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灼熱のドラゴンと城
第69話 領土の約束
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やがて王都に到着した。
急いで水を探すと、日陰によい地下水の出る井戸を見つけた。
これは冷たい。デラエアのバケツに温度を調整しながら入れると、目を覚まして楽しそうに足を伸ばして泳いだので一行はホッとした。
グレイブは国王に会いに行き、ハーツとレモーネは鍛冶屋を探す。
残ったガッツとレイバで涼しげなホテルを探すという算段になり、一行はそれぞれ別れていった。
グレイブは貴族の服を着用し、腰にはレイピアを佩いて王宮に向かった。今まで参内した王宮の中でもちんまりとした造りであり、グレイブも余程貧しいのであろうなと感じた。
国王は客を愛する人で政務の傍らすぐにグレイブと会うと言うことだったので、待たされることなく面会が叶った。
玉座に座り、侍女に扇で仰がせている国王の前に進み出た。
「私はグレイブ・ブラック・バアブル・ビートと申す旅のものでございます」
「そうか。余はパイヤパの王、フエイ・ジエア5世である。見ての通り我が国は貧しい。もしよかったらしい勉強のために外国の話を聞かせてくれ」
「いえ、陛下。私は王都にくる途中の集落を見て参りましたが、少ないながらも平等に食糧と水が行き届き、陛下の善政に舌を巻いた次第です」
「そう言われると何ともありがたい。しかしながらもし明日クインスロメンやタンジェリカなどの大国が境を侵してくれば防ぎ切れん。我が国をどうにか防衛なりとも強くしたいのだ」
「なるほど。クインスロメンを通過して参りましたが、彼の国は意気盛んで他国を併呑しようとする気概が感じられました」
「やはりそうか……。今までは和平和睦を結んで来たが一方的に盟約は破られる始末。しかし我が国からは得るもの無しと見るのかいつも兵を退いておったからからなぁ」
これはクインスロメンの男狩りであろうとグレイブは感じた。しかし今のグレイブにとってはドラゴン討伐を申し出ることが目的であった。
「やはり、国内に危険なドラゴンがいるというのが貴国の弱点と存じます」
「さよう。余も常々それは感じておるが、叶う相手でもないので何も出来ず手をこまねいているのだ」
「そこで陛下。実は私、賞金稼ぎでございます。首尾良くドラゴンを打ち倒せばご褒美が頂けると聞いて馳せ参じた次第です」
「なるほど。足下は賞金稼ぎであったか。見ての通り我が国は小国で内に憂いがあるので君が求めている賞金はだせんかもしれんが、50万ケラマンと、今ドラゴンが住み着いている地域を与える志(こころざし)がある」
「結構でございます。50万ケラマンと、領土。それは独立国と考えてよろしいでしょうか?」
「独立……」
国王の方でも戸惑った。国の中に新たな国が出来る。それは余りよろしくない。身内でもないものに国を作られてはドラゴンとはまた違う脅威だからだ。
国王の方ではそれに対して嫌悪感を持った。
「ふむう。それは領土ではなく領地である。自治権はあるが年に一定の税は納めてもらう関係だな。独立国などは国家としては認められん」
「ははぁ。左様でございますか。しかし老婆心ながら申し上げますが、今現在では全くその地域は機能しておりません。ましてや国内の異常な暑さはドラゴンのため。そのために国力は弱くなる一方。それではいつ他国の侵入を許すか分かりませんぞ? もし私に領土を下さればいつでも境を侵す敵に協力出来ます。言わば同盟ですな」
たしかにグレイブの言うことももっともだった。
それによく考えれば、あのドラゴンを倒せるわけなどない。
まかり間違って倒してくれればそれはそれで助かるし、この賞金稼ぎが死して、ドラゴンが傷付けばそれを兵士たちが討ち取ることも出来るのでは無いかと考えた。
「足下が申すことはもっともである。では独立国を許そう」
「おお。何よりも重い国王のお言葉。そのお約束を決して違えませぬよう」
グレイブは平伏して玉座の間を去ると、大臣の一人が国王の御前に進み出た。
「陛下。まさか領土をお認めになるとは」
「仕方あるまい。しかし、あの賞金稼ぎの大言壮語であろう。ドラゴンが簡単に倒せるとは思えぬ。よくて相討ち。彼の者が戦いに倒れ、ドラゴンに傷でも負わせてくれれば、我々が漁夫の利を得ることが出来るのでは無いか?」
周りにいた他の大臣たちも、国王の考えに大きくうなずいて笑顔を見せたが、注進のために進み出た大臣は声を張り上げた。
「な、なにをおっしゃいます陛下! 彼のグレイブ・ビートこそ、世界無双の男、カエルの騎士でございますぞ!」
「な、なに!?」
そんな強い男に国を与えることは有害だと言う者。
しかし、それを同盟と言う名の下に飼うことも国家には有益だと言う者。
