
それよりも、自分が脅してやった言葉。
いついかなる時でも怯えて暮らすがいい。
グレイブは不老不死だ。
死ぬことがない。だから言葉で恐怖を与える。
それは伸し掛かるストレスであろう。
グレイブが苦しむのが楽しい。
のんびり追いかけても、あいつは賞金稼ぎ。
きっと各所で道草を食うに違いない。
だからこそゆっくり。
早く追いついてしまって殺してしまっては長い人生の楽しみが早々になくなってしまう。
それはつまらない。
追いつめて、体の部品を削いで土で埋めてしまおう。
セイバーは森の中で不気味に笑っていた。
食事は、飛んでいる鳥を跳び上がって捕まえてむしゃぶりついたり、猪が走るのと並走して驚いているところを首を斬ってしまうなんてことをした。
修行ではない。遊びだ。
セイバーにとっては、食事すら自分の身体能力を活かした遊びだった。
時折森に迷い込んでくる人間はご馳走だ。
気絶させて足からゆっくり食う。目が覚めた時の絶叫がたまらない。
ジタバタもがくところを急所を殴って気絶させ、またゆっくり食った。
おそらく、デスキングの一族でもこれほど趣味の悪いものはいないだろう。
生き物を殺すことが愉悦なのだ。
それもゆっくりじっくり殺す。
今は国元を離れたった一人。
咎めるものが誰もいない。
そんな中だから、元々ある残虐性に拍車がかかっていた。
闇夜はセイバーのものだ。
普通の生き物の目には真っ暗な世界。
だがデスキングの一族にはモノクロ反転のように映る。
どこにいるか手に取るように分かる。
昼間動けないために、夜は彼の思うがままだ。
どんな生物も、彼の前ではただの食料なだけであった。
しかし、セイバーも森林の生活に飽きて来た。
元々が戦い好きの残虐者だ。
大暴れしたくてたまらない。
彼もこのランフラス王国を去ることにした。
戦の匂いのする場所。
そこは、ランフラスとクインスロメンに隣接する、グランドスミスという王国だった。
セイバーが高く回転しながら跳び上がる。
闇夜に蝙蝠の様に黒いマントを広げてグランドスミスに向けて飛んで行った。
一方、グランドスミス王国軍の国境を守備する一隊はクインスロメンへ向けて騎馬を近づけていた。
積年の恨みだ。兄や弟が捕虜になってしまった。
相手の兵士は女ばかり。
こちらの太刀筋はつい遠慮がちになってしまう。
戦とは言え、男女の別があるのだ。
心理的にクインスロメンの方が常々有利だ。
降伏すると、捕縛されクインスロメン側に連れて行かれてしまう。
そして誰も戻ってこない。
こんな戦は終わらせたいと、クインスロメン側に焼き討ちの夜襲をかけようと動いたのだ。
国境を越え、馬蹄が響かぬようにと徒歩にてグランドスミス側の一隊が、陣立てに近づく。
大きな幕舎が見える。憎らしい女将軍の陣なのであろう。
何度辛酸を舐めさせられたことか。
兵士達は火矢をつがえて将軍の幕舎目掛けて放った。
あっという間に燃え盛る幕舎。飛び火して次々と他のテントに燃え広がって行く。
奇襲は成功したかに思えたが、女兵士達の叫び声一つ聞こえなかった。
「しまった! 無人の陣だ!」
その時だった。右から左から女兵士達の喚声が上がった。
事前に察知されてしまったのであろう。
奇襲をかけたつもりがこちらが奇襲をかけられてしまったのだ。
左右から攻められ、後方にいたものはかろうじて走り国境にたどり着いたが、残された兵士達は女将軍の率いる部隊にグルリと囲まれてしまった。
ニヤつく女兵士達に対して両手を上げて降伏の姿勢をとることしかできない。
そこに兵士を割って女将軍が騎馬に股がってグランドスミスの兵士達の前に現れた。
「ようこそ。我が国へ。きっと気に入ってもらえるだろう」
と不適に笑った。
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