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灼熱のドラゴンと城
第67話 国を求めて
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「主人。一つ伺いたい」
「な、なんなりと」
「クインスロメンはこれほど暑い国ではなかった。太陽は平等であろう。なぜ国境を越えた途端このように暑いのか?」
「はぁ。外国のことはよくわかりません。我々が生まれたときからこのような状況ですから」
「なるほど。原因は分からぬか」
「いえ。原因は分かっております」
「なんと。それはなんだ」
「さすれば、アスローラ山に建立されております古城に灼熱のドラゴンが住み着き、彼から発せられる熱でこのように暑いのだとか」
「はぁ? そんな国中に影響を与えるドラゴンなのか?」
「さようでございます。それゆえ国はずっと日照りでして水のあるところにしか人は住めません。弱い作物であればやられてしまうのです」
「それは難儀であろう。いったい何で生活しているのか?」
「さすれば国家の秘中かもしれませんが、暑い為に鉱物の加工が容易なのです。それで武器や防具、鏃や砲弾などの兵器を作り他国に輸出し、麦を買うと言う感じです」
「なるほど、軍需産業というわけか」
「ですが、国もそれは緊急的な処置なのでしょう。出来ればそのような危険なドラゴンを倒したいのです。ですから懸賞金がかけられておりますが、なかなかそのような勇士はおりません」
「得意の砲弾でもダメなのか?」
「左様でございます。砲撃がドラゴンに到達する前に溶かされてしまいます。またそのような攻撃をすると怒り狂い、灼熱をさらに発するのです」
「なるほどなぁ。しかし懸賞金がかけられようとも、君子危うきに近寄らずだな。分かった。ありがとう」
グレイブはドラゴンとの戦いは避けたかった。
ドラゴンは生き物の中ではかなり上位な生物だ。
もちろんドラゴンの種にもよる。特殊の能力もなく力の限り暴れる知能の低いドラゴンもいる。
だがそれはただの大きなトカゲだ。
本来のドラゴンとは人語すら解し、強力なブレスと上級な魔法を使ってくる。敏捷性もあり、どこから牙、爪、尻尾で攻撃してくるか分からない。
ましてや翼を持っているものであれば戦いにならない。
「これ主人。懸賞金とはいかほどなのか?」
「ひ、姫」
宿の主人に尋ねたのはデラエアだった。
グレイブの厭戦的な気分とは別に姫の方では金額によっては戦いたいらしい。それを命じられてはグレイブとしては戦うしかない。
どうか懸賞金よ低くあってくれとグレイブは祈った。
「さすれば、共通通貨で50万ケラマンでございます」
グレイブはホッとした。懸賞金にしてはかなり低い。
先の魔女との対戦では1000万ケラマンを得ている。
50万ケラマンなど微々たるものだった。
「さようか。この国は貧しい。出せる金額にも限界もあろう。そうか。ご苦労であった。姫の代わりに礼を言おう」
「いえ、それは副賞程度のものでございまして、褒美としてドラゴンの住まう城、その四方を領地として与えられます」
「は?」
デラエアの方でもニンマリと笑った。
そもそも二人の旅は領地を得て『マスカト王国』の再建だ。城、土地が与えられるのは目的が叶うことであった。
「いいじゃなーい。ねぇみんな!」
デラエアは仲間達に呼びかける。
仲間達もそれにうなずいたが困ってしまったのはグレイブの方だ。
「畏れながら申し上げます」
「はい。グレイブくん」
テンション上がり気味のデラエアのプランに水を差すのははばかられたが、戦うのは自分。言わねばならなかった。
「大砲の砲弾を溶かすほど。国の温度を上げるほどのドラゴンでございますれば、かなり上級。剣や盾も溶かされてしまいます。例えこのグレイブに剣技があろうとも、いささか難ありと思われます」
グレイブの心配は無理からぬことであった。
しかし、デラエアは知っている。前にグレイブは赤や緑色のドラゴンと戦ってきたことを。
「もしもこれから私たちが国を手に入れて、国内に魔物がいたらそれを倒さなくてはいけないじゃない。国民の治安を思えば実戦をもっと積んでおくべきだわ」
「そ、それはそうですが、魔物にも領分がございます。彼らの平安を無理になくしてしまうのは人間のエゴかと……」
たしかにデラエアの思う通りそれらをグレイブは仕留めてきた。
だからこそその大変さは知っていたのだ。寝ずに5日もにらみ合ってスキを狙ったこともあった。
彼らを倒したからこそ、この強いグレイブがいる。
だが戦いとは常に勝つことばかりではないし、無理な場合は退きたいのだ。
「兄貴が心配であるなら無理して戦わなくてもよいのではと、あっしも思いやす」
ハーツもグレイブに助け船を出した。
グレイブにとっては嬉しい味方であった。
デラエアの方でも、仕方なさそうに言った。
「そうねぇ。グレイブにはいつも無理ばかりさせてるし。もしもドラゴンに勝てたらグレイブの好きなことを一つ叶えてやりたいと思ったけど仕方ないわね。諦めましょう」
「好きなこと……」
グレイブの胸がドキンとなった。
思わずニヤける口をナプキンで拭う振りをして隠す。
好きなこと。好きなこと。
あれにしようか、これにしようか。
ナプキンの下は嫌らしい笑み。
「姫。諦めるには及びませぬ。我々一行も大所帯になって参りました。落ち着く場所も必要です。土地は国家の大計! そのためにはグレイブ、骨身は惜しみませぬ!」
「まぁ。さすがグレイブね」
「あ……に……き……」
