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セイバー
第63話 罪の償い
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そんなある日、夜の街に馬蹄の音が響き渡った。
住人達は何事と家の窓から首を出すと、騎馬にまたがった兵隊たちが30人ほどの小隊で、ロイムの教会を目指して進んでいった。
訳も分からず、街の長が進み出て訳を聞いた。
「これは何事です。平和な街に軍隊とは……」
「そなたは街の長か?」
「いかにも、街を治めるパイナ・ポウと申します」
「ではポウ。この街にセイバーと言うものがいると聞いたが」
「ええ。おります。心優しき働き者で、軍隊の縄にかかるようなものではありません。近々区の役をやって貰おうという話になるほどのものです」
「馬鹿者が。あれは大量殺人者だ。旅人が人相書きを見て訴えてきた。我が国の兵士を殺し、一つの街の人間を皆殺しにした者だ。20000ケラマンの賞金首になっておる」
「そ、そんな。何かの間違いです」
街の長が軍隊を足止めしている間に、それを知らせる者があった。
「セイバー! 大変だ!」
「おや、ピロウさんどうしました?」
「軍隊がキミを捕縛しにきたんだ。大量殺人者と言って」
「え?」
セイバーとロイムの二人は固まってしまった。
どこに人の目があるか分からない。
セイバーの悪行を息を殺して見ていた者がいたのであろう。
いつの間にかセイバーは賞金首になっていたのだ。
「ロイム……」
「セイバー。どうするの?」
「自首するしかあるまい。オレは実際に人を殺した。人の世では裁かれるのは当然だ」
知らせに来た、街の者も驚いた。
「そんな……。セイバーが殺人者だったなんて……」
「ピロウさん。私は許されない者なのです。私が去った後、ロイムと教会のことをお願いしたい。街の皆さんにもそうお伝えください」
セイバーが家のドアに進もうとするのをピロウは止めた。
「そんな……。行ったら殺されますよ」
「ふふ。大丈夫です。それに行かないと皆さんにも迷惑がかかる」
だがロイムもセイバーにすがった。
「ああセイバー。あなたが自首しようとするのは当たり前のこと。でも私はあなたを行かせられない。すでに反省して罪を償おうとしているあなたは、死刑にされたら今後は償えないのだわ」
「ロイム。そんなことはない。私の死によって慰められる魂もあるだろう」
セイバーは小さな家から出た。
軍隊は一人一つのたいまつを掲げて明るい様子だった。
セイバーは街の人が見守る中、軍隊の隊長の前に進み出た。
隊長も貧相な男が出て来たと思った。
これが人を大量に殺したなど不思議なことだ。
「私がセイバーです。自ら縄にかかります。どうぞ街の人には危害を加えませぬよう」
隊長はこの男は自分の軍隊に恐れをなして降伏したのだと、力を過信した。
「そなたに罪状が数件ある」
「存じております」
街のものの中から、あのセイバーがと悲痛な声が上がった。
「私は過ちを犯しました。しかし妻に会い、街の人々の温かさに触れ改心したのです。今は罪を償いたいと言う気持ちでいっぱいです」
それを聞いた街のものはやはりセイバーはセイバーだと思った。
心優しき男で悪心のかけらもない。
お上も酷いことをなされると思ったのだ。
軍隊は、隊長の命令でセイバーの体を縄で巻き、身動きを取れないようにした。
さらに首にも縄をかける。
セイバーは大人しくされるがままにしていた。
しかし、隊長に命ぜられ三騎ほどが家の方に向かってゆくのを目で追いかけた。
「隊長閣下。あの兵達をどうするつもりなのです」
「お前にはもはや関係ないこと。お前を匿った妻の罪も重い。連座でつれていくことにしよう」
「何ですって?」
「そなたの妻の話も旅人に聞いている。とても美しいものだと」
「ま、待って下さい! 妻は関係ない!」
