右手に剣、左手にカエル姫

家紋武範

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セイバー

第62話 太陽の下

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 こうして二人は自宅の小さな教会の中で結婚式を行った。
 街に住む者たちは、この幸せな若い二人の幸せを願い、こぞって参列したが、ロイムが扉を閉め切って開けようとしなかった。
 太陽の光が間違ってセイバーの身を焼かないためだ。
 街の住民たちは小さな窓からかわりばんこにそれを見つめたものだった。

 二人は寝室を共にしたがロイムは処女のままだった。
 セイバーにその機能はない。だが互いに抱きしめ合い夜を過ごした。

 日中の晴れた日に、ロイムは畑仕事をしていた。
 セイバーはそれをカーテンの影から見つめる。
 やはり太陽の下で彼女と共に仕事が出来ない。
 それが大きなコンプレックスだ。

 そんな姿のセイバーにロイムは気付いて、家の中に入ってきた。

「ふう。休憩、休憩」
「疲れたろう。今、冷たい水を出そう」

 セイバーは暗所に置かれた水瓶からロイムのために水を汲み、器に入れてそれを差し出した。

「ねぇ、セイバー。また何か考えていたでしょう」
「ああ。考えていた。太陽の下で生きれないことは情けないことだ。ロイムにばかり苦労をかける。どんな生き物でも太陽の下で生きれるのに、オレだけは別だ。オレはあの豆になりたい。太陽の下で大きく手を伸ばして、あんなに元気に緑色に染まっていく。あんな小さな一粒でさえ、太陽の下では力強いもの」

 ロイムはそれを聞いて無言で畑に向かい、人差し指と親指てつまみ豆の苗を引き抜いた。
 セイバーは驚いてしまった。そんなことをしたら豆はすぐに死んでしまう。
 ロイムはその引き抜いた豆を持ってきてセイバーに見せた。

「ロイム! なんてことをするんだ。一生懸命に生きている豆を。それでは豆が死んでしまう」
「セイバー。この豆はあなたと私よ」

「え?」

 ロイムは微笑みながら答えた。

「豆の上の部分は太陽の下で元気に生きられるわ。でも、その下の部分は太陽に当たるとすぐに死んでしまう。それと共に上の部分も。この豆の根の部分はあなたよ。セイバー。この根の部分があるから、私という豆の上の部分も生きられるの」

 セイバーはそれを聞いてとても和やかな顔をした。

「そうだ……」
「ふふ」

 セイバーが納得すると、ロイムは畑に駆け戻り、豆を元の場所に戻して水路から大量に水をかけた。
 ロイムの慌てている姿を、セイバーはカーテンの影から笑ってみていた。





 ところで、この二人の小さな教会の一室には旅人に無料で貸す部屋があった。セイバーがロイムと寝室を同じくしたので部屋が余り、ロイムの提案でそうすることにしたのだ。
 街の住民もそれを知っており旅人にロイムの教会を紹介した。
 少し大きめの寝台があり、二人くらい寝るなら問題はないし、ロイムお手製の食事を振る舞ったり、セイバーが夜の間に馬車の修繕などするので、旅人は皆感謝をして出て行き、その内に有名になっていった。
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