「ハーツ。まぁ心配するな。お前にもレモーネにも手伝って貰うぞ」
そう言ってグレイブは二人に笑いかけたのだった。
「な、なんなりと」
「クインスロメンはこれほど暑い国ではなかった。太陽は平等であろう。なぜ国境を越えた途端このように暑いのか?」
「はぁ。外国のことはよくわかりません。我々が生まれたときからこのような状況ですから」
「なるほど。原因は分からぬか」
「いえ。原因は分かっております」
「なんと。それはなんだ」
「さすれば、アスローラ山に建立されております古城に灼熱のドラゴンが住み着き、彼から発せられる熱でこのように暑いのだとか」
「はぁ? そんな国中に影響を与えるドラゴンなのか?」
「さようでございます。それゆえ国はずっと日照りでして水のあるところにしか人は住めません。弱い作物であればやられてしまうのです」
「それは難儀であろう。いったい何で生活しているのか?」
「さすれば国家の秘中かもしれませんが、暑い為に鉱物の加工が容易なのです。それで武器や防具、鏃や砲弾などの兵器を作り他国に輸出し、麦を買うと言う感じです」
「なるほど、軍需産業というわけか」
「ですが、国もそれは緊急的な処置なのでしょう。出来ればそのような危険なドラゴンを倒したいのです。ですから懸賞金がかけられておりますが、なかなかそのような勇士はおりません」
「得意の砲弾でもダメなのか?」
「左様でございます。砲撃がドラゴンに到達する前に溶かされてしまいます。またそのような攻撃をすると怒り狂い、灼熱をさらに発するのです」
「なるほどなぁ。しかし懸賞金がかけられようとも、君子危うきに近寄らずだな。分かった。ありがとう」
グレイブはドラゴンとの戦いは避けたかった。
ドラゴンは生き物の中ではかなり上位な生物だ。
もちろんドラゴンの種にもよる。特殊の能力もなく力の限り暴れる知能の低いドラゴンもいる。
だがそれはただの大きなトカゲだ。
本来のドラゴンとは人語すら解し、強力なブレスと上級な魔法を使ってくる。敏捷性もあり、どこから牙、爪、尻尾で攻撃してくるか分からない。
ましてや翼を持っているものであれば戦いにならない。
「これ主人。懸賞金とはいかほどなのか?」
「ひ、姫」
宿の主人に尋ねたのはデラエアだった。
グレイブの厭戦的な気分とは別に姫の方では金額によっては戦いたいらしい。それを命じられてはグレイブとしては戦うしかない。
どうか懸賞金よ低くあってくれとグレイブは祈った。
「さすれば、共通通貨で50万ケラマンでございます」
グレイブはホッとした。懸賞金にしてはかなり低い。
先の魔女との対戦では1000万ケラマンを得ている。
50万ケラマンなど微々たるものだった。
「さようか。この国は貧しい。出せる金額にも限界もあろう。そうか。ご苦労であった。姫の代わりに礼を言おう」
「いえ、それは副賞程度のものでございまして、褒美としてドラゴンの住まう城、その四方を領地として与えられます」
「は?」
デラエアの方でもニンマリと笑った。
そもそも二人の旅は領地を得て『マスカト王国』の再建だ。城、土地が与えられるのは目的が叶うことであった。
「いいじゃなーい。ねぇみんな!」
デラエアは仲間達に呼びかける。
仲間達もそれにうなずいたが困ってしまったのはグレイブの方だ。
「畏れながら申し上げます」
「はい。グレイブくん」
テンション上がり気味のデラエアのプランに水を差すのははばかられたが、戦うのは自分。言わねばならなかった。
「大砲の砲弾を溶かすほど。国の温度を上げるほどのドラゴンでございますれば、かなり上級。剣や盾も溶かされてしまいます。例えこのグレイブに剣技があろうとも、いささか難ありと思われます」
グレイブの心配は無理からぬことであった。
しかし、デラエアは知っている。前にグレイブは赤や緑色のドラゴンと戦ってきたことを。
「もしもこれから私たちが国を手に入れて、国内に魔物がいたらそれを倒さなくてはいけないじゃない。国民の治安を思えば実戦をもっと積んでおくべきだわ」
「そ、それはそうですが、魔物にも領分がございます。彼らの平安を無理になくしてしまうのは人間のエゴかと……」
たしかにデラエアの思う通りそれらをグレイブは仕留めてきた。
だからこそその大変さは知っていたのだ。寝ずに5日もにらみ合ってスキを狙ったこともあった。
彼らを倒したからこそ、この強いグレイブがいる。
だが戦いとは常に勝つことばかりではないし、無理な場合は退きたいのだ。
「兄貴が心配であるなら無理して戦わなくてもよいのではと、あっしも思いやす」
ハーツもグレイブに助け船を出した。
グレイブにとっては嬉しい味方であった。
デラエアの方でも、仕方なさそうに言った。
「そうねぇ。グレイブにはいつも無理ばかりさせてるし。もしもドラゴンに勝てたらグレイブの好きなことを一つ叶えてやりたいと思ったけど仕方ないわね。諦めましょう」
「好きなこと……」
グレイブの胸がドキンとなった。
思わずニヤける口をナプキンで拭う振りをして隠す。
好きなこと。好きなこと。
あれにしようか、これにしようか。
ナプキンの下は嫌らしい笑み。
「姫。諦めるには及びませぬ。我々一行も大所帯になって参りました。落ち着く場所も必要です。土地は国家の大計! そのためにはグレイブ、骨身は惜しみませぬ!」
「まぁ。さすがグレイブね」
「あ……に……き……」
「ハーツ。まぁ心配するな。お前にもレモーネにも手伝って貰うぞ」
そう言ってグレイブは二人に笑いかけたのだった。
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