「そうかも知れん。今夜、私の部屋で特別に取り調べをしてやろう。優しくな」
住人達は何事と家の窓から首を出すと、騎馬にまたがった兵隊たちが30人ほどの小隊で、ロイムの教会を目指して進んでいった。
訳も分からず、街の長が進み出て訳を聞いた。
「これは何事です。平和な街に軍隊とは……」
「そなたは街の長か?」
「いかにも、街を治めるパイナ・ポウと申します」
「ではポウ。この街にセイバーと言うものがいると聞いたが」
「ええ。おります。心優しき働き者で、軍隊の縄にかかるようなものではありません。近々区の役をやって貰おうという話になるほどのものです」
「馬鹿者が。あれは大量殺人者だ。旅人が人相書きを見て訴えてきた。我が国の兵士を殺し、一つの街の人間を皆殺しにした者だ。20000ケラマンの賞金首になっておる」
「そ、そんな。何かの間違いです」
街の長が軍隊を足止めしている間に、それを知らせる者があった。
「セイバー! 大変だ!」
「おや、ピロウさんどうしました?」
「軍隊がキミを捕縛しにきたんだ。大量殺人者と言って」
「え?」
セイバーとロイムの二人は固まってしまった。
どこに人の目があるか分からない。
セイバーの悪行を息を殺して見ていた者がいたのであろう。
いつの間にかセイバーは賞金首になっていたのだ。
「ロイム……」
「セイバー。どうするの?」
「自首するしかあるまい。オレは実際に人を殺した。人の世では裁かれるのは当然だ」
知らせに来た、街の者も驚いた。
「そんな……。セイバーが殺人者だったなんて……」
「ピロウさん。私は許されない者なのです。私が去った後、ロイムと教会のことをお願いしたい。街の皆さんにもそうお伝えください」
セイバーが家のドアに進もうとするのをピロウは止めた。
「そんな……。行ったら殺されますよ」
「ふふ。大丈夫です。それに行かないと皆さんにも迷惑がかかる」
だがロイムもセイバーにすがった。
「ああセイバー。あなたが自首しようとするのは当たり前のこと。でも私はあなたを行かせられない。すでに反省して罪を償おうとしているあなたは、死刑にされたら今後は償えないのだわ」
「ロイム。そんなことはない。私の死によって慰められる魂もあるだろう」
セイバーは小さな家から出た。
軍隊は一人一つのたいまつを掲げて明るい様子だった。
セイバーは街の人が見守る中、軍隊の隊長の前に進み出た。
隊長も貧相な男が出て来たと思った。
これが人を大量に殺したなど不思議なことだ。
「私がセイバーです。自ら縄にかかります。どうぞ街の人には危害を加えませぬよう」
隊長はこの男は自分の軍隊に恐れをなして降伏したのだと、力を過信した。
「そなたに罪状が数件ある」
「存じております」
街のものの中から、あのセイバーがと悲痛な声が上がった。
「私は過ちを犯しました。しかし妻に会い、街の人々の温かさに触れ改心したのです。今は罪を償いたいと言う気持ちでいっぱいです」
それを聞いた街のものはやはりセイバーはセイバーだと思った。
心優しき男で悪心のかけらもない。
お上も酷いことをなされると思ったのだ。
軍隊は、隊長の命令でセイバーの体を縄で巻き、身動きを取れないようにした。
さらに首にも縄をかける。
セイバーは大人しくされるがままにしていた。
しかし、隊長に命ぜられ三騎ほどが家の方に向かってゆくのを目で追いかけた。
「隊長閣下。あの兵達をどうするつもりなのです」
「お前にはもはや関係ないこと。お前を匿った妻の罪も重い。連座でつれていくことにしよう」
「何ですって?」
「そなたの妻の話も旅人に聞いている。とても美しいものだと」
「ま、待って下さい! 妻は関係ない!」
「そうかも知れん。今夜、私の部屋で特別に取り調べをしてやろう。優しくな」
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