意見は分かれたが、そのカエルの騎士はまだドラゴンを討ち取ってはいない。
取り敢えず偵察を付け、何かあれば報告するようにと話はまとまった。
急いで水を探すと、日陰によい地下水の出る井戸を見つけた。
これは冷たい。デラエアのバケツに温度を調整しながら入れると、目を覚まして楽しそうに足を伸ばして泳いだので一行はホッとした。
グレイブは国王に会いに行き、ハーツとレモーネは鍛冶屋を探す。
残ったガッツとレイバで涼しげなホテルを探すという算段になり、一行はそれぞれ別れていった。
グレイブは貴族の服を着用し、腰にはレイピアを佩いて王宮に向かった。今まで参内した王宮の中でもちんまりとした造りであり、グレイブも余程貧しいのであろうなと感じた。
国王は客を愛する人で政務の傍らすぐにグレイブと会うと言うことだったので、待たされることなく面会が叶った。
玉座に座り、侍女に扇で仰がせている国王の前に進み出た。
「私はグレイブ・ブラック・バアブル・ビートと申す旅のものでございます」
「そうか。余はパイヤパの王、フエイ・ジエア5世である。見ての通り我が国は貧しい。もしよかったらしい勉強のために外国の話を聞かせてくれ」
「いえ、陛下。私は王都にくる途中の集落を見て参りましたが、少ないながらも平等に食糧と水が行き届き、陛下の善政に舌を巻いた次第です」
「そう言われると何ともありがたい。しかしながらもし明日クインスロメンやタンジェリカなどの大国が境を侵してくれば防ぎ切れん。我が国をどうにか防衛なりとも強くしたいのだ」
「なるほど。クインスロメンを通過して参りましたが、彼の国は意気盛んで他国を併呑しようとする気概が感じられました」
「やはりそうか……。今までは和平和睦を結んで来たが一方的に盟約は破られる始末。しかし我が国からは得るもの無しと見るのかいつも兵を退いておったからからなぁ」
これはクインスロメンの男狩りであろうとグレイブは感じた。しかし今のグレイブにとってはドラゴン討伐を申し出ることが目的であった。
「やはり、国内に危険なドラゴンがいるというのが貴国の弱点と存じます」
「さよう。余も常々それは感じておるが、叶う相手でもないので何も出来ず手をこまねいているのだ」
「そこで陛下。実は私、賞金稼ぎでございます。首尾良くドラゴンを打ち倒せばご褒美が頂けると聞いて馳せ参じた次第です」
「なるほど。足下は賞金稼ぎであったか。見ての通り我が国は小国で内に憂いがあるので君が求めている賞金はだせんかもしれんが、50万ケラマンと、今ドラゴンが住み着いている地域を与える志(こころざし)がある」
「結構でございます。50万ケラマンと、領土。それは独立国と考えてよろしいでしょうか?」
「独立……」
国王の方でも戸惑った。国の中に新たな国が出来る。それは余りよろしくない。身内でもないものに国を作られてはドラゴンとはまた違う脅威だからだ。
国王の方ではそれに対して嫌悪感を持った。
「ふむう。それは領土ではなく領地である。自治権はあるが年に一定の税は納めてもらう関係だな。独立国などは国家としては認められん」
「ははぁ。左様でございますか。しかし老婆心ながら申し上げますが、今現在では全くその地域は機能しておりません。ましてや国内の異常な暑さはドラゴンのため。そのために国力は弱くなる一方。それではいつ他国の侵入を許すか分かりませんぞ? もし私に領土を下さればいつでも境を侵す敵に協力出来ます。言わば同盟ですな」
たしかにグレイブの言うことももっともだった。
それによく考えれば、あのドラゴンを倒せるわけなどない。
まかり間違って倒してくれればそれはそれで助かるし、この賞金稼ぎが死して、ドラゴンが傷付けばそれを兵士たちが討ち取ることも出来るのでは無いかと考えた。
「足下が申すことはもっともである。では独立国を許そう」
「おお。何よりも重い国王のお言葉。そのお約束を決して違えませぬよう」
グレイブは平伏して玉座の間を去ると、大臣の一人が国王の御前に進み出た。
「陛下。まさか領土をお認めになるとは」
「仕方あるまい。しかし、あの賞金稼ぎの大言壮語であろう。ドラゴンが簡単に倒せるとは思えぬ。よくて相討ち。彼の者が戦いに倒れ、ドラゴンに傷でも負わせてくれれば、我々が漁夫の利を得ることが出来るのでは無いか?」
周りにいた他の大臣たちも、国王の考えに大きくうなずいて笑顔を見せたが、注進のために進み出た大臣は声を張り上げた。
「な、なにをおっしゃいます陛下! 彼のグレイブ・ビートこそ、世界無双の男、カエルの騎士でございますぞ!」
「な、なに!?」
そんな強い男に国を与えることは有害だと言う者。
しかし、それを同盟と言う名の下に飼うことも国家には有益だと言う者。
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